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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年3月2日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、緊急事態宣言解除のタイミング、女性活躍、みずほ銀行システム障害、ミャンマー情勢、雇用、官庁接待問題、東日本大震災から10年などについて発言があった。

Q : 緊急事態宣言の解除について伺いたい。2月末に6府県で緊急事態宣言が解除された。1都3県についても3月7日での宣言解除を目指している。ただ、年度替わりで人が集まる機会が増える時期であり、国民へのワクチン接種にはまだ時間がかかる。(感染が)再拡大することがあれば、五輪開催などにも強く影響するだろう。宣言解除のタイミングについて代表幹事としての考えを伺いたい。

櫻田: 難しい判断であるのは間違いない。経済と命の両方を守らなければならないなかで、一番情報の集中するところの司令塔のトップに判断を任せることは合理的であり、当然のことだ。その立場にいる人が判断することはよいことだが、(より)現場に近い知事や首長等が見通しとともに正しい情報提供(を行うこと)が前提になる。これらが機能すると期待した上で、菅首相に判断を任せるのは合理的だ。一方、経済という観点でみると、一言で申し上げれば、まだら模様だ。経済同友会の会員から意見を聞いたところ、まだら模様であることが確認できた。業種ごとにばらつきがある。史上最高益を出すような業界がある一方で、危ぶまれるような業界もあるだけでなく、同一業界内でも業績の良し悪しが分かれている。全体としては、底を打った感はある。バイデン米大統領の200兆円規模の経済対策もあり、センチメント(市場心理)が大きく変わったこともあるが、米国、中国(の経済回復)にけん引されるところもあり、全体として日本経済は底を打ったと思う。また、(企業業績の)先行指標でもある新卒採用見込みについても、(調査によると)ほとんどの企業が昨年並み、昨年以上の企業が2~3割と回答していることを鑑みると、全体としてのセンチメントは回復しつつあり、二番底はないだろう。これまでに難局があり、国民の不満もあったかもしれないが、新型コロナウイルス対策はここまできた。慌てて一気呵成に門を開けることはしなくても、経済自体は少しずつ回復していくのではないか。

Q : 「慌てて門を開ける必要はない」というのは、慌てて緊急事態宣言を解除しなくてよいという主旨か。

櫻田: その通りだ。宣言解除が3月7日かそれ以降か、私は判断できる立場にないが、少なくとも経済を心配して直ちに解除すべきということではなく、新型コロナウイルスに対するコントロールの見通しが立てば、今の勢いを失うことなく(経済は)伸びていけるのではないか。逆も然りで、新たに変異株が発生しており、(これによって)不安が蔓延し、見通しが危ぶまれると、消費活動に影響する。このままじっくりと坂を上手に登っていくことが重要だ。

Q : 前回2月16日の会見での「女性側にも全く原因がない訳でもない」という発言の主旨について詳しく伺いたい。

櫻田: 私の立場は経済同友会の代表幹事としてあるべき姿を説明するだけでなく、経営者の一人として実現、実行に重点を置いて、あるいは責任をもって話をしないといけないと思っている。私も含めて多くの経営者は、ダイバーシティ&インクルージョンを進めるために、あの手この手と必死になって取り組んでいる。CSRや社会的責任の次元を超えていて、企業が生き残るため、イノベーションを起こし成長していくためには、ダイバーシティ&インクルージョンは必須である。これを戦略に組み込んで、具体的な形でもって数値的な目標も含めて落とし込んでいかないといけないということを(前回の会見で)申し上げた。その(具体的に落とし込む)過程において、私自身の経験として、多くの有能な社内外の女性と話をした。チャンスやオファーが与えられたらどうするかという質問に対して、積極的に取りにいきたいという方もいたが、中には能力も気力もあるにも関わらず、躊躇、逡巡されている方もいた。逡巡される原因の多くは制度の整備や、制度を運用する文化をつくる企業側にあるが、一部には自信がないだけでなく、責任あるポジションに就くことにより、却って自由闊達な自分のやりたいことができなくなるという思いがあり、悩んでいる方もいた。男性にも同様の悩みを持つ方はいる。相対的な割合として、女性の方がまだ多いことを申し上げたかった。ダイバーシティ&インクルージョンは企業の存続、成長の必須要件であり、べき論で語るものではない。どのようにすれば実現できるか、結果で示すことが経営者の責務である。チャンスがあるにも関わらず、逡巡されている方がいれば、どうすればその逡巡や悩みの解決に役立てるか、具体的に取り組んでいかなければならない。自分としては、過去そのように取り組んできたつもりだ。

Q : みずほ銀行ATMでシステム障害が発生し、キャッシュカードや通帳等が戻らないという事態が発生した。大規模な障害は3度目とのことであるが、この点に関して代表幹事の所感を伺いたい。

櫻田: 個社の問題であり、コメントする立場ではないが、お客様を巻き込むシステム障害が問題であることは間違いない。(今回のシステム障害が)初めてではない点も、おそらく経営陣は深刻にとらえていると思う。第一に、なぜ障害が発生したのか、今回の直接的原因のみならず、過去のシステム統合におけるプロセス等を含め、様々な検証をされると思っている。2点目は当然であるが、再発防止である。具体的に不便を被ったお客様に対して、どのような形で対応していくか、おそらくこれから明確に、計画等を説明されるのではないか。

Q : みずほ銀行は分割・合併の末にできた企業であり、そういった弊害を指摘する声もある。代表幹事のSOMPOホールディングスも同様と思うが、企業統合の難しさについて所感を伺いたい。

櫻田: 日本のみならず、合併によるメリットを大きく出すうえで、システム統合という問題は必ず生じるものである。この問題に対し、「足して2で割る」型の統合をしてはならないのは当然であるが、より優れている方に寄せるだけではなく、よりリスクの少ない方に一旦寄せ、システム統合後に改善・改修に取り組む方法が一般的である。各社とも、紆余曲折を経て最適な方法を取ってきたと思うが、(みずほ銀行における)当初のトラブルは、どちらといえば片寄せではない方法をとった結果の障害であると考えている。

Q : みずほ銀行ATMのシステム障害に関連し、障害発生時の顧客対応が適切であったか伺いたい。キャッシュカードがATMに吸い込まれてしまったとのお客様センターへの電話が、なかなか繋がらない事例が数多くあった。みずほ銀行は当初、通常の休日体制で処理しようとしたが追い付かず、結局は応援部隊を入れたと聞いている。トラブル発生時の初動に問題があったと言われているが、企業対応として、どのような方法が適切であったと考えているか。また、今回の事例から生かせることに関して、所感を伺いたい。

櫻田: この問題を一般的な危機管理の問題へと、また危機管理に対する初動問題に一般化してしまうと、焦点がぼけてしまうのではないか。SOMPOホールディングスの例では、地震発生時やシステム障害により、一部の保険金支払いや介護事業における居住者へのサービスに支障が生じた際において、どのようなルートでトップに(報告が)上がってくるかは非常に重要である。その際のトップの判断は、個社により違いはあるが、一般論としては十分以上の対応を指示することが重要である。すなわち、初動の情報がいかにトップに早く上がるか、次にトップがリスクサイドに立った対応を指示できるかということが重要である。また、(今回のシステム障害に関して)対応できる要員が休日のためいなかった、コールセンターの数が足りなかった、あるいは新型コロナウイルス感染症対応でリモートワークをしている方が多く、十分に機能を発揮できなかった、などの要因も十分考えられる。適切にファクトに基づきコメントすべきであるが、私はそうした情報を持ち合わせておらず、十分(対策を)講じてきたにもかかわらず、(障害が)発生したのであれば、このような背景もあるのではと申し上げた次第であり、あくまでも推測の域を出ない点にご留意いただきたい。

Q : ミャンマー情勢に関して、以前に伺った際にはデモもそこまで大規模ではなく、死傷者も出ていなかったが、その後は治安当局との衝突も見られ、死傷者も発生している。国際情勢としても、安保理でミャンマー情勢に関する具体的な議論が始まり、アメリカも制裁に向けて動き出している状況である。代表幹事は今のミャンマー情勢をどう考えているか。また、日本企業は安全対策を確保しながら情勢を注視するというのが前回の状況であったが、事態の緊迫化をふまえ、ミャンマービジネスを見直すフェーズとなっているか、所感を伺いたい。

櫻田: 私の知る範囲において、今回(のクーデター)を直接的原因として、ミャンマーからの撤退を決断した企業は聞いていない。ただ、以前よりビジネスの将来が芳しくなく、きっかけを探していた企業については、これを機に(撤退)という所はあろうかと思う。一昨日、ヤンゴンの(SOMPOホールディングス)現地企業トップと話をしたが、現在デモの頻度は週に1、2回程度で大規模なものが発生しており、場所は4、5か所に固まっているとのことである。1か所が数千人規模であり、4、5か所の合計が数万人規模となることもあり、これに対して国軍がかなりの勢いで制圧を試みていることは間違いない。(話をした現地企業トップ)本人は見たことはないそうであるが、実際にニュースで報道されている通り、治安当局が催涙弾や実弾を使用しているという話もある。いずれにしても、デモに参加していない従業員は在宅勤務としており、在宅している限り危険はないとのことであった。日系企業については、全体の数字はつかめていないが、ヤンゴンに日本人は約1,000人程度とされており、そのなかで帰国したとされる人数はそう多くなく、100名を超えていないとの観測をしており、直ちにミャンマービジネスから撤退するという話は聞いていない。また、マクロベースで情勢をみると、日本は国軍とも直接話ができる立場の唯一の民主主義(先進)国であり、この立場は極めて貴重と考えている。この立場を上手く戦略的に活用し、一方的な制裁に踏み切るのではなく、メディエーター(仲介者)として、戦略的な役割を果たしていくべきと期待している。

Q :  役割を与えた時に断るケースが女性だけでなく男性にもみられるという話があった。強制することはできないが、ダイバーシティを進めていくうえでは何が必要だと考えるか。

櫻田: その人に求められているミッションと期待する役割について、どの程度具体的に伝えることができるかが重要である。テレワーク環境下で、男女問わず、上司と部下の関係においてハラスメントが起きていると聞くが、テレワークを導入する前に、ミッションといつまでに何を提出するかという(具体的な目標)成果が明確に伝わっていれば、不安や不満は出にくい。(自宅での仕事ぶりについて)監視・監督されるのではなく、アウトプットで評価されるため、ハラスメントが起きにくいということだ。上司から「最近どうしているか」「不安がないか」のようなカウンセリングをされると、受け手にとっては「余計なお世話」を超えてしまう。上司が男性、部下が女性であれば、なおさらハラスメントと感じやすくなる。大事なことはミッションと期待される役割を具体的に伝え、なぜそれらが必要なのか、会社や部署の目標とどう結びついているかを明確に示す必要がある。各社とも管理者教育を徹底的に行う中で、多くの管理職が(コミュニケーションの)間違いに気づいていることだろう。

Q :  2月の有効求人倍率は1.10倍と公表された。細かく分析すると緊急事態宣言下で求職者がそもそも少ないということも要因かと思う。都道府県別にみると、東京都では0.91倍だった。水面下では雇用が悪化しているようにも見えるが、雇用の現状と今後の見通しについて伺いたい。

櫻田: 昨日の経済情勢調査会でも議論されたが、(コロナ禍以前の人手不足状況と比べて)全体として雇用のひっ迫感はなくなり(安定し)つつあるようだ。背景には、派遣労働者の処遇改善が法改正により実現したことに加え、雇用を守るという方針の下、失業者が減少したことが考えられる。また、企業ごとに異なるので一般論としては申し上げられないが、社内失業状態が増えている、つまりコロナ禍によりスキルがミスマッチであっても、雇用の流動化が起きず、社内に人材がとどまっているという状況が一部では増えている。その人達がどのように自分に相応しい、あるいは自分が望む職場に移ることができるかどうかは、コロナ禍が落ち着いた後に起きる問題であり、(動向を)注視したい。現在はカンフル剤が打たれた状態であり、真の症状が見えておらず、経営者は雇用の流動化を起こすための対応を考えておかなければならないと思う。

Q : ファイザー社のワクチンについてお伺いしたい。河野担当大臣が外交的な努力をされていると思うが、なぜワクチンが日本に入ってくるのが遅いのか。ワクチンはいずれ日本に入ってくるとは思うが、時間的な問題で東京五輪の開催に関係してくるのではないかと思うが、どうお考えか。

櫻田: (日本へのワクチン供給が遅い)理由については、EUが自国を優先する方向になっているなど、いろいろな憶測が出ている。私は詳しく知らないので、なぜ(ワクチンが)入ってこないかについて、コメントする立場にない。2点目については、おっしゃる通りで、東京五輪の開催をどのような方向にするのか、無観客にするのか、外国人(観客の入国)をどうするのか、3月3日の5者会談で議論されていくのではないか。ワクチンは極めて重要だと思う。その点について、政府、東京都は十分わかっているだろうし、一生懸命やってもらうしかない。私が最近良いと思っているのは、実態について、タイムリーかつ分かりやすい形で報道されていることだ。政府、特に河野大臣のお話しについては、わかりやすいと思っており、是非続けていただきたい。その積み重ねで国民は「安心して良い」となり、次の積極的な行動に移れることになるので、非常に重要である。引き続き、分かりやすいタイムリーな報道を続けていただきたい。なぜ(ワクチンが日本に)入ってこないのか、それは河野大臣に聞いていただいた方が良いだろう。

Q : 昨日、山田真貴子内閣広報官が辞職した。かつて、金融機関が大蔵省に接待攻勢をかけ、問題になったことがある。今回は総務省、農林水産省の問題が別々に出てきているが、どのようにご覧になるか。

櫻田: 推測ということでしか申し上げられない。事実としては、あってはならないことが起きてしまった。世界各国どこを見ても、先進国はこの種の問題について、厳格に対応していることは間違いない。今回についても、そのように対応すべきだと思う。なぜまた起きたのかということについては、恐らく使命を誤解しているところがあるのだろうと思う。使命というのは、各省庁にはそれぞれの使命があるが、国家公務員としての使命もある。各省庁で縦割りで文化が異なっても、国家公務員としての使命に違いはないはずで、そこで誤解、勘違いがあるのではないか。釈迦に説法のようなことはしないが、国家公務員としての使命の教育を若い時からやっていくことが必要なのではないかと思う。いつの間にか感度が鈍ってしまうこともあると思う。一方で、経済界から申し上げるとすると、ありとあらゆる人的交流、話し合い、会食を断ってしまうことはかえって危険だと思う。現場で何が起きているかをしっかり知ることは、国家公務員に限らず、官僚の大変大事な役割である。民間としてもルールをわきまえたうえで、現場で何が起きているか、ミクロとマクロの実態のギャップを作らせない、埋めるために何が必要か伝えることは、必要だ。その道を断ち、押さえつける、極端に言うと、角を矯めて牛を殺すような、厳しいやり方を何でもやれば良いということではない。その両方のバランス(が必要)だ。ただ、今回のケースは利害関係者との件であるので、擁護することは難しく、あってはならないことだと思う。

Q :  経済の情勢からすれば、緊急事態宣言解除は遅らせても良いのではという発言があった。外食産業はかなり厳しい状況が続いており、緊急事態宣言を解除してほしいという声がある。財界トップとして、外食業界への配慮をどう考えるか。

櫻田: むしろ逆で、(緊急事態宣言解除を)遅らせるのはやむを得ないということを申し上げたのではない。拙速に解除した結果、(感染が拡大し)また元に戻ってしまうのでは、本当に経済が二番底に入りますよということを申し上げた。中堅中小企業の現場の状況までつかんでいるのは、(自治体の)首長、知事であるので、状況をよく聞いた上で、全体を見ている人が判断するのが良い。したがって、遅らせるのが良い、解除した方が良いというのは、今私の立場で申し上げるべきではない。一番申し上げたかったのは、経済は今の状況でいけば、二番底に沈まないはずだ。しかし、中堅中小企業・飲食業含め、業態・業種により、きわめてばらつきがある。そこについて、一番状況をよく知っている人が(必要な支援等について)判断すべきだということを申し上げている。私は、全体を見ながら、早く解除しても良いのではないか、遅らせるべきだと申し上げる立場にない。

Q :  (緊急事態宣言下における、大企業と中堅中小企業の)格差が問題になっている。中堅中小企業については、知事が判断することであり、経済界としては申し上げることはないということか。

櫻田: そうではなく、全ての業界や企業の規模を問わず、一律の策はとれないことをまず申し上げたい。したがって、その地域、業態、規模によって、個別の対応をすべきだということは、以前から明らかだ。既に政府はいろいろな形で、財政出動し、支援金を給付してきたのもその一つだと思う。質問の趣旨は、今回の緊急事態宣言を延長すべきかどうかということだ。今慌てて解除しなくても経済が二番底に行く状態ではない。むしろ、(感染が拡大して)元に戻ってしまう方が、リスクが大きいと思うと申し上げた。それとは別に、飲食店を中心に、特に中堅中小の飲食店について、四苦八苦の状況にあるだけでなく、店舗の閉鎖まで含め、悩んでいるところが多いことは存じ上げている。そこに対する支援というのは、一律に緊急事態宣言を解除するとか、時短制限を緩和することで救われるわけではない。今まさに政府が実施している個別の支援策を、工夫する方法しかないと思う。個別の工夫の中には、恐らく必要なところに、必要な資金を早く届けるという点において、ロジスティクス、デジタルの活用を含め、分かりやすく、簡単な申請方法を含めて、検討されるべきだと申し上げている。緊急事態宣言解除(見送り)イコール中小飲食店が救われないというふうに、短絡的に結び付けられると、コメントとして難しくなってしまう。(一連の問題は)そもそも非常に難しく、簡単に説明することができない。

Q : 東日本大震災から3月11日で10年となる。経済同友会として今までいろいろなことをしてきたと思うが、これまでの10年を振り返りつつ、これからの10年にどういったものが必要か伺いたい。また、(震災の記憶の)風化について、風化はよくないことであるのか、風評被害を受けている方からすると風化するべきという声もあるかと思うが、どのようにお考えか。

櫻田: これまでの10年をファクトだけで振り返ると、例えば産業は、岩手、宮城、福島とも製造品の出荷額だけで見ると、震災前を越えているため復興していると言える。それから、農地は94%で再開可能、水産加工は97%で業務が再開されているが、売上高の水準でいうと、農業、水産加工ともに22%までしか戻っていない。一律には言えないがまだら模様である。人口については、岩手県は比較的(人口減少が)少なく、震災前から15%減、宮城県も0.6%減であるが、地域別に見ると女川町では4割も減っており、南三陸町では35%減っている等々の問題がある。つまり、10年間経過して、上手くいったところもあるし、依然として戻っていないところもある。現地の状況を見ながら、どこにどのような経済復興や産業を興せばいいのかについては、今後も引き続き考えていくが、例えば会津若松のように全く新しいビジネスモデル、町のモデルをつくって再生しているところは、未来志向で変わってきている1つの例として捉えている。元通りに戻ることがいいのか、別の形で戻ることいいのか、考えなくてはならない。つい先日マグニチュード7.3、震度6強の地震があった。あれが実は東日本大震災の余震であるということを考えると、(大地震が)いつ来るか分からないということが再度思い起こされた。各企業においてはBCP、国民は日頃から防災策、避難対策について検討するきっかけにしなければならない。首都直下地震、南海トラフと次から次に発生してくる可能性もある。(震災の記憶の)風化という点でいくと、東日本大震災の後は、サプライチェーンの再構築ということで日本の各企業は苦労した。それが新型コロナウイルスの結果、どれぐらい改善していたかというとそうでもなかったことも分かったわけである。時が立つと風化するということはあるため、各企業はリスク管理シナリオの中に、常にそういったものを含めていくことを怠らないようにすることが大事である。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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