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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年9月3日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)内閣改造、(2)企業内部留保、(3)消費増税まで1ヵ月、(4)マイナポイント、(5)財政検証、(6)リクナビ問題、(7)香港情勢、(8)社会保障改革、(9)日韓関係、などについて発言があった。

Q : 本日、安倍首相が来週に内閣改造を行うことを明言した。外交や経済等も含め課題があるが、期待や注文があれば伺いたい。

櫻田: G20、参議院議員選挙、G7を経て、(安倍首相は)課題を認識し着実に取り組まれているが、次が何よりも未来志向型の内閣になることを期待する。(課題を)先送りせず、痛みを伴う改革、場合によっては不都合な真実にもしっかりと目を向けて取り組んでほしい。未来志向の課題(解決)実現内閣をぜひ期待したい。

Q  : 昨日、財務省の統計で企業の内部留保が7年連続で過去最高を更新したと発表があった。企業の守りの姿勢が鮮明になっているとも言われるが、米中貿易摩擦が長期化する中でこの点について見解を伺いたい。

櫻田: 世の中を挙げてリスクオフを求めている傾向にある。(法人企業統計は)連結決算ではなく単体決算ではあるが、460兆円以上が溜まっているのは間違いない。これは企業努力の結果であり、現在の460兆円(の内部留保)そのものが良い、悪いとは思わない。ただ、ほとんどの企業は、リスクオフの中でどうやって収益を上げていくか、マルチステークホルダーを意識しながらどのようなレベルの投資をするかを必死に考えているので、単に(内部留保が)溜まっているから悪いと言われるのは、私としては納得がいかない。企業経営者は誰一人として無駄に資金を滞留させたい気持ちはない。おそらくリスクオフの状態から抜け出すべく、先行投資的、つまり生産性を上げるための投資、労働力不足に対する投資、あるいはデジタルディスラプションに対する攻めの投資を着実に考えていると思う。もう一点、単体決算という点では配当で吸い上げない限り効いてこないが、当然のことながら多くの企業がM&Aを視野に入れていると考えている。

Q  : 消費増税まで1カ月を切ったが、軽減税率が複雑であるとともに、(軽減税率対応)レジの生産自体が遅れている等の理由も相まって、中小企業を中心にレジ(導入)の対応が遅れている。準備が進んでいない状況をどう捉えているか、政府に対してどのような改善を求めたいか見解を伺いたい。

櫻田: 軽減税率は、特にB to Cのビジネスを展開している企業に影響が大きいと思うが、本会会員の中で(消費増税および軽減税率が導入される)10月1日を挟んで混乱が予想されるという話や困っているという話は、直接は聞こえてこない。ただ、これだけの規模で対応するので、当然、何らかスムーズにいかないことも起きるかもしれないが、それ自体が今回の消費増税の是非を問うものではない。(問題が)発生したら直ちに是正する取組み、準備をしておく(ことが重要である)発生しうる事務的な課題について各企業は、検討していると思うので、それに期待する。もう一つ、キャッシュレス化は、デジタル政府(推進)の取組みの中でも出てきているが、日本全体が現金大国と言われており、現金の使用率が高い。消費増税を機にキャッシュレス化の推進に向けてしっかりと策を練っていくべきである。本日も政府から(マイナンバーカード取得者を対象にキャッシュレス決済でポイントを上乗せするという)発表があったようだが、そういった点については進めていくべきだと思う。

Q  : 政府は、マイナンバーカード取得者を対象に、スマホ向けキャッシュレス決済サービスに事前入金すると、国が「マイナポイント」を付与することを決めた。受け止めをお聞きしたい。

櫻田: 「マイナポイント」という名称は「マイナンバーポイント」ではなく「マイナスポイント」のようにも聞こえるので、もう少しよい名称はなかったのかと思う。日本は、経済大国にしては現金使用率が高すぎる。様々な事務負担を生むだけでなく、犯罪を惹起しやすいという点においても、キャッシュレス化を進めるべきだ。何らかの形でインセンティブを与え、(キャッシュレス化が)推進されることはよいことだと思う。基準を作らず、キャッシュレス化すれば(なんでも)得になるというわけにはいかないため、マイナンバーカードの普及推進と結び付けたのだろうが、これについてはよいことだと思う。留意するとすれば、ポイントが過大になる、もしくは一時的ではなく継続的にインセンティブとして(ポイントを)付与するとなると財政の負担が大きくなるので、あまりたくさんおまけを作らないようにすべきだ。

Q : 消費税増税前の駆け込み需要の現状と、増税後の冷え込みについてどのようにお考えか。

櫻田: 駆け込み需要が起きていない理由は、一義的には政府が対策、対応してきたからだろう。(需要ピークの)山が低ければ、当然、谷も低くなるので、(増税後の)反動は少ないと思っている。消費増税の問題以上に、消費意欲が伸びない点が心配だ。以前より申し上げている通り、(消費税率)8%から10%への増税が理由で消費が冷え込んでいるわけではないと思う。政府が社会保障制度の検証をしたが、その結果に表れる将来への不安が消費者の財布の紐を締めている。企業の内部留保が大きくなっているという点も、リスクオフをリスクオンに変えていくという動きが高まってくれば、それ(消費の伸び)はやってくると思う。そこに大きな課題がある。

Q : 先日、厚生労働省が年金問題に対して財政検証を発表した。将来への年金不安が高まる中、企業の内部留保が大きければ来年の賃上げも圧力が高まるのではないかと思うが、年金問題に対する所感を伺いたい。

櫻田: 大変重要な問題であり、経済同友会にとって社会保障制度は一丁目一番地のテーマだ。この30年間に溜まった課題を解消するためにも、まずは財政問題から目をそらさずに一つ一つ将来を見据えて取り組んでいくことが必要だ。今回検証した6つのシナリオのうち、ケース4、5、6では所得代替率50%が長期的には保障されない結果になっており、一見すると、厳しく評価した内容だと思った。しかし、よくよく見ると、賃金上昇率が実質経済成長率より常に高くなっており、過去20~30年間起きていないことがこれから起きる前提になっている。もっと労働分配率を上げるようにという意図かもしれないが、それは各企業経営者が自主的に判断することである。過去に起きていないことが当然のように前提条件のパラメーターの1つとして含まれているのは疑問に思う。今回の検証は5年に1回と義務付けてから3回目となるが、これまで(結果の)発表は2月か6月だった。今回(発表が)遅れた理由は、偶然かもしれないが(選挙を意識した)戦術もあったかもしれない。2月、6月に発表されていれば、7月の参議院議員選挙の重要な論点となったのではないか。そうした意味で発表が遅れたのは少し残念に思う。ただ、与党が(先の選挙で)過半数を得たからには、10年、20年先を見つめ、若年層の将来を考え、まさに痛みを伴う社会保障改革に取り組まなければならない。最も重要な出発点は、財政検証シナリオの前提だ。たくさんのパラメーターを示されても、多くの国民はよく分からないというのが本当のところではないか。前提が何を示すのか、過去の実績とよく比較衡量し、しっかり説明した上で、所得代替率や被雇用者拡大などの議論ができるようにしなければならない。こうした観点で、シナリオの前提となっているパラメーターの説明が十分とは言えない。実質経済成長率と賃金上昇率との関係についても何故そうなるのか分からない。私は社会保障制度改革が経済同友会の一丁目一番地であると思っているので、去る7月の経済同友会夏季セミナーで独立財政機関の設置を提言したし、社会保障を扱う委員会として、(2019年4月に)負担増世代が考える社会保障改革委員会を立ち上げた。また、観点は異なるが、結果としてのシルバーデモクラシーを是正するために、若者の政治参加促進を検討することにした。こうした姿勢を含め、国民としっかりと議論し、政府との意見交換に必要な提言を行うなど、行動に向け準備をしていきたいと思う。

Q : リクルートキャリアが「リクナビ」を利用する就活学生の内定辞退率を企業に販売していた。ビッグデータの活用促進は経済にとってメリットであり、日本がやらないといけないことだと度々言われている。その中で、個人情報の利用許可に対する警戒感が高まるような問題が起きていることについて、見解と、経営者として今後どう呼び掛けていくかを伺いたい。

櫻田: 既にリクルートが(個人情報保護委員会からの勧告等について概要)表明や今後の対応に対する説明を(行ったが)、(それを)徹底的にやっていただきたいし、期待している。一方で、日本の強みは数あるデータ(の中でも)インターネットから取れるバーチャルデータではなく、今回のようなリアルデータであり、日本はその宝庫である。問題はリアルデータを使ってどうやってマネタイズし、ビジネスモデルを作っていくかということであり、みな腐心している。今回の例はリアルデータを使ったマネタイゼーションの一例だった。したがって経済界としては、この問題は大いに是正し、再発防止に努めていくべきだと思うが、日本の強みになるはずのリアルデータを使ったマネタイゼーションの流れを止めてはいけないと思っている。そういった思いで本件を受け止めており、(解決を)期待している。

Q : SOMPOグループも大量の情報が集まりそれを取り扱っていると思うが、見直しや注意を促すなどしているか。

櫻田: 金融サービス業なので、もともと個人情報の取扱いについては非常に神経を使ってきた。機微情報を扱うことが多いので、漏れた場合のダメージも大きい。(個人情報の取扱いについては)ずいぶん長い間、反省と(改善)取組み(というサイクル)を10年、20年と続けてきた。今回の件を受けて急に何かしないといけないということはないが、もう一度脇を締めて、漏れがないかどうかをグループ全体に促していきたい。特に介護事業は参入してまだ4年目であり、完全に、100%掌握できているとはなかなか自信をもって言えないので注意していきたい。

Q : 香港問題についてはどのように見ているか。

櫻田: 様々な問題が複合した状態にあると思っている。(香港行政長官の)キャリー・ラム氏が自分の心情を吐露し、「辞任して責任を取りたいが、それもできない」といった発言をしたことは、見方によっては大きな波紋を呼ぶと思う。「中国と香港の"2人の父親"に仕えなければならない辛さを分かってほしい」という発言は、今の香港の状況を如実に表している。先進各国が注目していることは中国も分かっている。今後の見方として、(国慶節イベントが行われる)10月1日に向けて示威活動とも取れる動きになっているが、米国や欧州等も注目していることは間違いなく、それは中国政府も分かっているはずだ。時間をかけて解決する方向に向かってほしい。ホルムズ海峡も同じ状況かもしれないが、何事も、何かのきっかけで突発的に起きるミスが、制御できない形で広がっていくことだけは防がないといけない。どうなるかは分からないとしか言いようがない。日本としては(事態を)注視し、まかり間違っても暴力に訴えて物事を解決してはいけないということは申し上げておく。

Q : 香港は(「逃亡犯条例」改正案を契機とした抗議活動による)混乱で、(国際)金融センターとしての地位が低下しているが、そのことはアジア・世界経済にどのような影響を及ぼすか。香港に代わってシンガポールに資本が集中・集積しつつあるように思えるが、どう見ているか。

櫻田: (香港の混乱が)短期的に解決しない前提として申し上げる。(現状以上に)香港でオフショア取引が増えるとは思わないが、それはこれまでもそうであった。オフショア市場と言えば、ロンドン、ニューヨーク、アジアではシンガポールである。今後は、東京がアジアでの代表的なオフショア市場になっていけばよいと思っている。香港は一国二制度の中で、世界第2位の経済圏である中国と(他国)間の金融窓口という役割を持っている。その点で香港は替えがきかない存在であり、今後も(それを)担っていくと思う。上海や深圳も候補になりうるが、金融センターになるためには、人材、情報システム、言語を含むインフラが整備されていることが非常に重要である。これはBrexitとロンドンの関係とも同様である。香港で現在働いている弁護士、会計士、コンサルタント、ファイナンシャルアドバイザー、投資家が直ちに香港以外の土地に行くことはすぐには想定できない。(金融に関する香港の)法制度を支える弁護士、会計士も同様であり、そう簡単に香港の地位が中国の他の都市に移るとは考えていない。

Q : 社会保障改革では痛み伴う部分もやっていただきたいとのことだったが、医療保険の負担割合を増やすなど、どのような痛みの部分に取り組むべきか。

櫻田: 社会保障は、大きく年金、医療、介護に分けられるが、(その中で)年金について今回検証した。2004年に導入したマクロ経済スライドは、平たくいえば、「入る」を以て「出ずる」を制すと言うか、入ってきた金額でしか払えないという制度だ。マクロ経済スライドが(年金の給付制度に)入っている以上、大きな課題は、今後40~50年かけて「入る」方にマクロ経済スライドが効いてくるようにする、あるいはそのネガティブな部分を修正するために保険料を負担する人を増やす、支払う対象者数か額を少なくするという方向がありうると思うが、いずれも痛みを伴う。少なくとも、働き方改革によって社会との接点を持ちたいという人が増えている。それらを踏まえた上で、強制ではない形で保険料を負担する人が増えていくのは決して悪いことではないと思う。一方、支払いについていろいろな課題はあるが、マクロ経済スライドが埋め込まれており、医療や介護に比べれば課題は少ないといえる。むしろ大事なのは、財政検証のシナリオとその前提になっているパラメーターの説明だと思う。医療については、課題は大きいがはっきりしている。(医療費)3割負担の問題、すなわち年齢で機械的に負担割合を決めてしまうことや、支払いについて保険者の検証機能が入っておらず、請求イコール支払いとなっている仕組みがある。もう一つは、効率的に保険金を使おうとしている事業者に対して、インセンティブがまだ十分に働いていないことだ。いずれにしても、医療については、まだまだやらなければならないことがある。介護と違うのは、何をやらなければならないかがはっきりしていて、どうやってやるのかが問題であるということに帰着する。介護についていえば、既に保険料を含め10兆円の公費(2017年度)が使われており、2025年には倍近くになることは読めている。どこが問題なのかはっきりと箇条書きにせよと言っても、いろいろあるだろう。その課題がどこからきているのかをしっかりと因数分解し、分析することからスタートすべきだと思う。現在の介護保険料制度は、インセンティブとディスインセンティブが混じりあっている。要介護度が進むほど保険金が増える(仕組みだ)。介護事業者がよいプログラムを導入し、入居されている利用者の要介護度が改善あるいは維持されると、支払われる保険料が減る仕組みとなっているのはどうなのか。介護事業者は全国に数万おり、ヘルパーを含め数千人の従業員を抱えるところから、数人でやっているところがある中で、品質水準を定めるにしてもどこを基準点にするか決めにくい。こうした課題に取り組むために、やはり学者、行政、政治、何よりも事業者が入り、不都合な真実を含めてまずはファクトを全て出し合うところからスタートしなければならないだろう。社会保障の柱の中で最も分かりづらいのは介護である。日本経済、ひいては世界にとってのリスクは介護問題だと思う。

Q : 日韓関係について伺いたい。安全保障問題や地方によっては観光客減少の打撃もあるが、9月に行われる日韓経済人会議を含め、(関係改善)に期待することは。

櫻田: 韓国からのインバウンドはかなり減っている。日本経済への影響という点では、(2019年7月の)訪日韓国人数は前年比7.6%減少だったものの、他の国から(多く)訪日しており、日本全体では同月5.6%増であった。(韓国からの)インバウンド減少による経済への痛みは少ない。フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素の輸出規制3品目について、私が聞いたところでは、一度の審査で5~6カ月分の在庫にあたる量が日本から輸出がされているそうだ。少なくとも実態上、(韓国では)日本から部品が届かないので半導体が作れないという状況にはなっていないと聞いている。すると、この問題はどうとらえればよいのか。本来、最初に経済問題があり、それが政治(問題)になり、結果として外交(問題)につながるのが普通の流れ、セオリーで、下部構造が上部構造を規定するという当たり前の話である。米中問題は技術覇権(争いだ)と(以前)申したが、これも根底は経済問題から来ていて、それが貿易(問題)になり、現在のような外交戦争になっている。(しかし)今回の日韓問題については、経済上の問題は何もなかった。韓国の上部構造の事情が根底にあり、それによりボタンの掛け違えが発生してしまったとしか考えられない。あたかも意図した問題かのように誤解をされており、理屈で解決することはできない。したがって、(解決には)時間がかかるであろうし、拙速に解決しようと思わない方がいいだろう。経済界としては、韓国の経済界もおそらく同じだと思うが、早く合理的に、政治は政治、経済は経済と土俵を分けて議論してほしいと思っているに違いない。しかしそうはいかないのが先ほど申し上げた事情であり、上部構造が下部構造を規定してしまっているようなところがある。ではどうするのか。時間をかけて解決するわけだが、(これに対して)大きなインパクトがありそうなのは文化や人材の交流で、かなり期待できると思っている。このような状況の中においても(日韓の)高校生や大学生による(交流)コンサートやディベート(など)人材交流が行われている。文化交流もしかりだ。韓国料理が大好きな日本人もいるし、日本料理が大好きな韓国人もいる。これを地道に続けていく。本音に合わないことを続けるのはつらいことで、美味しいものを我慢する、着たいものを着ない、安くていいものを買わないといったことはなかなか難しい。だからこそいずれ解決すると思っており、あまり神経質にならない方がいい。欧州では日韓問題が(あまり)知られていない(が)、我々もできるだけ冷静に、感情的にならずに続けていくことで(関係は)戻ると思う。人間、怒り続けるのは疲れることだ。やや無責任かもしれないが、それに期待している。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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