ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年7月2日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

動画を拡大する

PDFはこちら

記者の質問に答える形で、(1)対韓国輸出規制、(2)景況感、(3)高度プロフェッショナル制度、(4)損保ジャパン日本興亜の人員削減、(5)米中貿易摩擦、(6)参院選などについて発言があった。

Q : 半導体部品の韓国向け輸出規制について伺いたい。政治的対立が(日韓)両国の経済や、半導体の世界的な供給問題に波及しそうな状況だが、この規制に対する代表幹事の見解を伺いたい。

櫻田: 菅義偉官房長官の会見でも「信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない」との発言があり、それについて私がとやかく言うつもりはない。経済界の立場からすれば、韓国の経済界も当社もそうだが、早く(日韓の)関係が正常に戻ってほしいという気持ちがある。そうは言っても、世界中どこを見ても政治と経済はお互い密接に関連しているのが現実である。これをジオポリティクスと呼ぶのかどうかわからないが、その中で今回の(日本)政府の措置はWTOルールに則ったものだと理解しており、(日本)政府の一貫したメッセージであると思っている。そのようなメッセージを韓国政府も真摯に受け止めていただき、早く経済関係が正常になることを期待している。(対象となる半導体材料の)3品目に限って言えば、今回の措置による日本経済へのインパクトは実はそれほど大きくないと理解している。(3品目は)韓国が作る有機EL(製品)やスマートフォンのような完成品には不可欠な部品であり、その意味では、日本から輸出される部品がなければ、付加価値製品に非常に大きな影響を及ぼす。すなわち、日本側より韓国側に大きなインパクトを与える措置になると思っている。もう一つは、今回のメッセージが正しく伝わらないこと、あるいは何らかの事情により、ホワイト国から(韓国を)除外する事態が起きるとすれば(大きなインパクトになりうる)。(ホワイト国は)韓国を含め27ヶ国と聞いているが、一度ホワイト国に認定された国が除外されるという措置は(これまで)採られたことがないため、経済的にも政治的にも大きなインパクトが出てくる。私の立場としては、(日本)政府のメッセージを(韓国政府が)真摯に受け止め、(経済への)実害が広がる前に正常な状態に戻ってほしいと願っている。

Q : 昨日発表された日銀短観で、大企業製造業は二期連続の悪化となったが、その受け止めと今後の見通しについて伺いたい。

櫻田: 前回と比較して、もし(変化が)あるとすれば、大企業、特に製造業のマインドセットがややダウンサイドに振れていることである。様々な背景が考えられるが、やはりジオポリティクスの影響が大きい。じわじわと米中(貿易摩擦)の問題が波及してきていると考えている。国内(要因)については、製造業もサービス業も特に大きなダウンサイドのリスクは見ていない。サービス業についてはむしろプラスと見ており、(企業によって景況感が)入り混じった、まだら模様の状態が続いている。今後も(見通しは)基本的には変わっておらず、決して腰折れ状態、あるいは先が暗いとは見ていない。ただ、何が起きるか分からないという点において、常に準備をしておく、予断を持たず経営に当たることが必要だと思っている。あまり楽観はしていない。

Q : 高度プロフェッショナル制度が適用されている方は、4月末の時点で1社1名、現在も2社12名と、あまり変わらない状況である。経済界が導入を強く要望して実現した制度にもかかわらず、ここまで広がっていないことに対する所感、また使い勝手の悪さなどあれば伺いたい。

櫻田: (現在、高度プロフェッショナル制度が適用されているのが)2社12名という数字を今初めて聞いたが、感覚的には前回と何も変わっていない(という印象だ)。(導入企業を広げるためには)より使い勝手のよいものにする必要はある。本質的に、(労働に対しては、時間ではなく)アウトプットや付加価値をベースに給与を決めるべきだ。今後、政府の考える新しい働き方改革において、(長時間労働の是正、裁量労働の拡大とともに)もう少し使い勝手のよい制度に変えなければならない。いずれにしても、インプット主義からアウトプット主義に移行し、マーケットベースの評価に変えないといけない。

Q : 損保ジャパン日本興亜の人員削減に関して伺いたい。人手不足が指摘される一方で、大手企業では人員整理を進める動きが多く見られる。そこにはどのような仕組み、ロジックがあるのか。

櫻田: 本日は経済同友会の会見なので、SOMPOホールディングスのCEOとして可能な範囲内で回答する。ロジックがあるというより、ミスマッチが起きている。2017年度期初対比で2020年度末までに4,000人を削減する計画であり、大半は定年退職による自然減だ。新卒一括採用も一定程度に抑制するが、キャリア採用は積極的に実施し、また、グループ会社への配置転換を行う。早期退職や希望退職といった制度は、(現在の計画には)一切入っていない。人手不足にも関わらず(なぜ人員削減を行うのか)という点については、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により生産性が向上し、人間が行わなくても済む仕事や分野が増えているからだ。それらに従事していた従業員の配置をどうするか(という問題はある)。人間でないとできない仕事はたくさんあり、例えばコールセンターでの案内は、AIと人間がペアにならないと、生産性と質の両方を向上させることは難しい。また、当社であれば、苦情の処理などは人間(が担い)、かつ高度な、EQ(心の知能指数)の高い人材が必要であり、そうしたところに配置転換していく。過渡期であり、今起きていることはそのような状況だ。

Q : 韓国への輸出規制の件で、代表幹事より「今回メッセージが正しく伝わらないことによって、ホワイト国から除外されるかもしれない」との発言があったが、メッセージとはどのようなものか趣旨を確認したい。

櫻田: 私自身が解釈している話であり、政治上の認識とは言えないかもしれない。少なくとも、(日韓の)信頼関係が著しく揺らいだという表現を使っているということは、政治的に国と国が約束したことが一方的に覆される等の点において信頼関係が揺らいでおり、このままでは政治はもとより貿易を含めた経済は復旧しないし、困るだろうということをメッセージとして伝えているはずである。(日本)政府も、このまま(韓国と)袂を分かっていきたいと思っているとはとても思えない。

Q : 韓国の関連では、このまま日本のメッセージが伝わらず、正常化しない、報復の応酬に繋がりかねないという懸念もあるかと思うが、どのように考えているか。

櫻田: 今の規模からいうと、日本から韓国へ(の輸出額)は6兆円くらいで、逆(韓国から日本への輸出額)は3兆円くらいだろう。韓国の輸入の方が大きいはずだ。報復合戦はあってはならないが、某国がよく使っている(ような手法は)、やめた方がよいということは両国は分かっているはずだ。(日韓の)政治の世界では今言ったようなメッセージのやりとりがされているが、少なくとも、早く正常化してほしいと日本の経済界だけでなく、韓国側はもっと強く思っているだろうから、そのような事態にはならないと思う。

Q : ブーメランと呼ばれるように、(日本が)韓国製品に制限をかけると、完成品が滞ることによって逆に日本経済にダメージがあるのではないかという指摘にはどう思うか。ダメージは少ないという見方をされているのか。

櫻田: 例えば、(日本が輸出した)半導体の部品が(韓国国内で)完成品となり、完成品を第三国へ輸出する。日本が部品の輸出審査を厳格にすることで、韓国経済が滞る。その結果日本はどうなるのか、という話だ。どのくらい深刻になるかについては見極めきれない。ただ、経済規模からいって少なくとも米中の問題のようにはならないと思っている。

Q : 今回の措置は、今までは韓国を優遇してきたが(今後)優遇しなくなるという話であり、関税を引き上げるような強いものではない。これ自体の効果はどれくらいあると思うか。話し合いをするために、措置を強くするべきと考えているか。

櫻田: 経済界は早く正常化したいと思っている。政治と経済は分離不可だが、政治については、日本サイドよりも韓国サイドの方がやや根詰まりを起こしており、難しい状態になっているというのが根底にある。政治の問題を解決すれば経済(の問題)も解決するはずだ。ただ、政治の問題が日本の事情よりは韓国の国内事情にあるように思うので、私自身(の立場から)、こうなればよいと言うことはできない。措置をより厳しくする、あるいは関税を引き上げればこの問題が解決するかというと、(解決)しないと思う。相当な時間を要するだろう。むしろ日本はこれまで政治的に、あるいは外交的には毅然とした態度をとってきた。一貫してやってきたことを変えてはいけないし、我々経済界も政府の考えを尊重しつつ、自由貿易は(日本経済にとって)プラスであるということを繰り返し(主張し)続け、あまり感情的に動かないことが大事だろう。

Q : 老後資金に関し(報告書から)文言の削除が相次いでいる。櫻田代表幹事が委員を務める財政制度等審議会でも「年金の給付水準が低下する」という文言が削除された提言案が正式なものになった。この件に関して事実関係をどう受け止めているか。老後資金について運用することすら文言から削除され、政府がその部分を隠してしまっている状況をどう見ているか。

櫻田: 私は財政審の委員の一人だが、細かい文言の審議に関わっているわけではないので、どういう経緯で最終形になったのかは了知していない。あの建議の重要なポイントは、年金だけでなく、また社会保障のサステナビリティだけでもなく、インフラや文教に国費をどのように投じていくべきか、投じていくために何をしたらいいかという部分が本質だと思っている。そこについては私はかなり意見した。Whatではなく、どうやって実現するかについて議論すべきだと相当申し上げ、そこは反映されている。質問のあった2点については説明を受けていない。この問題と、金融審議会(市場ワーキング・グループの)レポート問題も、根はおそらく同じことだ。タイミングや文言の問題、(文言の)出し入れでかえって誤解を生むようなことがあったとしたら、それはよくないと思う。私はむしろ、副作用はプラスに働くと思っていて、この問題のおかげで一般国民の多くが年金に関心を持ち始めたのは間違いない。社会保障についても、このままではいけないと思い始めたのは間違いないので、奇貨として使うべきだと思う。

Q : 日韓の関係について伺いたい。代表幹事がおっしゃる通り、輸出入という観点では、日本経済へのダメージは韓国に比べればあまりないかもしれないが、もう少し広く、日韓の経済協力、経済交流という意味は、今年5月に開催予定であった日韓経済人会議が延期されたということもある。信頼関係が政治的に揺らいでいる状態になると、経済協力・交流という意味ではそれなりの影響があるのではないか。この点についてどう思うか。先ほど、韓国政府の方で日本政府のメッセージを真摯に受け止めてもらい、早く正常化に向かってほしいとおっしゃられたが、経済界としてできることはあるか。

櫻田: 1点目については、韓国が永遠の隣国であることは間違いないので、それを両国とも認識しながらどのような付き合い方をしていくか、当然考えていると思う。必要以上に楽観視しているつもりはいないが、必ず解は導けると思う。くどいようだが、主として日本国内の問題ではないので、文在寅大統領をはじめ、韓国のエスタブリッシュメント、財界人たちに頑張ってもらうしかない。経済界同士の会合は、なにもカンファレンスを開き、ミーティングを持って付き合うだけではなく、個社同士の交流も当然ある。当社も韓国に会社を持っており、よく行き来をしている。実体経済や実生活の中で、韓国と日本がどれくらい結びついているかはわかっていて、私はその声は必ず政治に届いていると思う。それほど悲観していない。もし長引くようなら別の手を考えなければならず、経済界としても、もっともっと声を上げていかなければならないと思うが、今はその時期ではないだろう。

Q : 米中貿易摩擦について伺いたい。先週末のG20(会合での米中首脳会談)で、米国による追加関税がひとまず先送りになり、マーケットも今日は落ち着いた形になっている。これはトランプ米大統領のディールの一環なのか、長期化するのか、見解をお聞きしたい。これからも長期化するならば、グローバルなバリューチェーン、サプライチェーンへの影響が懸念されると思う。経済界としてアピールすること、訴えるたいことはあるか。

櫻田: 経済界も、おそらく日本国も同じ立場だと思う。まず第一に、(この問題は)長引くと思う。その根拠は、米中間で問題となっているのは、表面に見えている貿易問題ではない。仮にそうならば、比較的簡単に解決すると思う。まさにディールの世界だ。しかし、根底にあるのは中国の経済システム、経済ガバナンスの根本的性質そのものがテーマになっていて、(米中)どちらも譲れない。中国は核心的な利益ということで譲れない。一方米国は、(中国が)米国型の価値観やシステムへチャレンジしてきているのだと見ている。両国ともかなり深刻に考えていると思う。報道を見る限り、今回のファーウェイ問題についても、共和党はもとよりむしろ民主党が相当懸念を示していると思う。(対立)構造は長引くだろう。そうした中でどうすべきかということだが、日本の立場は、今回のG20で示されたように思う。見方によっては(会合結果が)最大公約数を取ったと言われるかもしれないが、「G0」、G20 あるいはG7の枠組みがメルトダウンし空中分解することは、日本にとって死活問題である。G20、G7といった枠組みを何としてでも維持することは、日本政府にとって、経済界にとってもまさに一丁目一番地のテーマになると思う。そういった意味では、今回の安倍首相をはじめ政府、大阪市を含めた関係者の努力に敬意を表したい。(首脳宣言について)譲ったとか、あるいは丸まったとか、様々な表現があると思うが、私は決して最大公約数というようなことではないと思う。むしろ、瓦解してしまうかもしれないところをぎりぎりで食い止めたという認識だ。米中に関しては、表面的には対話を中断したところから再開すると聞いている。つまり(2018年12月に米中会談が行われた)ブエノスアイレスに戻っただけではないのか。そこからどうなったのかは我々も知っての通りである。同じことが繰り返されないという保証はどこにもない。核心的利益、つまり(中国政府から)地方政府や産業に対する補助金、知財に対する取り扱いであったり、我々にとっては、データフリーフロー管理の仕方である。それは米国にとっては看過できないことだ。(これが進展しない限り)繰り返される可能性があるので、楽観はしていない。マーケットが戻ったというのは、思ったほどはあの(G20の)場で爆発しなかったという点において一瞬安心したということだろう。日本は一丁目一番地として自由貿易を何としても守るのだということを、倦まず弛まずに言い続けることしかないと思う。その中で、やはり日本がいてくれてよかったと世界から思われることを期待している。経済界もそのように動いていきたい。

Q : 参議院選挙が明後日(7月4日)公示、21日投開票となる。代表幹事からみて  選挙の争点には何が挙げられるか。

櫻田:1つは消費税が挙げられる。憲法については(各党)あまり触れてないので争点にはならないだろうが、本当にそれでいいのかと(思う)。本来はもう少し国民的な論議が沸き起こってこなければいけないだろう。私の目から見ると、与党は積極的に議論したいと言っているが、野党は必ずしもそれに応じているようには見受けられない。国民的に重大なことに対して関心を持たせるという点において、どうなのかと思う。私個人から見ていて、(政策の)どの部分が野党と与党で大きく違うのかが明々白々になっている点は、消費税以外に感じられない。一つひとつの政策についてコメントするつもりはないが、経済界として申しあげたいことは、責任ある、サスティナブルな政策であるとエビデンスを示していくことが重要だということである。これは与党、野党に限らずしっかりやっていただきたい。あまり(選挙の)争点がないことは若干残念である。

Q : 参院選で問われる産業政策の課題は何か。例えばスタートアップの少なさ、規制緩和やデジタル化(の立ち遅れ)等々があるが、どうお考えか。

櫻田: 成長戦略、骨太の方針に書かれている通りだが、いかに実現していくかが、まだはっきりしていない(と感じる)。ロードマップを実現するために財源をどうするのかという問題がある。また、働き方改革、全世代型社会保障についても同様に、持続可能(な施策)となるためには痛みを伴う部分にももう少し突っ込まなければならないが、それについてはまだ触れられていない。産業政策を打つための前提となる財政健全化については、まだ議論が足りていない。一方、規制改革については、地方路線バス、地方銀行の経営統合、地方創生など具体的なものがかなり出てきている。さらに産業政策として加えてほしいという具体的な提案は、今のところ大きなものはない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。