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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年10月30日(水) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)消費税増税、(2)閣僚の失言問題、(3)就職活動の採用ルール、(4)マラソン開催地移転、(5)ブレグジット、(6)徴用工、(7)未来投資会議、(8)RCEP、(9)関西電力の金品授受問題などについて発言があった。

Q : 消費税率が8%から10%に引き上げられてまもなく1か月となる。政府はキャッシュレス決済によるポイント還元制度などを導入したが、この1か月を振り返って、全国の会員所属企業の声なども含めて、感覚的にいかがか。

櫻田: 感覚的には大きな影響は出ていない。一番影響が出ているとすると自然災害を含めた天候要因によるものだ。特にB to C中心の企業のトップからは、昨年対比で9~10月は大きな沈みではなく、天候要因がなくなったあとに12月のクリスマス商戦がどうなるかが今の懸念だが、(税率引き上げによる影響を示す)エビデンスはまだ出ていないと聞いている。

Q : 萩生田光一 文部科学大臣の「身の丈」発言や河野太郎 防衛大臣の「私は雨男」発言など、閣僚が陳謝する事態が続いていることに対して、どのように捉えているか。また政府への苦言等あれば伺いたい。

櫻田: お気をつけいただいた方がいい、ということに尽きる。私が社員と話すときも、発言の重みを意識して上から目線とならないよう言葉を選んでいるつもりだ。公的な立場、しかも閣僚というポジションを意識すれば、一挙手一投足見られているということを意識して言動を選択することはとても大事だ。残念ではある。

Q : 学生の就職活動の日程について伺いたい。本日、政府の関係省庁連絡会議があり、2022年春入社は経団連のルールを踏襲した採用活動を実施するという確認が行われる予定だ。政府主導でルールを作っている状況にある中で、日程は混乱を防ぐために踏襲しているとはいえ、すでに形骸化が進んでいる。こうした状況について、どうお考えか。

櫻田: 経済同友会としての基本的なスタンスは変わっていない。混乱を回避した方がいいのだろうが、新卒一括採用のような世界で珍しい制度は、時間の問題でなくなっていくはずであるし、なくなっていくべきだ。ダイバーシティ&インクルージョンは、われわれや日本、世界が成長していくための1つのキーワードで、(新卒一括採用は)それに最も反していると言えなくもない。ただ現実問題として、当該年の就職時期にあたる学生は行動しなければならず、何を目安に活動すればよいか悩んでいるのも事実だと思う。一定程度、それに配慮することに反対はしないが、政府にはもとより、学生にも伝えたいことは、半年や1年間の就職活動で一生勤める企業や職業が決まるとは思わず、自由闊達に活動してみて違うと思ったら、勇気をもって職業の選択を変えるくらいのつもりで取り組んでいただきたい。それが世界の流れであり、日本が人材の宝庫として世界に対しても人材を供給できるようになっていくためには、そういうところから直していかないといけない。行き過ぎた同調性は必ず日本に対してマイナスの影響を与える。

Q : 本日30日から国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、東京都が調整委員会を開き、マラソンや競歩の札幌開催について協議する。来年7月に開催を控えた中でのこの状況をどうご覧になるか。

櫻田: 感覚的には、ものすごく唐突感がある。民間企業間の約束に置き換えれば、当該関係者同士の契約に基づいて協議、決着をつけるような案件だ。IOCと東京都、各方面の間でどのような契約になっているのか了知していないので、それに則って協議していくと思うが、何よりも必要なのは早く決めることだ。議論の結果、影響を被るのは、当該アスリートややきもきしている関係者であるため、早く決めることが何よりも求められる。また、契約関係があるのなら、詳細はともかく、事実関係が明確にわかるようメディアに示すべきだ。(路上競技の暑さ対策等に投じられた)300億円は大変な金額であり、税金が使われているのも事実だが、オリンピックの(マラソンと競歩の)ためだけにこの300億円が使われたというわけでは必ずしもない。他の施設同様、これからもメリットを生むことを考えれば、300億円自体が無駄だったとは思わない。今申し上げた3点をしっかり頭に入れて、早く決めていただきたい。

Q : 小池都知事から「(東京五輪のマラソン・競歩の札幌開催案を受けて)北方領土でやったらいい」といった発言があった。(IOCの)バッハ会長、コーツ副会長はともに弁護士出身で、契約関係には緻密に考慮していると思われる。費用負担や東京・札幌の気候面はともかく、なぜ今さらこのような問題が生じるのか。札幌は開催を歓迎すると思うが、東京2020を謳うのなら東京での開催にこだわるのも分かる。どのように考えるか。

櫻田: オリンピック開催にあたって、東京では地面からの放射熱は一定程度緩和する措置が採られるだろう。札幌開催の場合でも真夏には相当な暑さになることが予想される。確実にどちらが良いとデータとして分かるのなら、アスリート・ファーストの観点で選ぶべきである。いずれにしても、もやもや感が残るまま決まってしまうことは良くないので、我々経済界も注意して議論を聞いていきたい。必ずどちらでやるべきとは申し上げられないが、決定にあたって、かくかくしかじかという明確な理由を示すことと、今回の事態の経緯に関するIOCによる説明を求めたい。

Q : ブレグジットについて、先日の定例記者会見で(EUからの離脱)取りやめという一発逆転もあるかもしれないという話があった。12月に急転直下、総選挙が行われ、結果によってはEU残留支持派が代理国民投票と位置付けるという報道もあり、大きく枠組みが変わる可能性が出てきている。イギリス国民の選択でありコメントは難しいかもしれないが、どのような決着を望むか。

櫻田: 他国の国民の選択であり、代表幹事の立場でどうこう言うことはないが、一般的に国民投票が最も民主的で正しいとは限らないと言われている。正しい民主主義というのは、単なる賛成か反対かの多数決ではなく、正しい情報を正しく与えられた国民が判断してこそ初めて成立する。1回目の国民投票以降、これまで議論してきたことが国民に浸透しているのは間違いないので、国民の意思をより反映することになる。総選挙イコール国民投票ではなく、12月12日に予定されている総選挙の結果がどのようなものになるかによって、次の国民投票が必要なのかという話になると思う。(足元での)ハードブレグジットがなくなったことは日本にとってはありがたい。ソフトブレグジットであればよいのかというと、日本の経済界は元々ブレグジットについて賛成していなかったので、コメントできない。いずれにしても日本企業にとって(経済の先行きが)視界不良であることは変わらないので、既に採っている対策を実行していくことになるだろうし、ここにきて霧が晴れたからといってアクセルやブレーキ、ハンドルを切り替えるということはないだろうと推測している。

Q : 昨年12月に韓国の大法廷で徴用工をめぐる判決が出てから約1年が経過する。振り返ってみると今の日韓関係の悪化はその判決が直接の引き金になっている。判決から約1年経った現状の評価と、昨今見られる政府間の歩み寄りを踏まえて今後の展望を伺いたい。

櫻田: 簡単にいかないなという感想だ。大法廷判決は国と国との約束とは別に、個人の賠償責任は厳然として存在し有効であるという趣旨と理解している。韓国政府がその判決を撤回するという発言はしていないし、今後も出ることはないだろう。一方で1965年に結ばれた日韓請求権協定が存在しており、議論が交わることはなく、さらに感情論が加わるとそう簡単にはいかない。この問題を論理的に解決したくてもできないので、時間の経過を待つとともに「これ以上の喧嘩はやめよう」という空気がそれとなく出てくるのを待つのが一番正しいのではないか。論理的に突き詰めて白黒つけること自体はもうよいのではないかと思っている。経済への痛みは少しずつ出てきており、今のところは韓国サイドで大きくみられるが、日本サイドもキャッチオール規制の対象3部品に関して切り替えが起き始めている。決して両国にプラスにならず、第3国を利していることを冷静に理解すべきだが、いずれにしても時間がかかると思う。

Q : 昨日、未来投資会議で、高齢ドライバーの事故防止・削減に向けた取り組みを年末までにまとめる方針が、総理から閣僚に指示された。自動ブレーキや急にアクセルを踏んだ際の抑制がついたサポートカーの普及を加速させたいとのことだが、企業側から加速する手立てはあるとお考えか。

櫻田: 総論から言えば、おっしゃる通りだ。未来投資会議については、他の議員の意見をコメントしてはいけないことになっている。ただ、全議員がその方針について賛成ということだったと、私は理解している。サポートカーにまつわる企業というのは、いろいろなところが出てくるが、自動車、保険業界、インフラを作っている企業、そこに部品を提供しているIoT・デジタル関連の企業がある。当然賛成だと思う。一点申し上げたのは、(サポートカー普及加速に)もちろん賛成だが、片方で議論されている、高齢ドライバーの免許返納の定年制、何歳以上になったら免許を自動的に返納するということについては、慎重な立場を取っていると申し上げた。理由としては、国立長寿医療研究センターによると、車の運転をする方は、運転をしない方に対して、認知症のリスクが約4割減少するという研究結果が出ている。つまり、認知症予防に非常に効果的なのが、車の運転だ。想像していただくとわかる通り、耳で聞いて目で見て知ったことを、手や足に瞬時に伝達するという、総合的な機能を、脳にプレッシャーとともに与えるという運転は、最高にいい。一方で、認知症の方に対し、危険だから取りやめさせるという仕組みはもちろん必要だ。他方で、そうでない人については、認知症にかからない健康寿命を延ばすという意味においても運転は必要。(健康年齢には)個人差がある。したがって、一定の年齢になったら返納という仕組みができるのには、大変慎重でいたいし、端的に言えば反対している。もう一つは認知症について、高齢者に実際に運転シミュレーターに座って運転してもらうと、どの程度の認知症の進度なのか分かる仕組みが出来上がっている。シミュレーターをやってもらうと、この人はトレーニングを受ければ、この状態が維持できる、この人は危ないといったことが徐々にわかってくる。そういった仕組みを取り入れることで、健康寿命・運転寿命を同時に延ばしていく仕組みができる。治験、エビデンスがまとまったら、国にもぜひここは応援してほしいということを申し上げた。

Q : サポートカーに限定した免許の交付についてはどうお考えか。

櫻田: サポートカーを運転することを、あらゆる人に認めることについては、今のオートマチック専用の免許とそう変わらないので、それについて反対賛成ということはない。「あなたの場合は、サポートカーしか運転できない」ということについては、運転できない状況がどのような状態なのか、本人はもとより、周りの人が納得できる仕組みを作ってほしい。一方的に「75歳だから自動的にサポートカーしかだめ」ということについては、先ほど申し上げた理由から慎重に考えている。

Q : (高齢者が運転する車を)選択できるならよいということか。

櫻田: 選択できるならいい。

Q : 1965年の政府間協定(日韓請求権協定)の話と元徴用工問題への判決以降、(日韓関係は)平行線をたどっている。主に韓国側から出てくることが多いが、1+1といった日韓の企業同士で基金をつくるという案が6月に出てきて、報道では日韓の企業と政府の2+2といった案も出ている。日本の民間企業が一部拠出するような基金について、協定の趣旨を逸脱しない範囲で民間企業がボランタリーに資金を拠出する案については、どのような印象をお持ちか。

櫻田: 経済同友会としては、スキームが謎なので、議論はしていない。私の知る限りにおける印象としては、あまり筋のいい提案ではないと思う。それで何がどう進むのか、そのような仕組みを仮につくり、ボランティアという形で乗っかったとしても、何がどう進むのかよくわからない。少なくとも韓国サイドで国民に対し、きちんと説明責任を果たさなければいけないことが多いと思うので、お茶を濁すことになると思う。白黒つかないので、お茶を濁すしかないと申し上げたのに、今度はお茶を濁すのはおかしいと言っているように映るかもしれないが、それとこれは違う筋だと思う。

Q : RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の閣僚会合が(11月1日にタイで)、首脳会合が(11月4日に)開催される。世界中で貿易摩擦が広がっている中で、経済界として、RCEPへの期待、(各協議分野の)中でも自由貿易決定への可能性、金融サービスなどいろいろ(協議分野は)あるが、RCEPの特にどの分野に期待しているか、代表幹事のお考えを伺いたい。

櫻田:個別の品目や制度について、こうであるという考えはないが、世界全体がマルチ(多国間)から、バイ(2国間)への流れにある中で、少しでも多くのマルチの仕組みを作っていくことは、自由貿易を生命線とする日本においては、不可避であり、必須だと思っている。したがってTPPが今11(ヵ国)という形で、とりあえず小康状態になっている中で、マルチを進めようとすると、このRCEPは一番近い。2国間協定というのも意味があると思うが、2国間協定よりもマルチ、そうするとRCEPとなる。しかも時宜を得て、グローバルな中で、米中貿易戦争も相まって、中国が歩み寄る姿勢を見せていると理解しており、そういった意味でも、中国が(RCEPに)参加してくる、インドもひきずられて(RCEPに)参加してくるとなってくると、近い将来、米国もマルチのメリットを真剣に考える時が来るであろうから、RCEPについては、(年内の妥結を)標榜しているようであるが、実現していただきたいと思う。

Q : 関西電力の金品受領の関係について、内部統制システムの構築と運用、コンプライアンスの徹底、この2つが問われており、これらは経営者の関与が最大の弱点と言われていたが、現実のものとなった。内部統制とコンプライアンスの徹底、経営者が律するにどうしたらいいか、元々経営者が関与したら全てがおしまいだと言われている制度であるが、今回の現実を踏まえて、代表幹事の意見を伺いたい。

櫻田: 今回の関西電力のケースは特殊なケースであって、このケースでもって、日本企業に限らず、企業ガバナンスを論じるのは、少し違う気がする。指摘の通りで、経営者が関与したら、信ぴょう性がなくなってしまうという点では、(関与は)論外である。少なくとも、今回の関西電力のケースでもって、各企業は実効性あるガバナンス強化に向けて、「脇を締めてかかりなさい」と言えば、多くの経営者は「何を言っているのか」、という反応をされるであろう。そういう次元とは違うのではないかと、(経営者から)言われてしまうであろう。どのようなガバナンスであっても、監査役設置会社であっても、指名委員会等設置会社であっても、複数の社外取締役を入れているケースであっても、過半数が社外取締役を入れているケースであっても、一番大きな点は、経営トップ、CEOのスタンスであり、そこが崩れたら、全てが崩れるのは世界中、どこも変わらないであろう。

Q : 昨日、未来投資会議で首相からポスト5G(技術による通信システム)に関して、半導体、産業機械や自動車(業界と協力して)国家プロジェクトを行いたいという話があった。産業界として(先行する他国に対し)巻き返すプロジェクトは何が考えられるか。また、甘利自民党税制調査会会長や政府は企業が保有する200兆円を超える現預金(で経済)を活発化させる税制を検討しているが、それに対する評価を伺いたい。また、海外でのM&Aは金余りによって(価格が)高止まりしている現状であるが、税制を変更することでM&Aが促進されるか、率直なご意見を伺いたい。

櫻田: (昨日の未来投資会議では)、5Gについて、民間の議員が様々な発言をした。5Gの捉え方は、何点かある。例えば、通信システムに必要な5G向けの半導体をどう考えるのか。5Gを活用した製品やサービスをどう考えるのか、5Gを通信に使用するために必要な高価なインフラである光ファイバーをどう考えるのか等である。5Gに関する特許の数はアメリカを筆頭に、中国などが持っているが、日本(の企業)は9位までには入っていない。その中で、5Gの特許の数を増やすなど技術の世界で、日本は戦っていくのかという問いを立てれば、自ずと答えが出ると申し上げた。賛同が得られたかどうかは分からない。一方で5Gの最大のインフラの一つである光ファイバーはOECD諸国の中で最も進んでいる。アメリカで(日本と)同じようにしようとすると、100兆円(莫大なお金が)かかる。また自動車やロボティクスも日本は進んでいる。5Gの仕組みの中で、5Gを使って新しいサービス、製品を作りだすことに日本の強みを見出すべきではないかと発言した。5Gにおける日本の競争力を一気に官民を挙げて高めたい。地政学的、安全保障の観点を含めて、5Gに対して国、日本企業は警戒とまでは言わずともしっかりと注意を払わなければならない。M&Aの相場は世界的に見ても業界問わず高い。現在の純資産倍率、もしくは利益規模、収益率に対して高いという意味だが、パラメーターを変えて将来の収益率が非常に高くなるとすれば、計算上の純資産倍率は下がっていく。したがって、現在高いといえるかどうかはよく分からない。依然としてM&Aの熱は日本でも高いと思っている。現預金がかなりの部分M&Aに活用されるのは想像に難くない。M&A税制は、特に中堅中小企業を意識して支援する仕組みだが、経済界としては歓迎である。問題は買い手側の企業が何のためにM&Aをするのかについて、きちんと説明できる具体的な目的を持っているかであり、何となくでは後で痛い目に合う。その点は言わずもがなであるが、注意したいと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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