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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年3月17日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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橋本専務理事、間下委員長から「オンライン診療・オンライン服薬指導の普及促進に関する意見」について報告があった。(https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2019/200317a.html)

続いて、橋本専務理事から臨時休校に関する経済同友会の育児支援について報告があった。その後、櫻田代表幹事が記者の質問に答える形で、新型コロナウイルス(日本銀行緩和政策、株価、東京オリンピック・パラリンピック、財政、オンライン診療、デジタル化)などについて発言があった。

臨時休校に関する経済同友会の育児支援について(橋本専務理事):
既にご案内の通り、本会は新型コロナウイルス感染症対策に関する当面の対応方針【3/9更新】(https://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/comment/2019/200309_1820.html)を発表して、感染拡大防止に努めている。その一環で、学校の臨時休業、さらには保育園や幼稚園が休園になった場合についても、保護者等に対して、休暇取得、時短勤務、在宅勤務(テレワーク)などを機動的かつ柔軟に対応していただくように、会員とその所属企業にご理解とご協力をお願いしている。本日は、事務局職員向けに2つの取り組みを行っているので、皆さまにご紹介する。1つ目は、内閣府が実施している企業主導型ベビーシッター派遣事業に対して、経済同友会事務局として申請を行った。これにより、職員が自宅でベビーシッターの派遣を依頼した際、費用の割引が受けられる。従来は利用上限があったが、今回の新型コロナウイルス感染症への対応として3月は利用上限を設けないとのことで、利用しやすくなっている。従来、割引券はベビーシッター利用1回につき、対象児童×2,200円の割引で、1日あたり1枚まで(月最大24枚まで)が上限である。3月は1日あたりの割引券の利用枚数の上限を設けず、月最大120枚まで利用可能とした。4月以降の取り扱いは現時点では未定である。2つ目は、小学生(主に4年生~6年生を想定)の子どもを連れて出勤したい職員のために、子ども専用のスペースを事務局内に確保することにした。

Q : 日本銀行が前倒しで行った政策決定会合後に発表された緩和政策では、資金供給、資金繰りの支援、市場安定といった三本柱を掲げ、様々な策を打たれたが、これについて代表幹事の所見を伺いたい。また、(日経平均)株価自体は発表後もそれほど良い感触がなく、下げ止まった感はあるが、本日も一進一退の状況である。金融政策そのものの実効性や限界もささやかれ、財政出動の必要性や手法として消費減税もあり得るという声も聞かれるが、その必要性やもし実施するのであれば、そのタイミングについてどう考えているか伺いたい。

櫻田: 日本銀行の政策決定会合の結果の内容については、先進主要6か国の中央銀行の会議の結果も踏まえたうえでの軌を一にした対応という点において評価している。(緩和策の)内容について誤解を恐れずに言えば、日本銀行としては2008年のリーマンショックと同じようなレベルの危機感をもって対応したと考えている。一方で、このことが今の経済状態はリーマンショック時のように底知れぬ債務の塊、あるいは闇の中ということを意味しているわけでは決してない。早く、できるだけ強い、インパクトのある覚悟を持った対応が必要だという点において、今回の日本銀行の対応はそれに沿ったものだと評価している。(世界の)株価については様々な要因があるが、最も大きいのは危機時にflight to quality(質への逃避)という言葉があるように、現在起きているのはflight to cash(現金への逃避)であり、特にドルキャッシュに世界中が逃避している。その意味では、リスク資産はとにかく圧縮すべきという考えの中で、金ですらリスク資産になっており、ましてや株式はリスク資産としての優先順位がかなり高いため(株式が売られるのは)仕方がない。これは実態経済を反映したものではなく、まさにパニック的にflight to cashが起きている時の経過だと考えており、私自身はそこまで深刻に受け止めていない。誤解を恐れずに言えば、良い会社の良い株式であれば買うべきくらいに考えているが、しばらくはジェットコースター相場が続くと予想される。財政出動の必要性について、強いインパクトのあるものを、小出しにせずにできる限り一気に出すべきという点については、先般の会見で申し上げたとおりである。(緊急経済対策)第二弾の1兆6,000億円の金融措置と4,300億円強の財政措置について、(これで)十分かどうかはまだわからない。ただ、どのような経緯でこのような数字がでてきたか説明は受けていないが、つぶさに検討したうえで足りなければ、躊躇なく追加の措置を取るべきだと考える。一方、消費減税については筋が悪い。消費税の導入の趣旨は消費を抑えるためではない。消費税率が8%から10%になった結果、消費が落ち込む最大原因になっているという意見には与しない。このような状態を脱するために消費税率を一定期間ゼロにする議論は本末転倒であり、まさに持続可能性を最大の目標にした社会保障制度改革に大きなダメージを与えると考えられるため反対である。

Q : 東京オリンピック・パラリンピックについて、トランプ米大統領が1年間の開催延期の可能性について発言したり、パンデミックの中で様々な予選が中止を余儀なくされ、選手選考もできない状況になったりしている。改めて世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の現状の中で、東京オリンピック・パラリンピックがどうあるべきか、現実的な選択肢を含め経済界として、代表幹事個人としてどう考えているか伺いたい。また、仮に延期、中止、無観客開催となった場合に、日本経済に与える影響についてどう受け止めているか見解を伺いたい。

櫻田: よく『「仮に」の話にはお答えできない』というコメントがあるが、これはそのような問題ではなく、イベントは大きな経済的インパクト、すなわちコストとリターンもあり、「仮に」の話は常にしておくべきである。そのような中で、現時点では、政府のコメントはあれ(3月14日の安倍首相の会見の内容)が精一杯だろうし、なんとしてでも実現の方向で進める宣言は続けていくべきだと考えるが、絶対に回避しなければならないことはドタキャンである。準備をできないまま、突然(東京オリンピック・パラリンピックの開催を)止めてしまい、後で説明が入ることは、大混乱を生むだけではなく、その後のリカバリーのチャンスすら失ってしまうため、ドタキャンはやめていただきたい。そのために、推測の域は出ないが、いつまでであれば間に合うのか、政府の中でシミュレーションを始めているだろうし、トーマス・バッハ 国際オリンピック委員会(IOC)会長も世界保健機関(WHO)の判断を待って決めたいとおっしゃっているとおりである。したがって、今言えることはwhat ifの議論をしてほしいことと、ドタキャンはやめてほしいことの二つである。経済的なインパクトについて、すでにかけたコストは1兆2,000~3,000億円と言われているが、これに関してはモノとして施設が残っており、有効活用できるため、サンクコストとして捨てられることはない。これから入ってくる収入として、インバウンドや放映権についてはダメージが出てくると考えられるため覚悟しておく必要がある。ただ、延期した場合にどのような形でもって、これまでの投資を有効利用できるのか、様々なパターンが考えられ、その中で少しでも観客が多く、国民が喜んで行けるような仕組みを構築するために知恵を絞っていくしかない。いずれにしても、現時点ではドタキャンは止めること、what ifの議論をしっかり繰り返すこと、良いタイミングで(開催や延期の)決断していただくことを期待する。

Q : 新型コロナウイルス対策への財政出動に関して、感染を防ぐといった生命に対するアプローチと経済に対するアプローチの2本立てで考える必要があると思うが、どのようなものが必要とお考えかを伺いたい。

櫻田: やるべきことは、足元では2点、中長期では1点の3点だと思っている。まずは資金繰りの対応だ。特に中堅・中小企業に対する資金繰りは、通常ではない基準でもって資金繰りを提供すべきだ。今回、気になっているのは、2008年のリーマンショックはそうだったが、ドルキャッシュに対する需要が非常に高く出る可能性があり、その準備をしているか否か。おそらく日本銀行は用意しているだろう。また、国内の中堅企業に対する資金繰りで特に心配しているのは、(資金繰りの支援は)新型コロナウイルスの感染者が発生している地域を優先的に(実施)という表現になっている。観光業に関して言えば、国内旅行全体が大きく沈んでおり、発生地域と関係がない企業への支援をどうするか。大企業は問題ないだろうが、中小規模の航空会社、運輸会社への資金繰り支援は、しっかりと取り組んでもらいたい。次に消費意欲を維持させることが必要だ。有給休暇の取得上限に達してしまった従業員や企業に対する休業手当や、給与等の支援を実施はしているが、たとえば、今給与を支給しても、その給与がすぐに消費に向かうことはない。一旦収束したときに、消費へ向かうようにするには、消費意欲を維持させる必要があり、そのための施策をとるべきだ。これは簡単であればあるほどよい。具体的には、現金給付や、すでに実施されているキャッシュレス決済によるポイント還元の延長などの方法が考えられる。消費税がネックになるのであれば、経済同友会が長く主張している給付付き税額控除の導入も1つの方法だ。また、このような危機を迎えてしまった以上、ただ乗り切るのではなく、中長期な構造改革という点においては、医療の規制改革だけではなく、オンライン教育、テレワークなどの積極的な投資を促すような税制を組めないか(検討していただきたい)。大企業であれば、本格的にテレワークを導入、実施すると、おそらく1社あたり数十億円の支出となるだろう。これが積み重なると相当大きな需要につながり、また危機を乗り越えた後も生産性の向上につながる。あるシンクタンクの試算によれば、2016年のテレワーク率は7~8%弱だったが、これが14~15%まで引き上がると、GDPへのプラス影響が4,000億円を超えると言われている。それだけ生産性向上にも効いてくるわけなので、積極的に投資をすべきだ。忘れてはならないのが事業規模26兆円を見込んだ補正予算だ。補正予算のうち、多くの部分が国土強靭化、具体的にはインフラに使われることになっている。インフラについても、設備投資を早期に開始することが需要、消費の創出につながるため、早く実施すべきだ。人材については、如何ともしがたいが、可能な限り感染を防ぐ方法をとりながら、しかし労働力もできるだけ早期に確保して、場合によっては公的な機関の労働力を使いながら、手を打っていく必要がある。尋常ではないやり方を積極果敢に進めなければならない。最後に、地方自治体の決断力だ。国ができることはマクロの話であり、これからも国全体にとって最適と考える決断を下すだろうが、施策の実施の有無など、具体的には一斉休校の要請に対して、休校の実施や期間、開校のタイミングなどは、最後は地方自治体の首長が判断するもので、首長に対して積極果敢な判断を促していくことも必要だ。あたかも国に強制されたのでやむをえないというのでは、何のために地方自治体があるのかわからない。積極的に地方自治体のトップがリスクを取りながら、市民のためにベストと思われる判断をしていくべきだ。

Q : (新型コロナウイルスが)実際に発症していない都道府県が、例えば岡山県や福井県、青森県、岩手県など7つあり、既に一斉休校から登校を再開した所もある。今回、北海道と愛知県に関しては、最初の情報の出し方がまずく、愛知県であれば蒲郡市が後になって自前で情報を出した。大阪府については実際にライブハウスの情報をきちんと出したことで、リスクが高いとして行かないようになったが、情報をきちんと出さないとまずいと思う。(感染したが)発症していないという経験則もあり、対応をしっかりとやっていかないといけない。テドロス・アダノム WHO事務局長は、検査を非常に奨励したが、病院へ一斉に押し寄せてしまうと医療崩壊にもつながってしまう。全員に検査をさせるべきと考えている人もいるが、保険が適用になっている中で、検査がなかなか出来ない人も多く、対応については入口の部分で揺れている部分もある。この点について代表幹事の考えを伺いたい。

櫻田: 私は専門家ではないため統計的に言うと、インフルエンザより致死率は高いが、若い人や健常者については深刻になる割合は低いというデータが出ている。そして、質問(に対する回答)を回避するつもりはないが、中国が一気に収束状態に入ったように見えるが、一体なぜなのかということについて、少なくとも私はまだ原因や背景については、よく知らないところである。国がもし知っているのであれば、また政府同士で情報交換しているのであれば、速やかに公表すべきである。ファクトとして分かっていないことが数多くある。例えば、私が聞いたことは、この場でもマスクを着用されている方が多いが、マスクは自身が感染している場合に飛沫等で他人に移すのを防ぐのであって、自身の感染を予防するにはあまり効果がないということがはっきりしている。このように、いろいろなファクトが十分に国民へ周知されていないと感じており、可能な限り公的な機関がしっかりとした専門家の判断を経て、これが新型コロナウイルスの実態であると、ファクトをしっかりと出していく。例えば、国にも県にも町においても、HPにアクセスすると、このような情報が出ているといった状況を早く作ることが大事である。そして、医療崩壊を防ぐということは非常に重要なことであり、重篤度の高い人から先にという当然の原則を市町村レベルで優先順位をつけて死守していくということが必要であると思う。最もいけないことは、待ちの姿勢である。

Q : 間下委員長がいらっしゃるのでお聞きしたい。イタリアのケースにおいては、完全に欧州にパンデミックが波及したというWHOの見解もあったが、イタリアは中国との交易関係も活発であり、さらに医療施設が合理化でリストラされており、映像で見る限り野戦病院の様な場所にベッドを置いて患者を収容しており、死亡者も多い。このような状況を見ると、ある程度完成した医療の構築が必要であり、例えば東京都においては都立病院がしっかりしているので大丈夫であると思うが、イタリアでもしオンライン診療が普及していたらどのようになっていたかは分からないが、比較の中で、イタリアのようにならないためには、どのようにすべきとお考えか伺いたい。

間下: 専門分野ではないため明確なお答えが出来るわけではないが、余計な感染を広げてはいけない。当然病院に来る方は、本来どうしても来ないと(診療が)出来ない方に来ていただくという形にしないと、おそらく日本でも米国でも、キャパシティーは足りないと思う。イタリアの医療レベルについて私は存じ上げないが、当然一斉に押し寄せる形となると、いわゆる医療崩壊が発生するということがケースとして見えてきている。日本等の先進国がやるべきことは、医療のレベルは高いため、本来来るべきではない人が来ない、不要不急、急いで病院へ行く必要のある方以外は、病院に来なくてもある程度の治療行為や診療を受けられる環境を整えるといったことが、医療崩壊を防ぐための手法としては非常に大事であると考えている。そのためにオンライン診療は重要な役割を果たしうるものと思っているが、現状の仕組みであれば事実上使い物にならないため、日本では、感染が拡大した場合は医療崩壊につながるリスクはあると思う。米国であればその点がある程度整備されてきており、最近であればドライブスルー検診と言われるが、オンライン診療も進んできており、こういった形で医療崩壊を防ぐことができるのではないかという期待をもっている。

Q : オリンピックやパラリンピックについて、昨日G7首脳がテレビ会議を行ったが、安倍首相が質問に答える形で、完全な形で開催したいということで、時期については言及しなかった。つまり、完全な形でということは、決定するのは首相ではないが、延期ということを選択肢としているのではと思う。先般IOCの高橋治之理事が、1年延ばした方がよいと、まさに選択肢を検討するという考えを述べられている。現実論としてドタキャンや中止はないが、来年、あるいは2年先になると北京冬季五輪と同時期となってしまうが、選択肢としてあり得ると見えてきていると思うが、この点についての考えを伺いたい。

櫻田: 決めるのは私ではないので、質問から逃げるつもりは全くないが、あらゆる選択肢、可能性は否定しないということが、経済界の立場であるべきと思う。何かを意地でも通さないといけないという「何か」というのは、アスリートファーストでも当然あるが、観客ファーストでもなくてはいけないし、経済もやはり重要であり、あらゆる可能性を排除しないというのが正しいスタンスであると思う。

Q : 新型コロナウイルスの影響でオンライン化、デジタル化の需要はますます高まっている。先ほど代表幹事より、積極的投資を促す税制が重要との話があったが、中小企業の資金繰りも厳しい中で、経済界のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組み状況や盛り上がりぶりをどのように受け止めているか。また、政府は、次世代に向けてデジタル化の必要性は高いという認識だが、どのようにみているか。

櫻田: 新型コロナウイルスによる危機が起きようと起きまいと、デジタル関連投資が日本経済の牽引役を果たすことは、皆一致した意見で、私が未来投資会議等で議論してきた中でも感じてきた。今回、甘利明 自由民主党税制調査会長が中心としてまとめた税制改正にもその思想は十分に反映されていると思う。新型コロナウイルスによる危機を奇貨として活用するには、リモートの状態でも経済活動や教育活動、医療行為ができるようにするべきである。すでに現実で起きていることについて各地の経済同友会に聞いてみると、リモート関連の機器やシステムを扱う企業には、ひっきりなしに照会がきているようだ。重要なことは、どれくらいの規模の投資に繋がっていくかであり、また政府がさらなる税制上の支援をできるかだと思うし、ぜひやってほしい。

Q : 東京オリンピック・パラリンピック開催を1年延長する場合、経済への影響をどうみるか。

櫻田: 経済同友会では議論していない。100%私見であるが、今の段階で1年延長が決まったとしたら、単なる勘であるが、そんなに大きなショックは起きないのではないかと思う。全然違うかもしれない。ただ、そうとしかお答えができない。

Q : 東京オリンピック・パラリンピックは予定通り7月の開催または来年の開催、どちらが良いのか。

櫻田: 少なくとも現時点では、5月上旬に開催が決まればベストだ。今の時点では、そのシナリオがゼロだとは思っていない。くどいようだが、あらゆる可能性は否定すべきでない。今日決めなければいけないということはないと思う。もし、5月に専門家の判断が出てくるのであれば、それを待つべきだと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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