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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年3月30日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス感染再拡大と対応策、東京五輪、日本の外交への期待、スエズ運河座礁事故の影響、新入社員への期待などについて発言があった。

Q : 再び新型コロナウイルス感染症が拡大している。緊急事態宣言を解除する時点で増加傾向にあったため、想像できた部分もあったが、吉村 洋文 大阪府知事は第4波に入ったとも述べている。櫻田代表幹事は前回の定例記者会見で、気持ちとしてはこれを最後にしていただきたいと発言されているが、緊急事態宣言の再発令まではいかないにしても、まん延防止等重点措置の適用も視野に入っている。改めて経済と(感染拡大防止策)の両立、(経済の)二番底の可能性について所見を伺いたい。

櫻田: (経済が)二番底に向かう可能性は極めて低いと考えている。(感染拡大を)コントロールできるかどうかという点について、この度(新設された)、まん延防止等重点措置は、(感染の)根源をピンポイントで狙い撃ちする趣旨であり、機動的かつできるだけ短期間に発動する(ことが可能である)。しかもその権限は、おそらく実態として(都道府県)知事に委ねられているため、機動的に使っていただきたいし、そうすれば経済に対する影響は少ないだろうと考えている。二番底の可能性が低い点について、日本の経営者の話を聞くと、今後の(景気回復の)期待は大きく上昇している。加えて、ファクトとして、米国の1.9兆ドルの経済対策(の規模)にさらに追加策が講じられる可能性があること、世界中の中央銀行が(金融)緩和措置を継続すること、それをサポートする形で日本銀行も継続性と機動性をキーワードに三本の対策を出したこと、中国(経済)も回復していること等を踏まえれば、二番底の可能性は極めて低いと考えている。

Q : 東京五輪の聖火リレーが始まった。コロナ禍の五輪開催について、以前も(開催に向けて)チャレンジすることが重要という話があったが、国民の意見も分かれ、コロナ禍で感染者が増えている中で、改めて五輪を開く意義、期待について伺いたい。加えて、五輪開催の条件について、今は(東京の新規感染者数が)300~400人台だが、1,000人になったり、緊急事態宣言下になったりすると国民も祝福できない可能性もある。開催の条件と言わずとも、どのような状況であれば、納得して開催できるとお考えか。

櫻田: 各都道府県や全国の新規感染者数が6つの基準に照らし、どこまでが開催可能で、どこまでが中止かという点について、客観的にコメントできる知見はない。少なくともはっきりしていることは、3月20日の段階で海外からの一般観客やボランティアの受け入れを取りやめたということになれば、基本的には無観客開催も視野に入っており、万が一、無観客で開催するにしても、長い歴史の中で初めて新型コロナウイルス感染症と闘い、打ち克つべくオリンピックを開催した(ことになる)。ただし、無観客開催ではあるが、例えばVR(Virtual Reality)や選手の一挙手一投足を感激するようなかたちで映る技術等のデジタル技術を活用する(ことも一案である)。橋本聖子 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長がご挨拶に来た際、今大会に限らずこれまで多くのオリンピック・パラリンピックでは予選が全く放映されなかったが、家族や友人からすれば、自分が応援している選手が予選でどのくらい頑張ったか見たいといった声もあるため、無観客で開催するのであれば、デジタル技術を使い予選の試合風景も見られるような取り組みをしたいとおっしゃっていた。希望にとどまらず何としても実現していただきたい。経済界としても可能な限り応援したいと申し上げた。無観客ならではというかたちでもって、世界で初めてデジタルオリンピックを成功させた国として、世界に誇れるため、ぜひご尽力いただきたい。

Q : 新型コロナウイルス第4波が言われている中で、Go Toキャンペーンが再開されず、また五輪の海外客の受入れを見送るということで、運輸・観光業界の回復が難航している。これらの業種を回復基調に乗せるために政府や地方自治体に望む施策があれば伺いたい。

櫻田: 新型コロナウイルス関連の政府予算は、2020年度は73兆円が計上され、2021年度は(2020年度からの繰り越しの18兆円と21年度当初予算に計上する予備費5兆円をあわせ)23兆円が手当されており、経済的な支援ができる。今般、中小規模だけでなく、中堅規模の飲食事業者も補償対象となった。こうした支援を活用していけば、まん延防止等重点措置含め、二番底にはならないと思う。Go Toキャンペーンは悩みどころだ。Go Toキャンペーンを実施した結果、感染者が増加したという事実はある。このゴールデンウイークに向けて、(Go Toキャンペーンを)あえて打って出るというのは、制御可能な状況をコントロールできなくするリスクがあるため、慎重に考えた方がよい。今の対策を打っていけば効果は出る。1点、あえて苦言を呈するようだが、数十兆円単位のお金が新型コロナウイルス対策に使われている。これらの多くは赤字国債から拠出されている。赤字国債は、将来の世代からの借金とも言い換えられる。将来の納税者の貴重なお金を使って新型コロナウイルス退治をしようということだ。政府には、使用した額や効果、期間などの説明責任があり、説明できる準備をしていただきたい。とてつもない金額を使っており、2021年度の予算106兆円のうち、国債に依存している比率が約41%と多くが借金だ。経済同友会としては、忘れてはいけないとあえて申し上げたい。

Q : 菅首相は4月に訪米を控えており、菅外交が本格化する。ウイグル問題やミャンマー情勢も課題になってくると予想される。経済界としても難しい問題だが、日本政府はどのような態度を表明すべき、またどのようなスタンスで臨むべきと考えるか。

櫻田: まず、高く評価したい点は、バイデン米大統領が初めて対面で会うトップが日本であることだ。両者にとって大変貴重な機会と思う。その機会を利用して何をするかが大事だ。外交、地政学関連で申し上げれば、米中、ミャンマー、北朝鮮、日中、日韓とあらゆるところに地政学的なコンフリクトをはらんでいる。この中で基本原則としては、安倍外交がそうであったように、民主主義という価値観を共有する国はしっかりと手を携えていることを示す必要がある。これは理念、価値観であるため、どんなに声を大きくしてもいいだろう。この中における日本の役割は少し違ってくる。同じ目的、すなわち民主主義の価値観を持つ国を増やす、それに向けて非民主主義国に対して働きかけることは一致すべきことだ。このための行動や役割分担に(国ごとの)違いがある。米国と中国、米国とミャンマーは、対立している状態で、今後も続くだろうし、それに見合った制裁もあるだろう。一番いけないのはコミュニケーションがなくなって、(偶発的な)事故が起きた結果、戦争につながることだ。誰かがコミュニケーションを両国の間でとる必要がある。日本は、中国、とりわけミャンマーとはクーデターを起こした国軍ともパイプがある。菅首相がバイデン米大統領との会談内容すべてをメディアに公表することはできないだろう。しかし、目指すところと日本の役割についてトップ同士で合意し、行動が違っても目指すところが同じだとわかるようなトップ外交を目指していただきたいし、G7に対しても同様だ。日本ならではの外交の役割は十分ある。

Q : (新型コロナウイルス感染症に関して)第4波への懸念がある一方、自粛疲れが広がっているとの声もある。緊急事態宣言が解除された中、感染対策に向けた効果的な呼びかけ方法について、代表幹事の所感を伺いたい。

櫻田: 非常に重要な点である。昨日の西村 康稔 経済再生担当大臣とのWEB会議でも申し上げたが、「いつかは元に戻る」という希望は捨て、「新しい普通」に向かっていくべきである。政府はリモートワーク、三密回避を求め続けるのではなく、新しい普通での生活様式を国民が理解でき、それは決して悪いものでないと示すことができると思っている。それは抽象的な説明では分かりにくいため、動画等を活用し、新しい普通のあり方について、リモートワークやワーケーションによって、またエッセンシャルワーカーの方も、デジタルの力で実現できる新しい普通に向かって、国民も行動を変えていきましょうと発信すべきである。我慢してこらえるフェーズは終わったと考えており、積極的に変わることが、結果として感染予防につながるとのフェーズに切り替えていくべきである。

Q : 既に経済界ではリモートワーク推進への呼びかけが行われているが、新たに経済界として出来ることはあるのか。

櫻田: 持論でもあるが、マクロの政策で何かを行うだけでは、あまり多くの実効性は期待できないと考えている。その意味では、いま経済界としてリモートワークを進めましょう、新しい普通に向けて行動変容しましょうと掲げるだけでは、何も変わらないと考えている。リモートワークが定着していない所や、リモートワークによってストレスが発生している所では、その原因を各々が理解しているはずである。「リモートワークしましょう、状況を適宜報告してください」というだけでは駄目であり、例えば、リモートワーク期間で行うべき業務を明確化し、その成果をフェアに評価するということを皆で合意する。私は「管理職教育」と呼んでいるが、リモートワークを巧みにマネージできる管理職を多く育てることが必要である。もう1点は、社員側の課題でもあるが、評価の観点を、何時間かかったという旧来のインプット主義からアウトプット主義に改め、どのような成果に対してどのような評価をするかという観点へと、人事評価制度を改めることである。3つ目はダイバーシティであり、これには場所のダイバーシティがあってもよいと考えている。会社に行って働く時間を、自宅や別荘、ホテル等で働いてはならないというのは全くナンセンスであり、働く場所のダイバーシティを進めるべきである。新しい普通に向けて、前向きに取り組んでいく事項は数多くあり、具体的な知恵を各企業が出し、そのような企業が評価される世の中になればと考えている。

Q : 昨日二階 俊博 自由民主党幹事長が解散総選挙に言及したことで、東京五輪前、さらには4月末から5月にかけて、解散総選挙が行われるのではないかとの声も出ている。この点について経済界としての考えを伺いたい。また、厚生労働省の職員が、大人数で深夜までアルコールを伴う会食を行っていたとの報道があった。これに関する所感も伺いたい。

櫻田: 二階幹事長のご発言については、政局という意味では、私には知識も情報もないためコメントできる立場にない。一方で経済合理的性の観点では、信を問うべき事項があるかも含め、何を目的としてご発言されたのかは私には分からない。菅首相は仕事をしたいとご発言されており、新年度予算を成立させて、予算を使って経済や国民の安全、外交を行う攻めの体制を整えた、まさにその矢先のタイミングにおいて、解散の有無は本来議論すべきものではないと国民に捉えられるのではないか。また議論したとしても大きな価値は見出されないのではないかと考えている。2つ目のご質問については、コメントに値しない問題である。23人と人数も多く、感染予防を呼びかける立場でもある。また、時短要請に応じていない飲食店を探して開催したとされる点についても、(厚生労働省は)深刻に考えるべきではないか。

Q : スエズ運河で日本の企業が所有する船が座礁して航路が6日間程度封鎖された。今日の未明から動き始めたようだが、それでも航路の渋滞の解消までには3日程度を要すると言われている。経済や日本企業に与える影響、今後の対策について伺いたい。

櫻田: スエズ運河をどのように位置付けるかということが重要で、私は戦略的な運河として理解している。(再発防止のためには)掘削作業や工事を行い、広く深くすることが考えられるが、現状あの状態にあるということ自体に戦略的、地政学的な意味があるとすると、今後スエズ運河をさらに大きく太くするべきだという議論が出てくるかどうか分からない。(経済への影響では)原油の先物価格が数%上昇する等の反応を見せた。欧州での新型コロナウイルス感染症拡大による経済の停滞を恐れて下がったが、結果として(原油先物価格は)元に戻っており、現段階では日本経済に大きな影響が出ているとは聞いていない。再発防止策を含め、スエズ運河の位置づけについて、今回の民間のコンテナ船事故を契機に関係国や国際社会における議論に繋がるとは思わない。

Q : 東日本大震災が起きた後、復興特別税が設定された。新型コロナウイルス復興税として、課税の可能性があるのではないか。昨日の西村大臣とのオンライン会談でも、代表幹事はコロナ関連予算の執行について説明してほしいと伝えられた。新たな税金を設ける動きが出るとすれば、どのようにお考えになるか。また、衆議院解散の可能性については、争点のない選挙では意味がない。新しい普通の生活は厳しいと思う。リアルの方がいいという風潮はあり、その先にオリンピックがあると思う。リアルな生活に戻すには何をすべきか。新たなリモート生活もよいが、元に戻りたいという思いが多くあるのではないか。

櫻田: 2つに分けて考えたい。1つは、リアルな生活に戻りたいという気持ちは、私自身も含めて思っていることだ。これはまさにワクチンに期待したいところだ。(ワクチン接種は)徐々にスケジュール化されつつある。ワクチンによって(新型コロナウイルス感染症が)コントロール可能となれば、リアルの生活ができる。リアルには、楽しいリアルと普通のリアルがある。楽しいリアルには、野球、相撲、コンサート、観劇等がある。楽しいリアルはコントロール可能な範囲で、今回のコロナ禍で得られた知見に従い、手を消毒する、マスクをすることは、今後とも続けるとよい。例えば新型コロナウイルス陰性の電子証明書を持っている人は、入れるようにすればよい。リアルな生活では、楽しいリアルは大いに行えばよい。大都会で、満員電車は楽しいか、車のラッシュは楽しいかというのは、(聞くまでもなく)ありえない話だ。こういったことを回避するために、新しい働き方をしながら、リアルのエンタテインメントを(楽しむこと等を)全部ひっくるめて、新しい普通だと思う。衆議院解散については、先ほど申したように、何が争点なのかというところについて、もっと他にやることがあるのではないかというのが率直な意見だ。与党にも、そのような理解をしていただければと思う。コロナに使っただけでなく、この2年間で100兆円を超える新規国債を発行した。今やるべきか別として、いずれやらなければいけないことは、景気がある程度正常に戻った時には、(財政再建の議論を行わなくてはならないと思う)。これにより、財政赤字はさらに膨らみ、2025年の基礎的財政収支(黒字化)の目標は、まだ旗を降ろしてこそいないが、現実的には難しいと思う。今回100年に一度のことが起きたので、そのために必要な出費をしたことは受け入れ、そのうえで基礎的財政収支黒字を達成することは、絶対に必要なことだ。経済同友会としては議論を開始し、早ければ新年度第1四半期の中で、新しいモデルを提言していきたいと思う。消費税17%ということを申し上げてきたが、今後どうなるか含めて試算している。復興税に近いものとして、もしかしたら時限立法的な税というのは検討の俎上に上がってきてもおかしくないと思う。ただ、それが、「いつ」「いくら」になるかということは、軽々に申し上げられない。可能性としては十分にあるだろう。

Q : 明後日から新年度が始まる。4月1日の入社式はオンライン開催、リアル開催の企業があるようだ。雇用はメンバーシップ型から、ジョブ型にシフトしようという大きな流れがあると思う。企業側が新卒の学生に求めることは、どういったことに変わってきているか。

櫻田: (新入社員に求める)基本的な特性・強みは、あまり変っていない。私自身、グループ全体の入社式で話してきているのは、激変、VUCAの時代なので、会社に染まる前に新鮮な目でもって見て、大いに発信して欲しいということだ。それから、ダイバーシティ&インクルージョンは大きな題目である。日々の生活でも、それを感じるように、我々経営陣も、みなさんも心がけてほしい。何が言いたいかというと、男、女、あるいは日本人とそうでない人、年齢が上の人、下の人、そういう人が全部集まって、みんなが違う、つまり異質だからこそ新しいことが生まれるという話は、私が入社した40年前に比べ、はるかに普通に受け入れられている。若い人には期待しているし、期待していることをそのまま伝えればよいのではないか。「今の若い者は」ということを言う必要は、全くないと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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