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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年9月15日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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冒頭発言の後、記者の質問に答える形で、菅新自民党総裁誕生(新内閣への期待、人物像、印象、通信料引き下げ、総選挙の経済的影響、新政権との向き合い方、独立財政機関、消費税の政策について)、財政、合流新党の結党大会などについて発言があった。

冒頭発言:
9/10(木)、9/11(金)の夏季セミナー、未来選択会議に続いて、お忙しいところご参集くださりありがとうございます。9/11(金)夏季セミナー締め括りの会見の際に、菅官房長官、現自由民主党総裁の消費税を巡る一連の発言について質問があり、私のコメントが、意図したとおりに伝わらなかった部分があったので、改めて主旨を説明させていただく。私のコメントは、菅官房長官が将来の消費税率アップの可能性について、あるニュース番組で〇という意思を示された点ではなく、翌日、消費税は今後10年間は上げなくても良いと思っていると、安倍首相の発言をなぞって、自分の考えを述べられた、そういう意味で、一日で前言を修正したと受け止められる発言があったことに対して私は申し上げた。この発言は、前回の消費税率引き上げ時の安倍首相の発言を引いたものであり、官房長官として首相を長い間支え、そして後継を担われるお立場におられるがための発言であるという旨をあえてお断りした。コロナ禍からの経済回復が最優先される現状で、直ちに消費税が引き上げられるとは考えていない。その一方で、今後10年間、消費税率引き上げなしで、どのように経済財政リスクを回避できるのかについては、正直申し上げて具体的な説明はなされておらず、現実的ではないという観点から、「その通り真に受けるわけにはいかない」と申し上げた。増税を「真に受けるわけにはいかない」と発言したわけではなく、「10年間、消費税率引き上げなし」という部分について申し上げた。持続可能性という観点から、財政構造を見直していくためには、従来の経済同友会の立場通り、消費税率引き上げは当然ながらありうると考え、その考えに基づき発言した。以上、改めて、先日の発言の趣旨を説明させて頂いた。

Q : 明日、新首相が誕生する。新首相に対する要望と、組閣にあたって、どのような内閣を期待されるかお伺いしたい。

櫻田: 昨日、菅 自由民主党総裁の記者会見を拝見する中で、期待を感じた言葉があった。それは「仕事」という言葉を何度か使われていたことだ。「仕事を行っていきたい」、「仕事ができる人をしっかり結集して」、「仕事をしたい」と(おっしゃっていた)。「仕事」というのはとてもよい響きで、要するに具体的に成果を出すために行動する、あるいは決断する姿勢だと受け止めている。これは、経済同友会をThink TankからDo Tankへと変えていこうとする点と通ずるものがあると思いながら、大変期待を持った次第である。いわば、Do Governmentを目指す、「仕事政府」をつくることの宣言だと捉えている。その意味では、(今後、政府として)やるべきことははっきりしているため、言い換えれば論点は決まっているため、それを具体的な目標、あるいは数値に落とし込み、いつまでに実現するのか国民に分かりやすく示していただきたい。これが最大の期待である。その中の一つとして、デジタル庁の議論もあったが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)は待ったなしである。3周遅れとも言われている日本のデジタル化について、司令塔機能を担うデジタル庁(の創設)は大いに賛成だが、仏作って魂入れずということにならないよう、どのような構造で、何よりもどのような権限を担わせるのか、どのような人を配置するのかが非常に重要である。(菅総裁は)「適材適所」という言葉も使われていたが、本当に適材適所の人を、言ってみれば過去のしがらみに捕らわれずに選ばなければならない。その意味では、実力がある人材であれば、民間登用も大いに考えてもよいのではないか。第三に、財政問題も待ったなしの状況である。既に160兆円という未曽有の(2020年度)一般会計予算のうち、建設国債も含めれば約90兆円は国債で賄われている。つまり将来世代からの借金である。この問題をどうするのかということについて、今からすぐに検討を開始しなければならない。実行に移すのは今すぐでなくてもよいかもしれないが、検討は直ちに開始し、プランニングをする必要がある。そして、そのためのシナリオづくりにおいては、政府内だけではなく、かねてより経済同友会が提言している独立財政機関のような客観的な機関のシナリオも見ながら国民の前で議論を広げていただきたい。最後に、これだけ(米中の)デカップリング(深い溝)が毎日のように報道されている中で、私は米中の覇権争いは今後強まることはあっても簡単に収束することはないと考えている。その中で、地理的にも経済的にも非常に重要なポジションにある日本がどのように(今後の)ポジションを決めていくのかは大変難しい。日米の関係を主軸にしながらも、中国とどのように向き合っていくのがよいのか、そうではない別の形で米中の間に日本(のポジション)がありうるのか、これは私個人がコメントできる立場にはないが、少なくとも官民が一致してデカップリングの中における地政学的な日本の位置を十分に理解したうえで、したたかに立ち回っていく必要がある。この「したたか」さとはどういうことかということについて議論を深めていきたい。また、そのための方向感を(示していただくことを)ぜひ菅 総裁には求めたい。

Q : 菅新総裁の官房長官在任中に、個別に政策に関する議論を交わされたことはあるか。

櫻田: (代表幹事就任時に)ご挨拶で面会の機会をいただいた。そのほかには未来投資会議や全世代型社会保障検討会議の機会に一委員として、意見交換したことはあったが、個別に政策についての意見交換や、申し入れをしたことはない。

Q :菅新総裁の人物像、印象について伺いたい。

櫻田: 印象に留まるが、新総裁の就任会見で使われた「仕事」という言葉は、菅新総裁に相応しい言葉だと思う。実際にお目にかかったり、お話をしたりして、プラグマティックで実践的なリアリストだと感じた。ビジョンや夢を語るというよりは、実現できることをしっかり実現していく仕事師という印象を持っている。

Q : 新総裁の任期は、21年9月までの約1年だ。(携帯電話の)通信料金の引き下げや、不妊治療の保険適用、地方の中小企業活性化など、いくつか具体的な課題を示している。特に通信料金の高さについては、官房長官としてかなり発言されており、実際に取り組むことが見えてきていると思うが、所感を伺いたい。

櫻田: 従来から、(携帯電話の)通信料金引き下げ、不妊治療の保険適用、地方や中小企業の活性化について言及されていたので、取り組まれるのだろう。私は、すべてに賛成というわけではないが、デメリットを上回るメリットがあることを説明いただけるものと思うし、「善は急げ」だと思っている。一方で、新総裁、新首相に期待していることは、財政と外交の2点について、この国をどのようにしていかれるのか(示していただくことだ)。私は安倍政権の総括をする立場にはないが、第3の矢が飛びきっていないという印象を持っている。現在の日本の最大の課題の一つである、生産性の低さ、イノベーションの不足、規制緩和が不十分なこと等に対し、仕事師として本気で取り組むところを見せていただき、Do Governmentを目指していただきたい。

Q : 総選挙が近々行われるのではないかとの声もあるが、経済にはどのような影響を与えるか。

櫻田: 総選挙は国民の信を問うことが目的だが、新政権の発足は安倍首相の退陣後、政治の空白期間を作らずに、安倍政権が残した課題に取り組むという意味合いがある。今すぐに総選挙を行うべきかどうか、私は明確な答えを持ち合わせていない。新型コロナウイルス対策と経済の両立という課題は1、2か月で解決するようなものではないが、また政治の判断もあろうかと思う。したがって、与野党の対立軸がはっきりと示せるなら国民もコストをかける価値があると考え、足を運んで投票するだろう。

Q : 新政権との向き合い方として、安倍政権と同様、未来投資会議や全世代型社会保障検討会議のような政府の会議体で要望や考え方を伝えていくのか、あるいは在野で提言していくのか。

櫻田: 経済同友会はDo-Tankを目指しており、できることはなんでもやりたい。経済財政諮問会議や未来投資会議、全世代型社会保障検討会議が新政権でも続くのなら、私を含めて経済同友会のメンバーが名を連ねているので、経済同友会のスタンスをしっかりと示していきたい。我々が新首相に期待したいことは、経済界だけで解決できるわけではない。9/11に立ち上げた「未来選択会議」で今後議論される内容は、経済同友会だけが議論するわけではないが、次の政権にとって大事な論点が示されるだろうし、対立軸も含めて発信していきたい。

Q : 経済同友会はかねてから独立財政機関の設置を提言しているが、必要性について改めて伺いたい。新政権に対し、設置を引き続き求めていくのか。

櫻田: (独立財政機関の設置は)不変の理念、要請である。昨年12月に世耕議員、大塚議員らをお招きし、「将来世代の利益を考えるシンポジウム」を開催した。(独立財政機関設置の提言の)背景にあるのは、政府がやっていること、シナリオがおかしいということではない。なぜシナリオが1本限りなのか、政府の外から客観的にデータ・データに基づくモデルにより推計することをなぜやらないのか。シンクタンクや経済研究機関は存在するが、それはあくまで民間である。法律に基づいた、政府の外にある(独立財政)機関を、OECD36カ国のうち28カ国が持つ。なぜ日本だけが(独立財政機関を)持たなくていいのか、説明責任が果たされていないと思う。すでに出されている推計モデルは、過去の例から見ても、非現実的なシナリオが描かれているのに対し、大きな議論を呼んでいるとは思えない。そのような前提の下で将来の財政の推計がされているとすると、国民は賢いので、これはありえないと思っているはずだ。声に出して不満や怒りを表明しないにしても、諦めの気持ちになる。次には信用しない、となる。(政府への)信用がないと将来への不安から、消費よりも貯蓄へと向かってしまう。マネタリーベースは増えるが、マネーサプライは増えないという悪循環を、断ち切らなければならないと思う。国民が奮い立つとはいかなくとも、納得し、一緒に行動しようと思うような、説得力あるエビデンス・説明を示していくため、独立財政機関は絶対に必要である。今後とも立場は不変である。

Q : 消費税率について現状の考えをお教えいただきたい。

櫻田: 財政の面からみると、(将来の)消費税は17%では足りなくなっているかもしれない。(2020年度末には)国及び地方の長期債務残高は1,200兆円となり、今年1年だけでも90兆円の赤字国債と建設国債の新規発行がされ、財政状態は悪くなっている。プライマリーバランスの黒字化(目標)が2025年というのも、相当大きな疑問符がつくと思う。一方で、社会保障費は、放っておけばどんどん膨らむのは明らかだ。出ずるを制して、入るを増やす、この両方が必要だろう。出る方を抑えるには、社会保障費が一番大きい。どのようにして、より効率的、効果的にしていくのかと同時に、入ってくる金額をどう増やすか。この国の抱える大きな課題の一つとして、国費の3分の1を社会保障費が占める中、教育、国防を含めたセキュリティ、エネルギー政策など、(国家の)サステナビリティに必要な部分はどんどん削られるか、変わっていない。結果として相対的な割合が減っている。この国のかたちが、今後10年20年、50年100年経ってどうなっているかについて、考えることもできず怖くなって思考停止状態に陥っている。(現状を)こじ開けて、あからさまに見せていく勇気が求められると思う。問題はスケジュールだと思う。強引に(一気に)もっていこうとして、きしみや痛みが大きくなりすぎて、(経済社会が)メルトダウンを起こしてはならない。シナリオの作り方が重要だ。入るを増やし、出ずるを制することに取り組まなければならないが、そのスケジュール感について、議論が必要だと思う。プライマリーバランスは単年度の問題である。実際に1,200兆円の累積債務を実際にいつまでにどうやって(持続可能な水準に引き下げるか)ということを、直ちに示してしまうのは大変危険なことになると思う。(大きな)志と、できることを少しずつ、毎年示していくことが大事である。それが国際社会、国際金融市場から信任を得ることにつながり、重要であると思う。

Q : 財政について伺いたい。そろそろ概算要求の締め切りが、今年は遅れながらもやってくるが、これまでIMFなどから日本の財政について、当初予算だけではなく、その後でかなり追加されてくるということで、補正予算に対して、海外からも厳しい目が向けられてきた。コロナ禍で危機的な対応として、補正予算で、ここまで上がってきた結果、本年度160兆円超えまで来ている。当初予算の位置づけが難しくなっている中で、来年度の当初予算については、どのようにお考えか。これまで青天井であるが、メルクマールとして見ている数値があれば、教えていただきたい。

櫻田: 新型コロナウイルスの前、昨年度が100兆円超えであった。それ以前が90(兆円)台で、それが100(兆円)になって、ほうっておくと増えていってしまう。その最大の部分が社会保障であったと思っている。社会保障費については、6,000(億円)だった(自然増)を5,300(億円)にするなど、キャップをはめてきたことも理解している。おそらく、それが正常状態だとすると、過去プライマリーバランス2025(年度の黒字化目標)の時のシナリオ、その時の前提条件、前提の数値をもう一回思い出すことが必要である。あれが正常状態なのかどうか別として、あの時点に戻れない限りは、いつまで経ってもふくらむ一方である。それから、今回100(兆円)が160(兆円)になった中身というのは、既に分析されている通りだが、例えば(持続化)給付金にしても、(雇用)調整(助成)金にしても、言ってみれば膨らんだ状態になっている。このままほうっておくと、既に今年の12月まで(雇用調整助成金を)延長しようではないかとなっているようであるが、それを前提に来年度の予算を組むと、太った状態のまま来年も迎えてしまうと、これは大変危険である。くどいようであるが、まず一旦本来の、新型コロナウイルスが無かりせばどうだったのか、シミュレーションして、どこから新型コロナウイルスのために、真にやむを得ないもの、それから新型コロナウイルスで凹んでしまった50兆(円)とも言われている消費なり、需要の減に対して、どこまで財政でブーストを掛けるのかという議論を始めるべきであり、少なくとも160(兆円)を前提に次の議論を、160(兆円)をどれだけ削れるかではなく、元々正常であったものに対して、真に必要なものを足していくといくらなのかということで考えるべきであろうと思っている。もう1つは、そもそも100兆円の時から申し上げているが、補正予算の決定プロセスが、本予算に比べると、緩く見える、いつの間にか決まってしまったとは言わないが、それに近い状態に見える。しかも20兆(円)、30兆(円)と上積みされたものが、いつのものがどのように使われたかという点については、説明責任が十分果たされているとは感じない。つまり補正予算に対するガバナンスというのが、従来からやや緩かったというのが、この国の問題であり、それが新型コロナウイルスでもって、仕方ないかとどんどん緩んでいくことを大変懸念している。もう一回箍(たが)を締め直さないと、とんでもないことになっていくと私は心配している。

Q : 合流新党の結党大会が行われ、野党第一党もようやくまとまって再スタートという形になるが、野党はエネルギー政策や安全保障をめぐる問題で意見がまとまらず、いろいろな議論の中で、ようやくこのような形で結党している。野党第一党に対する注文、あるいは今後の国会での与野党の論戦で期待をしたいことについて伺いたい。

櫻田: 存在意義がある野党であってほしい。正直、(与党の政策に)反対されていることは分かるが、なぜ反対なのか、反対なので(対案として)このような政策、あるいは制度を導入すべきだ(と主張してほしい)。そしてその制度を導入しても、持続可能性は担保され、財政は少なくとも悪くならないか、あるいは願わくは改善に向かうと示して初めて、責任ある野党といえる。野党の責任は、与党を批判することではなく、責任ある野党となることであり、(それによって健全な)議会制民主主義が成り立つ。そういった意味で期待したいことは、すでにメディアからも報じられている通り、対立軸を明確にすること、そして必ずソリューションがなければならない。そのソリューションは、持続可能性があるものでなくてはならない。もし、カンフル剤のような(一時的な効果のための)ソリューションであるとすれば、どのようにしてそれが正常に戻っていくのかシナリオを示すこと。これらがきちんと実行されれば、きっと存在感のある野党、国民が耳を傾ける野党となり、与党も真剣に耳を傾けなければいけないと、強い緊張感をもって国会論戦が進むのではないかと期待している。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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