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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年11月27日(火) 13:00~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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 冒頭で小林代表幹事より、経済産業省、公正取引委員会、総務省が公表した「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理(案)」に対する意見(パブリック・コメント)について説明。
 その後、記者の質問に答える形で、(1)プラットフォーマーに対する危機意識や日本経済への影響、(2)日産自動車ゴーン氏逮捕、(3)2025年大阪万博、(4)消費増税対策、などについて発言があった。

Q : プラットフォーマーがデータを牛耳るという現状に対する危機意識、日本経済に与える影響に関して、どう認識しているか。

小林: 危機意識というか、やはり21世紀半ばにさしかかる(頃には)、経済はよりグローバル化して(いるだろう)。かつて(産業は)トンのオーダーやキロのオーダー(という、重さのある)「製造・ものづくり」(の時代だったが、それ)から、だんだんサービスや情報をベースにした(重さのない)「ことづくり」(の時代)に移行し、今はトランジェント(過渡的)な状態にあると思う。最終的には生み出されるデータ、それを処理するツールとしてのAIや機械学習など(は)、従来からもあったとはいえ(今後ますます)、コンピューターの進化によって(その)処理能力とストレージ能力は増えていく。人間の頭脳(のレベル)を超えるであろう2045年あたりに向かって、「国家としての集団」と「個としての個人の尊厳」(という視点から)、自分自身のデータを、あるプラットフォーマーに全部取られてしまうことで本当に良いのか(ということを考えていく必要がある)。欧州ではどちらかというと「個」を尊重する(傾向の国が多いが)、国によっては「『個』のデータは国のために奉仕すべきものだ、パブリック化するものだ」という意見もあるだろう。中国の場合は、それをある種、国家独占的に、情報自体を国民のコントロールなり、あるいは経済的な覇権(掌握)のために使うという考え方を持つ部分もあるだろう。米国のように、サイバーセキュリティはしっかりとコントロールしながら、されどプラットフォーマーの自由を重んじる国もあるだろう。そういった意味で、ジオポリティックス、文字通り地政学的な流れの中で、データをベースにした経済を各国がツールとして非常に重要視してきており、日本はどこに立ち位置を持っていけばよいのか、それと同時にどういう形で国際的なルール作りに関与していくのか、こういった問題提起がなされているかと思う。極めて21世紀的(な課題であり)、これを抜きにして日本の経済は語れないし、日本の強みを活かした立ち位置はどこにあるべきか。(例えば)リアルデータ(に関しては、)健康医療あるいはものづくり(の分野)で、今まで非常に精緻なデータを蓄積してきている日本が、データのハンドリング、ストレージなど、AIによる処理でどれだけ比較優位が作れるかというフェーズに来ている。これはもう業種によらず、どんな業種においても、まさにプラットフォームとしてのデータの時代が来ているという認識で(ある)。我々としては周回遅れなのか3周回遅れかは別として、日本の産業界として、政治とオーバーラップして一緒に取り組んでいくべきだ。産官学が協力すべき「円」の重なったところとの認識で、今後ともコミットしていきたい。

Q : 日産自動車のゴーン氏が逮捕された。代表幹事から見て、巨額な報酬を隠したり、会社の資産を私物化したり、ゴーン氏自身の問題をどう思うか。また、長年それを許してしまった日産自動車のガバナンス体制に落ち度はなかったのか。今回の事件から、日本企業が学ぶことはあるのかを伺いたい。

小林: 事実関係がはっきりしていないが、日産自動車も監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に変更するという議論を始めたと報道があった。会社のガバナンス体制が一極に集中し、コントロールなりガバナンスがしっかりした形で、会話が成り立っていなかったのではないかと感じる。東芝のように、2003年に指名委員会等設置会社の制度ができあがった時から導入している企業でも、上手く機能しなかった例もある。形だけではなく、取締役を含めた全体的な意見交換なり、あるいは経理、会計監査人(は機能していたのか)。不思議なことが起こってしまった、という感想だ。フランス政府も絡んでいて政治と経済が非常に深い密接な関係にある中で、今後どのようにガバナンス(体制)を決めていくのか。これは一企業というレベルで決める部分と、国家間の問題も当然ないがしろにはできない。この二つの問題をしっかり分けながら、日産自動車のコーポレートガバナンスという問題を再構築する必要があるだろうという感想を持っている。

Q : ゴーン氏は、日本の報酬は低いと言われる中で高額な報酬を得ていたが、それでも国際的には少ないと総会などで発言していた。それならば、堂々と報酬を得ればよかったのではないか。同じ企業経営者として、ゴーン氏の報酬に対しての発言をどのように考えるか。

小林: 世界を股にかけてビジネスを行い、日産自動車を立て直した。グローバルスタンダードで言えば、米国のCEOの報酬は最低数十億円なので、年間30~50億円の報酬をもらうことは(ありえることだ)。米国の化学会社でも、こんなに報酬が高いのかと思うくらいだ。ゴーン氏としては30~50億円の報酬を得るのは当然(という思い)だが、日本のマーケットや風土からすると、良くて10億円。10億円でも様々言われそうだから、色々な作戦を練ったのではないか。(本当のところは私には)よく判らない。

Q : 榊原前経団連会長も招致活動をされていたが、2025年に大阪で万博が開催されることが決まった。夢洲を活用することになるが、1,250億と見込まれる会場整備費を、国、地元自治体(大阪府、大阪市)、経済界が3分の1ずつ負担することになっている。万博では、どのようなことを発信していくべきか。また、資金の部分で三菱グループも大きな貢献が求められるだろうが、今のお考えは。

小林: 今回立候補した3カ国の中で日本の得票が一番多かったことは、当事者の皆さんの努力もさることながら、世界的に日本がリスペクトされ、多方面において評価されているということであり、非常にありがたく、国民として喜ぶべきことだと思う。2020年のオリンピックが終わった後、次に何があるのだろうという中で、万博開催という機会を得た。万博では、(たとえば)ILC (国際リニアコライダー)のような「新しいサイエンス」をベースにした博覧会にするのか、または従来通りの、いわゆる、モノ・コトの博覧会にするのか、その二つが考えられる。先ほどから申し上げている通り、時代は重さのある経済から重さのない経済、データを中心にAI なり、機械学習なりに(変化している。)例えば、万博は7年先なので、自動運転はかなり進み、レベル3(条件付自動運転)にはなっているはずだ。今、我々が想像する以上に想像力を働かせて未来社会をデザインし、デザイン思考を持って2050年あたりを展望し、人間性をベースにした社会とはなんなのかという提示をすべきではないか。人をベースにしたウェルビーイングというか、生活の質の良さを、バーチャルなテクノロジーあるいはコンピュテーショナルなテクノロジーも含めてデザインしていくという意味では、非常に良い機会ではないか。少なくとも従来の万博とは違い、知的レベルとしてILCのようなサイエンティフィックな要素を入れた、21世紀的な万国博覧会であって欲しい。そのような設計デザインをするためにも、1,250億円ものお金、その内1/3を民間が負担するというが、どのような負担の仕方があるのか。関西には当然それなりのバリューを持って(資金を)出していただくことになると思うが、日本全体の経済界としてサポートするのは当然だと思っている。

Q : IRの点で、関西経済界からは、万博会場周辺に1万人級のホテルを建てる、カジノを作るという案もあるが、そこはどう思うか。

小林: 1年ほど前、関西経済同友会とわれわれとで議論の場があった。IRを夢洲でという話もあったが、私は個人的には賭け事は嫌いだ。ラスベガスに行くと777など(スロットゲームの)椅子があるが、あれに座ったことがなく、そもそも興味がない。(数字の目に掛ける)イチかゼロかというのは神様の思し召しであって、それで喜ぶということが私自身はないので、IRについては特段の感想はない。

Q : 消費増税時の需要平準化対策として、キャッシュレス決済で5%のポイント還元という案が出ている。今朝の麻生大臣の会見では、理屈より平準化という結果が大事だという主旨のご発言があったが、どう思うか。

小林: 将来世代、あるいは将来の日本(を考えれば)、これだけ債務が積み増された国として、消費税率を8%から10%に上げること自体は、方向として大賛成であると以前から申しあげてきた。(需要の)平準化をあまりに前(面)において(いないだろうか)。(消費税率を)2%上げることによって税収が5.6兆円増える。されど、今回の補正予算などでレジリエンス(国土強靭化)や減災に対する(歳出など)、数兆円はかかるだろう。加えて、自動車減税、住宅(購入支援)もある。そうした(対策費)無くしても、(税率が上がることに対する消費者)負担は2兆円程度だろうと日銀で試算されている。5%の(ポイント)還元がキャッシュレス決済によって与えられるなら、キャッシュしか使えない高齢者に対する不公平性が若干残る。(こうした増税対策に)国家としてあとどのくらいの支出ができるのか。諸々、九つのアイテムが提示されているが、今申し上げた三つ程度の対策(をとること)で、(実質増税分が)あと2兆円程度しかないということなら、全部(対策を)入れたら、平準化どころかむしろ減税になるのではないか。このあたりを数値として明確にする責任はあると思う。前回(消費税率を5%から)3%上げたことに対する(消費の落ち込みに)、今度こそそういう轍は踏まないという思いはよくわかるが、too muchにならないかは、計算をしっかりやったうえで最終的に決着してもらいたい。財政再建は急務だ。いつも申し上げているが、名目3%超、実質2%超という、今の潜在成長率からすると、かなりの努力をしなければ届かない成長率を基準に2025年にプライマリーバランスを黒字にする(という目標を掲げ)、それでも2~3兆円赤字になる。今回、消費税率を上げて5.6兆円の負担増になるが、平準化するためにそれ以上使っていないかを、しっかり検証する必要があると思う。

Q : ILCについて言及されたが、意図は。

小林: ILC(誘致)はまだ決まっていないが、万博(は建設費)が1,250億円で、資金集めに苦労しているという。ILCは日本の負担だけで5,000億円に上る。そのロジックはどうなのかと頭にちらついた。日本が知的レベルで生き(抜き)、サイエンスをベースにした国家として今後も世界で役割を果たすとしたら、ILCはぜひ実現したいと思うが、やはりかなり高額だという印象を受けた。

Q : ゴーン氏逮捕について伺いたい。有価証券報告書の報酬をめぐる記載に対し、東京地検特捜部が動き、経営者がいきなり逮捕されるという事に対してどう思うか。

小林: 刑事事件として、民事事件としてどうなのか(という責任の問い方はあるだろう)。コーポレートガバナンスコードから外れていることは事実だが、それでいきなり逮捕されたことに対してフランス政府はああした反応をしている。(私自身は)日本の法律で逮捕できると検察が判断したのだと理解している。

Q : 先ほど、消費増税対策としてキャッシュレス決済で5%還元となると、事実上の減税だとのご発言があった。そうなると、増税前に買い控えが起こる可能性があり、消費行動に影響がでると思うが、いかがか。

小林: それも平準化の一つなのではないか。普通だと(増税前に消費が)上方向になるところがフラットになるかもしれない。9カ月間という期限もある。平準化という効果はあるかもしれないが、もう少し全体を見て(ほしい)。教育無償化などに充てる約2兆円もあり、災害への対応や国土強靭化もある。自動車購入支援や住宅ローン減税もある。国家にとって全体でどのくらいの支出になるのかを、国民に知らせる義務があるだろう。ある仮定の下で計算するのだろうが、5%還元でどの程度の規模か、国土強靭化が何兆円なのか、それらを全て積み上げ、足したらどのくらいになるのかを知りたい。

Q : 9カ月という期限が定められているが、こうした経済対策は延長される場合もある。財政健全化という部分でかなり危なく、スキームが崩れる危険性もあると思うが、いかがか。

小林: まさにその部分について、心配があるのかないのかを数値で明確にするべきだ。少なくとも、2025年にああした(高い)経済成長を仮定し、2兆円程度の赤字ならばブレークイーブンになるだろうという試算をしている。今回(の増税対策で)そうではない状況が出てくる。元々、消費増税を行うベースで計算しており、平準化(するための対策)は入っていない。そうしたものを含めた精緻な計算が要るのではないだろうか。それを国民に知らしめるのは、ひとつの義務ではないかと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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