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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2019年2月14日(木) 15:40~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)GDP速報値、(2)東日本大震災から8年、(3)中国経済、(4)会社法改正、(5)データ規制に関する独立組織、(6)企業変革、(7)ルノー スナール会長の来日、(8)経団連の副会長内定、(9)日商・三村会頭の続投などについて発言があった。

Q : 本日、10-12月のGDP速報値が年率で名目1.1%、実質1.4%と発表された。菅官房長官によれば、景気は緩やかに回復しているとの認識であったが、今回の数値についてどう捉えているか。


小林: 昨年10-12月(の経済)については、民間企業の決算報告をみる限り、増益した企業はあるものの、(全体としては)明らかに減益基調に入ってきている。7-9月のGDPは、台風などの自然災害が多く(発生し)、年率で-2.6%とかなり下落したので、(今回成長率が)上がったのは自然な流れといえる。そういう意味で実質1.4%、名目1.1%という数字を考えると、上がり方が弱く、予想より少し低い結果となった(と言えるのではないか)。これ以上色々と申し上げると誤解を招くかもしれないが、2018年の名目 GDPは548兆円になった。これに4%台の成長率をかけていくと、2020年に600兆円になる。(逆に申し上げると、)今年と来年にかけて4%台のGDP成長を続けないと600兆円を達成できない。そういう数字である。政治的スローガンとして600兆円(という目標)を掲げて、ここまで(経済成長を)引っ張ってきたという側面もある。しかし、実際にエビデンスベースで語れば、やはり(2020年の)600兆円(到達)は、かなりきついところに来ていると実感している。3~4年前に(600兆円を)政治的スローガンとして掲げたからこそ、ここまで来られたという捉え方もあるが、(逆に)元気をつけて頑張った割には やはり600兆円の壁は厚かったという考え方もある。今年の1-3月(の成長率)を見ないとわからないが、10-12月(の結果)を見る限り、変曲点(に差し掛かっているように感じられる)。特に、中国との貿易(による影響もあり)、米中交渉が再び60日延期される可能性も浮上する中、非常にクリティカル(な時期に差し掛かっている)といえるのではないだろうか。明らかに中国経済がシュリンクしている中、日本経済をどう捉えていくか。非常に重要な局面に来ているという捉え方をしている。

Q : 来月3月11日で、東日本大震災が発生してから丸8年が経つ。これまでの間、経済同友会ではIPPO IPPO NIPPONプロジェクトを進めてきた。復興が順調に進んでいる一方で、風評被害についてはまだ残っているところもある。震災後丸8年を控える中での所感を伺いたい。


小林: 2011年の3.11の直後から、(本会は)原発については「縮原発」(を提言してきた)。また、IPPO IPPO NIPPON プロジェクトを立ち上げ、区切りと定めていた5年が経過し、23億円(の寄付)を集めた形でプロジェクトとしての活動は一旦終了した。しかし、委員会としては、震災復興委員会を継続し、東北を中心に各地を訪問して様々な企画を実行してきた。そういう中で(振り返ると)、私個人としては、8年という歳月を迎えようとしている割には、福島第一原発の廃炉や風評被害も含め(、進捗は十分とは言えない)。原子力関係の回復はもう少し進むものと思っていたが、技術面も含めて当初の想定より難しいようだ。但し、福島の原子炉周り(の問題)を除けば、地区の住民の皆さんは(復興に向けて)しっかり頑張ってこられたと思う。

Q : 中国経済の動向について伺いたい。中国政府が対策を講じるなどしているが、僅かずつシュリンクして行くのか、あるいは大きなスローダウンが見込まれるのか、見解を伺いたい。


小林: リーマンショックから10年以上経っている。これまで景気というのは大体5、6年から7年周期で上がったり下がったりという波があるのが一般的だとすれば、10年とはよくぞここまで(景気を)引っ張れたな(と思う)。それは日本の政策もさることながら、やはり中国の牽引というのは(大きい)。リーマンショック後50~60兆円の財政出動をしたことで相当救われた面もあるし、(中国の成長率は)年率にして10%から7%、6%台と下がってきてはいるが、世界経済を引っ張っている間に米国経済もしっかりしてきた。(世界経済は)それほど派手に成長したわけではないが、じっくりと、徐々に温まってきた。米中(関係)、ブレグジット、フランス、イタリア等、日本以外は政治的に不安定な状況の中で、今までの調子で(世界の景気が)徐々に上がっていくというよりは、いかに下降の流れを抑さえていくかというフェーズに入ってきたのではないか。急激に(経済が)冷える(ことをするような)、知恵のない世界の指導者たちではないと期待している。

Q : 会社法改正について二点伺いたい。本日、社外取締役義務化が盛り込まれた法務省の法制審の答申が出るが、この義務化についてどう考えるか。二点目は、役員報酬をめぐって、株主総会で議決を得るべきという考えは見送られているが、役員報酬の配分はブラックボックス化されているという声もある。これについても見解を伺いたい。


小林: 社外取締役の義務化については、社外取締役を一人(以上)導入している(東京証券取引所)一部上場企業は99%であり、二人以上でも90%を超えているという現状の中で、会社法が遅ればせながら(追い付いてきたという認識だ)。例えば機関投資家のプレッシャー(がある。)社外取締役が一人もいないと社長・会長を承認しないといった(形になっており)、ソフトローとして実態は(導入が進んでいる)。4~5年前で二人以上の社外取締役がいる(東京証券取引所上場企業)は2割程度だったことからみれば、実質はどうあれ形式は大きく変化した。ようやく法制化するというのは今更の感もある。役員報酬に関しては、コーポレートガバナンスコードの中で委員会等設置会社、指名委員会等設置会社以外に、監査委員会等設置会社にも報酬委員会がある。基本的には、個人の報酬を開示することはなかなか難しいだろうが、(役員)全体としてどの程度報酬を払っているかは、いまやほとんど開示している。むしろ(問題となるのは)思想だ。会社がその期に収益をどれだけ上げたかと(報酬をどう)関連させるのか、あるいは中期経営計画からの乖離をどう考えるのか、キャッシュフローとどう関連づけるのかなど、各企業によって考え方は違うので、そこを説明する(べきだ)。法律でがんじがらめにして開示しろというよりは、むしろ基本的な考え方を開示するというところから始めるべきじゃないかと思っている。(因みに、)今国会でなぜ会社法の審議が見送られたのか、その理由は承知していない。

Q : 昨日(13日)の未来投資会議で、プラットフォーマーの規制などデータ規制に関する独立組織を立ち上げると安倍首相は明言された。組織の立ち上げにあたっては、プラットフォーマーの規制には産業のイノベーション阻害の可能性、寡占による競争阻害など一長一短ある。経済界からみてどういった点に留意して組織の役割を持たせるべきと考えているか。


小林: 基本的にはいかに諮問するか(が重要であり、メンバー)はかなり長期的に見ていける、あるいは専門性豊かな方々の集合体、それも専門という意味でも、データあるいは統計学に強い方だけでなく、当然法律論もあるし、競争法に強い方も必要だろう。
 中国はサイバーセキュリティー法でデータの国家管理を行っている。一方GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)で規制するEUは、本日の(報道)発表によれば、プラットフォーマーに対するさまざまな税法上の問題等においても相当ブレーキをかけようとしている。日本の公正取引委員会も、一定程度の調査も始めてヒアリングを行なうなど、状況を把握している段階(にある)。米国は、サイバーセキュリティーについて、かなりリジッド(厳格)にコントロールしようとしているが、グローバルなプラットフォーマーの自由な経済活動に対しては、これまでのところそれほど大きな足かせを強いていない。中国は相当アイソレイト(隔絶)した世界に入っているし、米国とEUもだいぶ違っているが、私の見る限り、日本はどちらかというとEUに近い流れで来ている。段階的に対応しなければならないが、これは長期の国家戦略に(とって)、極めて重要な部分になっていくと思う。安倍首相は、その皮切りがG20の大阪トラックであるとおっしゃっている。(6月28~29日に開催されるG20までは)もう3~4ヵ月しか準備時間がない。(今回提案のあった)アドバイザーの組織はすぐできるわけではないため、これまでそれぞれ司となっていた組織をまとめるという意味で、未来投資会議や一部の議員が中心的に対応するなり、官の横串を刺しながらG20に向けて取り組んでいくのではないか。
 長期的には、中国が簡単に西側(米国・EU・日本)の3つのブロックに妥協するとも思えないし、米国も(国の政策として)イノベーションを中心に考えていく点はそう簡単に譲らないだろう。今後発足する組織は、個人(情報)のコンフィデンシャリティ(機密性)や個人の尊厳などの倫理の問題、一度(インターネット上に)放出したデータをイレース(消去)できるといった技術論も含めて(検討すべきである)。最終的には「データとは誰のものか」といった哲学的な問題になる。日々(利用する)金融では、ブロックチェーンなどに代表されるフィンテックのテクノロジーを用い、ゆくゆくは(銀行の)窓口業務もなくなり、お金も一種のデータになっていく。鉄や化学の業界ではトンのオーダーで商売を行ってきたが、徐々にバイオや医薬品(の分野で)は、(単位が)マイクログラムになり、最後は重さのない単なるデータとなる。そして、情報サービスの最たるものがお金だと思う。CO2のカーボンの取引についても、イングランド銀行(総裁)のマーク・カーニー氏が中心になり、環境関連等に関連した財務情報のタスクフォースであるTCFD(:Task Force on Climate related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)を推進している。石炭の使用、CO2の排出を金融化し、ブロックチェーンの技術を用いていこうという流れも最近始まっている。こういった点が、今後の21世紀の国家のあり方、国家の戦い方、経済のベースになるところだと思う。新組織は、そういう捉え方で考えていくべきだ。
 G20で(の議論によって)、どういう方向に行くのかが見えてくるだろうが、理論的に支える組織になっていくべきだと思う。イノベーションの喚起という意味では、過度に独占的なデータ保持は抑えるべきだし、当然個人の自由もある一方で企業活動の自由もあるため、どの辺りで落ち着かせるかは、非常に重要で難しい問題だ。(新組織では、)領域が単なるデータの専門家に限るのではなく、哲学から統計学まで(多様な)専門家が集まり、最終的には政策として落とし込めるよう、大いに期待したい。とりわけ日本がリーダーシップを握る一つのチャンスでもあるため、優秀な方々が集まり、議論していただきたいと思う。

Q : 代表幹事はよく、「心の岩盤を打ち破れ」とおっしゃっている。今後の景気動向を占う上でも、日本経済の持続的成長を占う上でも大事なことだと思うが、具体的にどういうことをすればいいのか。

小林: 一番難しい問題だと思う。例えば研究開発をひとつ(例に)とっても、特にノーベル賞を受賞された先生方は中国や米国と比較して、「日本は基礎研究が足りない」と(おっしゃっている)。それもそうだが、逆に言えばイノベーションもほとんど出ていない。ユニコーン(と呼ばれる企業)が中国に至ってはあっという間に50(程度)からすごい勢いで増えて、アメリカ(に)も100以上存在するが、日本は1社か0社といった状況である。基礎研究もダメ、新しいイノベーティブなベンチャー(企業)も生まれない、それでいて大企業も米国と比べるとまだまだ相対的に収益構造が良くない。どこを見ても相体的劣位になりつつある。また、若者が海外にあまり留学しない。どうやら(問題の本質は)組織論・技術論ではない。日本は戦後30~40年間、ものすごい勢いで伸びてきた。あるいは中国はものすごい勢いで成長している。こうした勢いをいかに取り戻すか。私は経営者の心の岩盤であり、国民の心の岩盤(の問題)だと思う。形ではなく燃える心の活性化というか、成長への意欲が枯渇してきていることが一番の問題だと思う。どのようにしてそれを活性化するのか。いつまでも成長する必要が本当にあるのかと言われてしまえば終わりだが、国として諸外国と比較すると、明らかに成長が鈍っており、相対的に劣化してきている。もう少し(日本の)外を見ること(が重要)だと思う。内閣府の去年6月の(「国民生活に関する世論調査」の)結果では、74.7%の国民が(現在の生活に)それなりに満足しており、(18~29歳の)若者に至っては83.2%が満足しているが、これこそが問題だ。やはりハングリーでなければ、なかなか成長できない。経営者はもっとハングリーになり、もっとリスクに賭ける(べきだ)。内部留保の問題については、バランスシート上の問題でシンプルではないが、もっと勝負をしなければいけない。それが「心の岩盤」を破るということだ。だが、元々勝負する気がない人に「心の岩盤を破れ」と言っても意味がなく、ここが難しい。どうインスパイアするか。やはり最後は教育ではないか。少し時間はかかるが、日本は直さないと、ずるずると茹でガエルになってしまう。

Q : ルノーのスナール会長が来日している。ルノーもゴーン氏を解任し、混乱を収束しようとしている感もあるが、未だルノー・日産・三菱間の決着が見えない。新会長の来日にあたり、経済界として期待していることはあるか。


小林: フランスでもマイノリティといえるだろうが、同国政府が約15%のルノー株を保有しており、一種特殊なコーポレートガバナンスの形である。日本政府としては明らかに民間企業の経営は民間がやるべきというスタンスの中で、経営とは分離して、長期的にみてコーポレートガバナンスがどうあるべきかを議論すべきだと思う。短期的には各企業の問題なので、私がコメントすることではない。当初はフランス政府もゴーン氏を擁護しようとした(ように見えた)が、(最近は)同氏から距離を置いているのを見ると、イエローベスト運動など(に見られるように)フランス国民の心の変化もあるのでは感じる。

Q : 先日、経団連の副会長内定の発表があった。中西会長によれば、経団連活動への貢献などを加味して選出したとのことであった。6人の内定者に三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長が含まれていることについて、感想をお聞かせ願いたい。また、経団連のメンバーシップ制について思いなどがあればお聞かせ願いたい。


小林: 経団連のことは経団連自身が考えることなので、私がコメントすることではない。当社に関して申し上げれば、私自身も経団連でヨーロッパ共同委員長を7年務めているし、以前は(当社の)鈴木永二氏が日経連会長、鈴木精二氏、古川昌彦氏が経団連副会長を務めたこともある。そういった経緯もあることから、今般当社の越智が経団連の副会長に内定したことに関しては、頑張ってくれという思いだ。経済同友会の場合、(経営者が)個人として加入し、(幹部人事は)役員等候補選考委員会で意見を集約して決めている。経団連は経団連の掟で人事を決定しているわけで、それに対して特にコメントはない。個人として参加する経済同友会、それぞれの業界や企業を代表して提言する組織である経団連、中小・中堅企業を代表する日商、それぞれに意味があると思っている。先程触れたようなデータの問題ひとつを取っても、会社の形態によって強いところと弱いところがあるが、(前述の)三団体に加えてITを中心とした新経済連盟のような経済団体があることも含め、それぞれに十分意義があると思っている。

Q : 日商・三村会頭の続投が決まった。内規がありながらもう一期継続することと、同氏の年齢的なことをどう考えるか。


小林: 日商の内規については承知していないが、日本のために、という大変立派な心意気ではないだろうか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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