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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年11月12日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)台風19号上陸から1か月、(2)GAFA4社から政府意見聴取、(3)安倍首相通算在任日数桂太郎氏越え、(4)全世代型社会保障会議、(5)職場眼鏡問題、(6)香港情勢、(7)在職老齢年金、(8)政府会議議事録不記載問題などについて発言があった。

Q : 台風19号上陸から1か月が経過し、被害状況の深刻さがさらに判明している。1か月経過しての所感と新たにすべきことなど、お考えを伺いたい。

櫻田: 今回(の台風被害)は(主に)水害だった。風害に比べ、水害は範囲が狭いというのが今までの経験則だったが、今回は非常に広い範囲で被害が発生した。水害は、範囲は狭いが査定に時間がかかる。何cm浸水したかを実際に見る必要があり、風害のようにモデルで推測することができず、(調査に)時間がかかるため、被害規模はまだはっきりしていない。S&Pグローバル・レーティングが発表したリポート「巨大台風の再来で、再保険コストの上昇が日本の損保会社の逆風に」では、台風15号、19号がそれぞれ昨年2018年の台風21号と同水準の災害とした場合、国内損害保険会社の保険金支払総額が2兆円を超えると試算している。相当程度の前提を置いて、しかもストレスシナリオをかけているため、2兆円の是非については何とも申し上げられないが、昨年の台風21号での損害保険会社全社の支払いは1兆700億円で、歴代最大といわれている。これを参考にすると、あくまで推測だが1兆700億円を大きく下回ることはないだろう。歴代最大の台風を意識はしている。実際の損害額については日本損害保険協会から正式な発表があるだろうし、SOMPOホールディングスは11月19日の決算発表で公表予定だ。また、2011年以降、毎年1兆円(の損害額)を超える自然災害が発生している。それまではほとんど起きていないか10年に1度だった。気象庁が本年5月に発表した温暖化と異常災害に関連性があるというコメントは、真摯に受け止める必要がある。受け止めた上で、政府の考えるところの国土強靭化政策の見直しは必要だろう。仮説の話ではなくなった。

Q : 本日12日、政府がデジタル市場規制を巡ってGAFA4社から意見を聴取した。今後、政府はGAFAの意見を参考にデジタル・プラットフォーマーのデータ独占に対する規制を強化していく方向にある。デジタル規制強化の動きに対する所見を伺いたい。

櫻田: 原理原則として、いかなる場合も規制はテクノロジーニュートラルであるべきだ。テクノロジー進化のために一生懸命背中を押すことも必要であり、テクノロジーの進化を規制することは望ましくない。今回のGAFA規制が、狙い打ちのようにとられるのはよくないし、日本にもGAFAの規模ではなくとも、その(デジタル・プラットフォーマーとなる)可能性のある企業はある。従って中立的であるべきだ。また、GAFA規制に限らず、課税権ではなく、個人情報の規制に及んだ場合、日本の強みであるリアルデータを規制することで、過度に新しいビジネスモデル開発を規制する結果にならないようにしていただきたい。リアルデータは、加工していないものの方が価値はあるが、加工していないと使えないとなると、その(加工の)程度をどこに設定するかがビジネスにとって大事な話だ。折り合いをどこでつけるかを民間企業とも意見交換をしながら、今回の規制を進めてほしい。

Q : 11月20日で安倍首相の通算在任日数が桂太郎氏を抜いて歴代最長となる。これまでのアベノミクスの評価と今後への期待や注文があればお聞きしたい。

櫻田: マクロデータから見る限りは、経済はよくなっており、(安倍政権の)経済最優先という公約は果たされつつあると思う。明らかに金融政策によって今の景況感がもたらされている。一方で、これからの一丁目一番地は社会保障と安倍首相は話された上で、全世代型社会保障検討会議を設置された。国民はこれ(全世代型社会保障検討会議)に注目していると思う。消費が伸びない原因は社会保障に対する不透明感、不安だと確信している。全世代型社会保障検討会議含めた会議等で切り込んでいくことを(安倍政権に)期待したい。それ以外は、主として政治の世界そのものに対してコメントすることは、今のところない。外交については、日本にかつてないリスクが頻発している。トランプ現象、中国、米中、中東等々、これらについては、G7の中で最も経験が長く、政権の安定している立場にある安倍首相が、世界の先進国の中でしっかりとしたハブ、あるいはオピニオンリーダーとして、今後とも世界を引っ張ってもらいたい。

Q : 全世代型社会保障のうち、いわゆる在職老齢年金に関して、一部報道で、厚生労働省が4,000億円くらい財政負担が増える案を、いま検討しているという報道があるが、そうなると、かなり櫻田代表幹事のお考えとは違うと思うが、どう思われるか。

櫻田: 案そのものについて正式に提案を受けている訳ではないのでコメントすることはできないが、少なくとも私自身が「全世代型社会保障検討会議」に出ている中で言っているのは、何といっても社会保障と財政は表裏一体の関係にあるということだ。ここをキーポイントとすると、すなわち「負担と給付のバランス」になり、その中に年金も入るし、医療も介護も入る。そういうことを見ながら、マクロの絵をしっかりと描きながら、ここをこういじると、このような財政インパクトがあるというのを常に意識してやっていくべきである、ということをずっと言っている。今ご質問があった点について言うと、何千億円か分からないが、その目的が何なのかということに照らして判断すべきだ。もしこの提案が、例えばいわゆる高齢者の働く意欲を促進させたいということから来ているのであれば、本当にそれが働く意欲につながっているのかということを、それは皆さん含めて、しっかりとメディア等を通じて調査した上で対応していく必要があると思う。

Q : 昨今BBCなどの海外メディアでも話題となっているが、日本企業の一部で「女性従業員は眼鏡を着けてはいけない」というのが、美容部員であったり、料亭の方であったり、企業の受付の方に対して言われている。そういうところが、彼らからはジェンダー差別なのではという指摘もあるが、この点についてご所感は。

櫻田: そういうコメントをした所(企業)はナンセンスとしか言いようがない。少なくとも外見で以て判断していい職種というのは相当に限られ、そのポジションにつく、あるいは就職するときに、そういうことを十分わかった上で、そういう職種についているのであれば、それは全然問題ないと思うが、後で話が違うじゃないか、というのはやってはいけないと思う。

Q : GAFA規制について、公正取引委員会によるデジタル・プラットフォーマーの優越的地位の濫用について議論があったが、先ほど(代表幹事から)ビジネスサイドと折り合いをつけながら、良いラインを探していかなければならないと話された。これまでのところで、公正取引委員会を含めた議論の流れは代表幹事として、過度な規制への懸念を感じるというような議論になっているのか、それとも、ある程度バランスがとれた形で進んでいると感じているのか、ご見解を伺いたい。

櫻田: 経済同友会はルールについてパブリックコメントを出している(経済同友会 「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」の改定案及び 「企業結合審査の手続に関する対応方針」の改定案に関するパブリックコメント」 2019年11月1日)。そちらに書いてある通りである。端的に言うと、随分努力をされているなと思う。ただこれは、現在の公正取引委員会のスタンスに対するコメントではない。当然のことながら、いわゆる企業結合に関するルールは、結合する対象となるマーケットが定義されて初めて数値化できるわけであり、この会社が何を営んでいる会社で、その営んでいる会社はどこにオフィシャルにマーケットをしているか、はっきりと定義できればいいが、今回のデジタル・プラットフォーマーの難しいところはマーケットの定義ができないと、例えばMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の代表格である Uberという会社は何業か、マーケットはタクシーか、自動車販売か、あるいはレンタカーか、と言った時に、どのマーケットを定義して支配的だとか、優越的地位にあるとするのかは非常に難しい。その中で、今、正に歯を食いしばって考えてみたら、今法改正をしないのであれば、今はこういうことではないかという提案を、公正取引委員会はされたのだと思う。これでおしまいでは、たぶんないのだろう。法律のハードルというか、ある種その限界と言うか、デジタルエコノミーを規制するルールとしては、かなりいっぱいいっぱいに来ているという感じがする。

Q : 台風19号について、1ヵ月経ち、小売店などでまだ営業が再開できていないところもある。BCP(Business continuity planning 事業継続計画)というような観点から、課題も見えてきているのかと思う。BCPにおいて各企業の策定にバラツキもあるが、代表幹事から見て、この災害から得た教訓について感じられたところと、BCPの策定について企業側としてどう取り組むべきか伺いたい。

櫻田: BCPそのものについては、遡れば東日本大震災の時から続く課題である。あの時に日本の大企業、製造業は、サプライチェーン、バリューチェーンの複雑さに驚愕して、徹底的に取り組んで来た。今回の台風19号がBCPについて大企業に大きな反省や、危機意識を与えたかというと、必ずしもそうでもないと思っている。むしろ中堅中小企業の方が(その意識は)あるのかと思っている。しかし、今回の水災について、どの地域でどのような損害があった結果、ビジネス・ディスラプションが起きているのかまで、集計できていない。これから、保険会社の最大のミッション(の1つ)だが、保険金を支払い、その後に防災減災のための提案を、政府に対してしっかりとしていくということは大事だと思っている。現時点でまだ反省点やこうだと語るだけのファクトが集まっていない、まず保険金をお支払いするというところという状況である。

Q : こういった災害が繰り返される事について、企業にとってどういった教訓があるのか、取組みが今後必要なのか。

櫻田: 損害を、経済損害と物理的損害に分けた時、企業にとってこれがニューノーマルだとしたらという前提の中で、経済損害つまり利益に与える影響、休業とか物流が止まることによって、工場や店舗が損害を受けること以上に、経営が通常通り進まなくなることの損害の方がずっと大きいはずである。ここについて、分析をすることが大事だと思っている。とりわけ今回の台風によって新しい手法でもって物事を見なくてはいけないとは思っていない、そこまで私は今回の台風が(新しい手法で見なければならない)特別なものだと思っていない。

Q : 台風19・20・21号が来て、19号については雨台風であった、10月の内閣府景気ウォッチャー調査で、北陸と甲信越、特に大雨の被害が大きかったところは、景況感が落ちている。中小企業がダメージを受けている。政府が補正予算編成を検討しているが、毎年台風、自然災害の被害が起きている中で、その時期が過ぎてしまえば、また来年になって同じことにならないようにするにはどうしたらいいのか。気象庁も今回は1週間くらい前から予報していたが、どれくらい災害に対する対策をしたらいいのかと、(これから)まだやるべきことはいっぱいあると思う。行政や政府だけに頼るのではなく、来年も来るであろう災害に対して経済界としての分析をして欲しい。生活再建となれば、現場は非常に困窮しているのが現状であり、消費にも結びつかない。うまく回復させるにはどうしたらいいのか。インフラ設備、河川そして電柱の強化にしても、できない部分もあるが、どのように総合的にやったらいいか、いろいろ個別に対応する部分があると思うが、どのように考えるか。

櫻田: 減災防災と言って抽象的に話をするより、国土強靭化はインフラだと思う。インフラというのは、河川、治山治水というところについてである。どれくらいしっかりと取り組むかということだが、国も地方も財政がこういう(厳しい)状態の中で、今のまま頑張れ頑張れと言っても多分違うだろう。国土強靭化計画7兆円を見直していく中で、今までと同じやり方で良いのかという問題意識を持っている。前にも質問をいただいたが、経済同友会として、防災・震災復興委員会を立ち上げ、どういう取り組みができるかと考えている。民間の資金を活用して、かつその金融ガバナンスを効かせながら、国土強靭化、インフラの強化に取り組んでいけないかということを考えており、そこは一言で言うと PFI(Private Finance Initiative)の活用について、我々が発起人というか、むしろ原動力となっていく仕掛けを作れないかと考えている。

Q : GAFA規制に関連して、GAFAほどの巨大な企業が日本にないとしても、既に業界の垣根が取り払われつつある状況で、楽天などを見てもインターネット市場に進出しつつ、スポーツにも参入しだしているしフィンテックもやっているという状況だと思う。この先業界団体の意味としては政府に働きかけたり業界の意見を集約するところにあるとは思うが、業界団体という分け方がどう変わっていくのか見解を伺いたい。

櫻田: これは以前より申し上げている持論であるが、業種別のセクターごとの縦の規制は、法律である以上残らざるを得ない。ただ、縦の規制だけで1つの企業をコントロールすることはできなくなっている実態は我々もちろんそうであるが、政府においてもよく理解している。したがって、未来投資会議での議論もあり、横串をさしてデジタル関係の事業を展開している企業をみていく。これは規制するだけではなくて背中を押すという意味も含めて。これから横串をさす法律やルールは、ハード・ローなのかソフト・ローなのか両方含めて出てくると思う。そういう意味では既に企業の方が進化しているので、事実に合わせてルールを見直していくことが必要になってくると考えている。

Q : 全世代型社会保障検討会議の中で 医療分野について先日の会議で日本医師会もいろいろ反対意見を述べられていて、収入に応じて工夫もしていけば大分妥協点はあると感触的に思われたのか、結構開きがあるという感触なのか教えていただきたい。会議1回目(2019年9月20日)が始まってからしばらくたっているがスピード感的にはご満足されているか。

櫻田: 満足しているかというと、自分の意見が通らないとみんな不満で、そういう意味では満足とは言えないが、もう少し合理的に言うと全世代型社会保障検討会議は社会保障で、医療だけではなく、年金もあるし、特にやや不安を感じているのは介護についての議論が足りていないと思っている。安倍首相は1回目の全世代型社会保障検討会議の時に、年金、医療、介護とはっきり仰っていましたから、介護はどこかでやるのだと思うが今までのところ年金の話があって、医療の話があって、そして先日は医療について議論があったけれども、そういう意味では介護は少し遅れ気味かなという気持ちを持っている。医療について折り合う余地はあると思うが、私は年金も医療も介護もこの3つについて、2つのことが大事だと思っている。1つは若い人が一番不安に思っている今の社会保障全体について希望が持てるか、霧が晴れたと思えるかということが一番大事だと思っている。それについていうとまだ足りていないと思っている。2つ目は年齢基準がどうも跋扈しすぎていて、何歳以上とか何歳以下だからいくらという非常に自然年齢を基準に置くと分かりやすいが、実際には前から申し上げているように若い人でも厳しい年収で生活する方もいらっしゃるし、年をとっていても大変豊かな方がいらっしゃる。そうした中で、やっぱり応能主義といいますか、能力に応じて負担するということが年金も医療も介護もあっていいはずが、応能ということについていうとそれはよく分かるという反応はいただくが、だんだん議論がすすんでいくと結果として年齢に基準を置いてしまうというのが今の状況かなと思っている。これからも若い人が希望を持てること、能力に応じた負担ということをずっと主張していきたい。

Q : 香港情勢(問題)が長引いていますけれども、交通機関がストップしたり店も閉めなくてはいけないなど、企業の影響についての声は会員の中からはあるか。

櫻田: 会員の中からでいうと全会員に聞いたわけではないのでその前提で申し上げると、じわじわ出てきている。輸出企業の一部もそうであるしインバウンドも特にそうなっているし、それは結果として気持ちに現れてきていて、結果としてそれが不安を掻き立てる。さっき申し上げたようにこれが原因で消費が伸びないというのはなかなか特定しにくいが、それこそ米国あるいはブレグジット、あるいはEUといういろいろなもの中の一つとして、消費者の心の中にこの香港問題というのは毎日毎日の報道もあり、やはり気にかかっているものの一つ、気持ちを暗くするものの一つということだと思う。両方合わせると、実際に経済的な影響は、当初予定していたよりはじわじわ出つつあると思っている。

Q : 在職老齢年金について、(65歳以上の人が減額対象となる基準を)現行の月収47万円超から62万円超に引き上げる案が出ているが、月収62万円以上で減額されても、高齢者の働く意欲には関係ないというお考えか。

櫻田: 様々なアンケートによって、影響の度合いは違うように出ている。しかし、高齢者にもっと意欲を持って働いてもらいたい結果が実際に財政への影響としてプラスに働くという効果はないだろう。もっと簡単に言うと、そこまで多くの人が在職老齢年金の減額対象かによって働くもしくは働くことをやめたとはならないと思う。

Q : 先ほどのメガネの件だが、眼鏡を強制されることについてはどのように考えるか。

櫻田: 良くないと思う。「仕事で眼鏡を使ってはいけない」という条件を了承して会社に入った方は仕方ないが、入ったら「実はこの職場では眼鏡をしてはいけない。それがお客さんのため」というのは良くない。約束違反である。

Q : 全世代型社会保障検討会議関連で、在職老齢年金制度に関する一部発言が議事録に不記載だった件、櫻田代表幹事はどのように見ているか。また、政府の会議議事録というのはどうあるべきかについて考えを伺いたい。

櫻田: どう見ているかは、私も同席していたし、中西経団連会長の発言を一言一句覚えているわけではないが聞いているので、議事録には中西経団連会長の意図はきちんと反映されていると思っている。本件で貴重な国会の時間を費消してしまうというのはあってはならず、国民は怒るだろう。議事録のあり方について言うと、生放送ではないので言ってしまったら後で取り返しがつかないということはあってはならない。よく考えて喋った通りだけれども「自分の意図と違う」ということで、発言者の意図がきちんと尊重される形に直されるのであればそれはああいう形でもいいと思っている。一方、国会議論のように生放送で放映されているものであれば発言者はそれだけ注意して発言しないといけない。今この場で行われている記者会見も同様だが自己責任ということになる。これ(記者会見)は議事録とは違うものであるから、そういう趣旨で考えている。

Q : 災害に関する企業の備えをお伺いしたい。(災害が)激甚化している中で企業はどのように備え、また取り組んでいくべきか。

櫻田: まず第一にBCPを進めるにあたって、各企業は間違いなくシナリオを持っている。台風、地震、火災、あるいはサイバーテロ等それぞれの発生する緊急時のリスク、新しいリスクに対してシナリオを作りシナリオに基づいていくらの損害が発生するのか、どれくらいの期間なのか、結果として利益はどれくらい減るのか、お客様へはどうするのかなど、各社が相当大きなシナリオを作っているが、それができる余裕があるのはいわゆる大企業だと思っている。むしろ我々が気をつけなければならないのは、中堅・中小企業に対してアドバイスができるようなBCPのテーマ、課題を見つけて提案していくことだと思う。経済同友会の委員会の中でも、一つのテーマとして取り組んでいければと思っている。次が、災害に対する備えだが、BCPの結果、実際に災害にどう対処するかについてだが、経済的な損害に対しては経済的な対処をすることである。その一つが保険をかけることであり、内部留保を高めることであり、減災のための投資をすることである。いくらかかるかの試算は各企業において既にやっているはずである。できておらず、厳しい立場にあるのが、中堅・中小企業であり、支援が必要である。最後に、各企業では対処しきれないものとして出てくるのがセキュリティと言っても、国防に関するもの、サイバーテロと言っても実際にシナリオを描きにくいものである。いつどこでどうやってどれくらいの損害が発生するか、攻撃を受けるか分からないものがある。これについては、各社恐らくその他損害としてリザーブを積んでいるはずである。

Q : 激甚化する災害において、事業の継続がしにくくなってくる、特に中堅・中小企業では顕著であることは櫻田代表幹事の仰る通りだと思う。復興災害委員会では、どのような議論をしていて、いつごろまでに、提言等まとめる予定なのか。

櫻田: 復興災害の範囲は広い。地方、インフラ、強靭化、といった観点から、また財政の状況を考えると、民間の資金をどうやって引き出すか、ということは最大のテーマになっている。民間の資金を引き出すに当たって、種となる仕組みとしてはPFIがある。PFIをしっかりとやっていくことで、委員会を超えて、地方創生とかインフラ強化への大きな取り組みになるのではないかと思っている。

櫻田: もうさんざんPFI(Private Finance Initiative)という言葉を使っているので、その背景も若干含めてご説明しますと、今、大規模災害がニューノーマルだということを申し上げたが、そのためには先ほどの国土強靭化計画を含めて、もう1回見直しが必要だということは政府も認めているところである。一方で今までの流れでいくと、予備費あるいは補正予算というかたちで、この国土強靭化計画を強化していこうということだと思うし、そのためには国債や地方債というように行きがちである。それはそれで否定するものではないが、私共としては国や地方財政が厳しい状況の中では、むしろ片方に内部留保は非常に溜まっている状況にある民間の資金をしっかりと引き出して活用できないかということに注目した。具体的に言うと PFI である。そして資金を活用してPFIをこの国土強靭化、防災インフラに繋げていきたいということから、(同友会として)PT(プロジェクトチーム) を立ち上げる。そして私たちは"Do Tank"を表明しているので、できるだけ実行まで関与していきたいと考えている。この PFI 法は、できてからちょうど20年目を迎えるということであるので、事業数、事業費、事業対象数と着実に拡大はしているが、ただこの PFI のよいところは、特にコンセッション方式を使うことによって公共サービスに対してそのファイナンスを通じてガバナンスを効かせられるというところにメリットがあると思う。こういった片方に国土強靭化の需要があること、片方に財政の課題があること、そして片方に内部留保があるということから、この PFI という機能、特にコンセッション方式の機能を再度強化することによって、トリプルウィンと大袈裟ですがそれぞれが課題を解決できる、ソリューションに繋げられるのではないかと思っているので、しっかりとやっていきたい。具体的には3月を目途に第一次案を上程したいと思っている。4月からは実行に関わりたいと思っている。

Q : PFI の構想はよいと思う。PTが来年の2020年3月を目途ということになると、半年もないのでかなり動き出していると思うが、メンバー構成、資金規模などがもし決まっていれば教えていただきたい。

櫻田: PTメンバーに関して今は同友会会員に限っているが、当然のことながら関与する組織は広くなるので、そこはどんどん必要に応じて広げていく必要があると思っている。ただ、これは私自身もしっかりと関与したいと思っているし、もっと具体的に言うと代表幹事と専務理事と二人三脚で、かつ優秀な力のある方々に支えてもらって進めていきたいと思っている。PFI は実は橋本専務理事の最も得意とする分野の一つなので、もし何かコメントがあれば。

橋本: もともと既存の委員会で「地方創生委員会」であるとか、以前の地方分権などの委員会(本年度の「自立した地域経営のあり方委員会」)があるため、地方のところに詳しい方々がいらっしゃる。今回の一つのテーマが、都内だけではなくて当然地方のインフラの更新も大きなテーマの中に入ってくるので、今、両委員会の委員長の方々と相談させていただいて、下には小委員会を作る方向で考えているところである。メンバーは同友会の方々(会員)で進める。櫻田代表幹事から述べたが、PFI 自体が施行から20周年に入っているし、従来からどんどん言われてきたが進んでない部分、進んでいる部分、両方あるかと思うが、もう1回洗い直しを3月ぐらいまでに行って、その上でどういう提言あるいはDo活動ができるかというところで、まずはこの数ヶ月間、洗い出しに注力したいと思う。これはもう当然国内だけではなくて海外の PFI 先進国の事例等も十二分に参考にした上で、考えていきたいと思っている。

Q : PFIについて発想のもともとの背景にある意識について伺いたい。例えば現在の国土強靭化、PFIの一つのメリットとして企業側も関わることで、その費用対効果に関してのガバナンスが効きやすくなるのではないかというのがある。例えば、現在の国土強靭化計画にはかなりの予算をつぎ込んできているが、その財源不足の中で今後ということと、改めて国土強靭化計画で今やっているインフラ整備の費用対効果というものも、民間の視点から見直してそこにガバナンスを効かせたいというような意識が背景にあるのか。一方でどうしてもその反面として、例えば今回等しく災害はいろんな地域で起こっていて、必ずしもいわゆる費用対効果という観点の中ではなかなか手が届きにくい地域、でもそこにも人はいるし、生業はしているというところに対して例えば国と民間が入るやり方との棲み分けみたいなものがあるのか、議論はこれからだとは思うのですが、その辺りの考え方をお伺いしたい。

橋本: 櫻田代表幹事が冒頭にお答えしたと思うが、国債や地方債を活用してやられるということも分かるが、それだけではなくということですから、例えば防災等の関係で待ったなしのものと時間をかけながらやれるものとかいろいろあると思うので、これについてはこれ、あれについてはこれ、というのを現段階で色分けすることはちょっと難しいだろうと思う。
櫻田: 経済合理性だけで判断すると、足りない部分はご指摘の通りなので、そこは国費という考え方が当然あると思う。だからポリシーミックスで行くということだと思うが、ポリシーミックスのうち、より民間資金の活用に対してもうちょっと光を当てないと、このままでは立ち行かないという危機感もある。

Q : 防災をしっかりして被害を食い止めることによる減災等はあるとしても、企業側がインフラ整備に投資するリターン、メリットはどこにあるのか。

櫻田: コンセッション方式で、所有権は不要だが、運営権を付与されることによって、いくら投資したら何年に渡ってどれくらいのキャッシュで回収できるかを当然計算しながら動くので、全企業が手を挙げるわけではない。逆に言うと経済合理性があるプロジェクトかどうかをよく見極めて民間は動くので、そこでガバナンスが強化される。今までのように、国費や債券によって賄ってしまうと、経済合理性はなくなり、ともすると支出と効果が検証されないままになる。つまり車の通らない道を一生懸命舗装してしまう、活用されない橋を作ってしまうことが起きるのを防ぐことができる。過去を見る限り、統計上、公共投資はようやく2009年頃に戻ったレベルである。ずっと下がってきて、第二次安倍政権で少し戻したが、実額の支出面でいうと、まだまだ過去の最高レベルを超えていない。公共投資を是としているわけではないが、国土強靭化=インフラ投資なので、ここについては民間の資金もしっかりと活用することをもう一回工夫してやっていくべきだと申し上げたい。

Q : コンセッションは、今、空港では、関西空港、仙台空港で行われていて、ターミナルビルだとお金が入るが、河川の堤防ではお金が入るとはとても思えない。どのように考えるか。

櫻田: 今ここで、白黒をつけることは出来ない。先ほど専務理事が話したように、(インフラ整備を)やっていくことを前提に、ここは国費である、ここは民間資金を十分活用できるということを、しっかりと識別できるような仕組み、考え方を提示すること大事だと思っている。このままいくと、各企業、各市、各県が独自に考えて、その(資金を)呼び込むというレベルであり、全国レベルでそういう(我々が考えるような)ムーブメントになっていないというのが私どもの認識である。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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