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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年7月22日(月) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)参院選結果、(2)対韓国輸出管理、(3)吉本興業のタレント問題、などについて発言があった。

Q : 昨日、投開票が行われた参議院議員選挙で(連立)与党が(改選議席の)過半数を獲得したが、自民党単体では過半数割れとなった。その結果について、国民から一定の信認を得たと考えてよいのか見解を伺いたい。

櫻田: 前回と同様(の議席数)まではいかないだろうという事前の予想があった中で、(連立)与党で過半数超えをしていること、(自民党は改選66議席から)前回対比マイナス9で、激減という状況ではないこと等を踏まえると、(国民の)一定の信認を得たということは間違いない。有権者から見た今回の参院選は、安定(した政治)を取るか、そうではない政治を取るかという点で、(有権者は)安定した政治を選択した。この背景には、例えば日中、日米、日韓、各国との外交、ペルシャ湾(を巡る緊張)、Brexitなど、日本以外で発生する不安定性が国民を不安にさせていることがある。これまでの外交の中で、安倍政権はその点は乗り切ってきている。一方、国内問題に目を転じれば、(老後資金)2,000万円の問題を含め、将来に対する不安がある。これまでの自民党以外の政権も同じような問題を抱えていながら、社会保障問題を含め、財政問題を解決できていないとすれば、これ以上の不安定性を抱えないためにも、安定政権だからこそできることにチャレンジしてほしいという気持ちが(国民の)根底にあったのではないかと考えている。

Q : 韓国への輸出管理の見直しについて伺いたい。事務レベル会合が開かれたり、日韓の意見の食い違いがあったりしたが、現状の認識と今後の日本経済に与える影響を伺いたい。

櫻田: この日韓の問題は、日中やその他の(国)との間で行われている外交交渉や協議の対象(とは別の側面がある)ことは明確に申し上げておく必要がある。(日韓関係については)1965年の「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(日韓基本条約)」や「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓請求権並びに経済協力協定)」で明確に結論が出ており、その合意に則って正接すべきものである。本来、交渉事は終わっている前提の中で、日本からすれば、突然に(韓国から)異なるルールあるいは見解が示された。その裏には、慰安婦の問題やレーダー照射など様々な問題があり、(日本)政府からしてみれば(相手国に対し)信頼感を失った。本件(輸出管理の問題)は交渉事ではないはずだ。(また、)少なくとも日本がとっている政策は、いわゆる包括輸出許可から個別輸出許可に移ったということで、WTOルールの範囲内である。(問題が複雑化している)原因は(韓国政府が)日本(政府)からのメッセージを受け取ってくれないことに起因しており、それは交渉する事ではない。経済界としては極めて憂慮しているが、幸い足元での実害はまだ起きていない。具体的には、レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの三つの半導体部品について、日本から韓国への輸出ウェイトは、韓国の輸入ウェイトに比べて圧倒的に低く、日本側のダメージはほとんど出ていない。今後についてはブーメラン効果を含めてわからない部分があるが、一喜一憂する必要はない。(韓国が)大切な隣国ということは間違いなく、経済的な結びつきも長い。両国とも産業界は早く正常に戻ってほしい気持ちがあり、それを願うのみである。今後、韓国による米国やその他先進国に対するロビー活動等があると思う。話し合い(の場)はあってもよいが、外圧によって我々のスタンスを変える必要はない。経済界としては、今まで通り親しくしたいので、早く正常に戻ってほしい。

Q : 日韓関係について伺いたい。韓国の問題がインバウンド等、経済にどのような影響を与えると捉えているか。既に(韓国での日本製品)不買運動、社会運動が起きている。

櫻田: (韓国との政治的対立が)プラスに働くことはもちろんないだろう。両国の消費者ともに最終的には品質が良く、価格が合理的なものを選ぶと信じている。政治的な理由によるエネルギーで(不買が)長い間続くとは思っていないし、政治的なバイアスによって(不買)運動が行われていたとすれば、それは好ましくない。いずれ正常な状態に戻ると思う。良いものは買いたくなるはずである。インバウンドについては、日本のソフトパワー(として)アニメ、ファッション、食事などがある。韓国料理好きな日本人が多いのと同様に、良いものはよい(と思うだろう)。政治的ないざこざがあっても、不幸な状態が長い間続くとは考えていない。

Q : 先週19日に、トランプ米大統領が日韓(関係修復)の仲介をしてもよいと発言した。(今週22日に)ボルトン米大統領補佐官が来日し、(日韓関係が)動き出すのではないかという期待もある。代表幹事の発言の通り、民間が様々な対話を重ねていかないといけない。実際に(韓国で)反日のボイコットが起きていて、韓国からのインバウンド需要が減っている。政治が行き詰っている中で経済界も何かやらないと、(対立が)長期化する懸念があるのではないか。例えば経団連は11月に韓国の全国経済人連合会と定例協議を行う予定だが、もしこれも中止となってしまえばどうなるのか。日商では、(日韓の)会頭同士が面会するそうだが、経済同友会として何か取り組む予定はあるのか。


櫻田: 本会でも、(日韓)経済界同士の対話、交流は続けていこうという議論は出ている。具体的にいつ、何をするかは、これから内部でしっかり話し合いたい。ご指摘の通り、政治と経済は昔以上に密接不可分になっている。だからこそ、経済人としてはお互いに合理的な行動を取ろうということは、理解されるはずである。韓国側も困っているのではないかと思う。内部でしっかり話をして、委員会をベースにするのか、あるいは我々(団体長レベル)が動くのかを含め、できる役割はあると思う。

Q : 参院選の結果について伺いたい。昨日発表されたコメントでも、国際情勢が不透明な中での安定性の選択という分析や評価をされていたが、経済界としては日韓関係、米中関係、イランのホルムズ海峡の問題もある中で、外交面について安倍政権への注文や期待はどのようなものか。また、(先日軽井沢で行われた)夏季セミナーでも議題に挙がっていたように、財政や社会保障の問題は待ったなしである。今後のスケジュールも踏まえ、国内問題について安倍政権だからこそチャレンジできること、してほしいことはあるか。また、それに対して経済同友会としてはどのような対応をとっていくか。


櫻田: 外交問題にもいろいろとあるが、日本はグローバルな国家なので、全く影響のない外交問題はない。米国とイラン、イランとサウジアラビア、日韓、日米等様々あるが、その中でも最も直接的に影響があるのは日米問題だろう。貿易問題については、参院選が終わった後に大きく進むことと期待している。日米問題は二国間の交渉だが、多大なエネルギーを使って合意したTPPを最低条件として進めていく点については変わっていない。交渉事なのでどうなるか分からないが、日中、日韓の問題と貿易問題を一緒にしてはいけないし、そうしないように(政権に)要請していきたい。ペルシャ湾における米国、イランの問題に関し、(今年6月の)安倍首相イラン訪問は英断だと思うが、それ以降進んでいない。今回のイギリスとイランのトラブルを見ると、事態は悪化しているように見える。安倍首相や現政権の果たす役割は大きいと思うので、期待したい。いずれにしても日本がいることによって、突発的な事態が起きないようなパワーになってほしい。財政については昨日のコメント(2019年7月21日「参議院議員選挙の結果について」)で述べた通りだが、あれほど年金問題が荒れて、野党が与党を攻める政局のテーマとして使われてしまったのは、正直に申し上げて残念だ。本来ならばこの問題に対してエビデンスを示し、かつ、それぞれの党がサスティナブルに、長期的にどうするのが現実的であるかを説明しながら、我が党の案がよいと示してほしかったが、全くその議論は行われていなかった。「100年安心」年金という(語もある種)誤解を生む面があり、(年金だけで)100年間安心して暮らせるという話ではないはずだ。5年に1度の財政検証をし、164兆円ある積立金を少しずつ切り崩していきながら、マクロ経済スライドを発動させることで、100年間はなんとか(年金制度が)保つはずであるという意味で「100年安心」とされた。スキームが100年間サスティナブルなはずであるという前提を、「100年安心」と表している。安心して暮らせるかどうかについては、メディア各社がすでに調査している通り、年金だけで楽々、悠々自適だと思っている国民はほとんどいないだろう。そこは現実を直視して、自助、公助、共助の中でも特に自助をしっかりやる必要があるというメッセージを、我々としてももっていかないといけない。この問題に経済同友会はどう取り組もうとしているかというと、一つは年金についてもっと分かりやすく(説明することだ)。「100年安心」ではなく、マクロ経済スライドという長期スキームの下で100年間稼働し、それは164兆円の積立金があるからだという議論をしていく。もう一つは、(夏季セミナーの)軽井沢アピールで示したが、年金に限らず財政の見通しや推計が本当に正しいのかがよく分からず、かつ、政府による推計でしかないということについて、独立財政機関の設置を提案した。国民に前提とオプションをクリアに示すべきで、具体的にどのようなスキームが望ましいかを提言していく。また提言するだけでなく、我々がどのような議論を国民レベルで起こせるかを検討したが、まさにそれがDo Tankとしての役割だ。財政とは、社会保障のことだけを指すのではない。本来、財政は社会保障以外に、国防や教育、インフラの補強等に使われるべきだが、(多くの人の)頭の中にあるのは社会保障と財政だけだ。OECD諸国と比べても、(日本は)財政について広義な配分がいびつになっていることに危機感を持っている。

Q : 本日14時に吉本興業の岡本昭彦社長が闇営業問題で記者会見をする。20日に芸人の宮迫博之氏と田村亮氏が謝罪会見をしたが、吉本興業のガバナンスの話にまで発展し、これを受け、社長が会見することとなった。「クビだ」など恫喝ととられる発言を社長がしたことと、タレントが開いた会見への率直な感想、企業のあり方等、お考えがあれば伺いたい。

櫻田: 本件の事実関係を把握しているわけではないが、もし、私がSOMPOホールディングスのCEOとして同様の発言をした場合、相当大変なことになるだろう。社外取締役が緊急取締役会に招集され、私のいない場で処遇が議論されるはずだ。(所属タレントの行った説明が)仮に真実だとすると、(企業側の)説明責任が不足している。宮迫氏と田村氏が一般企業における従業員という位置づけと考えた場合、所属する全員に相当な不安を抱かせただろう。いずれにせよ、事実だとすれば不適切であり、もう少しよく考えた対応をすべきだった。上場、非上場問わず、企業は社会的存在である。従業員は財産であるだけでなく、ステークホルダーでもある。事実だとすれば、ステークホルダーや財産に対してとった行動としては、非常にまずかった。

Q : 参院選の投票率が50%を下回ったと総務省が発表した。1995年に次ぐ低水準で、天候の問題もあったと思うが、主権者教育に力を入れようとしている経済同友会として、この結果をどう捉えるか。(代表幹事コメントでは)社会保障と財政健全化に関する議論があまり中身のない内容だったとの指摘もあったが、消費増税が争点になっていたことについて見解を伺いたい。依然として消費増税反対の国民が多いため選挙の争点となりやすいなのは状況として仕方ないが、この点をどう思われるか。

櫻田: 投票率の低さについては極めて憂慮しており、危機感を持っている。(投票率が)下げ止まらないのは恐ろしいことだ。本会の議論でも出ているが、シルバーデモクラシーもデモクラシーであり、それ自体は間違っていない。問題は、結果としてのシルバーデモクラシーになることで、若年層が投票所に向かうよう何としても取り組まなくてはならない。たとえば家庭内教育や学校教育で、(参政権は)国民の権利、むしろ義務であると教えていく必要があると思う。(浸透するには)時間がかかるし、これまでもやっていなかったとは思わない。本会でも会員所属企業へ(投票率向上のために)投票の呼びかけを行い、(各社で)独自の取り組みを実施してもらっている。私がCEOを務めるSOMPOホールディングスでも、(従業員が)PCを立ち上げると「選挙へ行こう」と通知が出るようにした。いずれにしても、(投票率の低さには)非常に危機感を持っている。本質論を行いながらも、Howの部分、若年層が選挙に行くようにする方法を考える(必要がある)。期日前投票の利便性を上げることはもちろんだが、何よりも大きいのはインターネット投票の実現だと思う。現在の議論は、数多く存在する問題のためにそれが実現できないというものだが、そうではなく、実現するためにはどのように問題点を克服したらいいかと、早く立論を逆転さなければならないし、本会も実現のための議論をしていきたい。そのためには若年層の声を聞かなければならない。Do Tankとして機会を作って聞いていきたい。(選挙戦で)消費税率の引き上げは論点とされ、自民党以外は反対、もしくは否定的な意見を主張した。某テレビ局の出口調査では、消費税率の引き上げに反対と回答した人が約5割おり、そのうち約4割が自民党に投票したとあった。消費増税は反対ではあるが、だからといって自民党を全否定すべきかを考えたとき、悩んだ結果、4割の方は総合的には自民党支持と判断したのだと思う。本当に消費税が論点だったのかというとそうではないとみている。今回の参院選は論点のない選挙で、(選ぶものが)あったとすると、安定か否かの二つに尽きる。ここでいう安定は、(政権与党を支持するといった)安定のための安定ではなく、安定した政権に何を実現してもらうか(という意味だろう)。投票者の思いを与党はしっかりと受け止めなければならない。それは将来に対する安心感や希望であり、単に経済成長だけでとらえるべきではない。根底に流れるメッセージを政権には真摯に受け止めていただきたい。安定しているからこそできることとして、社会保障、成長戦略、外交を含めて、日本が世界から見て、「いて欲しい国、いなくては困る国」になるための議論をしていただきたい。経済同友会としても可能な限り議論に参加していきたい。

Q : 選挙戦なので勝ち負けがあると思うが、政党幹部からは、(議席が)減ったのに勝ったであるとか、負けていないなどの発言があり、野党でも(議席が)増えたところもある。(今回の選挙戦において)勝ったのはどの政党だと思うか。

櫻田: 私の個人的な意見であるが、本当に勝者のない選挙が続いていると感じる。このことは、政治についてだけではなく、また日本だけでもなく、世界中で今起きていることだ。非常に懸念すべきことであり、いわゆるG0の世界(である)。自国第一主義と言うが、「自国」という言葉を、「自分の党」と置き換えたなら、同じよう(な構図)になる。(さらに)「自分の党」という言葉を、「自分」に置き換えたなら、同じような構図が出てくる。世界全体に不信感と、非建設的な戦いによる疲弊・消耗が起きていている。今回(の選挙戦で)明確な論点を持って(選挙戦を戦い)、その論点が支持されて勝った、過半数を取ったのであれば、それは勝ったというのであろう(と思う)が、安定(政権を選ぶ)かそうではないかは、(本来は)論点ではないのではないか。だからこそ、安定したポジションを得た(与党は)、これからは何が論点となるかを責任を持って提示し、国民的議論にしていく(べきだ)。憲法(改正をめぐる議論)も同じである。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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