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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年2月16日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、ワクチン接種、日経平均株価の上昇、女性活躍、賃上げモメンタム、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長選出、震災復興支援、カーボンプライシング、WTO新事務局長決定、ミャンマー情勢などについて発言があった。

Q : 明日17日から日本でも米ファイザー製の新型コロナウイルスのワクチン接種が始まる。妊婦を除く16歳以上の全国民に対し、接種の努力義務を課す。経済界として、積極的にワクチン接種を促すようなアクションを行う予定はあるか。


櫻田: 現時点で、経済同友会として組織的に論議して会員に(接種を促す)ということは考えていないが、(ワクチン接種は)大変結構なことだというのは一般的に間違いない。ただ、強制はできないだろう。自身の判断、自己責任というと(ワクチン接種が)怖いことのように映るが、基本的には前向きに捉えていただき、接種していただくよう(促すことは)言ってもいいのではないか。声明を発表するまでの事案とは思わないし、本当に心配な方は個別に窓口に相談されるだろう。私自身は、1日でも早く積極的に接種したいと考えている。

Q : 昨日15日、日経平均株価が1990年8月以来、30年6か月ぶりに3万円を超えた。2020年10~12月のGDPが市場予想よりも上回り、コロナ禍からの経済回復への期待が高まっていることが背景にある。金融緩和マネーの流入によるもので、実体経済を反映していないとの指摘もあり、高値への警戒感もある。この株価をどのようにみるか伺いたい。

櫻田: 株式相場は先取りをして、経済が底打ちした時に(株価が)上昇するという先行市場の性格がある。今回の第3四半期(20年10~12月)のGDPが予想より良かったことで、第4四半期もさほど悪化しないという期待や、統計上、平均としてはマイナスだが、コロナ禍でも力強く経営して業績を伸ばしている企業もみえている。反対に、非常に苦労されている企業は、業界的にも特定できる、仕方ないようなところがあり、(業績の良し悪しの)原因が明確になってきたことで、もやもや感が晴れてきた。加えて、バイデン米大統領が述べられている通り、すでに表明された190兆円(の経済対策)以外のプラスアルファ(の経済対策)が出てくる可能性がある。欧州においても、EUの中で一致して経済を支える、雇用を守る対策として財政出動が必要という意見が大半を占めていること等々ひっくるめて、(経済が)底を打って回復していくという期待があるのは間違いない。おそらく、これに加えて、この(コロナ禍の)間、1年以上にわたって資金供給が続き、消費だけでなく貯蓄に回ったお金もあり、このうち資産運用の一つの手段として株式市場に向かうことも十分あり得る。様々な要素があって、最終的には底を打った感やもやもや感が晴れそうという期待があり、日経平均株価が3万円を超えたのだろう。3万円という数字が出てきたのは、潤沢な資金が国内外で供給されている背景が大きいだろう。

Q : 本日16日の午前終値も日経平均株価3万600円近くに戻っている。この上昇局面は続くとお考えか。

櫻田: 今売るとまた上昇する可能性があるため、利食いする時期を待っている人が多いようだ。経済の底は打ったが、勢いがどこまで続くのかわからず悩んでいるところだろう。私自身は、この相場が力強く右肩上がりを続けると考えるのは時期尚早だと考える。それよりも、実体経済が先行指標である市場に伴って上昇するか否かに注目すべきだ。反動が大きいという心配がある。

Q : 森 喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 会長の辞任に関して、経済同友会では以前よりダイバーシティの重要性について発信してきている。多くの企業、また国会において、女性(管理職)の割合が3割に届いていないのが現状であり、女性活躍が進まない原因と、これを果たさない場合に国としてどのようなデメリットがあると考えていらっしゃるか。

櫻田: 最後にご指摘された点が最重要と考えている。つまり、「女性のリプリゼンテーションを増やすべきなので増やす」という次元は既に終わっている。日本のような国が生産性を上げるためには、イノベーションが必要であり、イノベーションのためにはダイバーシティが必要である。ダイバーシティとは、本来であればLGBTを含めたジェンダーだけではなく、国籍や年齢等の全てを含めたものである。今回の問題では、そのうちのジェンダーという部分で手をこまねいているが、ダイバーシティを推進しなければ組織の存続すら危ういとの危機感を持つべきである。ダイバーシティ推進のためには、イノベーションを起こしている所ではダイバーシティが進んでいて、日常のアクティビティの中で、「どうしてここに半分女性がいないのですか」との疑問が生まれるような文化のある組織の方が業績が良いといった、「証拠」をたくさん出していくしかない。世界では既にこのような考え方が浸透しているが、日本は遅れており、危機感を抱いている。もう1点は、女性側にも全く原因がない訳でもないという点である。女性から声を上げるべきということではなく、チャンスをつかみにいっていますかという質問に対して、与えられれば(チャンスをつかみにいく)という方はいるが、自ら(チャンスを)取りに行かれる方はまだまだ多くないように感じている。いずれにせよ、何よりも感じていることは危機感であり、ダイバーシティを推進しなければ沈没する、という気持ちが足りていないように感じている。

Q : 日常において女性が声を上げる難しさを感じ、具体的に企業の動きとして取り組んでいることがあるか、伺いたい。

櫻田: 自社のことを申し上げると、ほぼ毎年指名委員会から指導を受けている。実態がどのようになっているか、また女性の役員・管理職比率を上げるための取組みに関しては一定の評価をいただいているが、(女性人材の)母数が育つのを待っていられない場合、本人の了解を得たうえで、グループ間で女性が多い事業から少ない事業に移すということを行いながら、時間との勝負の中で可能な限り女性比率を上げていく取組みを進めている。これはスローガンや理念ではなく、実践的な行動ベースに移っている段階である。必ずしも全てが成功している訳ではないが、目を見張るような活躍をされている方も出てきており、私たちのみならず、指名委員会の方にも喜んでいただいている。

Q : 春闘において、経済界からは賃上げモメンタムの維持への声が強いが、モメンタムを維持するためには、具体的にどのようなことができると考えているか。

櫻田: 具体的な内容は、経済界のみが考えることではないと感じている。今回、新型コロナウイルスにより明らかとなったが、(コロナ禍においても)大変業績の良いところと、大変苦労しているところがある。これは主に業界によって分かれている一方で、やはり同じ業界内においても差は生じており、環境や運の要素もあるが、何よりも経営手法の違いに起因している。モメンタムは好循環に向かわせることが必要であるが、賃金水準を上げれば生産性や売り上げが向上するということは、統計的に立証されている部分もある。こういったケースを数多く作ることが、モメンタムにつながっていく。さらに経営者から見ると、同業界内での差や、業態による差が大きいのであれば、業態変換とまではいかなくとも、トランスフォーメーションを進め、より高い賃金が、生産性や売り上げの向上につながるというモメンタムへ変えていくべきである。これまでのリストラクチャリングでは、主にコスト圧縮や縮小均衡に向かうことが多く、小さくまとまることで、結果として利益率やROE(自己資本利益率)が上がっているように見えるというものであった。しかし、この考え方は大きな転換期を迎えており、サスティナビリティという概念のもと、ステークホルダー全体の(価値の)総和を上げていく中では、従業員という極めて重要なステークホルダーの(価値の)総和、ハピネスを最大化させる点にも当然経営者として責任を負うべきであり、こうした会社が評価されるようになれば、世の中全体のモメンタムも変わっていくのではないか。賃金を上げると利益が上がらないとの株主側の声に経営側が困るというのは、今でも存在するが昔風の発想である。新型コロナウイルスによってグレートリセットという言葉が使われているように、日本が先頭に立って新しいモメンタムを作るチャンスが到来している。ROE一本槍の経営ではもはや駄目であると、各所で見直されていると感じている。

Q : 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長を決める「候補者検討委員会」は非公開で行われ、詳細が分からないが、どのように選出するべきか。

櫻田: 上場企業の指名委員会の議論に近いと思う。企業でいえば指名委員会の委員長には、社長やCEOの選考理由やプロセスの透明性、議論の内容について株主総会やIR等での説明責任が求められるだろうが、議論の最中を実況中継する必要はないと思う。(公開すれば)本質的な議論とは異なり、パフォーマンスに陥る可能性がある。(選考が)終わった後にメンバーの誰が見ても客観的で望ましいと思う方が選ばれることが前提だ。

Q : ワクチン接種の順番については医療従事者や高齢者の後に、介護従事者を含む高齢者施設等で従事している方という順番で接種を受けることになるが、地域や課題についてお考えを聞かせてほしい。

櫻田: 持続化給付金やと特別定額給付金も、支給が決定してから実際に届くまでの間にすったもんだがあり、時間がかかってしまった。今回のワクチン接種は現金ではないが、海外からの輸入品と日本で製造する物があり、輸入品はファイザー社製とアストラゼネカ社製では冷却温度や使用期限が異なり、非常に複雑なロジスティクスが発生する。順番は当然重要だが、全体でどうなっているかもまた重要である。理想は何時何分現在、どこで何社のワクチンが何歳の方に何名接種されているか瞬時に分かるようにする必要があるが、厚生労働省や内閣府、地方自治体と3つのシステムが存在し、それらをどのように接続させるかという課題がある。また入力がすべて地方自治体に委ねられ、3つのシステムのフォーマットがすべて異なるような事態がないように工夫されていることと思う。できれば国が一本化して実施すべきだが、実務的には難しい。また、順番についても臨機応変に考えるべきだと思う。注射する資格を持つ人と接種対象者の数を把握した上で、最大のリスクに晒されるエッセンシャルワーカーのうち、医療従事者を最優先とすることは合理的である。医療崩壊の川上側に位置する介護施設の従事者は大変感染リスクが高いので、早く接種できるようにすべきだと思う。65歳以上の高齢者の中にも介護従事者が含まれており、医師や看護師が(介護施設に)訪問して接種する際に他の若い介護従事者の方にも同時に接種することは大いにありうるだろう。高齢者ではないという理由で別の場所で接種させるようことはないようにしていただきたいし、全体のロジスティクスを最適化する観点で考えてもらいたい。

Q : 森氏が自らの発言の責任を取り、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長を辞任した。発言に対し、スポンサー企業が否定的なコメントを出した。五輪にとってスポンサー企業のあり方は大きいと思う。発言の受け止めについて代表幹事のお考えを伺いたい。東京五輪開催まで半年を切って選任される後任の要件をお伺いしたい。

櫻田: (会長選任の)プロセスや組織委員会の議論の詳細を存じ上げているわけではないことを前提にお話しする。率直に申し上げると、(発言に関して)代表幹事としてコメントを出すべきか思案し、副代表幹事や事務局と相談をした。積極的に経済同友会として遺憾であるという次元の話であるか、一言でいうと論外というコメントを出すか、グローバルメディアを含めかなり厳しく発信している中で、重ねて(発信する)メリットがあるか考え、今回は必要ないと思った。記者会見で(見解を)求められれば、論外ということだ。日本は、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で、(153か国中)121位と圧倒的下位だ。このことに敏感でない人がトップにいたということで、(コメントは)あえて控える。五輪開催まで半年を切っての辞任ということだが、恐らく実務的なことについては相当事務局内で議論されており、バッハ会長をはじめマネジメント層でこれから何かを交渉するというレベルは過ぎたのではないかと思う。現時点では、どんな形をとってでも、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催する方向で進んでいる。トップには厳しい要件を求めるよりは、前会長が醸した間違った印象を払拭できる人、見たらすぐ分かる、聞いたらすぐ分かるという分かりやすいイメージ、つまりジェンダーについて私たちは極めて真剣に捉えていることが分かる人がいいだろう。誰がいいかと聞かれてもお答えできないが、なるほどねという形でいいのではないか。あまり厳しい、強い要件を求めると、かえって時間がかかってしまうのではないかと思う。

Q : 来月3月11日で東日本大震災から10年を迎える。今月13日には福島県沖で震度6強の地震があった。経済同友会は震災後、被災地では特に専門高校への支援(実習機材の提供)を続けてきた。経済同友会のスタンスを伺いたい。

櫻田: 当該地域の経済同友会と連絡を取り合い、コラボレーションをした方が良いことがあればと相談を開始している。事実として、10年前の規模に比べると(今回の地震は)小さいが、被災された方々にとっては同じ(く個々の)事情がある。まずはお見舞い申し上げる。(地震の)規模が違うこともあり、IPPO IPPO NIPPONプロジェクトのようなプロジェクトを今立ち上げることは考えていない。それ以外の形で被災された方や、地域に貢献できることがあれば、これから考えたい。10年経って、これが(なお東日本大震災の)余震であるということについて、個人的に大変ショックを受けた。地震は500年周期ともいわれる。10年、20年の幅は当たり前だ。我々は今回の地震を自然からの警告と受け止め、来たるべき首都直下型地震、南海トラフ地震への備えを含め、もう一度気を引き締めていく必要があり、その警鐘になったと思う。

Q : カーボンプライシングについて、経済産業省でも、明日研究会が開かれて、議論が本格的に始まっていく。経済界では、企業に対する税制を含めた上で前向きに議論するべきという声がある一方で、イノベーションを阻害するということで導入に反対する声もある。代表幹事のお考えを改めて伺いたい。

櫻田: 経済同友会としては、CO2そのものの排出抑制することから、CO2を排出するものの使う量を抑制することまで、揮発油税等も含め、全部を含めてカーボンプライシングであると考えている。これらについて、何らかの税を導入すること自体は、以前より検討するべきだと考えている。より具体的に言えば、カーボンプライシングのうち、税理論からいって一番合理的であるのは、消費税と同じように最終消費者が負担すべきであるという議論となる。ただし、過去の提言はそうであるが、現在の環境に照らしてどうなのか常に再検討しなければならない。イノベーションの阻害になる、コストがあがる点は事実かもしれない。しかし、地球を守るという(根本の)サスティナビリティの観点では、義務というよりは、やることが企業にとっての成長のチャンスにつながると、所与のものとして受け止めるべきである。カーボンプライシングを導入するべきか、するべきではないかではなく、どのように導入していくかに議論を転換するべきである。実現性を念頭においていくのであれば、従来から経済同友会が提言していた、川下の最下流の消費税型を狙うよりは、整理が必要であるが中流か、上流の制度を考えていく方がよいのではないか。

Q : WTO新事務局長にナイジェリアの元財務大臣の女性の方が選出された。WTOについて言えば、米中の貿易摩擦、中国の知的財産問題等で滞っていた中で役割も大きいが、どのように思われているか。また、候補であった韓国の方が新事務局長に選ばれなかったことは、日本企業としては、韓国との間で諸問題があったことから歓迎すべきか、お考えを伺いたい。

櫻田: オコンジョイウェアラ氏は、有名で国際社会でもその能力が評価されている。米国新政権が発足したことで一転して(選任が)決まったが、WTOの重要性については日本政府も従来から繰り返し訴えている。(WTOは)改革が必要であるが、よい人を選んで、そのリーダーシップで改革を実現していくという観点で、オコンジョイウェアラ氏に決定したことを歓迎したい。韓国出身の候補者兪明希(ユ・ミョンヒ)氏のことはよく存じ上げないが、ある国の出身者がその国の利益になる判断をするとなると困るが、(兪明希氏は最終選考まで残っており、WTOは)そのような人物を(そもそも)選考対象にしないようにする知恵が働く組織であると思っている。いずれにしても、オコンジョイウェアラ氏の選出は大変喜ばしいことである。

Q : ミャンマー情勢について伺いたい。クーデターが起きたが、一旦沈静化して現地の日本企業も活動を再開した。その後、デモが始まって多数の企業が、活動を停止している厳しい状況になっている。

櫻田: 自社を含めて、知る限りにおいて、(日本企業は)静観というのが正しい。民主主義政権であれば別だが、(軍部が政権を掌握している状況下で)経済界が直接、政権に対して、批判的になる、異を唱えることは基本的にない。当然、(国家間の)外交で枠組みが決められれば、それを順守する。バイデン政権は大統領、国務長官、外交安全保障の首脳、補佐官に至るまで、軌を一にして、外交方針を述べている。対中国についても、対ミャンマーについても同様である。これまでの経緯を見ると、私はずいぶん気を遣っていると思う。(ミャンマー現政権を)追い込んでしまい、民主主義の体制を取らない国にすり寄ってしまうのは戦略的に正しくないと(米政権は)思っており、それは日本も理解すべきである。今回のクーデターの背景はよく分からないという声が多い。アウン・サン・スー・チー氏が率いる政権与党の総選挙圧勝に端を発し、ミャンマー国軍は、「総選挙に不正があると、前々から警告していたにもかかわらず、何の対策も取らなかったので憲法に基づいてあのような措置を取らざるを得なかった」と主張しているが、真実かは分からない。いずれにせよ、(ミャンマー国軍が)説明責任を果たしているとは思えない。軍はもし国民の信任を得たいならば、何らかの形で説明責任を果たすべきである。一方、以前の軍事政権(テイン・セイン大統領)の時代と今の違いは、現政権は、憲法に基づいた政権でありたいという声が強い点である。憲法に基づき、国際社会に認められた国でありたいという気持ちが強いならば、話し合いの余地はある。米国、中国ではなく、最も会話できる国のひとつとして日本は選択肢となり得る。日本が強い仲介者になることは可能であり、その役割を果たすことを期待したい。いずれにせよ、(ミャンマー国軍は)アウン・サン・スー・チー氏以下(NLD(国民民主連盟)の幹部)を、早く釈放しないと、話は前に進まない。


以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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