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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年2月26日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)米朝関係、(2)日韓関係、(3)iPS細胞を用いた脊椎損傷臨床研究計画、(4)エネルギー政策、(5)改元、(6)米中貿易摩擦と日米協議、(7)国際リニアコライダー、(8)春闘、などについて発言があった。

Q : 2月27日、28日に米朝首脳会談がハノイで行われる。日本の対北朝鮮外交を見ると、動きが見えず結果が出ていない。日朝の外交が動いていない現状をどう見ているか。

小林: 外交は相手があることなので、相手が動こうとしなければ、こちらが動いても結果としてうまくいかない確率が高い。満を持するというか、そういう戦略も要るだろう。ここはトランプ米大統領に前に立ってもらってやっていかざるを得ない。ここにきて、韓国が大きな(方針の)転換をしているように思えるアクションが多い。特に北朝鮮との関係を含め、従来の延長ではない何かが起こっている可能性がある。慎重になることは間違っていないと思う。

Q : 韓国についても、発言問題など様々な障害があり、日韓関係もなかなか動かない。韓国は3・1独立運動からの100周年を控えており、それが終わってからになるだろうが、文政権と会話ができないような状況では、北朝鮮との外交も動けず、米国頼みになってしまう。韓国についてもこのまま動かず静観したほうがよいのか。

小林: 韓国には民族統一という大きな悲願もあり、いろいろな思惑があるだろう。経済人の間では、長く付き合っている人達からゴルフの誘いや会食の付き合いもあり、全くそうした雰囲気を感じさせない人もいる。我々としては、そうしたところで会話を進めるしかないと思う。

Q : 先日、厚生労働省の専門部会は、iPS細胞を使って脊髄損傷を治療する慶應義塾大学・岡野栄之教授の臨床研究計画を了承した。代表幹事はよく、日本は周回遅れだとおっしゃるが、医療分野、特にiPS細胞はノーベル賞も受賞し、先進的な部分もあると思う。米国で修練した方が日本に戻ってきて結果を出しているが、脊髄損傷の画期的な治療方法が出てきた状況について見解を伺いたい。

小林: 再生医療全体の中で捉えると、iPS細胞や、ミューズ細胞など他のテクノロジーもあり、私自身はiPS細胞だけが脊椎損傷の治療に役立つとは思っていない。たまたま、私の次男が大学院生の時に岡野教授のもとで脊椎損傷を研究していたので、そうした情報は仄聞していた。当社(三菱ケミカルホールディングス・生命科学インスティテュート)では、ミューズ細胞(の研究開発)をやってきており、我々からするとiPS細胞はかなりアーティフィシャル(人工的)なのでそれなりに難しい部分があると思っている。どれが本命になるかわからないが、世のため人のためになる部分で、日本が主導的に進めているテクノロジーである。もちろん米国も進んでいるが、まだ結果は出ていない。ある程度のリスクがあるとはいえ、臨床(段階)に入っていくことを認可したことは前向きに評価すべきだ。アンメットニーズというか、非常に良いところに(目を付けた)。今までは不治の病といわれていたものに対して、新しい医療の手法が見つかりつつあることは大いに結構なことだ。

Q : 原発について伺いたい。経団連は4月中に新しいエネルギー政策についての考え方をまとめる予定だ。中西会長は、現状のままでは日本のエネルギーはいずれ行き詰まる、だからこそ原発の再稼働が必要とのお考えだ。経済同友会も縮原発といいながらも再稼働の必要があると述べ、廃炉についても、知見を積み重ねることが日本の財産になり、人材育成にもなると述べてきた。来月、東日本大震災から8年が経つが、東日本の原発は未だ動いていない。改めて、原発再稼働と日本のエネルギー政策について所見を伺いたい。

小林: 日本は全く資源がない中で、石炭(火力)のテクノロジーが進化してきた。CO2問題は久しく大きな課題になっており、とりわけ最近では(世界の平均気温上昇をパリ協定の努力目標である)1.5℃未満に抑えなければならない中で、CO2を出さない最適なエネルギーとして太陽光、風力、地熱がメインになっていくのは当然の流れだ。日本は、韓国や米国に比べ相対的に電力コストが高く、2~3倍にのぼる(こともある)。その中で産業を維持して戦っていくには、製造に限らず、サービス業(にとっても重要な問題である)。インターネット業界の会社でも、サーバーの冷却などにかなりのエネルギーが必要だ。そう考えると、どこに最適点があるかという見方をせざるを得ない。「原発はサドンデスに」と言うのは簡単だが、経済が崩壊してもよいのか。原子力ルネサンスと言って、これまで50基近くの原子炉に投資をしてきたが、3.11を契機に、安全に対して一つの原子炉あたり数千億円もの投資を国家として行ってきた。(原発の運転期間)40年を(最長)60年まで延長するか、あるいは(原発を)新設するかの議論はあるが、安全性が完全に担保されたという専門的な知見がある限りは、ここまで投資し(後は)償却のみという状況になっているものを動かさない手はない。それを動かしながら、30年、40年で完全にフェードアウトしていくというのが最適点ではないだろうか。それが縮原発の基本的な考えだ。いまや原子力工学を専攻する学生がかなり減ってきている。福島第一原発も含め、日本が抱えている50基近い原子炉の廃炉を行う(人材として)、テクノロジーを理解した若者が育たないのは、無防備で危険なことだと思う。最適点をどこに求めるかという議論をもっとしていかなければならない。(原発は)怖いからと言ってすぐやめてよいのか。これは消費増税も同じで、経済がダメになるのが怖いから(消費税率の引き上げをやめるとなると)、もっと危ないことが起こってしまう。これも最適点をどこにするかということだ。「怖い」「嫌い」だからと言って思考停止に陥るのではなく、この国を50年、100年先の世代に、最も良いかたちで手渡すにはどうすればよいかの議論をもっと行うべきだ。

Q : 米朝首脳会談について、日本として期待することを伺いたい。

小林: それは(北朝鮮の)完全なる非核化ということになるだろうが、今伝わっている限りでは、核を使わなければよいという条件に向けて交渉するとも聞いている。基本的には、核に対しては妥協せずに交渉してもらうことだ。また、核に限らず今でもミサイルは飛んでくるので、掘り下げたところできちんと議論をしてほしい。焦る必要はないだろう。少なくとも、(北朝鮮と)会話をするところまでもってきたトランプ米大統領の手腕は評価しつつ、変に妥協して、米国にはよいが日本にとって大変な将来のリスクを残すような交渉はやめてほしいと思う。

Q : 原発について伺いたい。経団連の中西会長、電事連は公開の議論をすべきだと主張している。昨日、中西会長は政府も含めた大きな枠組みでやるべきだと発言されたが、政府の方には未だそうした考えはないようである。エネルギーミックスも含め、これまでのエネルギー政策は適切であったと思うか。

小林: 資源エネルギー庁を含め、エネルギー政策として(2030年度の電源構成に占める)原子力発電比率を(20%~)22%と明確に打ち出しており、撤回したわけではない。それに向かっていくには、原子炉を35基動かさなければならない。その時間軸など、もう少し(議論すべきだ)。22%という目標を下ろさない限りは、あとはスケジュールの問題だ。そこをどう考えるかをもう少し明確にすべきだ。

Q : 本来であれば、エネルギーミックス改定の議論をする中で、原発の新増設やリプレースについても踏み込んで議論すべきであったのに、骨抜きになった部分があるのではないか。

小林: 世論を慮りながら、政策を進めていると理解するしかない。

Q : 今年は天皇の退位があり、元号が変わる。その期間でゴールデンウィークの10連休があるが、経済界としてどう見ているか。観光業にとってはプラスなのか。あるいは10連休もあると経済活動が滞る、休みが取れない人もいるなど、マイナスの面もあるとお考えか。

小林: 例えば(工場を)連続運転している製造業などは、(社員が)休もうが休むまいが機械が動くので、交代勤務をして(対応して)いる。一方で、サービス業、輸送業、航空会社などは、大変な経済的メリットもあるだろう。銀行業でも、ネット決済がだいぶできるようになっている。一つ一つミクロに見ていかないと、良し悪し(を申し上げるの)は難しい。個人的には、10連休は何も(仕事の)予定を入れないようにし、ゆっくりと植物や生き物を眺めて人間(的な生活)に戻りたい。その最高の機会だと思っている。経済同友会の代表幹事を退くタイミングなので、ぴったりだ。(経済界としては、10連休に)大きな問題はないのではないか。工場の連続運転をしているところなどは、それなりの対応をするだろうし、一律には(いかないので)、個別に対応せざるを得ない。それが大きな問題になるとは私は思わない。むしろツーリズムなど、一挙に海外に行って(空港が)混雑するなど、そうしたことが問題になるかもしれない。365日中の10日間くらいならば、製造業もサービス業も、休んでも後で取り返せばよい。普段も(夏季休暇など)1週間程度は連続して休むので、それに3日足されるくらいのものだ。知恵で何とかなるように思う。

Q : 改元に伴うトラブルは想定されるか。

小林: (新元号は)1カ月ほど前に発表されるということなので、そのくらいあれば情報システム系についても大きな問題はないと思う。

Q : 米中貿易摩擦について伺いたい。トランプ米大統領は「合意も近い。3月のフロリダにおける首脳会談で決着させる」と発言している。今後、日米貿易協定交渉も控えているが、合意内容のどのような点に注目しておくべきか。

小林: デューティー(関税)をかけるという観点では、遅らせただけであり、まだまだ補助金問題や知的財産問題など(課題は残っている)。よしんば解決しても、テクノロジーの問題はまだ残る。ファーウェイ(の取り扱いをめぐる問題)など、5G含むサイバーセキュリティーの問題がある。トランプ米大統領も選挙を睨みながら、あまりにもドラスティックに経済をクエンチするのはまずいと(考えて、追加関税の引き上げを)延期しているのであって、米中の経済的な確執は相当長期に及ぶと思う。日本の経済はどういった(形で)コミットメントをすべきか。技術も含め、そういうことを(検討していくことは)長期的に備えるべきことであって、これで(追加関税引き上げを)延期して解決したと考えるのは、楽観的すぎる。

Q : 政府は3月7日に次世代加速器の国際リニアコライダー(International Linear Collider:ILC)を誘致するか否か、見解を表明する予定だ。経済三団体からは誘致は必要との意見が出されたが、それについて見解を伺いたい。

小林: 国家の予算が制約される中で、どこに優先順位をつけるかという問題は当然残る。一つのテーマかもしれないが、先ほど申し上げたiPS細胞のような、バイオサイエンスや医療関係のテクノロジーもさることながら、基礎的な物理学や天文学も含め、生命の起源とものの理をきちんと探索するツールを、(国際的には)相対的劣位にある日本が持てる大きなチャンスだと思っている。フランスにも10年続いている(国際熱核融合実験炉(ITER)という)装置もあり、中国も大々的に次世代巨大加速器の建設を進める中で、日本、とりわけ被災地を中心に経済の活性化も含めてやっていくチャンスである。事業で言えばレター・オブ・インテント(Letter of Intent:LOI、意向証明書)で「あなたの(事業の)M&Aに興味がある。交渉を始めよう」と(いう段階だ)。(日本も)手を挙げて、(ILCについて)どの程度日本がお金を負担すべきか、あるいは欧米がどのくらい支払ってくれるのか、そういった交渉のチャンスを持つべきだと思う。(大阪)万博では民間から400億円(の資金)を集めるという話があるが、ILCはその比ではないほど予算が必要だ。日本学術会議がどちらかというとあまり前向きではないのは、自分自身の予算が減るという事情があるためだろう。そこは、いわゆる学術的な予算とは異なる扱いにするなども含めて考えるべきだと思う。

Q : 前回の記者会見では、代表幹事は春季労使交渉でのベアについてかなり否定的な意見をおっしゃった。

小林: もともとベアは物価(上昇分の)調整のために行うものだ。それが1%前後で実施することは考えられるが、(ベア)2%~4%程度というのは(物価上昇の実態に合わない)。ベアを中心的に考えるのは(良くないのではないか)。例えば労働組合は(組織率でみれば)約17%の労働者のみを代表している。パートタイマー等非正規社員(で働く)の人々にはベアはない。彼らは経営者と同様で、年収ベースでしか(収入を)考えられない。そういう人々と相対的に比較する中で、ベアに拘ることは、変にエリート意識が強いのではないかと感じる。

Q : 三菱ケミカルホールディングスに問い合わせたところ、「ベアはある」との回答を得た。

小林: もちろん(自社に)ベアはあり、毎年実施している。基本的にベースアップと定期昇給、そしてボーナスという年収で考えないと(いけない)。先ほど申し上げたように、トータルに見て、日本の労働者は年収ベースでしか自分の収入を考えられない人の方が多い。大企業では、物価調整分としてのベースアップを否定するものではないが、物価も上がっていないのに、3%とか4%のベア(を実施すること)はないと申し上げているだけだ。一度上げてしまうとベアは下げられない。イリバーサル(不可逆的)だ。ボーナスは、(経済の)状況が悪くなる、あるいは個社の問題により出ないということも数年後に起こるかもしれない。ベアは一度上げたら下がらないため、そこは慎重にあるべきだ。

Q : 米中貿易交渉の延長に伴って、日米協議もずれ込むと思われるが、これで時間が稼げるとみるべきか、あるいは不安定な状態が続くとみるべきか。

小林: 自動車(分野)を中心に、米国としては関税の話を(日本に)迫っていきたいのだろうが、欧州も含めて、そういう形で時間がずれていくのは決して悪いことではないと思う。中国との成り行き次第では、ライトハイザー米通商代表部代表も、日本や欧州に矛先を持って来るかもしれない。しかし、TPP11も動き出しており、この動きが段々と地についてくる。(同協定が)より実質化してくるほうがネゴシエーションとしてはやり易いのではないかと思う。

Q : 改元に関連して伺いたい。元号と西暦の両方が役所や教育関係の文書などで使われている。システム的なのか文化的なのかわからないが、(併用することを)どのように考えるか。

小林: 台湾は「民国〇年」というが、歴史を背負った元号(が世界で使われている)。イスラエルも、長くダビデ王・ソロモン王の時代から数えている。これは国家として当たり前のことだと思う。元号は様々な式典や、象徴天皇(制)の中で捉えていけばよい。ただ、ビジネスがこれだけグローバル化すると、私なども頭の中ではどうしても西暦が前に来る。そこは両方を併存させるということで何ら問題はない気がする。役所、経済官庁などには西暦で(対応)してもらった方が我々(経済界としては)ありがたい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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