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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年10月13日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、Go Toトラベルキャンペーン、民間企業の賞与削減、予算案概算要求、コーポレートガバナンス・コード、成長戦略会議、米国の大統領選挙、菅内閣発足からまもなく1ヶ月、同一労働同一賃金、在宅勤務、ジョブ型雇用、リスキリングなどについて発言があった。

Q : Go Toトラベルキャンペーンの関係で伺いたい。赤羽一嘉 国土交通大臣の会見で予算を追加配分することが判明し、東京が対象になったことで(需要が)かなり増えているが、政策効果をどう受け止めているか。また、追加措置があったが、これに対する所見を伺いたい。

櫻田: 政策効果については、(Go To トラベルキャンペーンの対象に)東京が入ることによって増えると思われるが、これまでのところ、(予算の)消化率が10%に達していないことを考えると、これから十分期待できると考えている。ただ、手続き上の混乱が起きていることは間違いない。これを不公平と言うべきかわからないが、(宿泊割引1人1泊あたり最大)14,000円の人と3,500円の人の差をどう埋めるのか。いずれにしても手続き上の問題があったことは間違いない。これについては、今朝から赤羽 国土交通大臣が、少なくとも不整合あるいは混乱を回避する方向でいろいろと工夫するとおっしゃっているので、それに期待したい。今後とも、ぜひこれ(Go To トラベルキャンペーン)を活用して、少しでも経済が刺激されて、上向く糧になればと考えている。

Q : 本日、三菱自動車がボーナスを削減すると一部で報じられた。また、全日本空輸も冬のボーナスを支給しないなど、ボーナスの削減の動きが広がっているが、個人消費やマクロ経済に与える影響をどうご覧になっているか。また、2021年概算要求について受け止めを伺いたい。

櫻田: ボーナスの支給に当たっての考え方は、当然だが個社の経営の判断であるため、これについて良し悪しを申し上げる立場にはない。大変厳しい業界もあれば、そうではない業界もあるため、それに応じて支給率、あるいは額が変わっているのはやむを得ないと考える。マクロ経済に与える影響については、ボーナスの支給額がマクロ(経済全体)で掴めていないため、この2つの大企業の判断が、日本経済にどう影響があるかは、今のところは分からないとしか言いようがない。ただ、メンタリティの問題としては暗い話題であり、プラスの影響はないだろう。概算要求について、今回最も大きな点は、主として新型コロナウイルス感染症対策や、観光業支援や東京オリンピック・パラリンピック関連など、予算を編成する段階で中身が明らかになってくる都度、予算を決めていく、「事項要求」がどの程度上積みされるのかである。今回もそうだが(当初予算が)100兆円を超えることが常態化している中で、事項要求が加わることによって、今年度(予算)の160兆円に近付いてくるのか大きなポイントになる。さらに、報道を見る限りでは、次期通常国会では第3次補正予算の議論も必要という声が出ている中で、未曽有の規模の予算額になるリスクがある。あえてリスクと申し上げたのは、今回の(予算編成の)結果が、どのような形で落ち着くことになれ、従来から叫ばれてきた財政健全化あるいはワイズスペンディングという言葉があるように、ついた予算が具体的にどのような効果を生んでいたのか(検証する必要があり)、さらに、ガバナンスの観点からは、透明性が今一つ弱いと言われる補正予算で、さらに積み増すことについてどうなのか(持続可能性に懸念があるためである)。様々な問題が今回の予算編成では試される。その意味で、キーワードは、「今度こそ」、「これを機会に」という言葉が重要だと考えており、正に現政権が目指している、慣例にとらわれない、実現する、あるいは仕事を進めるという点において、今度こそこれまで抱えていた予算や財政(の問題)について詳らかにし、議論していく過程で、国民の納得感を高めていただきたい。いずれにしても、今のまま、ただ(予算が)積まれていくことになれば、足下ではなんとかなっても中長期的には日本の財政、ひいては経済が非常に危険な状態になっていくことを懸念している。

Q :2021年春にコーポレートガバナンス・コードが改訂される予定だ。経団連は株主との対話等を提言しているが、経済同友会として、どのようなものを提言する予定か。

櫻田: これまで、経済同友会としても、コーポレートガバナンスについては極めて重視して、提言してきた。今回の金融庁の見直し、検討に伴って、新たに追加されるものがあるか、点検していないが、これまでの提言に加えて何かを強く主張しなければならないものではないと考えている。あえて申し上げると、インターネットを活用した株主総会の議決権行使が、前向きに検討されることを期待する。

Q : 政府会議体のうち、未来投資会議が廃止され、新たに成長戦略会議として始動する。これに関する感想を伺いたい。

櫻田: 具体的にどのようになるのか、事務局からまだ説明を受けていないが、(未来投資会議で)これまで積み上げてきた議論が生かせる形で、次の成長戦略会議を進めていただきたい。他の政府会議体との(議論内容の)重複は、私も感じており、それぞれの会議体の役割を明らかにする点については賛成だ。私自身は、会議体を用いて変革を起こす際に、大事なことは二つあると考えている。一つは、ビジョンをしっかり持つこと、そしてより重要なことは実現することだ。成長戦略というマクロ的な概念の下でも、実際に取り組む内容は具体的で各論に及ぶことを期待したい。各論を実現し、実現を積み重ねることで(変革の)全体が見えてくる。結果として、何年後かに物事が実現していることが重要だ。

Q : 3週間後に控えた米国の大統領選挙について、トランプ大統領は新型コロナウイルスに感染したにも関わらず、わずか数日で公に姿を現した。今ではフロリダ州という重要な選挙区を遊説して回っている。今後の大統領選の見通しやトランプ大統領の一連の行動について伺いたい。

櫻田: (トランプ氏とバイデン氏の)どちらが大統領になっても、日本は民主主義という理念を共有する米国と、日米安保条約を基軸に連携し、日本のポジションを確保していくということだろう。Twitterや海外のニュースを見ていると、何が真実か分からないことが多くある。大統領選挙の直前であることから、早期に国民の前に姿を現すことが、選挙戦術としてプラスに作用すると指摘するメディアもあれば、無責任だと批判するメディアもあり、賛否両論である。(感染から復帰までの一連の動きが)大統領選挙にどう働くか分からず、さらに混迷を深めたといえる。

Q : 菅内閣発足からまもなく1ヶ月が経過するが、評価する点と注文する点をお聞かせ願いたい。

櫻田: 手法としては、民間の経営手法に通じるところがあると思う。経営理念を掲げる一方で、各論の実現を徹底的に追求し、結果として数年後に双方を結びつけるという、経営者の考え方に近い。マクロな理念だけを掲げていても、株主はついてこない。政権発足後、すぐに不妊治療やデジタル庁、携帯電話料金等、各論を展開している。26日に招集される予定の臨時国会では、菅首相より所信表明演説のなかで、この国をどうしていくか語られるだろう。今まで進めてきた各論と掲げる理念が所信表明演説でぴったり繋がるとは思わないが、今度こそ仕事をするという意気込みをこれまで以上に感じており、その点は高く評価したい。課題として、日本学術会議について2点申し上げたい。①現状で説明がおしまいというわけにはいかない。法律論を論理的に点検すると、決しておかしくないものであっても、(国民の)納得感という意味では唐突な印象で、説明責任を果たしていない。②これまでの慣例を廃していくとの気持ちの表れなのかもしれないが、日本学術会議がどのような性格の会議で、ミッションは何なのか、メディアも含めて議論する良い機会となった。日本学術会議が100%国費で賄われており、メンバーが特別国家公務員という位置づけなら、今回の任命拒否の理由のみならず、その他の99名の任命責任も同様に問われるべき。拒否した理由だけ説明し、任命した学者についてはこれまでどおりというわけにはいかない。今回を機に、日本学術会議の意味をもう一度議論するべき。もし本当にあらゆるイデオロギーから独立したいなら、国費は入れるべきではないし、純粋な民間機関として立場を確立すればよい。いずれにしても説明責任は果たしていないと思う。

Q : 大阪医科大学の元アルバイト職員がボーナスの支払いを求めた訴訟で、最高裁判所は、原告側の訴えである賞与の請求を棄却した。今週中に同一労働同一賃金について他の訴訟でも判決が出るが、経済界としての受け止めを伺いたい。

櫻田: 判決について詳しく了知していないため、正式なコメントはできない。ボーナスは、個人の働きや成果などに裏付けられた一時的なものである。ボーナスと、今後(同一労働同一賃金の運用に)影響が出てくる可能性のある賃金など制度的なものは、異なると考える。事実関係を整理した上で、必要ならばコメントをしたい。

Q : 新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務が広がっている。在宅勤務の効果を認める声もあるが、残業が結果的には増え、効率が下がっているという見方もある。日本の生産性を向上させなければならないという状況で、この問題をどう捉えるか。

櫻田: (在宅勤務と生産性は)重要な問題だ。コロナ禍の状況がいつかは元に戻ると考え経営するか、または(コロナ禍の状況が)「新しい普通」と考えて経営するかの違いが大きいと思う。生産性をなんとしても維持・向上させようとするか、一時的な事象でありコストアップもやむを得ないと考えるかで大きな違いが出てくるだろう。日本経済の最大の課題といって過言ではない生産性の向上とコロナの問題、在宅勤務を結びつけて考えなければならない。生産性は上げなければならないが、経済同友会の会員企業にアンケートを行ったところ、リモートワークに伴う生産性の改善について、実感にはばらつきがある。SOMPOホールディングスでは、これまでリモートでは困難といわれてきたコールセンターのオペレーションを、リモートで半分以上できるようになり、確実に生産性は上がっている。生産性が上がっているか、上がっていないかの結果を論ずる前に、生産性を上げるためにできていることと課題を洗い出し、何をすべきか考えて経営していくことが何よりも重要である。

Q : 前の質問の同一労働同一賃金と重なるが、新政権において、人づくりというのがあらためて位置づけられ、ジョブ型雇用とかテーマはいろいろとあると思うが、新政権に対する期待を伺いたいということと、仕事に応じて賃金を決めるということが、この先評価されていく、ジョブ型雇用への転換が強まると思われるが、どのようにお考えか。

櫻田: 方向性としては間違いなくアウトプット、貢献した価値に応じて、賃金が決まっていくという方向になると思う。その前提となる雇用制度としてのジョブ型が増えてくるのは間違いないだろう。それはおおいに進めるべきであるし、これによる生産性への貢献はすごく大きいものと思っている。他方忘れてならないのは、仕事の生産性がほぼ同一で、時間の長さによってしかその賃金を測れないという職種も存在するということも事実である。何もかもひとまとめにして、ジョブ型にしていくのは、必ずしも正しくはなく、実態に応じてやっていかなければいけない。ただ、気を付けないといけないことは、元に戻ってしまうことである。ジョブ型には様々な課題があり、片方で時間によってしか労働の価値が測りにくい職種もある中で、慎重に答えを検討した余り、「したがって今まで通り」という結論になりかねない。そうではなくてジョブ型を進めない限りは、生産性が上がらないという、そのような決意を持って、経営者が(転換を)進めるにあたって、そうではない職種、そうではない職場があることを念頭に置きながら、実践していくことが大事である。原則としてアウトプット、原則としてそのジョブ、原則としてその仕事のミッション、によって(賃金が決まる)ということになる。ただし、例外的にはそうではない職場もあるということを、しっかり頭に置いて、労働組合なり、人事部と検討していくようになると思っている。

Q : 菅政権でも、リスキリングの問題が話題になっており、世界的に見ても日本はどうしてもこの分野で遅れてしまっている。夏季セミナーの時も、いろいろな経営者の方も課題意識をお持ちであった。特に、今の新しい世代はセンター試験などの制度が変わって、今までの40代以上の方々と比べて、数学でも統計学が必須になり、これからの世代は、必ず初歩的なプログラミングは扱えるようになってくるかと思う。入社してきた人たちが、40代以上の方々を見た時に、自分が提案をしてもAIやプログラミングの知識もないということで(諦めてしまうなど)、中間管理職の方々の問題は、非常に高まっている。このようなスキルの格差について、どのように捉えているか伺いたい。

櫻田: すごく大事な問題である。大きな流れとしては、デジタルやAI、ビックデータと言われている分野、あるいはゲノムもそうであるが、新しいテクノロジーに対する感性や感度が高いことは、年代を問わず必須である。しかし、年齢がある程度進んだ人たちは、理系の人は別として、どちらかというと得意ではない。一方で、AIなどがどんどん進化していくと、AIを機械と読み替えたとすると、機械によって置き換えられていく知識や技能はたくさんある。そうするとAI対Humanというよりは、AIWithHumanなのか、HumanWithAIなのか分からないが、人間と機械が共働、共存していくことが、より重要になってくる社会が必ずくると思う。その時に必要なことは、それぞれの役割があるため、機械の得意なことは機械がやる、人間の得意なことは人間がやることが、これからますます求められていく。よく言われているように、そうなると数学や統計やプログラミングは必要であるが、機械では絶対にできないコミュニケーション、人の感情をよく見ること、高いEQを持っていることなどが、必要となってくる。論理的で細かな説明は全て機械ができるため、人間はぱっと見て何かおかしいと思った時に、上手くコミュニケーション能力を使ってその人の気持ちを動かす、あるいはリーダーシップを発揮するといった、機械には絶対にできない技能がますます求められてくるという意見に、私は賛成である。そうすると、片方でデジタル的なものに対する感度を持ちながらも、最も人間が得意とする、感性を扱う部分に関するニーズが増してくる。今仰っているリスキリングは、どちらかというと前者の話だと思う。ところが、私が会社を経営していて思うことは、むしろ前者は研修で何とかなる。極端な話、数学は教えればよいし、プログラミングは実践させてみたらよい。しかし、後者の人間性、コミュニケーション・スキルは、なかなか身につかない。それは、その人の性格や才能にも関係する。ここを積み上げていくのは、5年、10年、20年とかかる。3ヶ月の研修で、コミュニケーション・スキルが身についた人は見たことがない。そのため、経営をするにあたっても、国を運営するにあたっても、いわゆるhow to型のスキルを身につけさせると同時に、同じぐらい重要なことは、人間にしかできないものをしっかりと学ばせる、経験させる機会を作っていくことである。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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