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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年3月12日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)ポスト平成、(2)春闘、(3)景況感、(4)エネルギー問題、(5)日産元会長・ゴーン被告、などについて発言があった。

Q : 平成もあと1カ月3週間ほどで終わる。ハブル全盛期の1989年から始まった(平成の)30年間について、代表幹事は、直近の『文芸春秋』2019年4月号のインタビューで「敗北の30年」と発言されている。日本経済もここまできたが、さらに上を行くためには米国のGAFAのような企業の創出が必要だったのだろう。新たな時代を迎えるにあたり、先述のインタビューの中で代表幹事はリアル企業が強くならないといけないという趣旨のことを述べている。経営者が奮い立つべきともいわれるが、本当に足りないものが何なのかがよくわからない。安定政権であることはよいが、一強時代に政治と行政が委縮している中で、経済界が何をすべきか。新しい時代に向け、代表幹事のお考えを伺いたい。

小林: 私がなぜ(平成の日本経済を)「敗北」と言ったのかというと、昨年12月半ばに出席した、某新聞社のエコノミスト懇談会(に端を発する)。そこでは来年の景気や株価、物価、GDP成長率などを聞かれるだろうと予想していたのだが、いきなり「平成の30年をどう思うか」という質問を受けた。そこで全く準備なく口をついて出たのが「敗北」「挫折」だった。反射的にそういう言葉が出てしまった。それ以降、様々なインタビューや取材のなかで(話すうち)、自分の頭の中で整理されてきた。時価総額は大した問題ではなく、利益や売上額でみていけばよいという意見もあるが、やはり私は、マーケットの期待値として時価総額(が重要だと考えている)。企業はX軸(資本の効率化を重視する経営)・Y軸(イノベーション創出を追求する経営)・Z軸(サステナビリティの向上をめざす経営)で成り立っている。儲けるということが重要で、ROEは時価総額と相関関係にある。(かつて)GAFAやBATJ(バイドゥ、アリババ集団、テンセント、JDドットコム)は、(時価総額と)収益にそれほど相関性がなかったが、アマゾンなど、今や明確に上がってきている。将来に対する期待値も含めて赤字でも(時価総額が)高かったものが、今は(収益として)顕在化してきている。だから私は、時価総額は大きな指標であると思っている。日本の製造業は大手企業でも(時価総額)5兆円ほどで、トヨタ自動車が21兆円強だ。ところが、GAFAは100兆円である。これを一体どう考えるか。経済空間というものが、リアルとバーチャルの空間になっている。バーチャルとは、無線で、かつナノ秒の単位で地球上を瞬時に情報が飛び交い、飛行機に乗らずしてその場に行ける空間である。そこでは文字通り21世紀になってから、従来の経済学とは明らかに違う、イノベーティブなものが創出されている。そう考えると、日本はやはり敗北、挫折してしまっていると思わざるをえない。(日本人に)何が欠落しているのかと問われれば、私は何かをクリエイトしなければならないという思いであり、ハングリーネス、何かを欲することだと思う。先日お亡くなりになった堺屋太一氏が、「低欲社会」という言葉を使われていたと思うが、一般的に言えば、ヨーロッパ人もあまりバーチャル空間を開発していない。進んでいるのは米国、中国だ。米国は、今は国境の壁問題を抱えるが、西海岸という人種のるつぼ、ものすごい競争社会があり、人々が幸せかは別として、新しいものをクリエイトする風土がある。中国も、眠れる獅子がここにきて13億超の(人口に成長し)、強烈な上昇志向がある。世界にこういう人々がいる中で、日本や欧州は文明的に衰退している。そうした歴史的な大きな流れの中で、ポスト平成に日本はどうしていけばいいのか。これだけ借金を抱えた国で、何かクリエイトし、GDPを増やして、借金を返さなければいけない。そうでないと、次の次、その次の世代まで、とんでもないことになってしまう。1980年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代を振り返れば、(確かに当時の日本は)世界一だった。時価総額も(世界ランキングのトップ10に)7社が入っていた。それは、期待値(が高かった)と同時に、ものづくりが強い日本(という評価があったからだろう)。そのリアル空間に新しいバーチャル空間が加わったことで(日本は)劣後したが、まだ残っているのはそのハイブリッド系という新しい経済学、新しい競争原理だ。今から(の領域)で、ゼロスタートだ。そこに突破口を見出す。それには知的な意味のハングリーネス(が必要だ)。食や日用品など生活に必要なモノには十分満足しているが、精神的なハングリーネス、知に対して(欲求を持てるか)。AIと(人間が)戦う関係になるのか、共同作業をする関係になるのかは別として、DNAの変換など非常にサイエンスが進歩した時代に生まれた人類として、知の探索、知に対する欲望をどう喚起するか(が重要になる)。最後は教育になると思う。日本人は、ユダヤ人、インド人、中国人、ヨーロッパ人、米国人に匹敵するかそれ以上の頭脳をもっており、歴史的にも優れた人種(の1つといえ、知的なハングリーネスを持ちうるかが重要だ)と思っている。

Q : 日本人はバーチャル空間でも勝負していかなければならないということか。


小林: その通りである。

Q : 明日13日は春闘の集中回答日だが、去年に比べれば賃金(の上げ幅)に関しては若干抑え気味で、その一方で賃金以外も含めた報酬全体での議論も進んでいるようだ。自社(三菱ケミカルホールディングスグループ)も含めて、今年の春闘の議論についてどうみているか。


小林: (景気は昨年の)10月までは順調に来たが、米中貿易摩擦もあり、11月以降は下がった。1月が底かどうか(がポイントである)。2月以降フラットになって秋にかけて良くなるというレベルの想定では、感覚的にはベースアップに慎重になるところもあるだろう。夏のボーナスは前年度のパフォーマンス(次第)で(支給額を)概ねフォーミュラ(計算方式)化しているので、それほど下がるとは思えない。ベースアップというのは、元来インフレ率に応じて賃金を調整する目的で作られている。GDPの成長が6%から7%で、物価も5%、10%と上がるような時代には、ベースアップによる調整は明らかに必要であった。しかし現在では、物価上昇率も(年平均で)約0.9%とかせいぜい1%(である)。例えば、賃金30万円に対しての1%は3,000円となる。基本的にそうしたレベルの補正も一部には必要かもしれない。しかし前々から申し上げているが、ベースアップも(定期)昇給も一時金も、全て含めて(年収)全体でみるべきだ。アルバイトや非正規の人々にはベースアップという指標はない。全体で比較するのであれば、年収で(考えるのが)適当ではないだろうか。また、収入のみならず、社員の健康維持についても企業は前向きに(対応をしており、こうした)働き方改革の中でのコストも含めて考慮すれば、相応の手当をしていると考えるべきである。一方、これだけ消費を喚起できていないという状況において、積極的に給与を上げるという思いを経営者は持っているだろう。やはり、明確に上げていくという意志は必要だと思う。(電機大手の妥結額と報じられているベア)1,000円が妥当かどうかはわからない。日本企業がこれだけ停滞したのは「総花主義」「横並び主義」「事なかれ主義」で、なおかつ「自前主義」 (だったことが大きな要因で)、これらを打破しなければならない。しかし賃金については、横並び主義がなくなりつつあり、これは良い兆候だと思う。従来は連合も経営側もほとんど横並び主義であり、企業によってこれだけパフォーマンスが異なる中で、不思議な現象だったといえる。そういうところを打破することは、企業体の活性化につながっていくと思う。

Q : 個別(企業ごと)に対応は分かれるが、社会のためにも、あるいは今年秋に控え、労働者にとって大きな要素となる消費増税への対応としても、全体で見れば賃金は上げていく方向ということか。


小林: 上げる方向で対応をしようとしていると思う。労働分配率は明らかに下がってきている。

Q : 今、景気が若干弱含みとなっている。日銀は2019年後半には持ち直してくるのではないかという見通しを示しているようだが、消費税率を上げる環境としてどう見ているか。


小林: 当社が所属している化学業界の決算を見ていると、確かに11月、12月、1月と下がってきており、利益も当初見通しより下回っている。2月になり、中国の春節が終わって少し戻りつつあるかもしれないという感じだ。米中関係やブレグジットなど、様々なことがまだ宙に浮いているので、その先を見ることは非常に難しい。国内経済について、日銀が県単位で見ている景気は決して悪くなってはいないようだ。今は我慢して、米中(貿易交渉)もそれなりのところで妥結し、ブレグジットを延期するのか、何らかの妥結をするのかは別として、皆の英知を集めることによって、大きなクラッシュはしないというベース(のシナリオ)では、秋口ぐらいまでには(景気は)良くなるだろうと思う。消費税率を上げると(消費に)冷や水をかけられたようになる日本の特性もあるが、今回の対応を見ていると「消費増税」ではなく、「消費減税」である。消費税率を上げることに対してどれだけの対策を打っているか。かつて半期で2兆円(の増税対策だった)が、2.3兆円、2.6兆円と(積み増して)対策をしていることを考えれば、従来(の消費税率引き上げ)とは(意味合いが)違うのではないか。したがって、景気とは直接関係はないと思うし、リーマンショック並みのことは来ないと信じたい。今、消費税率を上げなければ、本当に(この先)上げる時はないと思う。そうすると、日本はどんどん借金漬けの国になっていき、どこかでクラッシュする。こんな危険なことをやってはいけないと思う。

Q : 春闘について伺いたい。代表幹事は、もともと官製春闘ではなかったという認識だと思うが、(今年は)経団連が脱官製春闘を打ち出して進めてきた。政府があまり具体的な(賃上げ)数値を提示しなかった春闘をどう評価しているか。例えば電機連合では去年よりもベアの点では低い結果となったが、官製春闘から脱したと言えるのか。官製春闘という文脈から、今年の春闘を評価していただきたい。


小林: 官製春闘という言葉自体が(どうなのか)、私自身は官製とは思っていない。経団連は経団連として、業界は業界として、それぞれが判断していると思う。「官製」という言葉はメディアが作った言葉だと思うので、今回が非官製春闘だとも思えない。データをベースにして、業界や連合との間で、現在交渉しているということではないか。安倍政権が(数値を)言ったかどうかを特段意識するより、今の経済状況や今後の見通しを含め、健康経営や働き方改革をベースにして幅広く対応することだろう。また、経営者のなかでは、基本的には横並び主義を脱却しようという(意識が出てきているのではないか)。

Q : 景気について、先ほど、米中貿易協議の妥結やブレグジット延期などネガティブな要因が取り除かれるケースについて言及されていたが、年央以降に国内景気の持ち直しに寄与する積極的な理由は挙げられるか。


小林: 基本的には、先ほど述べた(米中貿易協議とブレグジットという)二つの大きな政治的不透明性がある。(利上げを見込んでいた)FRBも、EU(ECB)も金融緩和を続ける方向であり、日銀も市中に供給する資金をだいぶ減らしているとは言え、緩和を続ける。今日あたり株価が上がっていることには、そういう部分も(要因として)あるだろう。やはり一番厳しいのは、米中が本当の喧嘩に発展し、(本格的な)関税戦争に入ってしまうことだ。逆に言えば、3月に(米中首脳)会談が開かれず4月にずれ込むということは、どこかで折り合いをつけようと努力しているとも見て取れる。過去4~5日は相当株価も下がったが、今日あたりで急に方向が変わってきたのは、そういう(背景)も一つあるだろう。もう一つは、中国が全人代で相当な(景気刺激策の)手を打ったことだ。これを見て、1月あたりが(景気の)底だったと見始めているのではないか。

Q : 野党が原発ゼロ基本法案を去年の3月9日に国会に提出してから1年が経つが、一度も審議されていない。経団連の中西会長や業界はエネルギーの議論に対して前向きだが、政治家は後ろ向きに感じられる。中西会長は、エネルギーの議論をすると選挙に落ちるから政治家はしたがらないと批判されたが、代表幹事はどのようにお考えか。


小林: エネルギーというよりも原子力(の議論)だと思う。本日、(東電旧経営陣が強制起訴された)公判も行われているが、3.11の不幸な事故が起きて(以来)、経済同友会は「縮原発」と(いう考え方だ)。100%はないにせよ、安全が技術的に担保されたら、今あるもの(原発)はこれだけ投資してきたので、40年なり、(運転期限を最大)60年まで延長することも考えられるが、再稼働すればそれだけ電力が安くなる状況の中で、償却が終わっているなら使いたい。ただ最終的には、自然エネルギーである風力発電、太陽光、地熱、あるいは様々なバイオ系の燃料に移行するだろう。ドイツがまさにそういう方向で動いている。それがコスト的に実現可能になった時に、原発はもっと違った形で(議論されるだろう)。事故が起きてもあまり(放射性物質が)拡散しないような新しいテクノロジーによる原子力発電はありうるので、そういった研究開発はやらなければならない。あるいは、世界にある500基以上の原子炉を廃炉することを考えると、否応なしに廃炉産業が重要な位置づけになる。今(の技術で)は30~50年かけて放射線の燃料デブリを取り除かなければならず、福島第一原発は不幸な状況にあるが、ロボットの導入など、そこで培われる多様な廃炉の技術は、正常な原子炉の廃炉と明らかに違うとはいえ、ものすごく知見が蓄積される。そういう意味で、原子力工学を専攻する学生がいなくなると、日本にとっては経済的にも非常にダメージが大きくなる。日本が原子炉を輸出することも能わずとなると、ロシアと中国だけが、原子力なりプルトニウムを持つことになる。これは国家の安全保障という面でも危ない。私としては、従来型の原子炉を増産することはほとんど意味がないと思う。新しい原子炉のテクノロジーを開発するために、ある程度の魅力を持って学生を集めるには、原子力をすぐに無くすことには(問題がある)。(原発を)止めたはいいが、現在日本にある54基の原発を誰が処理するかということを考えると、そう短気を起こすこともないだろう。自然エネルギー(の発電コスト)が5円/kwh以下となる時代は、あと10年もすると来るかもしれない。原子炉に依存する社会を描くということはないが、(すでに技術として)手を染めてしまった原子炉を処理するという意味でも、私は研究を続けるべきだと思う。

Q : 選挙に影響するので、政治家がエネルギーの議論をしたがらないという意見については、どのようにお考えか。


小林: 原子力を推進している政治家はあまり見ないが、人によるのではないか。政治家は国民から選ばれる立場なので、国民の意思を一部反映しているのかもしれない。表現が難しいが、3.11(の原発事故)を見て、国民が原子力発電への恐怖心を、まだ払拭できない状況かもしれない。しかし、サイエンスに100%はない。例えば、今も自動車事故で年間何千人も亡くなっている。現在保有している原子炉を一定程度は動かさないと、日本のエネルギー(コスト)は高止まりし、(他国と比べ)経済的にハンディキャップを負う状況が続くだろう。

Q : 冒頭の質疑の中で、代表幹事は「日本人は人種的に優れている」と発言したが、この意味についてあらためて伺いたい。


小林: 例えば客観的な実績として、ノーベル賞受賞者(に占める割合)では、日本人は相当に(比率が)高い。最も高いのはユダヤ系の人々で、世界のノーベル賞(受賞者)の23%である。日本人はこれまで20数名が受賞しており、ビジネスでも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という時代が30年以上前にはあったわけで、(そういった意味で)日本人は長い歴史を持つ、優れた(民族の)ひとつだと思う。

Q : 先日、経団連の中西会長が「原発と原爆を混同している方がいる」という発言をした。先ほど代表幹事は「福島原発のあの様子を払拭できない」と発言した。原子力の怖さに怯えるのは正しいことなのか。


小林: (福島第一原発の事故という)あれだけのことが起きている。サイエンスに100%はなく、予見不可能な場合もある。地震対策など、サイエンスとして地質学(的な調査)を含めて大丈夫だと言っても、100%(安全で)はないことを恐れているのではないか。特に地域住民が(再稼働に)なかなか賛成できないのは、そういう理由から来ていると考えられる。原爆というよりも、原発が近くにあること(に不安があるのであって)、もし東京に(原発を)設置するとなったら、(そこに暮らす)我々はどういった反応をするだろうか。これは沖縄(の米軍基地)問題も似ている。もし東京に原発をもってきたら、もし米軍が(自分の)周りに多数駐留していたら、ということも考えるべきだと思う。

Q : 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告について伺いたい。(ゴーン被告は)保釈時に変装して(拘置所から)出所した。また、ルノーの調査では、620万円を同氏の結婚式費用に使っていた疑いもある。加えて、(ゴーン被告は)取締役会の決議で会長職を解職され、次の株主総会で取締役も解任予定にもかかわらず、本日開催の(日産自動車の)取締役会への出席を希望していた。経営者の姿として、代表幹事の所感を伺いたい。


小林: 個人の問題だから何とも言えないが、そういう人を育ててしまった会社の仕掛け(の問題もある)。現在、政府でも上場子会社の(独立性確保)問題を議論している。ルノーが(日産自動車の株式を)43%を保持しており、同社(の株式)をフランス政府が保有していることについては、コーポレートガバナンスの源流を考えるべきだ。東芝は2002年から指名委員会、報酬委員会、監査委員会があり、指名委員会等設置会社という形をとっていたが、あのような会計不祥事が起こってしまった。「したがって形があってもダメだ」と言われてしまえばそれまでだが、日産自動車には報酬委員会さえなかった。全て一人のCEOが報酬を決め、社長に対する指名委員会もなかった。ゴーン氏も一人(の人間であり)、性格上の問題もあるとは言え、はっきり言えば(企業の)構造が悪かったために、あのような結果になってしまったのではないだろうか。人間として強欲な人であっても、仕掛けさえできていればああいう結果にはならなかったと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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