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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年12月1日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、マイナンバー預金口座ひも付け義務化見送り、西村大臣と経済3団体のテレビ会議、感染症対策と経済対策の両立、企業間の出向、ジョブ型雇用、中国の輸出管理法、GoToトラベル、第3次補正予算案の策定、法人企業統計調査などについて発言があった。

Q : 先週末に政府がマイナンバーと預金口座のひも付けについて義務化を見送る方針を示した。企業側から見てもマイナンバーの普及によって利便性が高まることが見込まれるが、今回義務化を見送ったことや普及が進まないことについて所見を伺いたい。

櫻田: デジャヴ(既視感)のようで相当ながっかり感がある。マイナンバーが普及していれば、新型コロナウイルス感染症対策など様々なことが迅速かつ正確にできたであろうことを国民は実感している。諸外国に目を転じれば、例えば英国では、申請を待たずして給付金が支払われている。こういった状況を目の当たりにした後もなお、(マイナンバーを活用する)時期がまだ適当でないということはどのような理屈なのか理解できない。一方でデジタル庁を創設し、デジタル社会を推進する菅首相の強い決意表明には大賛成だが、今回の話(マイナンバーの活用)とどう結びつくのか(疑問が残る)。また同じことを繰り返すのではないかと懸念しており、がっかりということを申し上げたい。

Q : 今朝、西村経済再生担当大臣が会見で、この後行われるテレビ会議で経済界にあらためてテレワークの協力をお願いしたいと発言した。その受け止めと今後の取り組み、可能な範囲で政府への要望等があれば伺いたい。

櫻田: 政府の要請について、この3週間が勝負であること、感染拡大を止めなければならないこと、二度と日本型ロックダウンを起こしてはならないことには大賛成であり、やらなければならない。その一つとしてテレワークが有効だと言われているが、(勤務形態が)元の状態に戻ってきている。政府として強い要請をするだけではなく、なぜ(テレワークが)できないのか企業あるいは団体から具体的に聴取することが必要ではないか。私が知る限りでは、テレワークに相応しくない業務が多いといったアンケート結果がある一方で、テレワークを経験した従業員や職員は継続したいと言っている。テレワークが(コロナ禍以前の)元の状態に戻れば、第3波を乗りきれなくなる可能性もあり、必死に取り組まなければならない。第二に、トップダウン(による推進)が必要で、企業の経営者や組織のトップが自らテレワークを推進し、テレワークによって生産性を上げることが必須である。すなわち、単にテレワークを頑張りましょうというメッセージではなく、生産性を上げる強いメッセージを出すと同時に、テレワークは楽しい、テレワークで新しい自分の生活が発見できる、テレワークで従業員のやる気を引き出せるといったメッセージがさらに重要である。仕方ないのでテレワークをする、みんなで頑張って乗り越えましょうというメッセージだけでは、(事態が収斂すれば)おそらく元の状態に戻ってしまう。「生産性が上がった」というような前向きなメッセージを出していかなければならない。その点は強く主張したい。第三に、新型コロナウイルス感染症で困っているセクターや国民がいる中で、これから第3次補正予算の中でどのような経済対策が必要なのか議論される。足下の燃え盛りそうな火を消すという点で、思い切った財政出動をすることは賛成だが、数字ありき(の経済対策)であってはならない。34兆円の需給ギャップを埋めなければならないところから(議論を)スタートすることには違和感がある。仮に何十兆円かの(第3次)補正予算が組まれたとしても、これまでの(予算の)使用状況に対する説明は必要であり、これからもどこにどのような基準でいくら支払うのか、難しい問題だが基準を線引きしなければならない。これを決めるのは政治のリーダーシップしかなく、ぜひご尽力と英断をしていただきたい。一律でばらまくやり方では(財政が)もたず、経済が従来の水準を超えていくこともありえない。ワイズスペンディングと線引きは、政治の責任としてしっかり判断していただきたい。

Q :新型コロナウイルスに関して、今の感染症対策では感染者が増加している状況にあるが、現状を見て何が不足しているか、また経済対策との両立は本当にできるのか、所感を伺いたい。

櫻田: 命を守るというのは、実際に感染を防ぐということはもちろん大事だが、雇用を守ることによって、家計の困窮を救うことも大切であり、やはり(感染対策と経済対策の)両立(が必要)だと思う。経済は、経営と同じで、何かを両立せずに一辺倒というのは不可能だ。(感染対策と経済対策の両立は)ブレーキとアクセルを両方踏むような状態、レーシングカーで言うと、ヒールアンドトゥというプロが使うテクニックのようで非常に難しい。感染症の専門家は、何よりも感染拡大しないことがベストという主張をされるだろうが、その結果として、失業や家計の収入減少など、特に非正規雇用の方やサービス産業に従事される方(への支援)はどうするのか。線引きはものすごく難しいが、(感染対策と経済対策の)両方を見ていく(ことが必要だ)。今の状況について申し上げると、マクロの数字は、兆円単位で示されているが、どの産業、地域、人達が、どのようになれば、更なる支援金を支払うのか、雇用調整助成金を延長するのか否か、Go To キャンペーン事業をいつまで、どの地域で行うか等、あらゆるミクロの問題を一体誰が判断するのかという話になっていると思う。現状は、一番(地域の)事情をよく知っている知事、首長に(判断を委ねる)となってくるが、現場の経営者や国民の声をどこから吸い上げるのかが重要だ。吸い上げた声を迅速に集めて、かつ首長の声も集めて、でも最後に決めるのは政治の判断だと思う。その覚悟は必要であり、それに対する国民の理解が必要だ。マクロでは、落ち込んだと言われている需給ギャップの穴埋めは議論する必要があるが、一番よくないのは、カンフル剤がないと経済が回らない状態になることだ。乗数係数が低いものにお金を投入して、毎年この種の財政補填を繰り返すことになってしまったら、日本経済は落ち込むだろう。そこは非常に注意すべきであり、経済同友会としても発信していきたい。

Q : 新型コロナウイルスの影響で、航空会社が社員をスーパーや家電量販店に派遣、従業員シェアをし、雇用を守りながら取り組んでいる。これは単に各社の取り組みでいいのか。何らかのシステム、経済団体での斡旋など、組織立ったものにできないのか、お考えを伺いたい。

櫻田: コロナ禍を一つの奇貨として、人材の流動、つまり余剰のある産業、企業からそうでない産業、企業へ人材が移動するのは当然起こるため、それがさらに進むよう必要な措置をとるべきだろう。たとえば、年金や人事制度、退職金といった人材の流動化を阻害するものを見直すのにいい機会だ。新型コロナウイルスに限ったことではなく、今後とも産業における人材の流動化は必要なため、(これらは)大いに取り組むべきだ。ただ、斡旋は難しい。実際に、産業としての(人材)不足と、その企業での不足とでは、意味が異なる。たとえば圧倒的に(人材が)不足している介護業界では、全ての企業がたくさんの人材を求めているかといわれると(そうではなく)、求めるスキルや経験などがあるため、(マッチングは)なかなか簡単にはいかない。全体として、(流動性を阻害するものは)制度として見直しが必要だが、斡旋することで流動が高まるとは思っていない。また、今の雇用調整助成金制度の中で、休業に対する支援以外に、出向しながら補助金の一部をもらうという制度があるが、出向よりも休業の方が、補償が多いという仕組みになっており、そこは修正していくべきだろう。人材の流動化を促すような仕組みという点では、雇用調整助成金制度の補償の仕方を見直すべきだ。

Q : 新型コロナウイルス感染症を契機に、各社ジョブ型雇用を取り入れ、例えば従業員のジョブ型雇用への切り替えや、新卒採用は業種を絞る形で行う等の事例が見られる。折衷的な「日本型ジョブ型」と呼ばれるものもあるが、ジョブ型雇用についてのお考え、またどのように定着していくかについてのお考えを伺いたい。

櫻田: 日本における数千万人の働いている方々が、全員ジョブ型に移るということは現実的ではない。ジョブ型は、やはりジョブディスクリプション(職務記述書)を規定でき、時間給というよりアウトプットで(評価を)測れる職種の方に適しており、全員(に適した雇用形態)ではない。そのような(適さない)方々を除いたとして、本来であれば、投入する時間や勤務年限ではなく、アウトプットの価値で貢献度を測られるべきとの点において、ジョブ型雇用は積極的に進めていくべきと考えており、これは経営にとってもプラスになる点が多い。例えばSOMPOホールディングスでは、部長職は段階的にジョブ型雇用に切り替えている。毎年切り替えを行っており、人事異動は基本的には本人の同意なくして行えないが、逆に本人がより難しい、あるいは職位の高いポストを望んだ場合、スキルに基づくジョブグレーディングを行い、その結果に基づく給与を支払うということになり、定期昇給やベースアップという考え方もなくなる。必ずしも良いことばかりではないが、非常に緊張感が出てきている。毎年ジョブグレーディングに見合ったアウトプットを出しているかという緊張感だけではなく、長時間働くということや、残業を一生懸命行うということでは意味がないと分かり始めたため、各々がスキルを認識し、磨くことに繋がっている。特に部長職以上であれば、チームビルディングについては「何となく頑張る」では駄目であり、実際に部下から見て「この部長についていきたい」という評価が出なくてはグレーディングが下がってしまうため、そういった(緊張感の向上やスキルアップへの意識に関する)ことも実際に行われるようになっている。SOMPOホールディングスでは、ほぼ全てを対象に広げていきたいと考えており、数万人いるグループ各事業所も、現在対象としているのは約300名の店長であるが、少なくともチームビルディングを行わなければならない人については、ジョブグレーディングされ、組織として結果を出せるかということが問われるべきである。結論から言うと、もうこの(ジョブ型雇用への)方向しかないと思う。ただ問題点としては、入社して5年10年の若い方々にとっては、また独り立ちして仕事を行っていない人もおり、いきなりジョブグレーディングして、ジョブ型雇用でということが、必ずしも好ましいとは言えない。もう1点いうと、現在積極的に行っているキャリア採用の方々は、ほぼ全員ジョブ型雇用で採用していており、同じ年齢でも高い職位で入るため、ジョブ型雇用でない人と比べて高い処遇で入社されるが、その分厳しく査定されるため、場合によっては2年くらいで(契約)更改しないということもあり得る。

Q : 本日、中国で「輸出管理法」が施行されたが、どのように運用されるのか詳細が明らかになっていない部分が多い。施行されたものの、米国の政権移行もあり、どうなるか分からないが、日本企業への影響としてどのような点が懸念されるか。

櫻田: 一番困るのは、制度の詳細が分からないので、どのように運用されるか分からない、すなわち予見可能性がないということだ。今の状態では何とも言えず非常に困る(としか言いようがない)。「輸出管理法」の意図は、米中のデカップリングに焦点を当てているものである。例えば(中国からの輸入品を用いて加工され)日本から輸出される製品も対象として適用されると、米中間の問題だけでなくなり、影響は大きくなる。少なくとも予見可能性のある透明なルールにしてほしいと、当局や政府を通じて、また我々も必要に応じて言っていく他ない。覚悟する必要があるのは、今後もこうしたリスクを各企業が背負っていかなくてはならないということだ。マーケットとしての中国はもとより、サプライチェーンの中にも中国が組み込まれていることから、様々なリスクをはらんでいる前提でビジネスモデルや輸出入ルートを見直さなくてはならない。

Q : GoToトラベルについて、首都圏外の他府県の知事から政府や東京都に対して(運用を)判断してほしいという声もあるが、政府と東京都のどちらが判断すべきか、またどちらが合理的か。

櫻田: どちらが判断すべきかについて、基準を示すのは政府(の役割)だろう。(特定の地域を)出発点としては認めるが、目的地として認めないといった議論がある。論理的にはおかしいと思うが、色々悩んだ結果、経済との両立を考え、今はこれで進めさせてほしいという声もあるだろうし、頭から否定する考えは持っていない。東京については、小池都知事と政府がしっかり議論して、最後は政府が判断するしかないと思う。東京を入口としては認めるが出口としては認めない、また大阪は(出口として)認める、北海道は入口も出口としても認めないといった判断基準は、なぜそう決定したのか説明するのは都道府県知事では難しいだろうし、政府が判断せざるを得ない。

Q : 新型コロナウイルス対策や経済対策の政策にちぐはぐ感がある。新型コロナウイルスの第3波が来て、第3次補正予算案の策定が開始されたが、使い道が大事になるだろう。一番大事な時期に何もしないと、来年経済が元に戻ることができなくなる懸念があるのではないか。

櫻田: (有事の財政に関する議論について)デジャヴ(既視感)と申し上げた。国難のときには、必ず足元の問題、近々のところをなんとかしようというのが当然政府の役割として大きいと思う。そこからいつ抜け出すのかについて、話すことがタブーと感じられる雰囲気が怖い。あえて申し上げると、(単年度で)90兆を超える国債が出ている中で、現代貨幣理論(MMT)が悪くないのではないかという議論が出てきている。財政の再建問題やプライマリーバランスについて語ることがタブーのような雰囲気がとても怖く、経済界として強く申し上げておきたい。経済を元に戻すためだけでなく、最後は伸びていかなければならない。そのために何十兆ものお金を使うということを忘れてはいけない。本当に困っている人が誰なのか線引きし、迅速に届ける。半分以上のお金は将来の所得、需要につなげるところに使っていくということが必要だと思う。そういう点で、国土強靭化、デジタル化、グリーン等に投資しようといっているとおっしゃるだろう。どのような投資をして、どの程度の国費を割り当てるつもりなのか。ミクロとマクロの溝をきちんと埋めているのか。それだけのお金がついたら、民間企業は活用しきるのか、それによりイノベーションを成長させようという気持ちがあった結果としての、国費の支援かという議論がないまま、とにかく数字があって、そのうちの何%かはグリーンに、デジタルに、国土強靭化にという議論が進むことが怖い。(ミクロの)実態が置いていかれたマクロ議論というのは、下手をすると、自動車の例でいえば、エンジンはふかしているがクラッチ板がすべり、タイヤが回らないということにならないか心配がある。

Q : 法人企業統計調査が発表された。7-9月期が前年比28.4%減と、4-6月46.6%に比べ下げ幅は回復しているが、依然として厳しい状況が続いている。この結果の受け止めと今後どのように推移していくかの見解を伺いたい。

櫻田: 前回から同じことを申し上げているが、二番底はないと思う。中国がすごい勢いで回復している。中国の力をあらためて実感し、底は打ったのだろうと思う。ただ、中国はともかく米国、ヨーロッパ、日本と横に並べたとき、日本は(経済が)戻る力が一番低い。他国と比較した時、医療崩壊が起きておらず、新型コロナウイルスの重症者率、死亡率も低いにもかかわらず、戻るのが遅いのはなぜか。経済は消費と設備投資が引っ張っていっているとすれば、それらに回っておらず、そこには理由があるはずだ。300兆円あまりの内部留保があるにもかかわらず、使っていないという指摘もある。SOMPOホールディングスも内部留保はあるが、数年先を見通して見ると、守りだけでなく攻めの投資を含めて足りない。株主還元を含め、内部留保を使い切る可能性もある。300兆円が本当に余っているお金なのか。M&Aの結果、買った会社の株に替わり、短期流動としてバランスシートに残っている可能性がある。M&Aのためにとってあるが現金として残っているという可能性もある。300兆円が余り、使い道がないと(断じる)のではなく、どのように使う予定か調べてもらったらいいのではないか。ミクロとマクロの間のコミュニケーションがしっかりあれば、マクロの統計水準が経済実態を表しているのか、もしかしたら違うというものもでてくるのではないか。そこからきちんとやらないと、マクロ政策を誤るというリスクも増えてくると思う。昨日経済同友会の会合にて、運輸、流通、メーカー等のトップと話した。一言でいうと、(足下の状況は)ばらばらだ。非常にいいというところから、いつ倒れてもおかしくないというのが実態(の企業もあるようだ)。(製造業に比べ)概ね日本のGDPの約76%を占めるサービス産業の方がきついという感じはする。(産業ごとの)まだら模様が続いていて、もし経済においてサービス産業の占めるウェイトが変わらなければ、(経済が)ぐんぐん伸びていくというのは厳しいかもしれない。ミクロとマクロの違いでいうと、ミクロで良かった、悪かったというのは2、3か月遅れてマクロに反映してくる。企業短観、企業業績、経営者の見方が、実際に行動となり、結果に結びつくのは2、3か月だ。先行資料としては、ミクロを見ておくことが非常に重要だと考える。


以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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