代表幹事の発言

櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年5月11日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事

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記者の質問に答える形で、緊急事態宣言の延長、ワクチン接種、日本経済団体連合会人事などについて発言があった。

Q : 緊急事態宣言による休業要請や時短要請で企業は疲弊している。緊急事態宣言が延長される中、明日から一部の百貨店で業務を拡大するということであり、堪えることが限界にきているのではないか。百貨店に限らず、納得感が薄らいでおり、企業も人々も行動抑制が効いていないのではないか。時間的に、内容的に、どのようなことが必要と考えるか。

櫻 田: 指摘のとおり、キーワードは納得感である。いろいろな意味で納得感を求めているが、3回目の緊急事態宣言となる中、納得感の欠如がピークに達しているのではないか。感情的なものに対して、感情的に説明しても無理である。何をしたのでどのような効果が出たのか、あるいは効果が出なかったのか。効果が出たものについてはいつまで続けるのかということを、数値、基準も含めて示すことが必要だ。民間的に言えば、PDCAサイクルが回っていない。それが、国民にフラストレーションが溜まる最大の要因である。ただ、過去について駄目だったと言っても仕方がない。これから政府には、どの指標がどうなれば緊急事態宣言を解除するかを示して欲しい。政府として目指す目標がないといけない。それがないと、国民はいい加減にしてくれということになるだろう。経済界としては、(影響は業界ごとに)まだら模様が続いており、百貨店を含めリアルな店舗を持つ小売業や飲食店、運輸業、旅行関連の業種は相変わらず厳しい。厳しいが、最初の緊急事態宣言に比べればそこまでひどくはない。これは緊急事態宣言の期間が短いからだろう。(政府から)支援をきめ細かくやってもらってはいるが、支援があるから仕方がないというレベルを超えつつある。今、何よりも政府に求めたいのは、どこまでいったら(緊急事態宣言を)やめるのか(を示すことだ)。国民が期待しているのはワクチンである。変異ウイルスが多数を占める中で、(接種が)遅くなればなるほど、今のワクチンの効果に疑問が生じる。いかに早くワクチンを打つのか。(政府には)いつ、誰に、何回(打つのか)というところまで示して欲しい。私自身は"若い高齢者"なので相当(接種時期は)遅いと思っていたが、既にワクチンのクーポンを受け取った。インターネットでの申込は(受付サイトが)パンク状態であった。コールセンターに電話したところ、運よく10分程度でつながったが、多くの高齢者は諦めてしまうという。やはり、ロジスティックスが非常にまずい。こうしたことを解決しないと、フラストレーションが集積する。大事なポイントは、はっきりと明確に目標を示すことである。そして、ワクチンである。国民100人当たりの(ワクチン接種状況に関する)データの海外比較を見ると、以前、(日本は主要国のうち)下から2番目だと申し上げたがこの状況は変わっていない。(5月初旬時点では)接種人数が100人当たり3.3人程度になったが、アメリカや中国に比べて圧倒的に少ない。また、「医療崩壊」という言葉が使われているが、その定義がない。我が国は、国民1,000人当たりの医師の数が少ない。他方、国民1,000人当たりのベッド数は世界でも多いという状況である。なぜ「崩壊」というのかというと、新型コロナウイルスの重症者用のベッド数が少ない、1,000人当たりの医療従事者の数が少ないからである。日本の医師数は人口1,000人当たりの数で、OECD35か国中28位である。人口1,000人当たりの医師数は、日本は2.5人、ドイツは4.3人、フランスは3.4人、イギリスは3.0人で、(日本は)圧倒的に少ない。こういったことが問題である。医療従事者が少なかったら注射はできない。(接種する担い手の確保にあたり)本当に歯科医しか注射できないのか。獣医でも注射できるのではないか。獣医がどんどん(接種を)すべきということではなく、対象者の了解が前提とは言え、非常事態、危機が起きているのであれば、現在のルールをどのように壊していくのかという議論が必要である。しかし、何かが壁になっていて進まない。医師の登録も県ごとになっており、移動することもままならない。発熱している患者は診療しないという医師もおり、それに対して今の法律では診察せよという指示ができない。そういった目に見えない壁があり、今の状態を作っているのだろう。私もいろいろと調べて分かってきたのであり、国民の皆さんは知らないことが多いのではないか。不都合な真実を明らかにして、それでも、みんなで乗り越えていこうというムードを作りあげないと、オリンピック(の開催)に向けて自信を持てないのではないか。

Q : ワクチン接種の加速について、企業や経済界として、場所、システム、打つ人(員)などに関して、(協力)出来そうなことはあるか。

櫻 田: ワクチンというとインフルエンザを思い浮かべるが、私たちを含め多くの企業では、職場での集団接種を既にやっている。医師に来てもらうか、企業内に診療所があればそこで数百人単位で打っている。インフルエンザワクチンにしか適用できないとは思えないので、そのルールが使えるのであれば、今回の新型コロナワクチンについても同様のことをやるべきだと思う。

Q : 昨日、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長の退任と十倉雅和次期会長の就任が発表された。中西会長は闘病を続けながら任にあたられ、志半ばでの退任となったが、中西会長への思い、十倉次期会長への期待を伺いたい。

櫻 田: 中西氏とは経団連の会長となられる前から10年近く意見交換をさせていただく機会もあり、尊敬をしていた。国士的な思いでこれまで経団連会長を務め、(闘病で)相当苦しい思いをされながらも、もう少し、もう少しと続けてこられたのだと思う。しかしながら志半ばで(の退任となり)、無念という気持ちであろう。もちろん続けていただきたい思いはあったが、命を懸けてまでということについては、私自身も思い悩んでいる。自分がそのような状況になったら(代表幹事の任を全うすることが)できるだろうかといえば、中西会長と同じように続けられる自信はない。それほど立派な方であったと思う。後任の十倉氏と面識はないが、報道を見ると立派な方で、(加えて)漫画が趣味とのことで私と似ているところもあり、(お会いするのを)楽しみにしている。新しい資本主義を目指していく中で、またSDGsやESG経営など新しい経済・社会のあり方を考えていく中で、国民や多くのステークホルダーから経済団体が果たすべき役割を問われている。この100年に一度の大きなテーマを突き付けられているという点で、私と同じ立場(となる方だ)。経済同友会と経団連は出自も性格も異なる。同じ目的であれば手を携え、役割が違うのであればそれをはっきりさせていく関係をつくっていきたいと思う。

Q : 明日以降、百貨店に対して国は時短営業を(要請し)、他方で大阪府や東京都では生活必需品以外は休業を求めている。百貨店としてもどうしたものかというところだろう。営業時間やフロアの拡大を行うという百貨店も増えている。国と都道府県の言っていることが違うという点について、企業側からはどのように見るか。

櫻 田: 法律の建付けとしては、最終判断、決定権は国にあると思う。国は、都道府県知事や首長の意向を踏まえて決定することになっている。そのやり方に則って、知事が国に要請、相談をした上で、国が認めたということだろう。したがって、国としては、今回の緊急事態宣言よりも厳しい形で各都道府県が判断することに反対することはないだろう。これはルールの話であり、形式論だが、重要なのはなぜかという点である。首長と百貨店や飲食店等の間でどのようなコミュニケーションがされているのかはわからない。納得はしないが致し方ないという状態になっているのであれば、私は首長の判断に委ねて良いのだろうと思う。私自身が飲食店などのトップと話が出来ていないので詳細はわからないが、それがない限りはもやもや感が取れないまま、納得感がないまま進んでいくことになり、フラストレーションが溜まる。クリアではないことに対して、クリアでないことをしていくと不満が溜まるばかりである。中国やアメリカ、そしてヨーロッパで、ワクチンにより(経済活動が)戻ってくる中で、日本だけがイライラ感(が募り)、新型コロナウイルスとの戦いに負けてしまったような感覚を持っているのは非常によろしくない。問題は、首長と百貨店、当該店舗の人たちがどの程度コミュニケーションを取っているかということに尽きるだろう。

Q : 河野太郎規制改革担当大臣から、経済団体に対して企業等でのワクチン接種の呼びかけを行っていくという発言があったが、実際の企業の現場ではどのような声が上がっているか。

櫻 田: 早くワクチン接種をしてくれといった企業現場からの声は私の耳には届いていない。(インフルエンザなど)既に他の予防接種は職場で行われている。また、健康診断と同時に(接種を)行うこともあり、さほどハードルは高くないだろうと思っている。国、企業側も説明をしないといけないと思う。もう一つのテーマとして、ワクチン接種後の休暇も議論になると思う。これについても、国難であり、特別な事情がないのであれば企業としては認めていくことになる。特に考慮しなければいけないのは、エッセンシャルワーカーの方々である。その人たちこそ、人手が足りない中で休まれると大変である。それにどのような支援の手を差し伸べられるかを意識したい。

Q : 4月16日実施の小池百合子都知事との意見交換でも話題になっていた、飲食店における感染対策の「山梨モデル」について、最近、関係省庁から都道府県知事宛に事務連絡があり、取組みを促すような政府の動きが報じられた。先日の小池都知事とのやり取りでは、かみあっていない印象を受けた。受け止めを聞きたい。

櫻 田: 残念ながら、あの後に都知事との意見交換や面談の場を設けられておらず、東京都が山梨モデルを積極的に受け入れているとは聞いていない。それにはいろいろな事情があるのだろう。(都道府県の)規模が違うので、同じようなことを実施するにはリソースが足りないということかもしれない。もはやどの都道府県にも言えるが、特にステージ4に当たるような都道府県について、どのような取組みにより、どのような効果があったのでその取組みを続ける、あるいは効果がなかったので続けないという、一対一対応とまでは言わないが、施策とその効果を具体的に示していかないといけない。「危機だ」など、不安をあおる言葉には国民も慣れてきてしまう。大事なのはファクトである。どのファクトに政府や自治体が注目しているのか、どの統計(データ)に注目していくのか、それはなぜなのか(を示してもらう必要がある)。エビデンスベースドの説明がないといけない。国会答弁を聞いていても、私たちはどうすればよいかわからない。単に家に居ろと言われてもわからない。不要不急の定義とは何か(も示されていない)。そろそろ限界だろう。ファクトをしっかりと数字で示す、目標の数字も出すこと(が大事だ)。そして、なんといってもワクチン接種をありとあらゆる方法を通じて進めること(が必要である)。接種は24時間対応してもよい(という考え方もある)。そこまでやるぞという意気込みを示せれば、日本国民は協力しようと考えるのではないか。

Q:(休館している)国立美術館や博物館に対して、国は明日にも再開の方針である一方、東京都は休館の継続を要請している。このように国と東京都との足並みの乱れが見受けられるが、これに関するお考えを伺いたい。

櫻 田: 大変失礼な言い方であるが、時間を無駄にしているように思う。国と東京都との対応でなぜそのような違いが出てくるのかということに関して、意思決定のプロセスを明確に示されたほうがよい。これは世界と比べて日本の典型的な課題である。曖昧なことが多く、「総合的に判断する」と言っても、それを分解していくとよくわからない。例えば新型コロナウイルス対策でも医療崩壊という曖昧な言葉を使うがその定義は明確にされていない。これを機に何としても変わっていかないといけない。


Q: 高齢者向けのワクチン接種が始まっているものの、予約の電話やインターネットもつながらず、直接会場に行けば長蛇の列というように、なかなかうまく進んでいない。一般の方が接種できるのは当分先となる見込みだ。このような状況を解決するためにも知恵を出さないといけない。コロナ禍も一年以上続いているが、何の検証もないまま日本は進んできた。このような状況に対する考えを伺いたい。

櫻 田: 本会としては、経済団体としてこれまで申し上げてきたことを大臣や知事など国や自治体に言い続けるしかない。この新型コロナウイルスの問題は日本の負け癖の一例であり、(国民が)危機感をもてなくなってしまった典型的な例だ。ちょうど一年前、パンデミックの様相を呈してきた時、日本は世界に比べると圧倒的に感染者数や死亡者数が少なかった。これを日本人の集団における責任感や清潔に対する意識の高さの結果だ、日本モデルであるとして、ある種の安心感や優越感に浸っていた。 しかし、当時、感染者数が増え苦しんでいたアメリカやイギリスはあっという間にワクチンを開発した。一方、日本は危機対応の意識が弱く、国内でワクチンを開発しようという意識も希薄であった。その結果、すべてが後手に回り、ワクチン接種では日本は負け組に入っている。政府はアクションが遅くなったことは率直に認め、これを反省の材料としてとらえるべきだと思う。新型コロナウイルスに限らず、成長政策や成長戦略はこういうところから出てこないといけない。まず、新型コロナウイルスを何とかするのが先で、財政や経済成長はその後だというのは間違っている。両方とも(同時に課題解決を)目指すのが最後に勝つ国になると思う。

Q:ワクチンの開発や接種の仕方、政府と自治体の連携にしても、さまざまな反省点を洗い出し、検証をしてそれを次に生かすのは政府がやるべきだと思うが、これに関する代表幹事の考えを伺いたい。

櫻 田: 最終的には政府が責任をもってやるべきだと思う。ただし、それをやるべきだと促すのは経済同友会としても当然やってよいと思っている。新型コロナウイルスに限らず、この国が成長していくにあたって何が足りないのか、その最大の反省材料をしっかり活かしていくためにも、本会として真剣に検証する価値があると考えている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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