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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年9月17日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)台風15号、(2)内閣改造、(3)全世代型社会保障検討会議、(4)日韓経済人会議、(5)サウジアラビア石油施設攻撃、(6)ホルムズ海峡問題、などについて発言があった。

Q : (台風15号の影響で)千葉県では依然として6万4000戸あまりで停電が続いており、当初の東京電力の見込みよりも復旧が遅れている。非常に速やかな復旧が求められる状況に違いないが、この現状について所見を伺いたい。

櫻田: まず、経済同友会の代表幹事として、損害保険事業を持っている企業グループのCEOとして、今回の台風で被害を受けられた方々に心からお見舞い申し上げる。千葉県を中心に、今回の問題は想定以上に復旧に時間がかかっていることである。実は風台風(による災害)は通常よりも後になって損害が分かったり、発生したりすることがある。この点について、雨台風(による災害)よりは比較的復旧に時間がかかることは理解できるが、今回は想定以上に長引いたという気がしている。おそらく、これについては政府も東京電力を含めて、しっかり検証して再発防止に努めるように指示をするものと思われる。なぜそこまで復旧に時間がかかっているかについては、正式な報告を受けているわけではないので申し上げられない。損害の規模を私の(グループCEOの)立場から申し上げると、かつての(2014年2月に発生した)首都圏での雪害並みあるいはそれを超える可能性があり、甚大な被害をもたらしている。私ども個社で見ても(損害額は)1,100億円を超えると思われ、かなり深刻な状況にある。いずれにしても(東京電力等には)早急な復旧と再発防止に向けて調査をお願いしたい。

Q  : 先日、内閣改造が行われ、本格的な実務型の人事という評価がある一方、滞貨一掃型の人事という評価もある。これについて代表幹事の所見と評価を伺いたい。

櫻田: 改めて安倍首相が示された「安定」と「挑戦」というキーワードに沿って、新しい閣僚になられた方々、党の重役になられた方々を拝見した。個別の方々についてコメントする立場にないが、私としては、「安定」と「挑戦」というキーワードを挑戦に向けて足元を固めるための安定と理解している。今まさに政治には、若い人たちが将来に希望を持てる国、社会をつくることが最大のミッションとして求められており、まず足元をしっかりと固めて、目的はあくまでも未来志向の挑戦をしていく(ことを期待したい)。挑戦と言うからには、厳しくチャレンジングなものでなければならない。時には次世代の視点に立った社会保障改革やデジタル化の時代に相応しい大胆な規制緩和が求められる。スピード感をもってこれらを実施していく(必要がある)。これが挑戦のための安定だと理解している。

Q  : 今回の台風15号による被害では、環境や気候変動の影響を言及される方もいる。これに対する見方、また気候変動によりこれまでの予測が使えなくなったのであれば今後どのようにすべきかなど伺いたい。

櫻田: 経済界としても、保険業界としても深刻な問題だ。自然災害が温暖化によって発生しているという科学的根拠、エビデンスに未だ明々白々なものはないが、明々白々な事実がないと対策を取らないというのは間違いだ。すでに発生している損害は、明らかな経済損害として出ていくわけで、損害をカバーするための仕組みは保険だけにするのではなく、国が補償する仕組みはどのようになっているか、世界全体で自然災害に対してどのような形でスキームを組むかについて本格的な議論を始めるべきだ。台風15号による損害の一つは風災であり、電信柱、電線が地中化されていれば、風災は防げたかも知れず、これらを含めて検討しないといけない。また税金の多くは社会保障関連に割り当てられており、国土交通系のインフラ(への割り当て)は課題とされてきた。全体を見直す時期に来たのではないか。ただ単に保険で支払い、保険料が上がって終わりとなってしまって、建設的ではない議論が進むことを恐れている。

Q : SOMPOホールディングスでは1,100億円の損害とのコメントがあったが、何の金額か。

櫻田: 火災保険、自動車保険で支払われる金額だ。ただ、一つ一つの物件を調査した結果ではなく、今現在、報告を受けている件数と過去の災害などのデータをもとに試算した金額であり、かなりぶれる可能性はある。少なくとも1,100億円と聞いている。

Q  : 新たに設置される全世代型社会保障検討会議に櫻田代表幹事もメンバーに起用されているが全世代型社会保障に向けて、どのような意見を主張していきたいか改めて伺いたい。

櫻田: 実は正式に要請を受けたのは今日のことで、そもそも全世代型社会保障が具体的に何をテーマとして、どのような目標、期間であるかを必ずしも正確に把握していないため、これについてはコメントできかねるが、任命された以上はしっかりやっていきたい。主張すべき点は、先日も申し上げた内容と全く同じだ。経済同友会がDo Tankとして飛躍するための一丁目一番地のテーマが社会保障だ。社会保障問題に一定の目処をつけ、(一般国民に)将来に対する安心感をもたらし、投資に活力を向けていく。社会保障の構成要素である年金、医療、介護のうち、年金については2004年にマクロ経済スライドを取り入れたことで、誤解を恐れずに申し上げれば、入るをもって出ずるを制するようにしたため、制度としては安定性がある。しかし、所得代替率50%についての前提条件がはっきりしておらず、前提条件次第では(数字が)大きくぶれる可能性がある。そのため、客観的な政府から離れた立場でもって財政を検証する独立機関は必須であると主張したい。次に、医療についてである。様々な議論があり、政治的な壁も高いが、やるべきことは比較的明確である。例えば健康保険は年齢ではなく収入に応じて負担を増やすことで公平性を担保する。合理的で廉価な医療サービス体制を構築した機関に対してインセンティブを付与する仕組みにする、遠隔医療は質と効率性を両立する(ことが必要である)。最後は介護についてである。介護保険料や公費が投入されている介護給付費は18年度で10兆7千億円、2025年度には15兆3千億円となる。15兆3千億円はとてつもない金額の支出であり、受け手には(大きな)マーケットとなる。現段階ならまだしも、団塊の世代が後期高齢者になる2025年頃には、支出は増える一方である。しかし、年金や医療と比較すると、介護業界は万単位の中小企業が存在していて、業界としての(一定の)水準や効率性を確立できていない。保険料は少なくすべきとする一方、保険料を効率的に使ってサービスの質を向上させなければならないという二律背反するテーマがあり、解決策を検討する場がない。簡潔に言うと、介護について論点が明確になっていないのが最大の問題である。社会保障、医療に比べ(介護は)今後費用が増加していくだけではなく、世界的に見て、最大の挑戦的な課題になる。会議で発言の機会が与えられれば特に介護について注力したい。

Q : 日韓関係について、来週日韓経済人会議が開かれる。表立って財界で両国がやり取りするのは対立が深まってから初めてのことだと思う。色々な方に話を聞いていると、韓国の財界や財閥の地盤沈下がかなり進んでいて、対話そのものに意味があるのか、という見方をしている方が多いが、どう見られているか。

櫻田: 短期的にどうこうという点について大きなことを期待すべきではないと思う。私自身も現場に近いところの話を聞きたいと思っている。先週台湾に出張した時に長い間つき合っている韓国の経済人の方とプライベートで話をした。その時、彼は韓国のメディアについて話していた。「韓国に来て永登浦(ヨンドンポ)を歩いてみて、韓国のメディアが報道しているようなデモが起きているかどうかその目で確かめてくれ」と言われた。私はまだ行っていないが、「何も変わらないことに気が付くはずだ。街を歩いている普通の人達や一般の韓国の人達が報道されているような事態を望んでいないどころか、実際に行動もしていないことが分かるはずだ」と言っていた。煽っているということに彼は憤りを感じていたとともに、日本のメディアに対しても、「(韓国メディアが)煽っているのを見て、また(日本メディアが)煽り返しているような気がする。本当はそんなことはないのに、なんで煽り合戦をやっているのか」と話していた。ファクトは分からない中で、メディアや我々経済人も含め日本側はルールベース、ファクトベースの議論を徹底するべきだ。今回の(韓国政府による)材料3品目の輸出規制もあくまでWTOのルールに則ってやるべきで、ルールベースに繋がる。また、とにかく感情的にならないこと、しかしぶれないことだ。言われたのでそれでもいいかというのではなく、やはり筋は通すべきだ。「煽らない、ルールベース、ぶれない」の3つは続けていけばいいと思うし、韓国の経済人はそこは分かっていると感じた。個人的な知り合いの話であり、韓国経済界全体に対しては話せないが、あまり変わってはいないと思う。日本の経済界についても同じ意見だと思う。

Q : 大きなことを期待すべきではないということだが、韓国側から両政府に対して、融和の姿勢を求めるようなことは言いづらいという意見もあると思うが、その辺の方針が出てくる見込みはどのくらいあるのだろうか。日韓経済人会議の中で両政府に対して今の状況を打破すべきという強いメッセージが出せるのか。特にそれは韓国側が出したがらないのではないかという意見もあると思うが。

櫻田: (韓国側が)出したがらないのか、出せないのか分からないのでコメントできない。日本より政経の分離が難しいと聞いている。(先述の韓国の経済人の話なので)韓国人の一般の声と捉えられると困るが、日本に比べると政経分離を主張しにくい環境にあるとは言える。前から政治は政治でやってくれ、経済は経済でやるからとずっと申し上げてきたし、日本の政治は目くじらを立てることはないと思うし、その(韓国のような)状況にはないのかもしれない。正式なコメントとして申し上げられない。

Q : サウジアラビアの石油関連施設攻撃により、東京の原油先物価格が上がってきている。今後こうした状況が続いた場合、日本経済及び経済活動への影響をどう見るか。どうしても原油は、日本は中東に依存せざるを得ないが、この状況をどう見るか。

櫻田: 少なくとも短期的に1年以内か、中長期で考えるかで、別の話になると思う。1年以内でいうとど真ん中(でビジネスをされている会員)の方がいらっしゃるので、可能な範囲で意見を出していただいたが、その話にはあとで触れる。第一に、いわゆる70年代、90年代のような石油危機と同じような状況は起きないと思う。(石油供給の)構造が変わってきている。米国が世界最大に近い石油の輸入国であったが、現在はおそらく世界最大の産出国、純輸出国に変わったことが非常に大きい(変化である)。その意味では、今回の危機で石油の供給が絞り込まれていっても、1つ目は米国が純輸出国となっていること、2つ目はヨーロッパは100日、日本は230日を超える備蓄を持っているので、1年という短期で見れば、危機的な状況にはないといっていいと思う。ただ、中国経済については、状況がよくわからない。もしかしたら、もう少し慎重な言い方をすべきかもしれない。中長期という観点で、もしこの状況がこのまま続くだけでなく、1年以内にさらに悪化し、いわゆる戦争になると事態は全然変わってくると思う。戦争にならないようにするため、日本を含めた関係各国においては、ありとあらゆる外交手段を通じて、武力による衝突は絶対に避けていただきたい。武力により得るものは何もないということだけは、経済界としてはっきり申し上げておきたい。今回のように、無人機が民間の施設を爆撃するテロは、全世界で非難に値する。全世界が厳しい視線と声を発するべきと思う。したがって中長期にこの問題が及ぶか、あるいは、武力衝突が起きた場合、今の予想は当てはまらず、大変厳しい状況になる。それに向けて、我々経済界はありとあらゆるアンテナ張って備えていく、今具体的にどうするかといえば、備蓄(に依ること)と石油依存を下げるしかない。短期的に石油依存を下げることはできないので、脇を締めてそれに向かってしっかり交渉していくことを考えなければならないかもしれない。

Q : 環境大臣に小泉進次郎氏が就任された。直接のエネルギー政策というより、福島第一原子力発電所の汚染水の問題があると思う。(原田)前大臣は「(処理水について)海洋に放出が必要」との発言をし、論議を呼んだ。第一原子力発電所の汚染水、除染水について所感があれば伺いたい。原発については、依然として再稼働していないが、経済同友会として縮・原発を掲げる方針に変わりはないか、ご意見を伺いたい。

櫻田: 小泉氏が環境大臣になられたことに対する期待としては、具体的にどうこうということはないが、環境大臣として若いエネルギーを新鮮な目でもって見てほしい。そのうえで、汚染水の問題については、しっかりやってもらえばいいと思う。少なくともエネルギーについては国の関与をもっとしっかりしていただきたいということを、強く申し上げておきたい。小泉氏は社会保障に関しても造詣が深い方だ。国が関与することの問題、テーマというのは社会保障、防衛あるいはエネルギーであることは、恐らくすぐにお気づきになっているはず。同じスタンスでもって望んでいただきたい。私共は縮・原発といっている。原発を、増やしていくことはないにしても、少なくすることは大いに必要と思うので、国が関与してしっかりやってほしい。国の関与という点でいうと、原発の運営、あるいは、あってはいけないが、万々が一損害が生じた場合、責任をどうするか。民間だけが無限責任を負う国は、私が探した限りでは、なかなかない。フランス、イギリス(の原子力発電所は)国営であり、アメリカは民営だが、有限責任である。民間(企業)に無限責任を負わせる仕組み自体がどうなのかなと思う。そういったところを含め、未来志向で見ていただきたいと思う。

Q : 中東の件で、中長期の課題について、石油依存を下げることはどうなのか、エネルギーの安定調達について、中東依存を下げるために、いろいろな投資は難しい状況ではあるが、ロシアをはじめ、調達先を多様化させるための資源投資は必要なのかどうか。ホルムズ海峡の問題もあるが、日本は米国の有志連合に単純に加盟するのは難しいと思うが、その辺りの考えを教えて欲しい。

櫻田: 簡単な解答がなく、一両日中にどうこうということではない。これまでの日本のエネルギー政策、あるいはエネルギーの効率的な利用に向けた技術開発は、世界に冠たるものがある。かつてよく言われた、「原油の価格が下がると、代替技術の開発が進まない」という話があったが、このような事態は、経済合理的にはありうると思う。おそらく産業界、特に政府はこういった(エネルギー調達の不安定化という)事態はいつでも起きると念頭に置きながら、こういった事態があろうとなかろうと、代替エネルギーに対する投資は積極的に進めていくべきである。調達の多様化という点では、外交ルートを通じて、ロシアやその他の国から続けていくわけである。こういった現実的かつ、地道な努力を、外交ルートを通じて、一生懸命やっていく、技術開発、調達の多様化はずっと続けていくことが日本の宿命であり、続けていくしかないことである。2つ目の、ホルムズ海峡問題については、ややこしく観点が違うかもしれないが、日本にとってはあの地域の安全がどうして大事かというと、石油の確保に尽きるということである。日本にとって安定して、かつ安全に原油を輸入できる、それを確保するためにどうしたらいいかという観点から、法律にしたがって判断すべきであって、いわゆるイランを敵国化し、それに対峙する形で、そちらのグループ(米国の有志連合)に加わるというのは、政治が判断することとはいえ、慎重に判断した方がよかろうというにように私は思っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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