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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年6月30日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)香港国家安全維持法案、(2)新型コロナウイルス(経済の回復、感染状況)、(3)有効求人倍率、(4)キャッシュレスポイント還元、(5)米中対立、(6)マイナポイント事業、などについて発言があった。

Q : 中国が香港国家安全維持法案を可決した。これに対する受け止め、特に香港の状況がどうなるか伺いたい。また、中国の動きに対する西側諸国の反対が厳しい中で、特に米中の貿易交渉等含めて、関係が相当悪化する可能性がある。これらが世界経済へ与える影響等お聞きしたい。

櫻田: 明日7月1日が香港返還記念日のため、本日6月30日に香港国家安全維持法を成立させ、7月1日から施行したいようだと聞いている。こうなること(法律の成立)は、以前から世界の識者、メディアを通して予測できたため、とりわけ大きなサプライズではなかった。思った通りになってしまったというのが正直なところだろう。香港の現状について、私の聞く限りでは、かつてのイエロームーブメント(2014年香港反政府デモ)のような激しさではなく、諦めに近い状況が生まれており、激しい行動には出ていないようだ。この法律の下で、逮捕者や人権侵害などがない限り、沈黙を保つ状況が続くのではないか。水面下では、香港特別行政区立法会の選挙に向けて、中国当局は気を緩めないだろう。緊張状態は続くが派手な動きにはならないと見ている。西側諸国からは、懸念の表明があった。これが、9月に延期開催予定のG7サミットの中で、どのような形で共同宣言として出てくるかを注目したい。米中関係について申し上げると、貿易戦争の一つの戦いのフィールドになったことは否定できない。これにより、米中貿易戦争がより厳しくなる可能性はある。世界経済に与える影響は、香港自体が世界経済で担う役割はさほどインパクトは大きくないが、米中関係は先に申し上げた通り、予断を許さない、より厳しい方向に向かうだろう。場合によっては、報復合戦が続く可能性があり、今より良くなる可能性は、少なくとも大統領選挙を控える中においてはない。楽観は禁物だ。一方、日本の立場については、政治的にはG7等で西側諸国と価値観を共有する国としての懸念を伝えるべきだ。経済という観点では、今後、香港が担う役割にもよるが、金融、中国のゲートウェイを含め、日本、特に東京は、アジア地域におけるセンターとしての役割を担うチャンスでもある。ここは東京のコアコンピテンスを主張していくべきだ。

Q : 新型コロナウイルスに関し、収束が見えてきたと思ったら、東京に限って1日あたりの感染者数50名以上の日が続いている。経済活動が徐々に回復しつつあるとはいえ、様子を見ながらそろりそろりという状況だが、7月以降、経済の回復とともに封じ込めについて、どのようにお考えか、伺いたい。

櫻田: 少なくともデータを見る限りにおいては、(経済の落ち込みは)4月で底を打ったように思っている。「2020年6月(第133回)景気定点観測アンケート調査結果」では、9月に向けて「緩やかに拡大する」が上昇したが、希望も期待も含めた回答であり、一喜一憂しているのが正直なところだろう。一気にロケットスタートが切れると思ったら、第2波がくる可能性もあり、世界的には米国を中心に収束の兆しが必ずしも出ていない。また、訪日外国人観光客の受け入れも程遠い。7月1日発表予定の日銀短観の結果は、数字として(新型コロナウイルスによる経済への影響が)確認されるような、厳しい内容になるだろうが、少なくとも、経済対策として、第1次補正予算、第2次補正予算を成立させ、50兆円を超える真水を注入しているため、私はこれ以上(景況感が)悪化するとは思っていない。しかし、第2波を迎えたときに、自粛要請では済まない状況になった場合、50兆円を超える真水、事業規模ベースでは230兆円規模の景気救済策で足りるのか心配だ。日銀短観での評価は不明だが、GDPは少なくとも10%以上落ち込むだろう。単純に考えると55~60兆円程度、これを埋めるのは財政だけでは難しい。大事なことは、一喜一憂しながらも、雇用を維持して、(国民の)消費力を維持し、消費支出を増やすことだ。同時に企業はビジネスモデルや商品を変えていくための投資を必死に考え、可及的速やかに投資を実施する必要がある。投資は、必ずしもB to Cの直接的な消費を促すものである必要はない。日本にとって重要なインフラの投資も景気刺激につながる。新しい投資の意向を表明し、実施につなげることが重要だ。年度末に向けて経済同友会もしっかり考えていきたい。

Q : もう1点、業種によって回復具合のスピード感が異なり、製造業については今日も日本商工会議所の景況分析(早期景気観測調査)の中で、過剰在庫を抱えているということや、生産性の落ちているところに加えて発注も少なくなっているとのことであり、回復が遅いのではないかと思う。もう1つは、日本の企業がグローバルに展開する中で、4か国、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、そしてベトナムには先日チャーター便の運航があったが、貿易あるいは現地工場の稼働が困難となる等、動きが制約されている。徐々に回復してきているとは思うが、相手国の感染状況によるところもある。これらについて、代表幹事の考えを伺いたい。

櫻田: ひとりの経営者の立場で申し上げると、一気呵成に回復に向かっていくとは思っておらず、4か国といっても、合計して1日まだ250人程度(入国者は最大でも1日250人に制限)であり、これが2,500人、25,000人と増えていくのはかなり先になると思う。そのうち経済人が(どの程度含まれるか)ということを考えると、楽観は禁物であり、時間はかかるが、ボトムはうっているということを意識しながら、じっくりで良いので元の状態に戻り、そしてそれを超えていくための戦略、投資は何なのかということを考えるしかないと思っている。心構えとしては、時間はかかるが、しかしその後は(回復に向かっていく)、という形で経営者は踏ん張るしかないと思っており、そのためにも、ベースとなる雇用の確保が非常に重要であると思っている。

Q : 今日発表された5月の有効求人倍率の下落が、第1次オイルショックに次ぐ大幅な下落となった。このような中で、今後の日本経済に対する考えを伺いたい。もう1点、キャッシュレスポイント還元が本日で終了する。(ポイント還元には)消費税増税への対策等があり、その後は新型コロナウイルスの感染拡大が起こっている状況の中で、これが終わることによる今後の景気回復への影響について、考えを伺いたい。

櫻田: 経済同友会で論議した内容ではないため、個人的な見解ということで申し上げるが、5月の有効求人倍率の数字は良くない。ただ先述の香港の件と全く内容は異なるが、想定した範囲内であり、「やはり悪かったか」ということと受け止めている。この数字を見て、経営者や消費者が、「これは大変なことになった」と改めて思うかというと、そうではなく、想定通り良くなかったということである。ただくどいようであるが、ボトムアウトしたのでは、という希望をしっかり持てるかがポイントである。そして日本経済という点から言うと、雇用をしっかり守ることが結局は消費に繋がるということであり、今すぐ消費支出せよというのは、なかなか厳しいと思っている。定額給付金の10万円についても、正式なデータは出ていないが、多くは貯蓄に回っているということであり、どのようにして消費や投資に振り向けていくかという話となると、その役割は政府と企業になる。したがって、先ほど申し上げた通り、このようなときに政府はしっかりと財政支出を行い、それは必ずしも直接消費に効かなくても、インフラ等に対してでもよく、中長期に効いてくるお金を使うべきである。そして企業について言うと、ポストコロナを見据えた設備投資等を積極的に促すような音頭を是非取っていただきたい。キャッシュレスポイントについては、制度自体が消費を非常に活性化させたかというと、必ずしもそうとは思っておらず、目的は消費活性化というよりむしろ、キャッシュレスというデバイスあるいはツールを、世界と比べて(普及率が)低い中で使っていこうということにあり、(ポイント還元が)なくなることで、日本経済に大きな影響が出てくるかといえば、必ずしもそうとは思っていない。もっと別の方法で行わなければ消費の活性化は出来ないと考えている。雇用が守られると分かればお金は使われると思うが、そうでなければ貯蓄に回っていく。

Q : 「香港国家安全維持法」案の可決によって、従来の「一国二制度」が今後も継続されるのか懸念されているが、日本企業はどのような影響を受けるとお考えか。

櫻田: 日本企業にとって香港という都市は、主として金融業とサービス産業において、日本企業が中国本土に、中国企業が西側諸国に展開するための玄関口としての機能を持つ。製造業の場合、すでに中国本土との関係が構築されており、米中関係や日中関係がより重要な意味を持つ。香港をめぐる問題がすべての日本企業の経済活動に影響を与えるわけではないと認識している。各種ビザの発給に関する問題にみられるように、政治の影響がますます大きくなり、純然たる経済活動が難しくなっている印象だ。金融業やサービス産業は、今後、(香港を足場とするビジネス展開に)二の足を踏むようになるかもしれない。

Q : 米中対立は日本企業にどのような影響を及ぼすか。

櫻田: 米国と中国のどちらを選択するか、判断を求められるようになる。日本企業の価値観は、米中の中間に位置するだろうが、多くの企業が中長期的に安心して付き合えると判断するのは米国ではないだろうか。中国市場との距離が遠くなるか、逆にチャンスとなるかどうかは、各企業の置かれている立場や長期戦略によって異なるが、いずれにせよ難しい選択を迫られる機会が増える。

Q : 政府のキャッシュレス推進を目的としたポイント還元事業が本日終了し、9月からマイナポイント事業が始まる。キャッシュレス推進とマイナンバーカードの普及、両方を見据えた事業とのことだが、所感を伺いたい。

櫻田: 目的がマイナンバー(制度)を国民が理解して、より有効活用しようということだとすれば、あらゆる手で推進することは悪くはないと思う。大事なことは、マイナンバーとは何か(ということだ)。マイナンバーとマイナンバーカード(の機能)が、実は違うことを理解されていない。マイナンバーそのものが漏れると、大変な個人情報の流出につながり、事故につながるという誤解もある。マイナンバー(制度)そのものを、国民が理解できていないことが一番大きなポイントだと思う。マイナポイントキャンペーンが導入されたら、マイナンバー(制度)についての理解が進むかというと、必ずしもそうではないだろう。経済同友会も以前から言ってきたが、マイナンバーが浸透し、使われていれば、もっと早く給付金も届いただろうということを、忘れないうちに国民に説明していく。諸外国(の例)を見ればいいと思う。アメリカやイギリスは申請しなくとも現金の給付がされたが、それはマイナンバーのような仕組みがあったからだと思う。

Q : 新型コロナウイルスの感染者数が、東京都で増えている。検査の対象が、夜の街に拡大している影響があるかもしれない。改めて休業要請等をしていくべきか。現在の感染状況をどうお考えか。

櫻田: 大変心配している。第2波の定義は特にない。こういう話を聞くと、元気がなくなり、(活動を)控えようとするので、よくないと思う。ご指摘の通り、(東京)アラート(の段階)が進んでいく可能性は、否定できない。今やらなければならないことは第一に、毎日発表される新規感染者の、もう少し詳細を知りたい(ということだ)。どの地域で、何歳くらいの人が何人(感染したのか)。これはデータとして出ているので、ニュースで報道してもいいのではないかと思う。やはり圧倒的に若い世代で感染経路不明者が多かったと分かれば、社会的に警鐘を鳴らすことができる。無責任な行動を控えましょうという(メッセージを発信する)のが大事だ。マスクや手洗いをずっと続けることも大事だ。ファクトをもう少し詳細にかつ迅速に公表することで、都民や国民が自ら気が付き、(実態は)こういうことなのだと理解できるような出し方をしていくことが、とても大事だと思う。今議論されているように、もう少し強制力をもってロックダウンをするのは、どのような状況(になった場合)なのか、議論して方法を変えていくことは必要だと思う。今すぐやるべきことは、もう少し具体的に、皆がこうやって気をつけようと思うようなことを、出来る限り、早く公表することだ。

Q : 東京都が新型コロナウイルスの感染状況をモニタリングする新たな項目を本日公表するとのことだが、これまでにも休業要請に対する目安等があったと思うが、さじ加減1つで経済界活動に影響を与える、経済界としては、あるべき指標について、どう考えるか、お伺いしたい。

櫻田: さきほどの香港と米中の問題にしても、これからの問題はどれをとっても、白黒をハッキリ付けにくい。バランスをどう取るかという問題であり、動的であり、(状況は)毎日変わる。この指標1つを見ていけば大丈夫ということはないだろう。こういう産業について、このレベルでもって、自粛の要請をして、お店を閉めたら、経済がこのくらい悪くなった、失業者がこのくらい増えた、消費がこのくらい落ち込んだ(といった情報から)、過去3カ月の間でデータを蓄積しているはずである。それを開示しないと、どこをどれくらいのブレーキを踏んだら、どのくらい他に影響が出るか分からない。それを早く出して欲しいと言っている。バランスというのは結果としての部分もあり、そのバランスをもって判断した、その判断の元になっているデータがあるはずであり、データを開示することが必要ではないか。それがあって初めての指標であり、モニタリングのインデックスだと思う。それを開示しないまま、私達はここを見ていると言われても、何故なのか分からない、経営も同じだと思う。データをしっかり開示して、この3カ月間で学んだことで、こういうことが分かりましたと示していく。その結果としてここがバランスを取るために重要なところである、だから(休業要請が)3日ですとか、だから飲食(店)です、だからこの地域です、という説明が必要である。

Q : キャッシュレスの関係で、今後の普及、継続利用の拡大のために、先日の未来投資会議でも議論になったが、手数料の高さをどのように引き下げられるかということが、企業や店舗からすると切実な問題と言われている。この点について、どのように見ているか。

櫻田: 手数料の高さは、国際的に見て間違いなくあると思う。一方で、そのベースにあるコストの高さは、全銀協(一般社団法人 全国銀行協会)の非常に高いシステムを維持していくために必要であったという説明もなされているが、システムの開発にこれだけかかっていて、メンテナンスにこれだけかかっていて、したがって手数料がこれだけ(かかる)というわけではないようだ。そのため、そこ(の構造)については公取委(公正取引委員会)も入って、しっかりと解明し、別に全銀協もそれに抵抗するという話ではないので、良い方向に向かっていると思っている。結果として、手数料が下がってくるということであれば、よいことだと思う。全銀協のシステムを使わない新しいフィンテックが出てくると思うが、それについても、あまりガチガチのルールで縛らないで、もちろんリスクがあるとすれば、一定の金額の制限を設けるかと思うが、ある程度開放していく必要がある。キャッシュレスは、間違いなく進めていかなければいけない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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