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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年5月14日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)米中貿易摩擦、(2)景況感、(3)消費税率引き上げ、(4)終身雇用・採用の在り方、(5)高齢者雇用、(6)Do Tank、などについて発言があった。

Q : 米中摩擦の日本への影響について伺いたい。足元の影響と今後の見通しについてどう見ていらっしゃるのか、また日本としてどのような対応ができるかについてお考えを伺いたい。

櫻田: 大前提として、米中の問題は貿易戦争の形を取った技術覇権競争と捉えておくべきである。その意味で、ある程度は長引く覚悟が必要である。何年とは言えないが、5~10年、場合によっては20年かかるかもしれない。私には、中国が「中国製造2025」を簡単に諦めるとは思えず、米国も同様(技術覇権を諦めないだろう)。また、中国に対する強硬路線派の動きが共和党のみならず民主党の中にも出てきていることを考えると、当然、お互いに譲れないところが背景にあり、言ってみれば報復合戦になる。一つファクトとして注目しなければならないのは、IMFが出している(世界経済見通しで)、米中問題から派生する世界経済への影響である。一言で言うと、私は(米中問題の影響は)軽微と理解している。もちろん(影響は)マイナスではあるが、現時点では世界経済全体が大きく下に足を引っ張られることにはなっていない。理由はいろいろあると思うが、(リスクが)分散されており、足りない部分を他の国から補えることがある。その意味では(影響は)軽微だ。この数日間で本会会員に状況を聞いたところ、全体として(影響は)軽微である(とのことだった)。場合によっては、まだ足元で痛みが出ていないところ、代替需要が発生しプラスになっているところ、その一方で非常にマイナスに進んでいるところもあり、まだら模様のようで平均値はあまり意味がないかもしれない。ただ、経済全体への影響をマクロで捉えたときには、(影響は)あまりない、あるいはまだ起きていない。今後は何とも言えず、プラスになることはないと思うが、少なくともIMFが予想しているとおり、一番大きなマイナスの影響を受けるのはおそらく中国自身だろう。日本はその意味では、まだら模様の対応をしながらなんとかしのいでいくのだろうが、この貿易戦争が長引く覚悟は経済人として必要だと思っている。長引くことを前提として、例えば、各企業のトップ達は地産地消の(戦略で)リスク分散を進めていく、あるいはサプライチェーンを見直していくというような動きは当然、考えていると思うし、むしろそれが進められるべきである。

Q :  5月13日、内閣府は国内景気の基調判断を「悪化」と発表した。従来は5GやIoTなどのデジタル投資が(景気を)けん引するという見方もあったが、どう見ているか。また景気対策が必要な場合、どのようなものが必要かも伺いたい。

櫻田: 足元の設備投資意欲という観点で言うと、大企業はまだしっかりしている。本会のメンバーに聞いても当初の設備投資額は変えないと話しており、それほど悲観する必要はない。3月までの世界経済の中で、中国経済が思った以上に芳しくなかったこともあり、その影響が出ている。今後について、ものすごく悲観しているわけではないが、過度に楽観視するのもよくない。現時点で腰折れという状況ではない。(質問の)景気対策とは、10月1日のこと(消費税率10%への引き上げ)を念頭に置いておられるのだろうが、現時点で(これ以上)必要な状況になるとは思っていない。これ以上の財政負担をしてまでリスクをとる必要はない。

Q : 米中対立に関して、昨日から本日にかけて中国側の応酬からより激化している。(対立激化は)ある程度予想がついたことと思うが、スピード感は予想通りか、それよりも激しさを増していると見るべきか伺いたい。関連で、昨日までの段階で日経平均株価が6営業日続落、本日午前も続落している。少なくともマインドに与える影響はそれなりにあるかと思うが、どのように見るか。また、景気の見方と10月1日の消費税率引き上げに対して、4月から様々な意見が燻っているが、改めて考えを伺いたい。

櫻田: マインド面への影響はあると思うが、(あくまで)センチメントだから、逆に振れることもある。今の株価水準を見て一喜一憂する必要はないと思う。一方で過度に楽観してもいけない。米中の問題について、ファンダメンタルの問題は、国内事情が背景にあるため簡単には折れないが、実害がどれくらいあるかについては、両国とも戦略的に考えているだろう。そのため、本当に致命的なところまで達するとは思っていない。長期にわたる覇権争い、技術覇権競争をどう戦うか、お互いに落としどころを探っていると思っている。長引くだろうが、世界経済を思いっきり下に引っ張ってリーマンショックのようなことが起きるとは思わないし、また、簡単にも解決しない。くどいようだが、日本企業は今までのサプライチェーンのあり方やものの作り方、マーケティング戦略を見直していく覚悟で経営に臨むべきである。消費増税については、待ったなしという表現をしていいのかわからないが、日本の現状を考えれば、今年10月1日に消費税率を10%に上げることが前提だと思っている。今の日本の財政とその反対側にある社会保障問題というのは、(歳出と歳入両面の改革が必要で)、同時にしなくてはならないという点が問題だと思うので、こうした覚悟を持つことが大事である。その覚悟で今の経済状況を鑑みると、消費税率が8%から10%に上がらないのは考えられないし、少なくとも枢要な政治家もそのように理解していると私は認識している。したがって、しっかりやるということだ。重要なことは体質改善で、給付と負担のバランスのあり方を見直していく。それを進めるにはダイエットをしながら(筋肉量を増やすべく)筋トレもするような、痛みを伴う覚悟を要する。国民の理解を得るべく、何回も何回も、財界含めあらゆる方面が働きかけることが必要だと思っている。

Q : 昨日、日本自動車工業会の豊田章男会長が終身雇用について「厳しい局面に来ている」と発言された。以前には、経団連の中西宏明会長も「終身雇用は難しい」と言及している。終身雇用について櫻田代表幹事のお考えを伺いたい。

櫻田: 日本最大の課題はいくつかあるが、日本経済が持続可能性を持って成長していくことが大前提としてある。その次に、日本(企業)の生産性、特にサービス産業の生産性向上が不可欠だ。生産性を上げるために(世界に比して)何よりも見劣りするのが労働の生産性であり、ここを見直すほかない。日本に特徴的なことは新卒一括採用、終身雇用、年功序列とそれに伴う社会保障制度だ。これらは戦後70年間、特に昭和の時代にはよく機能したが、経済そのものが大きく変化したこの30年間において、制度疲労を起こしたことは言を俟たない。その中の一つとして終身雇用を捉えれば、やはり制度疲労を起こしており、(このままでは今後)もたないと思っている。ただ、終身雇用制度だけを取り上げるのではなく、広い意味での働き方改革やイノベーション、ダイバーシティ&インクルージョンを進めていくために、パッケージとしての日本型雇用を見直していくべきで、その中の一つが終身雇用だと考えている。

Q : 経団連は大学と協議しながら理想の採用のあり方を検討しているが、現状どのような採用を目指し、検討していくべきか。

櫻田: 日本だけ、閉じた世界で検討するのは誤りだろうと思う。世界のなかで、在学中に就職先が決まる(学生の)割合は日本が圧倒的に高い。80%超である。米国では50%程度だ。つまり、世界の中でも珍しい仕組みであるということを前提におき、日本の今の採用のあり方が、理由はともかく、世界と競争していくには少し特殊であることを認識しておく必要がある。それを続けていく証拠(必要性)が十分にあるのかを考えた際、私としては証拠不十分で、ダイバーシティ&インクルージョンを含め、学生個々の考え方に沿って企業も採用を進めていくのが正しいのではないか(と思う)。通年採用が前提にあり、キャリア採用を中心として、その一つに新卒採用があるべきだ。(採用に占める)割合も、今は圧倒的に新卒採用が多い。当社・SOMPOホールディングスでも約80%が新卒一括採用で、キャリア採用は20%程度に過ぎない。これではいけない、変えていく必要があると思っている。

Q : (代表幹事が議員を務める)未来投資会議で高齢者雇用拡大の話が出ている。政府は昨年秋の段階では、「step by step」という言い方にとどまっていたが、経営者側から見てどのようなあり方だと高齢者雇用拡大の枠組みをつくりやすいか。また、本日行われる経済財政諮問会議のテーマの一つに最低賃金の引き上げがあるが、内需を支える意味で、最低賃金の引き上げが持つ意義をどう考えるか。

櫻田: 高齢者雇用は、「必要」ということが前提である。必要の意味は(2つある)。(一つは、高齢者が)「享受する側から支払う側へ」という社会保障制度の観点から日本経済のマクロにとって必要である。(もう一つは、)AIを最大限活用したとしてもまだ(人手が)足りないのは明らかという中で、熟練されたノウハウや経験を持っている高齢者に参加してもらうことは必要である。(高齢者雇用拡大について)「step by step」とは(政府が)強制力を働かせて(民間に)やらせるイメージを持つが、それは間違っている。日本の財政や社会保障制度の観点から言うと、例えば「少なくとも65歳まで」という(定年制を)「70歳まで」(にする)というのは理解できるが、強制的に企業側に高齢者を採用するよう強いるのは違う話だと思う。どのような職種、スキルを持った人が(企業から)求められるのかは、個々の経営戦略に任せられるべきだ。最低賃金の問題について、日本経済にとって一番大事なのは景気浮揚の観点では消費である。どうすれば消費者の財布の紐が安心して開くかを考えると、将来に対する不安(がないこと)、予見可能性である。特に年金について、「逃げ切り組」という言葉があるように、(世代間の)損得があるように思うと、どうしても不安が出てくる。聞いた話では、今年の成人式でメディアが新成人に「どのようなことを心がけるか」とインタビューしたところ、一番多かった答えが「貯金」、次が「節約」だったそうだ。これでどうやって成長できるのか。(内需を支えるのは)最低賃金の引き上げの問題ではない。日本の将来に関する予見可能性(の問題)である。私が入社した頃は自動的に給料が上がっていくと思っていたが、直近の30年間に入社した人はそう思っていないだろう。その点を変える必要があり、それには社会保障制度の問題が大きい。表裏一体の関係にある税の問題もある。(税の引き上げは)大変ではあるが、できるだけ頑張る姿勢を示していくことが必要である。

Q : 先ほど、米中関係について、影響は軽微だが長引きそうだとおっしゃられた。軽微でも長引けば、蝕まれていくところ、体力を削がれていくところもあると思う。(米中貿易摩擦は)どれくらいの期間であれば、我慢できるのか。あるいは、定常の状態として、うまく付き合っていくしかないのか。

櫻田: どれくらいの期間か(との問い)について、私は科学的根拠を以て申し上げているわけではないが、いろいろな専門家に聞くと、5年、10年、20年という(様々な意見がある)。世界の二大経済大国が互いにつぶしあうことが本当によいのかというと、彼ら(自身)もよいとは思っていないだろう。(両国の)国内事情などを背景にしたうえで、メンツのようなところで動いており、落としどころを探すはずだ。したがって、それほど(この状況は)長引かないのではないか。先ほど申し上げたように、破壊的なダメージを互いに与えるようなことはしないであろう。そうはいっても、(米中貿易摩擦は)プラスには働かない。マイナスの影響は絶対に出るだろう。それ(影響)が、1%なのか、1.5%なのかはわからない。IMFの予測によると、(米中双方が全品目に25%の追加関税を課せば)中国経済(GDP)でマイナス0.5~1.5%程度、米国でマイナス0.3~0.6%程度だといわれている。だとすれば、リーマンショックに比べ、大した話ではない。しかし、日本企業、世界の企業、特にOECD諸国は、二大大国のテンション(が高い)この定常状態の中でなお、サスティナブルに成長するためには、どのような戦略をとるのか。簡単に言えば、地産地消、リスク分散などだと思うが、そのようなことをやっていかなければならない。中国をマーケットとしてみている企業群については、厳しい状態が起きている。ここはもう、頑張っていくしかない。簡単な解は見つからないと思う。特に自動車(業界)あたりは、結構厳しいのは間違いないだろう。中国も国内問題として深刻にとらえているので、まだ十分な財政資金もあり、対策は打っていくと思う。

Q : 就任して2週間が経過した。代表幹事就任挨拶の時に、"いて欲しい国、いなくては困る国、日本"の実現に向けて、"Do Tank"としての経済同友会へ、という発信をされたが、4年間の任期の中で「櫻田同友会」として、ヴィジョン、あるいは何をすべきかについて考えを伺いたい。

櫻田: 常に自問自答しており、確信を持って答えることは出来ないが、私の考えが変わらない部分においてお答えしたい。第一に、経済同友会は1946年に誕生して以来70余年、過去の立派な代表幹事や幹部の方々、委員長などが良い提言をたくさん出してきた。だが、良い日本になっていない。こんなに良い提言を出しているが、エネルギー問題や、税制は(改善していないという現実がある)。経済同友会が悪かったと言うつもりはないが、(今は提言を出したものに対して)実現に向けてエネルギーを使う時期に来ているのではないか。私と共に仕事をしてくださる経済同友会幹部、専務理事・副代表幹事を含めて、ここまで知恵を絞って取り組んできた我々に、(議論すべき残された)論点はあまりない(と思う)。WHAT・WHYの部分は出尽くした感があり、(これから)大事なのはHOWで、どうやって(提言を)実現していくかだ。HOWに力を入れていくことが重要だと思い、Do Tankという言葉で定義・表現した。Doの定義はいろいろあり、発言することもDo である。ただ私が考える発言のDo 、あるいはコミュニケーションの目的は、発信するだけではなく、発信したことによって、相手の考え方や行動が変化するということだ。提言した内容が、ストレートに、あるいは間接的に、政府・政策・国のかたちに反映されていくことが大切であると考えている。この場合に必要なことは、発言力と発信力であり、これまで以上に(記者の方々と)コミュニケーションを密に取り組ませていただく必要があると思う。第二に、経済団体として、政策立案者や政府に直接発言していくことだけではなく、政策立案者や政府から真剣に耳を傾けていただける場を作るということだ。具体的に言うと、国民、市民、学生などの考え方や行動を動かしていくための触媒に(本会が)なる必要がある。2016年(の本会創立70周年時から)小林前代表幹事が始めた「テラス(経済同友会会員である経営者の枠を超え、社会の様々なステークホルダーと議論、対話、連携していく多様な場)」という取り組みをプラットフォーム型に進化させていく。経済同友会は経済団体であるが、国民に寄り添って問題を一緒に考えていきたい。(そして)国民も一緒になって考えた結果がこうである、ということも発信していく。その結果を発信していく過程に、(政策実現の)パワーが込められてくる。例えばそれが、国民の、特に若い方々の投票行動に繋がってくれれば、望外なことである。(政治に対する)基本スタンスは是々非々で、政治的立場は無色であるということは貫きたい。櫻田ヴィジョンについては、(現在のところ)今発言した内容を超えていないので、これで4年間務められれば望外なことである。

Q :  5月13日の日本維新の会・丸山穂高衆院議員発言の背景には何があるとお考えか。

櫻田: (発言内容について)詳しく存じ上げていない。

Q : これから先、米中の関係悪化が長引く可能性も踏まえて、(消費税率引き上げに対する)経済対策が終了した後の増税影響によって、消費マインドや日本経済が弱含みになる懸念はあるか。

櫻田: (影響は)ゼロではないと思う。今の痛みを緩和することで、将来、より深刻な症状を負うことがないのならばそれでよいのかもしれないが、どう考えても(そうはならない)。最近、MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)など日本の国債は日本人が買っているから安心だという考えがあるが、戦後にも同じようなことがあって、その時国債は紙くずになった。政府と日銀の資産・負債を足し合わせれば大丈夫だとの話もあるが、単純に計算して負債は残るはずだ。その負債はだれがどうやって背負うのかという問題について目隠ししたまま、あと何十年もやっていけない。また、デフレ脱却するということはゼロ金利でなくなるということだ。金利が2~3%に戻った際に、利払い費はどこが負担するのか。そう考えれば、もたないことははっきりしている。10月1日に消費税率を引き上げ、その後10年間日本経済が低迷することがあったとしたら、その理由は消費税の問題ではない。将来に対する不安が払拭されないからであり、社会保障制度や財政についての不安を日本国民が考えていくと、まずは(貯金・節約といった)自己防衛の対応を取らざるを得ないのが実態である。ここをどう乗り越えていくのかという覚悟を政府にはぜひしてほしいし、安倍首相にも決断してほしいと思っている。

Q :  Do Tankの Do の部分について、発信するだけではなく、それによって、相手の考え方や行動が変化することだとおっしゃられた。政策に反映されたのかどうかは、今後どのように判断していくのか。

櫻田: 定性的な目標では意味がなく、(かといって)定量的な目標では数字だけが先行してしまう。企業経営と同じだ。決算数字や経営計画の目標を達成できるかどうかは数字で測れる。しかし、決算数字よりも大切な部分だが、文化が変わったことを測るのは難しい。ただ、一般的に企業経営者は(それを測るには)社員やお客様に聞く(ES調査、CS調査)。ここにいらっしゃる記者の皆さんもそうだが、「変わっていない」と言われれば、謙虚に受け止め、どうすれば変われるかに取り組んでいく。(就任期間の)4年が経過したら総括するのではなく、定点観測していくことが大事だと思っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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