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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年1月15日(水) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)米中貿易、(2)イラン情勢、(3)独立財政機関、(4)米国大統領選挙、(5)景況感、(6)日本型企業の雇用制度、(7)男性の育児休暇取得、(8)スタートアップ企業、(9)社会保障などについて発言があった。

Q : 米中貿易について、本日第一段階の合意に署名する運びだが、これは建設的な議論と捉えてよいのか。中国にしてみれば、産業補助金の問題は、構造的な大問題として残っている。一方で、米国では大統領選挙を睨んだ動きの観測も出ているが、日本企業が取るべき構え、この状況をどう見守っていけばよいか伺いたい。

櫻田: 少なくとも米中のテンション(緊張関係)が上がってはいないという点では安心してよいと考える。一方で、すでに引き上げられた関税は残っており、これが最終的にどうなっていくかは、第二段階の交渉に係っていくと見ている。第二段階の交渉は早く始めると言ってはいるが、スタート時期は未だ決まっていない。本音はわからないが、トランプ米大統領はTwitterで「慌てなくてもよいし、大統領選挙の後でじっくりやってもよい」ということを述べ、戦術と戦略が入り乱れている。そのような中で、日米欧の関係閣僚がWTO(世界貿易機関)に、中国の産業補助金について改善すべきという先制的な主張をした。第一段階は署名して終わりだと思うが、最も重要な第二段階を乗り越えるのは相当大変だと考える。(米中貿易摩擦の)裏にあるのは、技術を巡る覇権の問題であり、この問題がある限り簡単には解決しないと考える。したがって、日本経済としては予断を許さない状態を続けるとともに、マーケットとしての中国をどう見るのか、アセンブリの場所としての中国をどう見るのかを踏まえて、サプライチェーンや物流を見直していくことが必要だと考える。

Q : イラン情勢について、米国との緊張関係が高まっている中、英仏独の3か国がイランに対する国連制裁の再開につながる手続きにも踏み切った。イランへの圧力が高まっているが、日本経済への影響について伺いたい。

櫻田: 直接、日本経済とイラン・中東(の関係)となれば、圧倒的に原油である。原油と、原油を運ぶシーレーンに危機的な状況が起きない限りは、現在、200日分を超える備蓄があるということで、直接的には大きな影響はないと考えている。我々が懸念すべきは、先物を含めた原油価格がどうなるかである。当然、短期的には危機があれば(原油価格が)上がっていくが、実質的な需給の関係から言えば、今回のアクシデントによって需要が極端に増えたり、供給が極端に減ったりするという状況はない。むしろ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)よりもジオポリティカル(地政学的)な要因によって上下することを念頭に置き、一喜一憂しないことが重要である。一方、今回の制裁が最終的にどのように落ち着くのかはわからない。一時、イランは一貫してウクライナの航空機墜落に関与していないと主張していたが、一転して人為的ミスによるものだったことを認めた。しかし、これは米国がイランに与えた緊張が原因であるとも述べている。つまり、事実と解釈によって、日々、情勢が動いており予断を許さない。一方で、日本の今の立ち位置としては、安倍首相が中東を訪問しているように、外交的努力を重ねていくことに尽きる。そのような点で、安倍首相がサウジアラビアのトップに会い、オマーンのトップに会い、ということを繰り返していくことによって、何らかの抑止力につながることを期待したい。日本の今の立ち位置からすれば、即効性のある外交政策はできず、また、すべきでもないと考える。

Q : 独立財政機関に関して、昨年12月に開催された「将来世代の利益を考えるシンポジウム」で、独立財政機関の設置に向けた今後の取り組みについて紹介があったが、本年、実行していくにあたって、どのようなことに取り組まれるのか。同シンポジウムで基調講演をおこなった世耕弘成 参議院議員/参議院自由民主党幹事長からは、参議院の調査会を利用してはどうかとの意見もあった。この点も含めて改めて伺いたい。

櫻田: Do Tankを標榜しているからには、提言して終わりではなく、提言からがスタートだ。おかげさまで、経済同友会の提言を引用された記事や発言が出ているのは事実だ。必ずしも経済同友会の提言通りに作った方がいいというものではない。昨年12月に閣議決定された補正予算の決定プロセスや社会保障の議論にあたっても、財政の問題を議論する場が必要であり、そのためには財政推計の前提になる情報をつまびらかにすべきとの議論が出てくるだろう。形として独立財政機関を設置することは重要だが、独立財政機関のような機能をどこに持たせるかという議論を国民的に起こすことが何よりも重要だ。第一にすべきことは議論を続けるために場を作ること。学者や官界、政界などの方々を招いて議論を巻き起こす。もう一つは、若い世代、具体的には学生を含めて35歳未満の方々と議論する。また、経済同友会 財政健全化委員会『新たな財政健全化計画に関する提言~2045年度までの長期財政試算を踏まえて~』(2018年5月15日)で実施したような財政推計や消費税の試算を引き続き行っていく。独立財政機関が担うような機能を国民に気づかせる、あるいは応援いただけるような刺激を国内に与える行動をとっていきたい。

Q : 金融サービス仲介法制に関して伺いたい。これまで別々に営業活動をしていた保険、証券、銀行をワンストップで営業をできるようにすべきか否かとの議論が金融庁中心に進んでいる。金融内で細分化されていた業界の垣根がなくなることで、今後、金融業界はどのようになるか、また別々に営業を行っていたことによるデメリットは何だったか。

櫻田: 現行制度のうち、法改正しようとしているのは、代理店、ブローカー業のシングルライセンス化であり、1つの登録で保険、銀行、証券、信託の商品を販売できるようにするものである。主たる目的は、一般の顧客に利便性を提供することにある。シングルライセンス化することで代理店、ブローカーの(登録実務の)効率化につながる。これにより誰かが負担を強いられたり、権利を侵害されたりすることはないため、大いに賛成だ。しかし、本質論的に考えたときに、今回の議論は主としてインターネットにおける取引を念頭に置いているものであり、シングルライセンスの有無で顧客にとって利便性が変わるかは疑問だ。シングルライセンス化することの大きなメリットは、大きくなったブローカーや代理店、特に銀行代理店が利便性の高いゲートウェイを作る際、一度に網羅的に作ることができる点だ。業界の垣根がなくなる点について、デジタルの渦の中で、消える可能性がある業界の中に銀行、保険、証券などの金融サービス業が含まれている。金融機能を引き離していくと、残るのはお財布機能だ。お財布機能は二つに分かれており、リスクファイナンスという保険のようなファイナンス機能、ストレートファイナンスという銀行が持つような機能、あるいは直接金融に近い証券のような機能がなくなる可能性はあるが、今回のシングルライセンス問題と業界の垣根がなくなるのとは別問題だと考えている。

Q : 前回の米国大統領選挙の際は、トランプ米大統領候補の勝利を予測していない見方もあったが、今年の11月の大統領選挙に関して代表幹事はどのようにみているか。

櫻田: 1月19日からダボスに行くので、何人かのアメリカ人の知り合いに聞いてみたいと思っている。(前回の大統領選の際に)会ったある人は、「トランプ氏は大嫌いだが残念ながら3割くらいの勝つ確率がある」と言っていた。そのときの世の中の見方は、(トランプ氏は)ありえないという風潮で、クリントン候補一辺倒であった。その人が何と言うか、今から期待している。トランプ米大統領が勝つ確率というのは、どちらかと言うとトランプ米大統領自身というよりも、民主党の状況次第であると思っている。間接選挙であり、かつ一部の州においては「Winner-take-all(勝者総取り)」という中では、もし民主党が割れると共和党が有利となり、共和党が有利ということは、ライバルが出ない可能性が現時点では高く、現職が有利になる。民主党の情勢がまだわからないところであり、2月3日にアイオワ州から(民主党候補者選びが)始まるのを注視したい。

Q : 米国経済における景気動向や、前回の支持層であったラストベルトと呼ばれる地域の動向をふまえ、景気についての見通しは様々であるが、堅いとみているか。

櫻田: ドンと落ち込むことないと思うが、ピークアウト感というものは当然あると思う。景気がトランプ米大統領を今以上に大きく味方するという状況はほとんどないと思う。したがって何が起こるかということを考えると、金利への要望は強くなると思うし、株式マーケットの動向については必要以上に気になっていくと思う。それに影響を与える米中貿易問題というものにも神経をとがらせると思う。また、1回目の公約であった米軍の中東へのコミットメントについても、米国民の目をそちらに向けさせたいという気持ちもあると思う。言いたいことは、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)ではなく、政治というものはやむを得ない面もあるとは思うが、勝たんがために本来あるべき方向ではない、または本来あるべき方向ではあるが必要以上に振れてしまう、ということに注意していかなければならない。

Q : 日本の安定政権については、安倍首相の4選を支持する閣僚もいる一方、(3月期で)辞めるという見方もある。代表幹事はどのようにみているか。

櫻田: 揺れていらっしゃるようには思わない。財界の立場からすると、既に安定した長期政権がある訳であり、経済三団体共催2020年新年祝賀パーティーにおいても、安倍内閣における最大の挑戦は社会保障と宣言されている。4選があろうとなかろうと、時間は十分にあり、大いに期待したいし、それに向けて必要なことは申し上げていきたい。

Q : 足元の景況感について全国と地方でそれぞれどのように見ているか。

櫻田: 地方の方が首都圏と比べると厳しい。全体として成長の勢いが落ちてきているだろう。倒産件数が何年振りかに大きくなったが、主に中堅・中小企業で大きく、その要因は人手不足問題にあると考える。常々申しているように、景況感を平均値で見ることはできなくて、同じ産業でも跛行性でまだら模様が広がっており、一言でマクロ的に何%、CPI(消費者物価指数)がいくらと言っても実感として伝わってこない。消費者や経営者が属する産業だけでなく、どの企業に属しているかも影響している。気を付けなければならないのは「平均の伸びが良くないからいつまでも(景気が)悪い」と言って、全体が落ち込むことは避けなければいけない。むしろ元気なところはどこかと探すことが大事で、同じことが地方にも言えると思う。政治は新陳代謝を嫌うが、倒産件数の増加が中小企業で顕著にみられている原因が、新陳代謝の遅れだとすると、新しいことを生むための痛みかもしれないので、一方的に悪いと言うべきでない。

Q : 希望退職、早期退職が昨年1万人を超えたという民間調査機関のまとめがあったがどのようにみているか。

櫻田: ポジティブな意味での希望退職や早期退職と、やむに已まれずという場合があり、1万人の中身を見ないと実態は分からない。通常話題になるのは、やむに已まれずというリストラ型だ。生みの苦しみならばポジティブなものだが、そうではなくて、縮小均衡への道しかなく、結果としての希望退職や早期退職ならば、その産業や企業は時間の問題で市場から退場する可能性もあるという危機感を持つべきだろう。

Q : 世代間のバラつきという点では、就職氷河期世代の前のバブル期世代は大量に採用され、今や50歳代の管理職となり、人件費ベースでコストが大きくなっている。50歳代のコストを、若手の人材を確保するための報酬アップに配分する目的で、希望退職や早期退職の募集が行われているとの見方もある。日本型企業の構成を経営的に立て直すという見方についてどのようにお考えか。

櫻田: (人材を)年次や塊ごとに区分し、生産のための企業活動の資源、道具として捉える限りは日本型雇用慣行や雇用人事制度が維持されるだろう。価値に対して本来の価値以上のコストをかけているならば削り、その分を若い人のために使った方がよいという考えには、はたしてそれでよいのかという問題意識を経営者は持つべきだ。50歳でも70歳でも30歳でも、その人の貢献度や付加価値が給与よりも同等ないし、高ければよいのではないか。50歳代だからと言って一律ではなく、ある50歳代は600万円、ある50歳代は300万円という仕組みがあるべき。逆もあって、若い人にしわ寄せがいってはいけない。50歳代がずっと会社にとどまり、20歳代が入れないのは避ける必要があり、その工夫はアウトプット主義に尽きると思うし、何時間働いたか何歳かではなく、その人が1時間にどれくらいの価値を生みだしたのかが分かる仕組みに変えていくべき。それはすでに世界であり、日本だけがやってない。世界初のノーベル賞(レベル)のことをやれと言っているわけではないので、早く実行することが重要で私も努力しなければいけない。

Q : 育児休暇についてお伺いしたい。小泉環境大臣が第一子誕生後、3か月の間に合計2週間分の育児休暇を取得することを表明した。テレビ会議やメールなどを最大限に活用することを検討しているとのことだ。企業での男性の育休取得の進み具合と課題と、検討時間が結構かかったが、小泉環境大臣が育児休暇を表明したことについて、どのように感じられたか。

櫻田: 印象的にはよくやったなと思う。確か国会議員は育休制度がないそうだ。国会を休み、3か月の間といえば、6月までになる。国会を休んでとなるので、なかなか勇気のいることだ。マイナスと彼自身の行動が世の中に与えるインパクトを考えたときに、彼はプラスと判断したのだと思う。そういう意味では一つのリーダーシップのあり方だと考えるので、評価している。翻って、本来どうかと考えたとき、企業では、産休ではないので、男女関係なく育休がある。育児の役割は男女違いますかというと、その答えは、少なくとも世界を見る限りはない。お母さんが働いて、お父さんが子どもをみる。またその逆が交代交代で起きたり、同時に起きたりするのは全然問題ない。そこに持っていくためのステップを各企業は考えなければならないと考えたとき、まだまだ、自分の経営する企業を含め、男性が育児にかかわらなければいけないという責任感は、女性に比べうんと少ないと思う。率先垂範が大事だと思う。私は確実にテレワークを週に一回、嫌がられても行っている。育児だけは私の世代ではできない。孫を面倒みる孫見休暇があれば、やりたい。そうした率先垂範がない限りは、パフォーマンス、ジェスチャーととられがちである。企業で(男性の育児休業を)遂行するためには、「やらないとまずいよ」という雰囲気を、どのようにして作るか。それはひとえに経営者の意思次第と思っている。それができないとダイバーシティ、インクルージョン、生産性といっていられないと思う。弊社も決して芳しくない。小泉環境大臣より刺激を受け、頑張りたい。もう少し若かったら、自分でやるが。

本日のホットトピック

Q : ダイバーシティの話が出たが、男性の育児に対する責任感はうんと少ないと思うとのことだった。育児に対する責任感を持つことが、企業の成長にプラスになるのか、またその理由を伺いたい。

櫻田: 育児に責任を持つことが企業の成長つながるとは思っていない。狙いはダイバーシティとインクルージョンである。ダイバーシティのうち、最も基礎的なところが、ジェンダーだと思う。男性の役割、女性の役割というのはあるはずがないのに、仕事でも起きてしまっている。家庭というのは出産して以降、男女の役割についてもっと話し合いができていれば、垣根がどんどん低くなっていくはずである。それもできないのであれば、企業の中においてダイバーシティ、インクルージョンといっても、標語に過ぎない。ダイバーシティが起これば、なぜいいかというと、イノベーションが起きるからだ。「違う」という意見がたくさん集まってはじめて、イノベーションが起きる。イノベーションが起きないところに、生産性の向上は絶対にない。つまるところ、風が吹けば桶屋というふうに感じるかもしれないが、男性が育児休業をとることイコール、イノベーションにつながっていくという確信のもとに、リーダーシップを経営者は発揮すべきだと信じている。

Q : 監査法人のローテーションを金融庁が見送るという観測記事があったが、経営者から見て、パートナーローテーションで十分だとお考えか、監査法人のローテーションをするべきなのか、何かお考えはありますか。

櫻田: 事の発端だと思う。事の発端はあまり形式的に解決する話ではないが、あまり癒着とは言わないかもしれないがある意味それを含めて考えた時に、監査法人まで変えなくてはいけないかというのは、経済同友会では議論をしていないが、私は個人的にはそこまでは必要ないだろうと思っている。当然のことながら、きちんとした監査法人は、自助努力でもってあそこで起きたような事態が起きないように、自己チェックもしている。そして我々に対しても説明責任も負っていると考えている。株主総会でも質問を受けた時には説明できるように、私もそうであるが、監査役あるいは監査委員の方々もそれに注意をしているということを考えれば、必要以上に形式的に回転させることで、それに伴うコストは馬鹿にならない。それを考えれば、私は決して不合理な判断ではないと思っている。

Q : 春闘の時期になってきて、多様性や日本型雇用の見直しが今年いろいろ言われている。経済同友会としては今、会員としていろいろなスタートアップの会社も入会されて、多様性の中で、スタートアップの人事など大企業からみてここが進んでいる、参考になるといった、経済同友会としての気づきがあったら教えていただきたい。

櫻田: スタートアップと付き合ってみて、スタートアップの経営者と話してみて感じたことは、非常に単純といえば単純であるが、スタートアップ企業の処遇、雇用体系は仕事ありきである。仕事ありきということは別の言い方をすると、やるべきことありきである。やるべきことありきで何々が必要だ、ミッションありきでこのようなミッションを遂行するためにこれくらいの処遇を払わないと人は来てくれないというところから始まっているので、大企業とはそもそも全然違う。そもそも全然違うけれども、どちらがこれから世界で競争に伍していくためにあるべき考え方かというと、明らかにスタートアップの方である。ミッションを遂行するためにどうしても1,000万円くらいの給料を払わないと人が来てくれないのであれば1,000万円出すし、500万円なら500万円、あるいは同じ企業の中でも1,000万円、500万円というのは、年次や年齢ではなくてアウトプット、その人が貢献するあるいは生み出す価値によって決まっていく。そういう意味では、私はスタートアップに学べるものはたくさんあると思う。そしてそのスタートアップの人たちは、結構横の移動がある、つまり流動性がある。転職をされる。創業者は転職というよりも、自分のつくった会社をEXITする、売却してまた別の仕事に行くということもあるが、したがって、それぞれのポジションにマーケットが出来上がっている。すなわち大企業であると、例えば大企業の経理部長は大体いくらだとか、あるいはその人事部長はいくらだとか、本来あるべきであるが日本にはない。したがってその会社の人事部長、その会社の経理部長はいくら。これだといつまでたっても横の展開はできないどころか、いわゆる(人材の)サーキュレーションがおきない。そうすると一生一つの会社にいて、最後までしがみつくのかは別としておとなしく一つの会社で終わる。ダイバーシティは起きない、イノベーションは起きない。かたや、スタートアップのところは制度の中で決まった処遇ではなくて、仕事をやってもらうためにいくら必要か、仕事をやってくれたのでいくら払うというような仕組み。先に仕事があって先にミッションがある点において、大きな違いがある。学ぶべきはむしろそちらであると思っているので、経済同友会も彼らと話をしながら学ぶべき点を学んでいきたく、大いにとりあげていきたいと思っている。

Q : 社会保障は1丁目1番地と話をされているが、医療・年金・介護など、応能負担とされる所得基準のあり方について、考えを伺いたい。

櫻田: 社会保障に関する所得基準の線引きについて、医療を発端に、年金・介護、そして働き方改革にも適用される応能主義が決まったことについて私は評価していると、(以前に)申し上げた通りである。応能負担の所得基準の線引きについて、私がここでいくらと申し上げることは出来ないが、大事なことは、その裏側に算数があるべきである。例えば医療で言えば、所得水準を300万円にした場合には、2割負担の人がどれくらい対象になるのか。その結果として、財政への負担減がどれくらいになるのかということ(計算)は、当然にして出来るだろうから、どこまで政府は、つまびらかにして決めていくかということが、大事だと思っている。いつの間にか決まりました、350万円、600万円では、良くないだろう。平均賃金というのは出されており、統計によっては年齢別の平均賃金も出ているので、調べようと思えばメディアの皆様も調べることができるし、私共もしっかり目をこらして見ていくが、透明性が何よりも大事で、蓋を開けてみたら、ワンコインと何も変わらなかったどころか、遠く届かなかったということになっているとすると、以前とそんなに変わらないと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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