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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年11月17日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、各企業の4~9月期決算への受け止め、日経平均株価2万6,000円台、成長戦略会議、Go To 事業、東京オリンピック・パラリンピック、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国の輸出管理法施行、就活・採用活動、社会保障改革などについて発言があった。

Q : 上場企業の2020年4~9月期決算がおおよそ出揃い、最終利益の合計額は前年同期比4割減という厳しい結果となった。一方で、約4分の1の企業が通期の最終利益を上方修正した。中間決算への受け止めと今後の収益見通しに関する見解を伺いたい。

櫻田: 今のような状況では、前年同期比はあまり意味がないと思っている。日本の場合、(7~9月のGDP)前期比でみれば5%増、年率換算すると21.4%程度伸びている。OECD他国との対比、米国やユーロ圏と比較すると元気がないのは事実だ。そうは言っても4、5月に(経済の)底を打った。現時点で、新型コロナウイルスが本格的に経済をロックダウンに持ち込む、あるいは前回(の緊急事態宣言)と同様の状況にならない限り、二番底にはならないだろう。経済同友会でアンケートを実施したところ、まず業界ごとに(業績の)格差が激しくなってきている。巣ごもり需要やGo Toキャンペーン関連で非常に伸びている企業があり、対前年比でも大きく業績を伸ばしている。その一方で航空会社をはじめとした運輸、飲食系は依然として非常に厳しい状況だ。跛行性が非常に出てきた。マクロベースで失われた経済規模が30兆円とも50兆円とも言われているが、その中身は業界や個社によって異なる。ミクロ視点で丁寧に見ていかないと効果的な経済対策は打てないという感覚を持っている。

Q : 本日午前、日経平均株価が29年5か月ぶりに一時2万6,000円台に達した。新型コロナウイルスが拡大傾向にあり、世界経済の見通しが暗い中で、こうしたマーケットの動きをどのように見るか。

櫻田: この数日間は、(新型コロナウイルスへの)ワクチンの開発が本物らしいということで、様々な要因で上下しているが、今回、株価が上昇したことで、日本経済やマーケットが上昇を続けていくわけではないだろう。おそらくテクニカルな、短期的な需給によるもので、ファンダメンタルなものではない。過度に楽観すべきではない。

Q : 政府の成長戦略会議は12月に中間とりまとめを行うとしている。成長戦略会議のメンバーの一人として、成長戦略のあり方に関する持論があれば伺いたい。

櫻田: 成長戦略には、メリハリ、選択と集中が必要だ。これだけ財政状況が厳しく、デカップリングをはじめとした地政学的リスクが拡大し、日本の立ち位置が難しくなっている中で、どこに経済成長の活路を見出すか、しっかりと選択と集中をすべきだ。様々な要望や技術に対する期待が出てくるが、それらのうち、どこに国費や税制的なインセンティブを与えると伸びるのか、しっかりと検討する必要がある。成長といっても、新型コロナウイルスの影響により(失われた経済が)30兆円、50兆円程度あり、600兆円の経済の箱が550兆円程度に縮んでいる状況だ。この状況は自立的に回復するとは思えない。50兆円なり30兆円なりを戻すために第3次補正予算が必要だと言われている。失われた経済を埋めるために、(新たな)需要を生むようなものに投資しなければならない。具体的には、成長戦略である以上、困窮者や困窮した業界を救済する支出ではなく、デジタルのサービスに対する需要を生むもの、あるいは、日本がこれまで控えめにしてきた公共投資、すなわちインフラの脆弱性を回復させるための投資、デジタル化社会形成に向けてリアルデータをはじめとするデータを活用した新しいサービス、プロダクト等、新しい需要、消費を生むようなものに投資すべきと申し上げている。昨今の議論は、足元対策に向かう傾向にあり、それ自体は理解できなくもないが、そろそろ成長投資とは何か、ワイズスペンディングを持ち出すまでもなく、今の状態が続くと日本の財政がどうなるかという議論をすべきと考えている。

Q : 新型コロナウイルス感染症の再拡大の懸念が強まっている中、「Go To トラベル」や「Go To Eat」、「Go To 商店街」等、さまざまな政策のあり方への議論が活発になっている。政府としては、基本的に従来の方法を踏襲していく形となると思うが、感染症の再拡大が目の前に迫るなかで、Go To 事業を含めた一連の政策についての代表幹事の所感を伺いたい。

櫻田: 私自身も悩んでいるところである。ファクトから言えば、Go To (トラベル)キャンペーンは、その予算である1兆数千億円のうち、予算進捗状況が2割強となったということから、やはり需要ならびに一定の経済効果はあると思う。観光地にも人出が戻ってきており、経済効果も出てくると思うが、いつまで、どれくらいの規模(で続けるべきか)となると、現在まさに政治の世界でも議論されているが、少なくとも3月までという意見や、GWまでなど、さまざまな意見がある。しかし、本質的な問題は、消費をどのように取り戻すかという点であり、一番乱暴な言い方をすると、「困っている方や業界の粗利を補償しましょう」という議論がひとつある。一方で、それはある意味では、本来競争によって頑張らなくてはいけない、競争の結果なくなっていった可能性のある業種、店舗も含め、一斉に救済するということであり、課題はあると思う。このような議論と今のGo To キャンペーンによって間接的に需要を喚起しながら、マーケットに回復の調整を任せていく(ことを並行する必要がある)。つまり良いサービスを行っている所や、魅力的な観光地には多くの消費が集まるであろうし、そうでない所にはそうではない。したがって、粗利補償は行わないとしても、どういう状態になったらやめるかを議論する必要がある。本当に困っている所と、そろそろ廃業を考えている所、さらに新型コロナウイルスを契機として結果的に廃業するという所に、どのように線引きをするのかは非常に難しいが、少なくとも(Go To事業終了に関する)議論は始めておかないと、いつまでも続けよ、延長せよ、もっと長く、となってしまうことを、懸念している。

Q : トーマス・バッハ 国際オリンピック委員会会長が来日し、来年のオリンピック・パラリンピックについては開催するという前提で、昨日の会見においても観客動員に関する言及があった。新型コロナウイルス感染症の欧米における拡大状況を鑑みると、ワクチンが供給できたとしても、開催に対する否定的な意見もある。オリンピック・パラリンピックについて、代表幹事の所感を伺いたい。

櫻田: どのような形式で開催するかについては、少なくともこれまでのオリンピックと同様とはいかないと思う。ただ、何らかの形で工夫をしながら、開催はすべきと思う。その意味において、バッハ会長がわざわざ来日され、菅義偉 内閣総理大臣や森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長、小池百合子 東京都知事と会い、開催するというポジティブな宣言をされたことは、良いことと考えている。ワクチンについて言及されたが、ワクチンは全世界が心待ちにしているものであるが、本当に間に合うのかということや、オリンピック選手だけではなく、ワクチンを必要とされている方が世界中にたくさんいらっしゃる。日本だけをとっても、例えば日々リスクにさらされているエッセンシャルワーカーの方々への接種はどうすべきか等の議論が出てくる。そのような意味で、ワクチンができるので開催は安心だという単純な議論にはならない。オリンピックについてもう一度申し上げると、開催するという大変心強い宣言があったということで、ポジティブに評価しているが、では具体的に、どのような措置をとれば、どのように開催できるかということを、出来るだけ早く、少なくとも春までにはしっかりと固めていただきたい。ワクチンに関しては、少なくともオリンピック選手優先という基準は、今の状況で決めるべきではないと考えている。

Q : 日本企業の多くがオリンピック・パラリンピックのスポンサーになっているが、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、スポンサー企業のあり方が難しくなっている。スポンサー企業の立ち位置について、代表幹事の所感を伺いたい。

櫻田: ご指摘の通り、難しい状況であると思う。今の段階ではイエスともノーとも言えないが、仮にイエスだとしても、追加の負担がいくらになるのか、その配分がどうなるか等、全く白紙の状態である。それらの点が固まってきた時点での各社の判断であり、私自身が申し上げられることではないが、それぞれ新型コロナウイルスにより(業績が)厳しい状況であり、新型コロナウイルス流行前と同じ負担力はないと考えている。すなわち、慎重な判断が必要であり、大会組織委員会事務局もこの点をふまえ、スリムでコスト効率的な開催を目指す努力を続けていただく必要があると思う。

Q : 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の署名を受け、代表幹事コメントを出された。特に、中国が知的財産やデータ流通に係るルールを含む多国間経済連携協定に初めて参加することを評価された。中国との取引で日本企業が抱える課題と影響を伺いたい。

櫻田: RCEPで合意されたDFFT(信頼ある自由なデータ流通)に近い考え方を、中国がどこまで認識し、ルールをどのようにとらえているかについては、(現時点では)分からない。(実際に協定が発効する中で)慎重に見極めていく必要があると思う。少なくとも(RCEP参加国の間では)今までのように、中国の都合でデータの政策や規制を決めていいということにはならず、(中国が)譲歩したという点では評価したい。また、今後に向けルールを詳細に詰めていくきっかけをつかんだという点では、大きな成果があったと思う。そして、やはりインドには(将来、RCEPに)参加していただかなければならない。(アジア太平洋地域の経済連携は)米国が参加することで完成し、ルールに基づく貿易がさらに深化するのだと思う。バイデン政権下でTPPへの復帰が果たしてあるのかは何ともわからず、あまり楽観できない。中国については、これから議論できるきっかけをつくった点については、大きな価値がある。

Q : 中国は5Gを含めた安全保障に関する輸出管理法を12月1日に施行する。外国企業も対象になるとのことだ。梶山経産相は「仮にサプライチェーンの分断があれば、支援する」と発言されたようだ。日本企業への影響、政府に期待することを伺いたい。

櫻田: きっかけは米中の分離(デカップリング)からきていることは、説明するまでもない。法の詳細はともかく、運用の意図は米国企業に対する規制で、やや報復的な内容だ。今まで輸出管理法がなくても、日本企業は十分に注意を払わなければならない状態になっていた。中国から日本に輸出されるものに戦略的物資があるのかどうかという点については、米国対比においては少ないだろう。規制による窮屈さの度合いという点においてはさほど大きくないだろう。心配なのは、(輸出管理法の)運用方法が分からないため、予見可能性が低いという点であり、企業は十分に注意しなければならない。政府に対しては、具体的な分野・製品をということに限らず、(中国との取引における)予見可能性を高めるための外交努力を続けてほしいということを申し上げたい。米中の覇権争いは新政権下でも、続いていくだろう。(対中姿勢は)米国内(の世論)で唯一分断されていない分野である。バイデン新政権にとっても、国を一つにまとめるというインセンティブが働き、積極的に取り組める分野の一つであるので、(米中対立は)ますます厳しくなっていくだろう。

Q : 就活・採用活動について伺いたい。新型コロナウイルスの影響にかかわらず、大学生の就職内定率は前年の凡そ5ポイントマイナスにとどまっている(10月1日時点)。再来年の就活は現時点では見通せないが、どうなるとご覧になるか。採用数は変えないが、新卒採用を抑え、通年・中途採用を増やす企業が増えている。企業経営においてどのような狙いがあり、この傾向は定着していくのか。

櫻田: 経済同友会の会員所属企業を調べてみたところ、前年より大幅に採用人数を増やす計画を持つ企業と、採用人数が0という大企業もある。その間に位置する企業は前年並みという所が多く、微増微減といったところで大きな違いはない。またいわゆる通年採用が増えてきているといえる。この傾向は大変よいと思う。世界にまれに見る不思議な採用慣行を持つ日本が、グローバルスタンダード並みに、卒業してすぐに就職する必要はなく、一生同じ会社でなくてもよく、自分のやりたい、適性にあった仕事を探していくことになると思う。再来年についても、この傾向は強まることがあっても、弱まることはないだろう。SOMPOホールディングスについても採用の3分の1は通年あるいはジョブ型採用であり、今後も増やしていこうと考えている。時期的に大変厳しい時に卒業される学生の皆さまには、今年だめだからといって一生だめだと絶対思わないでほしいと申し上げたい。チャンスはいくらでもあると思う。

Q : 医療改革について、与党でも後期高齢者の医療費2割負担について、どのような線引きをすべきか議論が進んでいる。経済同友会としては、どのようなスタンスで臨まれる予定か伺いたい。

櫻田: 私個人としてというところもあるが、最大の課題は線引きである。一言でいえば、昨年安倍前首相の下で決めた、「原則2割負担」にこだわっていきたい。その原則とは何かということであるが、少なくとも対象者が50%を超えなければ「原則」とは言わないだろう。それを踏まえて考えていくと、やはり住民税がかかるかどうかのぎりぎりのライン、具体的に言えば、年収ベースで155万円が一つの基準となってくるだろう。年収155万円から383万円の(いわゆる「一般」区分の)人々が、(2割負担の)対象にならないと原則とは言えないだろうと思っている。何とか、その人たちが(2割負担の)対象になるように発言していきたい。また、当然のことながら、社会保障改革最大の目的の一つは、やはり財政負担(の適正化)である。どのような政策をとったら、財政への負担、つまり医療費への(公費)負担を少なくできるかという観点も忘れてはいけない。持論であるが、従来から言われていて常に却下されてしまう、1回受診すると100円なのか500円なのか、その間の200円なのか分からないが、ワンコイン制度については、もう一度俎上に載せて議論する価値はあるだろう。何故かというと国民は年間で延べ21億回(外来)受診をしているそうであり、単純計算で、21億回×100円としても、2,100億円の効果が出てくる。200円だとその倍となるため、先ほど(申し上げた通りに)2割負担の対象者を決めた場合以上に、(財政)効果が出てくる。(原則2割負担とワンコイン制度の)どちらかをとるということではなく、両方とも考えていくべきではなかろうか。しかし、今は(公的医療保険が7割は給付し、自己負担が)3割を超えないというルールが法律で決まっているため、このルールに触らない限りは、ワンコイン制度の議論は一ミリも進めない。これでよいのかという気持ちを私自身は持っており、もう一度(検討の)俎上に載せるべきではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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