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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年5月12日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス(緊急事態宣言、経済対策、株主総会、企業の業績や収益環境、日本の強み、経済界と政府との連携など)について発言があった。

Q : 緊急事態宣言について、特定警戒都道府県以外は明後日の解除が検討されていることに対する受け止めと、事業活動の再開が見込まれる中、企業としてどのような対策が必要とお考えか。

櫻田: 大変難しいセンシティブな状況の中での判断のため、一律や一般的な表現はなかなかしにくい。ただ、(緊急事態宣言の)解除ができる状況になったのであれば、解除することは結構なことだと考えている。また、本件は国から各都道府県知事に措置権限が降り、各都道府県知事が管下の経済や(新型コロナウイルスの)感染の状況を見ながら解除するというやり方を取っている点には賛成であり、日本らしいロックダウンの運用の仕方だと考えている。経済界としては安全を第一に、かつ第2波の感染拡大があってはならないことを前提に(緊急事態宣言を)解除していくことは大いに結構なことだと考えている。

Q : (緊急事態宣言が)解除される地域とされない地域との間で、景気の状況にばらつきが出てくることも考えられるが、これについてはどうお考えか。

櫻田: 論理的にはあり得ると思う。この状況は最後の最後まで続くという点においては程度の差の問題だと考えている。いずれにしてもまだ火が燃え盛っていると認識しているため、何よりも足元の火を消す、すなわち早く給付金を届ける、早くキャッシュを支援するためのありとあらゆる対策を打つ(ことが重要である)。あえて申し上げれば、少なくともここは財政規律を議論する場面ではなく、それは後々しっかりやればよい。それを並行してやりながら、解除されるところとされないところの(景気の)差が極力縮まるような手を、細かく、しかも迅速に打っていくべきだと考えている。

Q : 財政の規律を話す場ではないとのことだが、近く第二次補正予算の編成も始まると考えられる。規模感や打つべき経済対策についてご所見を伺いたい。

櫻田: 必ずしも良いという意味ではないが、結果として史上最大規模の補正予算になった。そして、今このような話をしたくはないが、昨年度の26兆円の(規模の経済対策に伴う)補正予算が決まった際も、本予算に比べて補正予算の審議過程はガバナンス的に、あるいは審議の内容の透明性において、緩いような気がすると申し上げた。したがって、短期的な話ではなく5~10年、あるいは40~50年先を見据えるということで独立財政機関の話を申し上げた。今この話をするつもりはないが、経済が回復した後にしっかりとこの議論していきたい。提言するかどうかは別として、少なくとも昨日WEBで開かれた正副代表幹事会においてもそのような意見は出されたことを申し添える。

Q : 株主総会について伺いたい。政府は法務省や経済産業省を含めて株主総会をこのような状況下で開くことは厳しいだろうと判断している。決算の発表が遅れていることもあり、できる限り(株主総会を)遅らせるために様々な段取りをしている一方で、企業は延期させるところは少ない状況にある。株主総会はどうあるべきかご所見を伺いたい。

櫻田: 株主総会は取締役の選任、配当政策もあり、非常に重要な機関であることは間違いないため、目的に照らし、できるのであれば早く開催することが正しいスタンスである。新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況に限らず、昨今のグローバリズムの中で、1年1年の成績表、あるいはスナップショットを株主やステークホルダーに示していくことは重要なことではあるが、1年1年の結果だけを見て株主がその企業の価値、あるいは(株式の)売り買いを判断することはおそらくあまりない。少なくとも中長期的なスタンスに立つバリュー投資家は1年1年だけを見ていないことは明らかである。少なくとも(株主総会を)早めたから過年度決算が不正確になると言う必然性はない。正確に決算できるのであれば早い方がよい。この状況下で(株主総会を)遅らせるメリットは、(本年度や)2021年度の見通しをどの程度取り込めるかという点だと思う。それは新型コロナウイルスの影響を自社の事業計画にどう織り込むかに尽きる。確かに先に行けば行くほど不確定要素は減ると思うが、その分、株主やステークホルダーに対する開示が遅れることになるため、私個人としては、できるのであれば予定通り開催することが正しいと思う。今回の(開催の時期を)フレキシブルにというのは、むしろ(関係者に)不必要な負荷をかけないようにすることだと理解しており、そのような解釈をして臨んでいる次第である。

Q : 本日、トヨタ自動車が決算を発表し、今期2021年3月期の営業利益が8割減の5,000億円になる見通しを示した。新型コロナウイルスの中で、企業の業績や収益環境をどのように見通しているか伺いたい。

櫻田: 時間の流れをどのくらいのスパンで見るか(によって見通しが異なる)。トヨタ自動車は日本最高水準の危機感を持っておられるように感じる。新型コロナウイルスの影響があったからではなく、デジタルディスラプションの時代の中、従来の縦割りの業界の定義では意味をなさないことから、トヨタ自動車はモビリティの世界に積極的に攻め込んでいると思う。そういう意味では、その危機感が新型コロナウイルスによって加速されたのだろうが、基本戦略は変わらないと思う。(企業の業績や収益環境に関して)足元の経済はしばらく厳しい。トヨタ自動車ですら、5,000億円のキャッシュ イン フローを確保されているとはいえ、8割減の見通しだ。2020年度、赤字になる企業が出てくることはあり得る。2021年度になったらV字回復するかというと(一概には言えない)。今もそうであるが、平均値があまり意味をなさなくなっている。ミクロを見ながら業態別に実態をしっかり掴まないと、平均値を見て経済の良し悪し(を判断すると)見誤る。少なくとも対策を打つ上では見誤る。従ってマクロの視点では2020年度(の企業業績、収益環境)は厳しく、2021年度もV字回復はなかろう。しかし、よく見ていけば、非常に大きく回復する企業と苦戦する企業が出てくるだろう。2~3年経過して、ポストコロナ、アフターコロナと呼ばれる環境に入ったときも、(収益環境などの)状況は(今年度と)変わらない可能性がある。企業経営者は十分意識しながらビジネスモデルを再点検して、場合によっては(モデルの)転換、あるいはカーブアウト、(事業の)売買などをしながら社業を立て直すことを、今からやっておかないといけない。

Q : 業種別で、例えば小売では百貨店でも開いているところはごく一部であり、流通、運輸など全体的に見ると人の移動が全然できない。その中で14日に基準が発表されて(緊急事態宣言が)緩和されると言われるが、東京都は最後ではないか。その中で経団連が緩和するためのガイドラインを作る。このままいくと長期的な経済的影響は避けられない。誰がみても数値的なものは出ない。ただ期間を区切ることはできないが、後半は立ち上がっていかないと日本の経済がどうなるのかという不安感がある。さらに固定資産税などの税金支払いも延期はできるが、いずれ払わなくてはいけない。キャッシュフローが厳しい中で、どのようにしたら少しでも日本経済が立ち上がれるのか。新型コロナウイルスが全てなくなるということはありえず、新型コロナウイルスを抱えながらしばらくいかなければいけない。どうしたらいいか、経済界からもう少し強いメッセージを出してほしい。

櫻田: どの業種がこれからの日本経済を引っ張っていく業種で、どの業種は残念ながらその反対側なのでうまく新陳代謝を乗り切ってくださいといった表現をしなくてはならないことが、難しく非常に悩ましいところだろうと思う。ただ、具体的な業種名をあえてここで言うことは避けるが、誰が見ても今指摘されたような業種については、恐らくビジネスモデルを見直して再点検するか、あるいはコスト構造を徹底的に直していかないといけない。はっきりしていることは、やはり消費者の行動がB to C(ビジネス)に影響を与えて、その B to Cを 扱う企業の行動が B to B(ビジネス) に影響するということにおいてはグルグルと循環していくため、一番の原点である消費者はどう考えているだろうか、どう生活を変えていくだろうかということにしっかりと想像力を働かせることだと思っている。そう考えると、移動することにはどのような価値があるのか真剣に考え始めている。それから働くとはどういうことか。会社に座って夜までいることは働くことなのか。これに対して、そうではないという議論も今まであったはずであるから、その議論も変わってくる。すなわち、価値を生むことは会社ではなくても自宅でもできるし、図書館でもできる。ここにいらっしゃるメディアの方々も、恐らく机に座って仕事をされることよりも、取材されて動いている間に価値を生んで価値のリソースを手に入れていると思う。そのようなことで変わっていくとすると、今みたいに消費者の行動が変わる、その行動というのは移動ではなく、キーワードで言うと「リモート」や「テレ」という言葉で代表されるものに、かなり消費者の行動は寄せられていくだろう。そうすると、移動しないこと、あるいは移動する価値があることには積極的に投資をするが、そうでないものに対してはあえて投資しないとなっていくかもしれない。このように考えていけば、ウィズ(もしくは)アフターコロナの社会はどうなっているのか、おおよそ想像がつく。ほとんどの経営者たちは、少なくとも社内では議論しており、ある種の絵を描かれていると思っている。したがってそこに向かってじわじわと世の中が変わっていくと考えた時に、自社はどこのポジションにいるのかということを、これこそバックキャスティングで、2~3年後のウィズ(もしくは)アフターコロナ、つまり仮にワクチンができたとしても撲滅はできないがために、新型コロナウイルスとは一緒に(いなくてはならない)、その時に消費者の行動はどう変わっているか、生活者の態度はどう変わっているかを見据えながら、今まさに自社のビジネスモデルとポジショニングを点検している最中であり、それを怠ると淘汰されてしまうことは間違いない。大きな転換期にきていると考えるべきである。これは政府任せには絶対にできない。

Q : 冒頭の幹事社からの質問にもあったが、緊急事態宣言の解除に地域差が出ることや、経済活動の再開において、第2波、第3波ということがあれば、それぞれ地域によって出来ることが変わるということも考えられると思う。企業のオペレーションとして、県を跨いだ人の移動が出来ないとすると、状況に応じて、例えば生産の配分を変えるということや、日本国内での地域配分ということで、営業部門のうち、東京では(緊急事態宣言の解除が)長引きそうなので、この部門は大阪で行うなど、地域ごとのオペレーションというものは考えられるか。また、例えば会員との話し合いにおいてこのような議論は行われているか、ご見解を伺いたい。

櫻田: 具体的に、リソースや生産キャパシティ、供給力のアロケーションを最適に、ダイナミックに行うというところまで議論したことはないが、このコロナ危機に限らず、おそらく常にそのように検討されているところは多いと思う。ただ、今回明らかになった最大のポイントというのは、やはりサプライチェーンが偏っていたというところははっきりしており、生産キャパシティや供給力を上げるためのリソースの再配分が出来るためには、サプライチェーンもそれだけダイナミックに、あるいはフレキシブルに動かなくてはいけない。頭の中では分かっていても、実際にそれが出来る企業というのは、具体的には分からないが、そうたくさんはないと思っている。ただ忘れてはいけないことは、もうそろそろ気が付いているべきということを、私自身含め、過去何十年、20年、あるいは平成の時代から言われてきたことを、ずっと先送りしてきて、東日本大震災の際もサプライチェーンの問題には気が付いていたのだが、今もまた言われている。いつになれば日本は気が付くのですか、ということが、経営者や政治、行政にも投げかけられている大きな疑問であると思う。そして世界も日本に対して、もしかすると口だけではないかと思っているとしたら、大変怖いものが待っており、それはあってはいけないことではあるが、円に対する信認、すなわち財政赤字等によって信認がもし崩れてしまったら、というものである。したがって私は、大げさかもしれないが、今回のコロナ危機こそ、日本が新しく再生していくためのラストチャンスであると、政治も経済界も各界も、何より国民も思って、希望をもって新しい国をつくっていこうという動きをしていかなくてはならないし、経済同友会としても、まだ具体的なスキームは考えていないが、そのようなものに向けて微力を尽くしていきたいと、昨日の正副代表幹事会で話したところである。

Q : さきほど「希望をもって新しい国を」という話をされたが、緊急事態宣言下において、日本らしいやり方で明るさも見えてきたという面もあろうかと思うが、一方で「いて欲しい国、いなくては困る国、日本」の存在が世界に示されているのかどうか、国民に評価されているのかどうかとなると、なかなか難しい面もあると思う。今回の局面において、プラス面で、日本の強みは、どのようなものが浮き上がってきたのか。また、それをどう発揮していくべきか、お考えを伺いたい。

櫻田: 局面という点でいうと、新型コロナウイルス危機対応というのが1つあると思う。もう少し前の話となると、グローバリズムがもたらした負の部分というものに対するソリューションを、今世界中が探している状況の中で、日本の在り様というものは必ず役に立つと申し上げてきた。先日、世界経済フォーラムのミーティングに参加し、中西宏明 日本経済団体連合会会長と共に意見を申し上げたが、その中で、シュワブ会長が発言された、10のテーマで進めていこうとしているトップレベルのタスクフォースが、高い関心を呼んだ。日本の持っている「三方良しの文化」、伝統的な価値観を大事にすること、これらは今世界がかかえているポストコロナの世界では、様々なチャレンジを解決する際に、大変重要なことであるという発言をされている。これが意味することは、あえて簡単な言い方をすると、たとえば日本型ロックダウン、この根底にあるのは強制ではなく個人の自主性と責任感による、この裏には、良い悪いではなくて、日本人が持っている公の心のようなものが作用している可能性があり、これがもし、今現在日本の致死率3.88%、PCR検査数においては大変ビハインドをしているが、一番心配な致死率においては、世界的に見て低い数字が示していることと関係するとすれば、日本の強みは単にグローバリズム、欧米文化追随ではない、日本らしいものがあるはずである。それをこれから、探していかないといけない。既におもてなしからはじまり、ものづくりから始まり、いろいろなところで、これまでにも経済同友会も含めて、各経済団体が、日本の強みがこれであると言ってきている。にもかかわらず、変わってきていない。この部分に鋭く焦点を当てて、なぜ変わらないのかを問い続けることが、日本の強みを出していくことになる。そしてもう1つ大事なことは、それを世界に向かって発信していくことである。日本の発信力が弱いということは、言葉の問題だけでは必ずしもないだろう。フランス、ドイツ、イスラエルも英語圏ではないが、しっかりと発信している。世界の中の日本という意識が、今回の新型コロナウイルスでもって、国民に蘇ってくれば、企業に蘇ってくれば、必ず日本の強みが発揮される。国民にとっての誇り、日本人であるということの良い意味で誇りを獲得し、復活できるのではないかと期待している。

Q : コロナ危機を教訓としたBCP対応として、現在の経済界と霞が関との連携について伺いたい。安倍首相や西村経済再生担当相から、医療機器の提供、増産体制の整備、備品の放出等の要請が再三出ているが、厚生労働省が匙を投げてしまい、内閣府や経済産業省が調整に乗り出しているシーンが目立つ。野党から、国民への責任転嫁であると批判されているように、霞が関の混乱や当事者意識の低さは、霞が関の中で連携が取れていないことを示しているのではないか。

櫻田: サイロ型で縦社会の組織文化は、平時こそ目立たないが、有事には弱点が際立つ。厚生労働省は新型コロナウイルス対応の真っただ中におり、かつ社会保障改革の中心的な役割を果たさなくてはならないことから、オーバーロードの状態にあるのだろう。こうした時こそ、霞が関が横に連携しなくてはならない。政府の対応が後手を踏んでいるのは、そもそもBCP体制が整備されていなかったことが最大の原因である。PCR検査についても、日本は制度的に対応する機関が存在しなかったこと自体が問題で、たまたま厚生労働省の所管であっただけだ。では、他の中央官庁では万全かというとそうではなく、5G(第5世代移動通信システム)の環境整備やデジタルトランスフォーメーションの促進についても世界の3周遅れという評価をされている。霞が関も経済界もまた、今般のコロナショックを機に、日本をリセットするつもりで臨まなくてはならない。幸いにして、過去のSARSやMERSでも日本には大きな影響がなかったので、(新型コロナウイルス感染症に対する)本格的な危機管理の意識が低かった。現在、金融市場が危険な状態に陥っていないのは、中央銀行による支援の拡大や資本の増強等、リーマンショックの経験から学んだからである。一方で、3.11の(東日本大震災の)経験が活かされていないのは、サプライチェーンの構造である。危機管理として不足していることは依然として山積しており、危機が去ると忘れてしまう(日本人の)習慣を終わりにしなければならない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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