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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年6月15日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、緊急事態宣言、東芝株主総会問題、経済安全保障と中国、原発のコストと電源構成などについて発言があった。

Q : 6月20日に緊急事態宣言の期限を迎えるが、これまでの宣言の効果、経済への影響をどう見ているか。また、6月21日以降について、感染防止と経済活動の両立の観点からどういった対応が望ましいか。

櫻 田: これまでを見る限り、成果はあったと思う。具体的に、政府が使っている5つの指標のうち、ステージ3あるいは4を超えている地域が北海道、愛知県、大阪府、沖縄県等、いくつもあることを見ると、まだまだ予断は許されない。(緊急事態宣言の)効果はあっただろうが、絶大な効果とは見えない。気を緩めると元に戻る可能性は十分にあると思う。これは、ワクチン接種率との関係が大きいと思う。経済については、言うまでもなく、飲食、旅行、宿泊業等で激しいダメージを受けている。緊急事態宣言が解除され、かつてのGo Toキャンペーンのような形で、(業績が)浮き上がるかと言えば、おそらくそうはならないだろう。前述した業界については、しばらく厳しい状態が続くだろう。経済全体について言えば、おそらく、マクロでは既に底を打っていると思う。海外、特に米国では、インフレーションが懸念される勢いになっているので、二番底、三番底はないと思っている。景気に影響を与えるものとして消費があるが、消費者の気持ちの影響が大きい。そういった意味では、オリンピックを含め、将来に対する期待やわくわく感、元気になるという「気」の部分がどれくらい回復するかが重要だと思う。まだまだ予断は許されないが、どんどん下がることはないだろう。

Q : コーポレートガバナンスの問題について伺いたい。昨年の東芝の株主総会をめぐり、外部弁護士による調査報告書が公表され、公正に運営されたとはいえないとの指摘がされている。東芝と経済産業省が特定の株主の権利を妨げるようなことを意図していたという指摘も盛り込まれているが、会社の最高意思決定機関である株主総会の運営に疑義が挟まれたともいえる。日本の企業統治への不信も高まることも懸念されるが、代表幹事はどのように受け止めているか。また、本日、梶山弘志経済産業大臣が、報告書の中に記載されている経済産業省(職員)の行動について、守秘義務違反にあたるかどうかを確認する必要はないと会見で述べたが、経済産業省の説明責任はどのように考えるか。

櫻 田: 率直な感想として、最初に報告書に書かれていることを聞いた際にはショックであった。一番大事な株主総会の議決権行使、日本(国)でいえば民主主義の票の計測方法に疑義があった、不正に近いものがあったかもしれないという報告であり、これをショックと受け止めない経済人はいないと思う。これに対して、東芝の取締役会、また経済産業省も当然のことながら説明責任を負うのだろうと思っている。なぜならば、これらの話は日本のコーポレートガバナンス、ひいては東京証券取引所に対する信認を大きく損なう可能性があるからだ。株価の形成や企業の意思決定の仕方に対して疑義が出たわけなので、全力をあげて「そうではない」ということを説明し、理解を得ないと、(日本に)国際金融都市、国際金融市場を作っていくことは夢のその先の話になりかねない。これは相当深刻に受け止めなければいけない。2つ目の質問である梶山大臣の「責任問題についてさらに調べる必要がない」という発言の真意はわからないが、これで本件について説明責任を全うしたとはおっしゃっていない。本件の外部弁護士見解について、経済産業省の説明は必要であろうと思っている。それはこれから求められると思う。これをもってすべて終わりとはいかないくらいの深刻な話である。

Q : 4月に東芝の社長を辞任した車谷暢昭氏は、最近まで経済同友会の副代表幹事であった(2021年4月27日の経済同友会通常総会をもって辞任)。すでに副代表幹事を退かれているとはいえ、代表幹事は車谷氏を副代表幹事として信任された。今回の件をどのように感じているか。

櫻 田: 車谷氏自身から聞いていることは、(東芝の代表執行役社長CEOを)辞任することにした、辞任した後はファミリービジネスに専念したい、(規模の小さな会社であり)経済同友会の副代表幹事の立場には似つかわしくないので辞任したい、ということであった。その時点では今回の報告書は出ていなかったわけだが、(当時の)報道でも、ファンドとの関係について見方によっては芳しくない記事がたくさんあった。それ自体をもって、白や黒、グレーと言うつもりはない。本人の辞任の意思を素直に受け止めた。我々としても、経営者個人として堂々と自論を展開し、言行一致のDo Tankのリーダーとしてという点においては、お辞めになったことは妥当なのだろうと思っている。今回さらに報告書が出て、関与の度合いも強いということであれば、ますます芳しくないと言えるだろうから、少なくとも本人と何らかの機会で話をしていかないといけない。ただ、話をするといってもすでに副代表幹事は辞められているので、(本会の)会員、委員長としての活動をどうされるのか、という点になる。いずれにしても、経済団体(での役職)という前に、本件は(東芝が)日本の企業統治、それが目的としている株式市場への正しい情報開示に課題があるというケースを生んでしまったと言え、それに対しての説明責任はあるだろう。その意味で今後、経済同友会の中で重要なポストを担っていいただくのは好ましくない状況になってしまったと思っている。

Q : 今回のG7では中国の問題についてもかなり議論がされた。菅首相は強く主張したという話だが、独メルケル首相、仏マクロン大統領は、少し中国へのスタンスが違う。経済同友会の経済安全保障の提言(2020年度国際問題委員会『強靭な経済安全保障の確立に向けて―地経学の時代に日本が取るべき針路とは-』2021年4月21日)でも言及をされているとおり、中国に先端技術を依存するのは問題であるとは思う。しかし中国と取引を行う企業が多い中で、改めて経済安全保障の観点で中国を想定した場合、企業はどのようなスタンスで臨めばよいか。

櫻 田: 政治、安全保障と経済はもはや表裏一体であり、教科書的な純粋な経済というのは存在しない。今まで以上に経済安全保障や地政学の影響を受けながら、経済は動いていくと思う。その経済の中の生き物である企業は、当然のことながら経済安全保障を意識して経営をしなければならない。経営戦略と経済安全保障は切り離せない状態になってきた。その企業がメーカーであっても、サービス業、金融であっても、戦略を描くにあたって経済安全保障との関係は見ていかなければならない。どの分野が機微分野なのか、機密に触れるのかということに相当に神経を使う、広い意味でのコンダクトリスクのようなものだと思っている。今回のG7サミット最大の成果の一つは、長らく分断されていた国々が、民主主義を同じ価値観として統合しようと宣言したことである。この中で日本は「従」の立場ではなく、場合によっては日本が先に出ながら、その価値観を共有する国々と一緒に歩んでいく必要がある。G7のステートメントでも自由で開かれたインド太平洋や台湾海峡についても触れており、すべてが中国を意識した内容になっている。そこに我が国の首相が署名していることは大きいと考えている。今回のG7の成果と、地政学と切り離せない経営とを考えた際に、技術、マーケット、サプライチェーンにおいて中国(への依存度)を下げていくこと、中国一国に依存した技術やマーケット、または中国からしか手に入らないサプライチェーンは見直していくことが必要になってくる。一方で経済人は、経済的利益や株主の利益を意識することも重要である。その場合、中国と正面からぶつかっていくメリットはないので、どこまでならばよい、どこからはだめかということを企業が説明できる状態にしておくことが必要である。中国マーケットの依存度やサプライチェーン、また機微技術に関する規制について、IRの観点から問われた際にクリアに答えられるようにしていくことや、コーポレートガバナンスレポートに記載していくことが求められる時代がきたと思っている。

Q : 金融、サービス、製造業等の業種によって、(機微技術等を)どこまで出してよいか、どこからはだめかといった基準を、今後は政府が決めなければならないという認識か。

櫻 田: そうだと思う。おそらく今の流れからいけば、米国がファーウェイのケースで行ったように、リストされた企業以外は取引してはいけないというルールは今後も出てくると思う。そういったルールができる前に、企業としては個社の努力で、場合によってはチーフ・リスク・オフィサーのミッションとして、サプライチェーンリスクやコンダクトリスク、情報の取り扱いなど、中国企業への過度の依存や取引における注意点をスタディしていく必要がある。また(その一方で)、法律などのルールができるならば、過度な規制にならないように政府に対して要請していく(ことも重要だ)。受け身にならないで、主体的にやっていく必要がある。

Q : 東芝の外部弁護士がまとめた(2020年の株主総会が公正に運営されたものではないとの調査)報告書では経済産業省とのやり取りは「改正外為法の趣旨を逸脱する目的で不当に株主提案権の行使を制約しようとするもの」としている。改正外為法の運用を巡って混乱が生じていることについて認識を伺いたい。

櫻 田: 少なくとも、法律の専門家が調査をした上で、法律に触れている可能性を指摘しているのであれば、これは一体どういうことなのかを東芝自身が説明する必要がある。説明内容に株主が納得したのであれば、それに対する判断をするであろう。また、重要なプレーヤーである経済産業省も説明責任は負うと思っている。

Q : 経済産業省が見直しを進めているエネルギー基本計画の、電源構成における原子力発電の位置付けについて聞きたい。経済同友会では、縮原発を掲げて、原発依存度を一定水準まで低減させるという考え方を示し、原子力発電をゼロエミッション電源として可能な限り利用すべきであって、世界のエネルギー安定供給に不可欠と主張している。原子力発電所を巡っては、安全対策は充実してきたが、事故のリスクを完全にゼロにすることはできないので、一度事故が起こると膨大なコストがかかり、コストが高い電源である。原子力発電についてのコスト優位性をどのように考えるのか。エネルギー安全供給に不可欠とするか、代表幹事の考えを伺いたい。

櫻 田:  コストについては、我々は計算する技術もファクトも持っていないので、政府が試算したものを受け止めている。それによると、東日本大震災での福島原発事故の(例をふまえ)事故対応コストも9兆円程度含めた上で、単位(kwh)当たりのコストが試算されている。事故対応コストを含めても、あらゆる電力の中で原子力発電が最もコストが低いのは事実であると思う。そうした前提の中で、これから事故があったとしたらどうするかを考えることになる。計算上は、あと1兆円程度事故対応コストが増えたらどうなのかといったモデル上のシミュレーションは出来るようになっている。(それによれば)相当程度(事故対応、安全対策コストを)使っても、他のLNG等(の電源)に比べて、原子力発電の方が高くつくということはないようだ。もちろん、これは仮定の話であり、どのような事故が起こるかはわからない。一方で、現実問題として考えなければならないことは、政府が当初掲げていた2013年度比マイナス26%という目標が、去る4月にマイナス46%まで引き上げられた。2050年カーボンニュートラル宣言もあり、2030年にはマイナス46%までもっていかなければならない。今、原発の発電シェアは6%から7%程度である。これから原子力発電所がフルに動いて、20%近くまで上がるという前提でマイナス46%としないと、今の再生エネルギーだけで足りないのは明らかである。審査申請済み27基(再稼働済み9基含む)の原子力発電所が全て、2030年までにフルに稼働するのかというと、必ずしも楽観すべきではない。そうすると、太陽光発電や風力発電など再生エネルギーを強化しなければいけないが、それらをフル活用するだけでは達成できないため、原子力発電を使わざるを得ない。現実的には、2050年時でも何らかの形で原子力発電に頼らざるを得ないと考えている。それであれば、原子力発電所を動かすにあたって、リスクを最小化することを引き続き研究することになる。それには技術が必要である。輸入した技術ではなく、日本独自の、自信ある技術をもって縮原発、安全な廃炉を実現していく。原子力発電は、重要なエネルギー源だと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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