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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年6月18日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)中東情勢、(2)金融庁審議会の老後資金2,000万円報告書問題、(3)骨太の方針・成長戦略、(4)経済同友会2019年6月(第129回)景気定点観測アンケート調査結果、などについて発言があった。

Q : 中東の問題について伺いたい。米国とイランの緊張が高まっている。マーケットへの影響は現時点では限定的だと思うが、地政学リスクの高まりと市場への影響、今後の見通しを含めてどのように受け止めているのか伺いたい。

櫻田: 昨日、本会の幹部に聞いた話では、足元で特に原油市場に大きな影響を与える事態にはなっていない。それは一つには、今回の件がさらに広がる可能性があるかまだ分からないこと、(もう一つには)何よりも(原油の)備蓄が相当あることが挙げられる。したがって、足元で大きな影響はないだろうし、実際に数字の動きを見ると、WTIは値下がりしている状態である。ただ、むしろ構造的なリスクとして考えたときに(このようにも考えられるのではないか)。今回、安倍首相がイラン最高指導者のハメネイ師に面会したことは、(平素あまり)リスクを取らない日本の外交としては、珍しくリスクを取ったと評価している。その意味で、今回の決断は立派なものだと思っている。結果として、ハメネイ師から核について製造も保有も使用もしないという発言を引き出し、それが世界中に流れたことは(意義が)大きい。相変わらず(イランと)米国の関係については冷たいものが流れているが、少なくとも日本の安倍首相を仲介して、片方ではトランプ大統領、もう片方ではハメネイ師という形で(安倍首相を中心とした)一つの橋ができたということは、突発的な何かが発生することに対する抑止力が働いたと思う。安倍首相の顔をつぶしてまで何かするのか、という構図ができたことを評価している。ただ、これは突発的な事態を防ぐもので、本質的な問題(の解決)はこれからである。(関係を緩和する)きっかけはつくれたと思っている。

Q : 老後の資産形成の問題について、公的年金以外で(老後の貯蓄が)2,000万円必要という(金融庁審議会の)試算があり、それでごたごたしていたが、新たに30年で(最大)3,000万円必要という報道も出てきた。数字だけが歩いて、若干、前提が噛み合っていないという認識があるが、代表幹事はどのように見ているか。

櫻田: この問題については、そもそもの考え方として、年金に限らず社会保障の自助・共助・公助という思想について、まだしっかりと説明がなされていない。また、日本国民の蓄財行動として、貯蓄から投資への流れというのは、NISAやiDeCoなどいろいろ(制度で)工夫しているが、まだまだとてもではないが(他の)先進国並みに動いていない。この問題について、金融庁が警鐘を鳴らしたのであろうし、政府としては後押ししたい気持ちがあるのだと思う。一方で、年金の問題はものすごく難しく、2004年の年金制度改正で、大きな仕組みとしてマクロ経済スライドを導入したが、これを分かっているかどうかという質問をするとほとんどの人がよく分かっておらず、足りない部分は削るという発想になっている。ただ、それは当たらずとも遠からずで、年金がサスティナブルであるためには、負担と給付の問題はどこかでバランスを取らなければならない。その意味でマクロ経済スライドが導入されたことは(意義が)大きい。ただ、この問題はしっかり説明されていないことも事実であり、片方に自助・公助の流れ、そして貯蓄と投資がある。もう片方に現在の年金の仕組みについての分かりやすい説明が足りていない中で、突然に数字が出てきてしまい、2,000万円、3,000万円(という数字)を見たときに、違和感を覚えたのは間違いがない。各新聞にも書かれている通り、妻60歳以上、夫65歳以上の家計を見れば、例えば2万5,000円程度の教養・趣味に対する支出があったり、交通・通信費で3万円近い支出があったり、あれが典型的(な例)だと思うかどうか(は別の問題である)。様々なことがある中で、2,000万円や3,000万円という数字だけが走り出してしまったことは非常に残念である。その結果、かなり本質論から外れた議論になり、与党対野党のような話になっているのも非常に残念だ。また、国民不在の話になってきた気がする。正式なレポートとして受け取る、受け取らない(という議論)では何も変わらない。本質論に早く戻すべきだと思っている。

Q : 近く、骨太の方針と成長戦略が閣議決定される。雇用改革の一環で、高齢者が70歳まで働き続けられる機会を社会全体で作っていこうというものであり、法改正は必要だが、企業側にも高齢者雇用の努力義務を課すことが想定された話になっている。年金が不足することに絡み、投資などの自助で(資産を)増やして備えるという金融庁審議会の話もあるが、雇用を拡大し、高齢になっても働き続けることで、収入を継続して(生活を)つないでいくという意味では、とても意味がある。雇用主である企業側として、どのように協力し支えていくかも含めて、考えを伺いたい。

櫻田: 大きな枠として、全世代型社会保障と働き方改革ということになると思うが、私自身、未来投資会議の議員として参加しており、方針としては賛成である。労働人口の減少がはっきりしている中で、給付を受ける側から支払う側に回る人を少しでも増やさないといけないのは当然である。また、やや別の話になるが、(高齢者が就労などで)社会に関わることによって認知症の予防にもなるため、(その意味でも)大いに賛成である。法制化されたときに、どれだけ強制力を持たせるか(は検討すべきだ)。一定程度の法改正は必要だと思うが、70歳までは強制的に採用し、解雇(規制)については今までと変わらないとなると、企業側としてはにっちもさっちもいかなくなる。今の働き方改革の中で企業側から見てネックになっている部分についても一緒に修正するということであれば、大いに賛成である。(定年を)75歳まで言われると難しい(面もある)が、対象者に聞いてみると、75歳になってもフルタイムで月曜日から金曜日まで働くのは(厳しい)という方もいらっしゃるため、フレキシブルなシステムを作っていいと思う。

Q : 金融庁審議会の老後資金2,000万円報告書問題について、本質論から外れている、本質論を話してほしいとの指摘があったが、具体的に何を話し合うべきかなど踏み込んで教えていただきたい。

櫻田: 一つには、自助・共助・公助の中で自己責任で投資をするとなると、どういうところに(投資をしていくかを考えなければならない)。なぜNISAやiDeCoが想定通りに利用されていないかをもっと調べなければならない。私自身、当社でも調べたことがなく、調べなければならない(と思っている)。もう一つは、年金の仕組みがどのようになっているか(を分かりやすく説明すべきである)。「100年安心」や「100年サスティナブル」などいろいろな言葉が飛び交っているが、現在の年金制度がどのようになっているのか、なぜサスティナブルと言えるのか、もっとわかりやすく説明しなければならないし、我々経済界は、従業員に対してしっかりと説明していく必要がある。すると結果として、(年金財源が)不足しているという結論が出るだろう。年金の財源だけではなく、社会保障全体が今のままでは立ち行かないという議論に繋がるはずだ。年金や介護、医療など社会保障全体の議論に繋げることによって初めて、この問題が国家論的、国民的な議論に繋がっていく。(本会としても)できればそこに繋げていきたい。

Q : 本質論の議論をするためには、政財等の合同で社会保障やその方針に関する審議会、協議会を作る必要があるとお考えか。

櫻田: 一言では何とも言えないが、今の仕組みの中で何が足りないかというと、そんなに難しい話ではないと思う。例えば財政制度等審議会で検討されている「令和時代の財政の在り方に関する建議」の中でも謡われているし、おそらく「骨太の方針」にも出てくるだろう。色々な会議体で出てくるが、一つにまとめ、要するにどういうことなのかをどの場で示したらよいのか、ということだと思う。官民(の枠組み)が必要なのか、既に出来上がっているシステムもあれば、本会が独自に議論してもよいと思う。必ずしも(新たに)官民で協力して、というわけではなく、既にある場の中でも議論できる。問題は、何をすべきかという「What」についてはもう出されている(とういことだ)。例えば2025年までにプライマリーバランスを黒字化すること、(消費税率)8%から10%はもとより、10%から先についても議論しなければいけない(ことなどだ)。給付と負担のバランスについてもそうだし、労働人口の問題と社会保障の問題、(定年延長について)70歳から75歳の問題も出ている。問題はどうやって(実行するか)、「How to」「How to do」だ。「What」や「Why」から「How」、どうやってやるかということを早く議論しなければならないと思うし、そのために本会ができることがあれば微力なれど力を尽くしていきたい。

Q : 今回の件もそうだが、政府等でこのような話が出ると与野党の政争の具になり、本質論から外れてしまい、本当に見なければならない部分が見えなくなってしまう。今回の議論でも、(年金が)足りないということは、麻生金融相の言葉を借りると「娯楽をしながら老後を生きるには、どうしても投資をしなくてはいけない」部分が確かにあると思うが、その話は結局消えてしまう。報告書も受け取らないということになれば、うやむやになってしまう危機感があると思う。結局政争の具になってしまうことについてどのようにお考えか。

櫻田: まず第一に、今の社会保障制度全般をもって十分豊かに暮らせると思っている国民はそれほど多くはいないということは各種調査結果も出ており、自助努力が必要だと分かっていると思う。ただ、それがどれくらい(必要)なのかについて具体的にイメージが湧かないという人はたくさんいるだろう。その点については説明し、協力し、あるいは理解を得るような努力をすることが、政官あるいは我々(経済界にとって)必要だ。政争の具になるような話についてはコメントを控えたい。(そもそも本件は)、そうした話ではないと思う。本質論がなぜ行われないかというと、国民の政治に関する関心が少し短期間的(なもの)になりすぎているからではないかと思っている。シルバーデモクラシーが悪いのではないが、若い人が(政治に)参加しない結果として、高齢者の意向に寄っており、シルバーデモクラシーが強く出ていると思う。これはこれで民主主義だが、論点が明確にならない。現在と将来のどちらを選択するかの骨太の(議論を行うための)論点が明確にならないし、そこをどうにかしないといけない。

Q : 原油の話について伺いたい。対イランの経済制裁において、日本はもともと原油の供給に不安を抱えていたが、安倍首相が(イランを)訪問し言質を取ったことで、安心したところもあった。その直後に(タンカー攻撃が起こり)米国が声明を出したことでまた不安が出てきた。こういう(不安に対する)揺れが起きていることについてどう思われるか。また、影響が今のところそれほど出ていないとおっしゃったが、イランからの原油供給に関して日本企業の対応はどれぐらい進んでいたのか伺いたい。

櫻田: (それほど影響が出ていないという発言は)楽観しているという意味ではないが、ことさら不確実性が高まっているとは思っていない。(タンカー攻撃に対しては)許せない(と思うし)、事故か事件か分からないが、なぜ日本とイランのトップが会った直後に(こういうことが)起きるのか。(事実は)未だに分かっていないが、非難されるべきことが起きていてもマーケットは動いてないということだ。市場関係者は情報を持つ人が多く集まっており、我々よりもマーケットは正しい(判断を下す)から、結果として(今のマーケットを見るに)それほど慌てなくてよいと思う。ただ、指摘の通り、これが本質的な解決にはつながっていない。もう一つ(質問の)イランからの原油輸入について、当社は原油を扱っていないが、(関係各社では)備蓄を含めて十分な準備をしていると聞いているので、直ちに困ることにはなっていないと思う。

Q : 金融庁審議会の老後資金2,000万円報告書問題、について伺いたい。本質的な議論を含めて、参院選の争点にすべきか。

櫻田: 「2,000万円」を争点にするのではなく、社会保障についてどう考えていくのかということであれば、大いに(争点に)すべきだと思う。ただし、くどいようだが、正しく、客観的に論点を示さなければならない。むしろファクトは各党が出すのではなく、メディアや研究機関が提示したらよいと思う。それに対してどうしたらよいかという方針やマニフェストが出てきて、それを(選挙で)国民が判断する、ということについては大いに賛成する。

Q : 先週、経済同友会は2019年6月(第129回)景気定点観測アンケート調査結果を発表し、(経営者の)景気判断指数が6年半ぶりにマイナスとなったという。日銀短観にも連動しているようだが、どう受け止めているか。

櫻田: 昨日、最終的なまとめをしたが、結論的には(結果報告と)変わっていない。マインドが弱含んできている。もう少し具体的に言うと、箱モノ、設備モノへの投資(意欲)は旺盛である。東京オリンピック・パラリンピック後に荒波があるのではないかということに対しても、そうではなさそうだ。やや心配なのは、物流・小売については若干弱気というか、元気がなくなってきたという意見が経営者から聞かれた。それが6年半ぶり(のマイナス要因)ということだ。(消費税率引き上げ前の)駆け込み需要が意外と起きておらず、割と消費者のマインドが慎重になってきている。消費税(率引き上げ)があるので慎重になっているということではなく、モノからコトへの消費、あるいはモノを大切にするマインドがしっかりと植え付けられているせいか、消費についての勢いは若干弱含んでいるのではないかということだ。心配なほどではないとは言っていた。

Q : 代表幹事がおっしゃられたように、ファクトを各省庁が出し、議論の場を持つ必要性を、金融庁審議会の老後資金2,000万円報告書問題、、年金問題に限らず、最近の様々な問題について感じる。原子力発電所やエネルギー問題などもあるが、年金問題は政争の具というより、自民党の二階幹事長が言うように、選挙で負けたくないから(というニュアンスで)報告書について否定的だった。だが、社会保障、消費税、プライマリーバランスをどうするのかということを選挙後にきちんと取り組まなければならない。きちんとやらないと、若者の負担が増えるというのは当然である。何を以て議論するのかについて、もう少し整理する時間は必要だと思う。今回の報告書(を作成したの)は、NISAやiDeCoといった「貯蓄から投資へ」の流れを作るためのワーキンググループであったため、どうしても情報の部分でつまずいてしまった。日本商工会議所からは、きちんと(議論の)ステージを作って取り組むべきという意見も出ている。(年金問題の解決を)今後は先に延ばすのではなく、どこかできちんとやらないとまずいのではないかと思う。(年金制度が)わかりにくいというのはその通りだが、いつかはやらなければならない。このあたりについて代表幹事のお考えを伺いたい。

櫻田: 同感である。社会保障と財政というのは表裏一体の問題であるので、(本会では)一つの委員会を設置してきた。(しかし、)本会幹部との会議で、年金問題、社会保障問題について(議論した際、次のような意見があった)。誤解を恐れずに言うと、「逃げ切り世代」と「置いていかれ世代」とをあえて分けたときに、逃げ切り世代ではない、20歳代~40歳代前半の人たちから今の社会保障制度はどう見えるのか、ファクトはどうなのか、そしてそれはどうあるべきなのかについて議論しようということになり、(今年度は)「負担増世代が考える社会保障改革委員会」を設置した。若い(世代の会員が)委員長(髙島 宏平/オイシックス・ラ・大地 取締役社長)を務めている。本会の中でも、先ほどご指摘いただいたようなことをしっかり議論したいと考えている。(委員会活動が本格化していないので)結論はまだ出ていない。こうすべきだという結論がすぐには出てこない可能性もある。もしかすると、世代間で議論が分かれるということがあるかもしれない。(世代間の)違いが出たら、違いは違いのまま示していこうではないかというところまで議論している。(結論を示せるよう)しっかりやっていきたい。

Q : 今月21日に閣議決定される予定の(「骨太の方針」等で)70歳以上の雇用(促進)だけではなく、就職氷河期(世代を対象にした支援)やジョブ型社員の正規(雇用)化など複数の雇用関連(の施策)が盛り込まれた。全て実現し、(政府から)強制されると企業としては困ると思うが、(就職氷河期世代と企業の)マッチングや起業家支援など、具体的にどういう取り組みが必要だと思うか。(代表幹事がグループCEOを務める)SOMPOホールディングスとして実施している取り組みはあるか。

櫻田: (「骨太の方針」等の雇用関連施策には)、制度として実現可能なことと、制度を変えなくても現行のルールの中で各社が努力すれば実現可能なことが混ざっている。21日に閣議決定されるものは、最終的にルールや法制の改定に繋げようということだ。ルールや法制について、あらゆるものを全て強制されては困る。日本の競争力、生産性を上げて、結果として社会保障制度の持続可能性や、表裏一体である財政健全化に繋げていきたいならば、単に企業の負担が増えるだけではいけない。競争力や生産性の観点から(雇用関連施策を)見なければならない。具体的には、本会は以前からキャリア採用はジョブ型でないと不可能であり、同一労働同一賃金ではなく、同一価値労働同一賃金であるべきと主張している。そういった考え方を本当に採用できるのかどうか。年齢ではなく、個人が企業にもたらす価値や成果に対して賃金が支払われる体制ができるのか。そのルールをどうするのかという問題がある。年齢については、一律に何歳(から定年であるべき)と言うのは難しいが、(定年制が)現在の65歳から70歳になった場合、労働組合や従業員の了解が前提ではあるが、(雇い続けるかどうかの)自由度を企業側が持っていない限りは、本来の目的である生産性、競争力を高めることには繋がらない。従って、「What」ではなく「How」(が重要である)。(雇用施策について)どうやってそれを実現するのか、現実を直視しながらやっていかないといけない。(「How」の部分について)経済界としてしっかり発言しないといけないと思っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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