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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2021年2月2日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、10都府県の緊急事態宣言継続、与党議員の銀座クラブ訪問、ミャンマー国軍のクーデター、カーボンプライシング、ワクチン供給、医療提供体制、テレワークなどについて発言があった。

Q : 昨日の東京の新規感染者数は393人で新規感染者数は減ってきているが、栃木県を除く10都府県については緊急事態宣言を1か月継続の方向性で調整されている。この経済的影響について所見を伺いたい。

櫻田: 当然マイナスの影響があるが、春以降の緊急事態宣言に比べれば、範囲と規模が制限的であり、期間も比較的短いという点においては、マイナスの影響はそこまで大きくないと考えている。先行指標だけでは判断できないし、楽観視しているわけではないが、少なくとも2020年の倒産件数や廃業件数だけを見れば、過去50年間で4番目に低い数字であり、日本全体が壊滅的ダメージを受けているわけではない。そのうち新型コロナウイルス感染症(に起因する倒産や廃業)に限れば、さらに(2020年の倒産件数や廃業件数は)少なくなるため、今回の(緊急事態宣言の)延長についても今まで以上に壊滅的なことはまずないだろうし、(感染拡大が)ピークアウトしたということについても期待してもよいのではないかと思っている。経済的影響については非常にばらつきがあり、一桁台前半から場合によっては二桁のマイナス(の業績の変化率)もありうるため、正確なところは申し上げられない。また、業種という点については非常に明暗がはっきりしており、言葉を選ばずに言えば、史上最高益を出す可能性がある業種から、特にサービス産業のうち運輸や飲食など大変厳しい業種もある。メーカー系、ITなど非常に調子がよいところもある。ワニの口ではないが、(業績の差が)開いている状態であるため、平均値をもって日本経済を語るのは、必ずしも実態を表しているとは言えないと思う。

Q : 緊急事態宣言で厳しい業種も多い中で、与党議員2名が銀座のクラブに行っていたことが問題になり、遠山清彦議員は議員辞職を表明している。政治がしっかりとやっていくという意味において、どのような所見をお持ちか伺いたい。

櫻田: コメントは差し控えたいが、説明責任を果たしていただきたいといった次元の話ではないと思う。理解ができないとしか申し上げられない。

Q : ミャンマーで軍によるクーデターが発生した。国民民主連盟のアウン・サン・スー・チー国家顧問ら複数の党幹部が拘束され、現地では通信状況の悪化や国際空港の閉鎖などの混乱が生じているとの報道がある。民主化の流れに逆行する軍事的な行動に対する受け止め、今後の解決への道筋について伺いたい。

櫻田: 日本が直面している課題には、新型コロナウイルス、経済、ダボス会議でも議論されていたような地球環境の問題などがある。その裏側で各国が鍔迫り合いしているのは、地球環境をテーマにした技術覇権競争であり、地政学的な争いであり、これをまとめて言うと外交だと思う。個人的に申し上げると、日本が直面している(うち特に重要な問題は)、新型コロナウイルスという国内の問題、もう一つは外交問題だと考える。外交では色々な事態が起きている。米国バイデン新政権が、対世界、対中国にどのようなスタンスをとるのか。EUは中国に対して一方で慎重に、一方で仲良くというスタンスを明らかにしてきた。その中で、地理的にも日本はミャンマー、中国、北朝鮮とも非常に近い。中国では2月1日付で「海警法」という新しい法律が施行された。日本を取り巻く外交は、取り扱いを間違えると一つの政府だけではなく、国全体を滅ぼすことにもなりかねないという危機感を持っている。ミャンマーや中国、その他諸外国含めて、日本の(外交)スタンスを明確にする(ことが必要だ)。日本は民主主義に基づく自由貿易を推進するという点で、どの国とも対話のきっかけを作っていくという大事な立ち位置を占めることができる。これを推進する観点から、今回のミャンマーでの出来事は、民主主義の価値観を守る国から見ると大変遺憾なものだ。他国に遅れることなく、スタンスを明確に表明してよい。

Q : 2月1日、環境省でカーボンプライシングの議論が再開され、今月中にも経済産業省でも議論が始まる予定だ。産業界からは根強い反対意見があるが、カーボンプライシングに対する考え、政府の議論への期待を伺いたい。

櫻田: 政府の議論はこれからだと思う。環境省と経済産業省の対立関係で捉えるつもりもない。経済界からの根強い反対とおっしゃられたが、経済同友会は反対していたわけではなく、整理して議論すべきと考えている。カーボンプライシングと一言で言っても、CO2排出自体を対象とする炭素税から、揮発油税のようにCO2排出に極めて色濃く結びつくもの自体に課税することで結果として排出を抑制するものまで(ある)。これらをまとめてカーボンプライシングとして扱うと、二重課税の発生や、必ずしもCO2排出抑制にならないものも含めてしまうため、整理して議論すべきと考えている。また、これまで経済同友会では、炭素税は、消費税のように(最終的な使用者である)下流に課税する方が好ましいと提言してきた。しかし、世界中が行動の時、もしくはコミットメントとエンゲージメントの時であり、(カーボンプライシングは)税理論よりも導入可能性の高さが大事だ。必ずしも下流だけでなく、二重課税を回避しながら、中流、上流をみていくことが必要だ。経済界の多くの方々が、潮目が変わったと受け止めているだろうし、CO2排出に直接大きく負担をかけているわけではない企業においても、経営会議での議論(のテーマ)になる。ゼロエミッションは、(賛否の)議論の余地がないという前提で、どのように(排出ゼロに)近づけていくかという議論に変わってきている。(その解決策の)一つとしてカーボンプライシングが議論されている。経済同友会としては、すでに提言した内容を再度点検しながら、どうすればより実効性の高い導入ができるか検討したい。

Q :新型コロナウイルス感染症について、東京都では感染者数はやや減少傾向にあり、先ほどはピークアウトも期待してよいのではというご発言もあった。今回、緊急事態宣言が1カ月延長とされており、多くの国民に対してはもう1カ月間辛抱するという形となるが、今の状況を考えるとやむなしと考えていらっしゃるか。

櫻田: ここで手を緩めてしまうと、また元に戻ってしまう。結論から申し上げると、やむなしと考えている。国会で議論されている行政罰に関しても、必要に応じて適用すべきと考えている。さらに、意図的な悪質な行為については、今回の法律の改定ではなく、従来の法律の範囲で対処すべきである。責任を持った行動変容のためのルール作りが必要である。

Q :ミャンマーに関して、民政移管後、日本企業が数多く進出し、非常に息長くプロジェクトを続けてきている。今回のクーデターは、ようやく実を結んできたプロジェクトもある中で発生しており、今後、日本企業として懸念される影響や最も心配している点について、所感を伺いたい。

櫻田: 自社の現地法人やジョイントベンチャーに対しては、SNS等を通じて非公式に連絡を取っている。(生活面での)危険の度合いに関しては、あちらこちらで武器使用や暴力行為が起きている状況ではなく、出社も100%抑えており、自宅や事務所に留まっている限り、身体的恐怖を感じる状況ではないと聞いている。軍政から民主化され、また軍政に戻ってしまった過程の底流に何があったか、今後明らかになると思うが、外資企業が直ちにペナルティーやデメリットを受ける状況ではないと考えている。どの程度の期間となるかは分からないが、今は静観せざるを得ない。民主化への道を今後も進んでいくべきであり、民間企業としてそうあってほしい気持ちはあるが、良い悪いは別として純粋に経済を見ると、軍政となった途端に経済へ壊滅的なダメージが生じるとは考えていない。一方で、(海外からの経済)制裁は覚悟しなくてはならず、新政権下での新しい契約や取引関係をもつことが制裁の対象となりうる、との点には気を付けるべきである。

Q :世田谷区は多くの人がワクチンを接種できるように独自にシステムを構築しようとしている一方で、政府でも別のシステムを作る動きがある。当初はマイナンバーを活用する話が出ていたが、クーポン券を配るということになった。デジタルを活用する上で国の方針と自治体の動きが乖離している状況についてどのように考えているか。

櫻田: 自治体からすると、国から明確な方針が示されておらず、接種の優先順位等についての考え方は議論されているが、ルールとして決まっていないため、自らで考えるしかない。一方で国としては、マイナンバーを活用して全国一律に近い形で進め、(クーポン券の)受領者が地域をまたいで移動しても接種記録が残るようにしていきたという考えがあったが、国と地方の時間軸が合わず、うまくいっていない。この状態のまま3月や4月になると、接種が始まっても、順番が決まらず、接種記録が分からないということになる。何とかしてもらわないと困ることであり大変憂慮している。在庫はあるが、誰に、いつから、どのような順番で接種するのか分からず、最も重要なロジスティクスの部分で滞る可能性が大きい。河野太郎行政改革担当大臣には相当頑張ってもらわないといけない。このままだと(世田谷に続く)第二、第三の自治体が出てくる可能性が高い。

Q : コロナ患者を受け入れる医療機関では医療崩壊が起きている。日本医師会の会長が言うように、民間の医師が全体の8割を占めているとはいえ、今もなお医療がうまく連携できていないのではないか。医療提供体制のあり方についての見解を伺いたい。

櫻田: OECD諸国やEU、米国と比べて感染症へのレジリエンスが最も劣っていたことが明らかになったのではないか。日本は世界に冠たる医療水準と言われているが、それは感染症対策以外の先進医療やその他の分野においてである。過去のSARS(重症急性呼吸器症候群)等(の新型感染症)では日本はそれほど被害を被っていないが、初めてパンデミックを経験し、(医療の)脆弱性については課題があることが分かった。この痛みを忘れずに国が音頭を取って国民の命を守るために何をすべきか、1団体の利益を超えて議論することが重要で、民間の議員を含めた会議体を設置する時期にあるのではないか。

Q : 西村担当大臣はテレワーク率について70%の達成を要請したが、エビデンスが明確ではないため、エッセンシャルワーカーの方々には分かりにくいと思う。目標の立て方についてどのように考えているか。また、入社式を控えて、新入社員にテレワークではなく、リアルな懇談を事前に行う会社もあるようだ。リアルの全面的な廃止等、仕事をする際の状況について、この1年間経験してみてどのように考えているか。

櫻田: 私は以前から週に1回はテレワークをやってきたこともあり、自社においてもテレワーク導入には比較的苦労しなかったのではないか。ただ、9割がリモートワークをしている部門もあれば、導入は半分が限界という部門もある。半分が限界というのは主として保険部門であり、在宅では保険金の支払いや事故対応業務に関する書類やデータの作成に時間がかかったり、上司と相談しにくかったりするということだ。リアルで丁々発止で進めなければならない業務もあり、やはりリアルは必要である。また介護事業では2万6千人の介護福祉士を抱えているが、まさにエッセンシャルワーカーであり、リモートワークは不可能である。徹夜の夜勤も含めて、通常通り働いている。重要なことは(リアルでしかできない業務とリモートでできる業務を)はっきりさせることであり、なんとなく頑張って7割というのはまずいと思う。海外部門ではニューヨークやロンドンは、リモートワークがほぼ100%実現しているが、おかげさまで決算も比較的順調である。したがって多くの業務がリモートワークで阻害されるわけではないということである。これまでもマクロからミクロへと申し上げているように、テレワークについては各企業のトップが個別具体的な事例を披露し、学ぶ機会とすべきである。残念なことに国家公務員の方々は、テレワークが難しいようだ。紙の文化が残っていたり、国会会期中はやむを得なかったりするようだが、リアルが本当に必要なのかを突き詰めて、リモートワークの可能性を限界まで高める必要があるのではないか。いずれにしても形状記憶合金のように元に戻ってしまったら、のど元過ぎればということになりかねず、今回だけは何としても頑張らなければならない。

Q : 「緊急アンケート企業の新型コロナウイルス感染症対策と課題(テレワークの実施状況)調査結果」を踏まえ、出勤者削減の状況への評価を伺いたい。出勤者7割削減をできずともやむなしという前提でアンケートを行っているのか、それとももう一段、会員企業にテレワークへの協力を求めるのか。

櫻田: 倦まず弛まず、しつこくやっていくということだと思う。今はまだ振り子が振られ始めたばかりだ。テレワークによって、生産性が上がり、業績も上がり、お客様評価も上がりということになれば、テレワークをしたほうがいいということになる。テレワークによって、女性の産休が産前産後の短い期間だけとなり、(従来の育休の期間は)自宅で通常通り(業務が)できるということが分かれば、なぜテレワークをやらないのか、やらない方が説明責任を負う形になる。その状態になるためには、テレワークによって成功した企業、テレワークを積極推進し続ける企業がマジョリティにならなければならない。今はまだ(そのような企業は)マイノリティだ。私が知る限りでも、会社に来る方が安心と思っているトップが多い。トップ自身だけでなく、そのような声を聞くと、なんとなくわかると思う方もいらっしゃる。私も100%否定するわけではない。コロナがあるからリモートワークをするではなく、アウトプットをもって、従業員の評価をすることが既にグローバルスタンダードであり、これからは新しい普通になっていく。そこに近づけるための最初の機会と捉え、やっていくことに尽きる。(出勤者削減)50%未満が最多、35%の企業は頑張っても50%までしか達成できなかったという結果であるが、本当にどこまで頑張ったのかということを突き止めることが、このアンケートの目的ではない。

Q : 会員企業に出勤者削減の要望はしないのか。

櫻田: テレワークによるプラスマイナスをまだ評価していない。テレワークによって生産性が上がった企業はなぜ、どのように取り組んだのか、逆はどうだったのかまで突っ込んで聞いていない。(そういった評価を)行ったうえで、結果としてテレワークに成功し、従業員の評価が上がっているということならば、必ずテレワークの比率は高まっていくと思う。(アンケートを今後も)続けていきたいと思う。

Q : 緊急アンケートについて、政府の要請である出勤者7割減に達していない点に関して、率直にどう思うか。

櫻田: 個別にヒアリングはしていないが、(出勤者削減)70%を目指したが達成できなかった背景は、(ある企業において)平均すると50(%)だが、ある部門では80%、ある部門では70%ということがあったうえで、平均すると50%になるということと理解している。35%の企業が、一律50%(未満の出勤者削減)だとは理解していない。

Q : 緊急事態宣言が1カ月延長の見通しということで、今までも行われてきた政府による財政支援を引き続き行っていくべきか、そして新たに追加で必要なものが出てくるかについて伺いたい。

櫻田: 1つは持続化給付金を含めて2月15日まで延びているものが、今回の延長に伴ってどうなるかである。結論は出ていないであろうが、これまでも1月15日までであったところを、2月15日まで延ばしたことを考えれば、これからも同種同様の対応はとれると理解できる。問題は財源であるが、いわゆる予備費の予算が約3兆円余り残っているため、既に手当て済みの資金があると考えている。合理的な範囲で延長していくことはやむを得ない。しかし、本当に必要な方に届いているかという大事な部分については、今一度精査が必要であろう。足元に火がついていた昨年の状況、あるいは審査についてまだ十分な経験がなかった状況ではないため、真に必要なところに素早く資金が届けられていくか、しっかり見ていかなくてはならない。(国家財政が)債務漬けになっている状況を、正常な状態に戻さなくてはならないステージが、(将来)必ず来ることに留意しなければならない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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