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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年3月26日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)米国市場と国内の景気対策、(2)就活、(3)コンビニの24時間営業、(4)消費増税、(5)企業のガバナンス、などについて発言があった。

Q : 先週の米国に引き続き国内でも株式市場は下落したが、さらに米国の長短金利が逆転するなど波乱が続き、景気が下降局面に入っているとの指摘もある。日本では、消費増税も控える中、景気が腰折れしないように施策を打った方がいいという議論もあるが、これについてどのように見ているか。


小林: 2008年9月15日のリーマンショックから1、2年は相当厳しかった。しかし、あれから10年が経過し、国によっては非常に高いGDPの成長率を実現した。一方、日本は実質・名目(成長率)は1%前後を辿り、過去15年でみると、GDPは4%ぐらいしか上がっていない。しかし、特に企業側から国際競争力という観点でみた場合、78円とか80円台のドル円相場の頃から比べれば、六重苦の筆頭(であった円高)は相対的に良い方向に来た。平成(という時代)は平和をエンジョイできた良い時かもしれない。しかし「平らに成る」と読めば、経済はフラットないしは少しそれより良かったくらいであったとも言える。(日本は、)世界経済の影響を受けながら上手く運転はしてきたと思うが、本当の意味のイノベーションというか、経済の新たな展開はあまりなかった(のも事実である)。(日本企業は)既存の事業が過当競争となる中で、海外展開を進めてきた。そういう中で、今回の逆イールドカーブのように、海外で大騒ぎになれば、日本でも騒ぎになる。(日本では、)金融政策では一貫してここまで緩和をしてきており、これ以上そういった政策を取ったからといって、あまり大きな動きがあるとも思えないし、(国による)株買いについても限界がある。世界の実体経済、とりわけ米中関係が一番の大きなファクターとなるだろう。あまりどたばたしないことである。私に入ってくる素材メーカーの(業績に関する)情報は非常に良くない。11月から1月まで相当凹んで、2、3月もそこまで回復する兆しはない。マーケットは、逆イールドカーブに対して明らかにネガティブに見ている。しかし、だからといって大騒ぎして手を打っても、効果は限られている。景気がいい時もあれば悪い時もあるというのが自然法則だ。ここでじたばたして財政を使い切ってしまい、借金が溜まっていく方が、よほど将来に禍根を残すのではないかと思う。ここは様子をみて、我慢すべき時は我慢する(時である)。消費税については、消費増税というより実体は消費減税なので、そこまで大きな影響があるとは思えない。

Q : 本日、政府が2021年春入社の学生を対象とする「就活ルール」について、経済団体などへ要請を出した。ルールの存在意義、就職活動のさらなる早期化について、足元と将来を含め、見解を伺いたい。


小林: 就職活動については、経済同友会は2016年に提言(『新卒・既卒ワンプール/通年採用」の定着に向けて』教育改革委員会、2016年3月28日)を出している。この中では、いきなり通年採用に移行することは無理でも、大学卒業後に3~5年のバッファゾーンを設けて、その間は卒業してすぐに就職をするという形だけではなく(何が自分に向いているかを見極める時期とする)、或いは一回就職をしても自分に合わないと考える人材を(新人扱いで)採用するというものだ。インターンシップに関しても、大学1~2年生を中心に、1カ月ぐらいかけて社会とはどういうものかを学生に知ってもらう。インターンをやったのだからそのまま会社に入るというように就職に直結するようなものでなく、社会的な意味合いも考えて提唱している。2019年度には新しい団体を作り、本会のインターンシップ活動を定着させるべく準備をしている。(2018年度の活動では、)企業が28社、大学・高専は15校が参加している。学生に対する具体的な教育を考えている。来年度からは(会員の)所属企業間で社員同士を相互に出向させ、多様性を付与するための活性化を図る具体的なアクションに入ることも考えている。グローバルな環境を考慮すれば、さらなる労働の流動性(が必要であり)、新入社員についても、もう少しフレキシブルに対応すべきだ。政府の言うルールは一つの考えであるが、自由主義社会であれば当然企業が個別に自由に(採用活動を)すべきで、ひいてはそれが国際競争力のアップにつながる。そうしたことを通じて、給与も自由に、横並びではなく、儲かったところはしっかり上げていくべきである。(賃金を)上げればいい人材が入ってくる。大卒初任給の水準も相変わらずせいぜい22万円~23万円程度で、中国・ファーウェイの日本研究所だと40万円、50万円といわれている。国内企業が横並びでよいのかどうかを考える材料とすべきだ。

Q : 今回の政府要請は、これまでの一律ルールを基本的には踏襲するものとなっているが、必ずしもそれに縛られることはないということか。


小林: 定期的に新入社員を採用する会社はそれでよいかもしれないが、不定期採用も増やせばよいだろうし、(新人としての採用期間に)バッファ(ゾーンを設けるしくみ)も対応することはできる。言葉の定義には議論があるようだが、スタッフ採用など、いずれにしても途中で入社する人をもっとアクティベートしていくべきではないか。

Q : 就活に関して伺いたい。本日の政府要請では、2020年度に就活を行う学生が東京オリンピック・パラリンピック2020大会のボランティアに参加する場合、その事前研修が就活の時期と重なることや、地方から上京してくる学生の宿泊先が不足するなど特別な事情もあるので、よく配慮するように、といった書き方がなされている。東京オリンピック・パラリンピック2020大会が就活に及ぼす影響について、代表幹事はどのように見ているか。企業側としてどのような対応をすべきか。

小林: まだ(政府要請を)読んでいない。いろいろ(な事情は)あるが、(一人ひとりが)頑張ることだ。何かあったらこうだ等、この国は本当に甘やかしすぎだ。(国民も)甘やかされるのが当然だと思っている。大変な時があっても、努力をすればよい。(就活もボランティアも)両方やればよい。今も、国際的に勝とうとして非常に懸命に働いている人はいる。一律にこうあるべし、と変に形を作る(ことが果たしてよいのだろうか)。例えば、デジタルデバイド(について、)高齢者がネット決済できないといった(話もあるが)、このようなことは(キャッシュレス化が進んだ)中国で通用するだろうか。深センでは、高齢者もみなキャッシュレスで(決済を)している。デジタルデバイドなどといって高齢者に対して(従来通りの対応を)やっているから、世の中はどんどん遅れてしまう。高齢者も勉強したらよい。そういう社会を作っていかないと、一個一個きめ細かく(対策を)していたら、世界に遅れてしまう。

Q : 今回政府は、今までは400団体程度だった要請書の送り先を1,000以上の団体に増やした。さらに、送付先へは周知を行ったかどうかのフォローアップを行い、実効性を高めるとのことだ。先のご発言によれば、そもそも(採用の)原則は企業が自由に柔軟性をもってやるべきとのお考えかと思うが、(要請の)送り先を増やし、フォローアップのアンケートを行うことは、企業・大学生にとって有益か。政府への要望も含め、見解を伺いたい。


小林: 企業側からみると、3月から行動を開始し、6月に(内々定を)決め、(翌年)4月に入社するといった採用ももちろんある。しかし、海外留学していた人で良い人材がいれば通年で採るだろうし、データ(の専門家)が足りなければ外からリクルートすることもあり、ハイブリッド系で考えるべきではないか。その意味で、新卒採用の従来の手法について、100%そうあるべしとは理解していない。(要請書の)送り先が増えことについては、少ないよりは多い方がよい気はする。

Q : コンビニの24時間営業をめぐる問題についてどのように考えているか。


小林: (経営は)企業の自由なので、好きにやればよいのではないか。効率良くコストを減らそうとしたら、真夜中に働くのが良いのか悪いのか。小売業でもそれぞれ特色があるので、選択の問題だと思う。国家が企業の構造に対してあまりに関与することは、いかがなものかと思う。

Q : フランチャイズの現場は(人手不足などを理由に)24時間営業は限界だと言い、コンビニの本部側は24時間営業してほしいと言っている構図だが、これについてはどう考えるか。


小林: フランチャイズ(側)が物理的に(対応)できないことを認めざるを得なくなれば、必然的にそうせざるを得ないだろう。お客様から見ると、夜中まで営業していることが本当にありがたいと感じるかどうかは、なかなか難しい問題だ。コストを含め、お客様のことも考えれば、セールストークとして24時間営業(と謳うこと)は一つの手法であるが、それに対して問題提起するほどのことだろうかと思う。

Q : 景気が後退局面に入っている可能性がある中での消費増税について、日本経済にリーマンショック並みの影響が出てくると思うか。


小林: まったくないと思う。1~2カ月や1年で考えれば、消費税の影響は何らかの形で生じるかもしれないが、今この国の財政の債務超過、借金漬けを、10~20年、あるいは100年のオーダーで考えたら、今やらなければいつやるのか。ミクロな数カ月のオーダーでものを考えながら今までずっとやってきたが、(景気が)やや回復、やや落ちたなど(という次元ではなく)、もっとロングタームで物事を考えて政治を行わないといけない。(消費増税を)野党は反対し、公明党と自民党だけが賛成している。少なくとも、時の政権が消費税率を上げようとしており、数値的には一時的に消費減税になるが、1~2年経過すれば(増税対策が終了して、単純に)10%になる。したがって、野党が言っている「消費減税なら消費増税をやめればよい」という主張は、時間軸が入っておらず、論法としておかしい。今はスムーズに平準化して、1~2年はあまり大きなショックが起こらないようにしながら、2~3年後は完全に10%の税率になるということだ。欧州、中国など、消費税が少なくとも15~20%が世界の常識の中で、かつてなく(景気が)好調な時に、これだけの借金漬けである日本が未だに消費税8%ということは、長期的な持続可能性という意味でよいと言えるのか。次の世代以降にとんでもないものを残していくという認識を、われわれも含めて、国民が持つべきだと思う。

Q : 首相経験者が、消費増税が延期されるのではとツイートしたが、消費増税延期の可能性があるとお考えか。


小林: 可能性はあるかもしれないが、それはわからない。今この状況で、デマゴーグみたいなものに幻惑されるべきではない。少々景気が悪くなっても、消費増税をすることは(財政赤字の削減になり)将来を見越した次の世代への贈り物になると思う。今さえよければ、自分さえよければということを続けていくと、この国は大変なことになる。金融緩和や財政出動は将来に負荷を掛けるもので、今の人たちは痛い思いをしないため文句は言わない。しかし、次の世代の人たちに大変な負荷を掛けているという認識をもっと持たなければいけない。北欧諸国はそのように考えて税金を払うが、その代わりに、社会保障や福祉もしっかり受給する。それは国民の認識(の問題)だと思う。野党においては、消費増税も原発もサドンデスと言っているが、この国はどのように飯を食っていくのかという視点が全くないように思う。

Q : 日産のガバナンス改善特別委員会の提言が間もなく公表されるが、社外取締役の役割がより重要になるとみられている。その意義やメリットを伺いたい。


小林: かつて5、6年前までは、経団連を含め大企業、中堅企業も社外取締役を1人入れるだけで大騒ぎだった。自社という意識が強く、企業は公のものというより私(わたくし)の認識で、法人にかかわらず私物化されていた(面もある)。しかし現在は徐々に公共財という認識に変わってきた。当初、「自社の事業を分からない人が社外から来てわかるはずがなく、社外取締役には反対」という意見が多かった。一方で、本会は複数名の社外取締役を入れるべきと早くから主張してきた。2014年頃には、政府が(主導して)コーポレートガバナンスコード、スチュワードシップコードをまとめた。その力もさることながら、(議決権行使助言会社の)ISSなどが機関投資家に対し、社外取締役を入れない企業は社長も会長も(取締役選任議案に対し)否認すべきであると(助言)するようになった。その結果、2018年には社外取締役を1名以上選任する(一部上場会社の比率)は99%以上、2人以上でも90%以上まで大幅に増えた。アングロサクソン流の金融資本主義の渦の中で、形はかなりできてきている。日本は上場子会社問題が多いという点で他国と比べると特殊だが、社外取締役、委員会設置会社、監査等委員会設置会社は増えてきた。形はよくなったが、実態がどうかを試されているのが今の日本の資本主義ではないだろうか。外の目、外国人、女性を含めた取締役会のダイバーシティが議論される時期に来ている。そういう意味では、(日本も)世界標準に少しずつ近づいているとみるべきである。ただ、形だけ整えればよいのではなく、米国を中心としたアクティビスト(への対応も必要だ)。オリンパスはアクティビストから社外取締役を迎えている。他でも、アクティビストが様々な意見を述べ、株主総会でプロキシーファイトをしかけ、勝とうとしている。日本にもそうした流れが相当入りつつある。今や日本の株式会社でも(株主の)3割、4割、多い企業では7割が海外投資家だ。日本を背負うような企業は目をつけられていて、グローバルスタンダードで対応しないと、そうした人たちから変革を迫られる。当然のこととして、企業戦略やリスクに対してよい意見を述べてくれるという点で社外取締役は必要である。問題は、日本の中で、とりわけ女性、外国人、あるいは経営者含め、社外取締役足りえる人材が非常に少ないことだ。これを今からどう育成していくか。あるいは社長経験者でなくても、常務クラスの時期から勉強のためにも社外取締役を務めることが必要とされる時代が来るのではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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