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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年11月1日(木) 14:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)TPP11、(2)元韓国徴用工判決、(3)キャッシュレス決済、(4)外国人労働者受け入れ、(5)データ資本主義、(6)就活ルール、(7)携帯電話料金、(8)サウジアラビアの事件、などについて発言があった。

Q : TPP11が12月末に発効の見通しとなった。対米関係が微妙であり、対中関係もまた重要になってくる中、通商政策に関してどのように考えるか。また、一昨日、(元)韓国徴用工に関する韓国大法院の判決が出て、賠償命令が下された。外交問題に発展する懸念があるが、経済界としてどう考えるか。


小林: まず(元)徴用工の話だが、あれはどう考えても1965年に決着していたと我々も思っていたし、安倍政権もそう考えていたと思う。あり得ないという思いは共有している。かつても岸田外務大臣(当時)の時、(慰安婦に関する日韓合意の中に)irreversible(不可逆的)という言葉を入れたにもかかわらず、変えられてしまった。普通、国家間の契約は、一番の上位概念にあって、国と国の約束が最優先されるのが普通ではないか。寝耳に水で驚いているというのが率直なところだ。あれだけ未来志向の関係を樹立しようと韓国政府と外交を進めてきた。しかし、こうしたことがトリガーとなって、このままでは日韓関係、民間経済に負の効果を間違いなくもたらすだろう。その点を非常に憂慮している。解決しない場合は、日韓に加え第三国を入れた仲裁パネルを設置し、その後は韓国次第かもしれないが、国際司法裁判所に提訴するという順序になっていくのではないか。しっかりと筋を通した形でやっていただきたい。
もうひとつの国際関係・通商政策(の質問については)、(私自身)経団連のヨーロッパ委員長を7年間担当し、EU との EPA については当時から長く関わってきたので感慨深い。EUとのEPAもそろそろ発効するだろうし、それより早く TPP 11の6カ国が(国内手続きを終了し)発効までこぎ着けたというのは日本政府の努力、リーダーシップ(によるもの)であり、甘利氏の時代から茂木氏まで、当然官僚の力も含めて、よくここまでしっかり頑張っていただいたという素直な思いでいる。アメリカが(TPPを)離脱し頓挫しかけたにも関わらず、日本が強いリーダーシップ、諦めない思いでここまで引っ張ってきたことは、間違いなく賞賛に値する。今後はグッズ、(つまり)物品のTrade Agreementから最終的に FTAに(交渉が)移っていくにしても、 TPP 11が交渉限度の参照になるであろうし、高度な情報(の扱い)などを含めて議論をしていけば、単純なFTA の交渉以外に、ゆくゆく米国が(TPPに)復帰してくる可能性も担保でき、(TPP11が)成立したこと自体が、世界の自由貿易にとって大変意義深いことだと思う。
いずれRCEPも(視野に)入ってくるのだろうが、やはり最大のポイントは恐らくトランプ米大統領が(言っている)車の関税も含めた表面的な話以前に、国家間のテクノロジーをベースにしたハードウェアはもちろんのこと、とりわけソフトウェア(の問題になってくる)。それぞれの国家が保護主義や覇権主義に陥りつつある中で、データの流通については、EUではGDPRという形で個人の情報をしっかり守っていくという戦略である。英国はネット事業の売り上げに対して2%(課税するようだが)、世界中を駆け抜けるネットの社会はいまやボーダレスになっており、(法の網目を)すり抜けてなかなか税金が取れない。かつてはボーダーがあるから関税なりお金、タックスを取れたが、(デジタルの世界では)そういうことができない。新しいテックカンパニーは、デジタルテクノロジーをベースにしており、世界がそこだけはボーダレスになっている。かつての古典的なポリティクスと税金政策、テクノロジーが、全くもって整合性を失ってしまう中で、政治、経済、あるいは国のボーダーというレベルで、ある意味での保護主義になり、駆け引きや闘争が起こっているという事象だと思う。
米国がそろそろ完全にファーウェイ、ZTE(を排除しようとしており)、半導体のみならず、今後5G(も始まる中で)、オーストラリアは明らかにファーウェイのテクノロジーを拒否するようなところに来ている。テックカンパニーのみならず、国家の技術の先端部分が譲れなくなった中で通商交渉が行われているという意味でも、TPP11は一つの大きな橋頭堡になっていくのはないか。
そういう中で、日本はサイバーセキュリティ(に対応できる)人材もそれほどいないし、お金もあまり注ぎ込んでこなかったが、今後はサイバーセキュリティがベースにないと仕事もできない。eコマースもできない。もっと言えば電子決済、キャッシュレスの時代になる。深センをはじめとして、中国はものすごい勢いでそちらに向かっている。中国は人口が多いゆえに、ビッグデータの量や蓄積のスピードも違う。そういうところで世界がどう折り合って行くのか。少なくとも今、中国は、データは自国内でキープし、(国)外には出さない(という戦略だ)。どのように国家間で(データを)行き来させるかという交渉もまだ進んでいない。APECではCBPR(Cross Border Privacy Rules)について議論しており、米国もそれには乗ろうという向きもある。CBPR や GDPR、あるいは中国のインターネット保護法を含めて、(それらへの対応は)国際政治、国際経済の最もクリティカルで重要な課題になる。21世紀のテクノロジー、(特に)バーチャルテクノロジー、サイバーテクノロジーをベースにした国家間の戦いの時代に明確に入って来たと(思う。)日本も官民問わず、よほど本気になって勉強していかなければいけないのではないか。そういう時代が来たという認識を持っている。

Q : 元韓国徴用工裁判の件、新日鐵住金は政府の対応状況を踏まえて適切に対応する旨のコメントを出している。損害賠償は日本円で4,000万円とのことだが、企業にとってはあまり大きな損害賠償額ではなく、韓国との関係を続けていくために支払えばよいという考え方もあり得るが、見解を伺いたい。

小林: 絶対的に違うと思う。筋が通らないことには1円も払ってはいけない。他の人にも迷惑かける。今の政府の対応をむしろ支持したい。1965年の契約で(当時の)韓国の国家予算の約2倍を支払っており、少なくとも韓国にはそういう補償をしてこれで全て終了となっているので、日本側として安いとか高いとか、そういう話ではないと思う。

Q : キャッシュレス決済について、消費増税時の経済対策としてポイント還元案がでている。コンビニエンスストアに関しては、フランチャイズ店は国が支援するが、直営店は企業が負担するといった話も挙がっている。企業の負担がさらに高まることについて、見解を伺いたい。

小林: 現在は議論の段階で(あり、)様々なアイディアが出ている最中との認識である。税は平等で分かりやすくシンプルでなければいけないので、キャッシュレスにするために、物事が複雑になることは本末転倒だと思う。マイナンバーも含めて、国家のデジタル化が世界に(比して)遅れているので、上手くシンプルに作動するような仕掛けができれば賛成だが、現在聞いているところでは複雑な印象がある。

Q : 低所得者対策として軽減税率を導入した上に、プレミアム商品券を発行するという案に対して、どのようにお考えか。

小林: 一定程度の対応を全て否定はしないが、二重にも三重にも聞こえるような方策ではないだろうか。2万円の購入金額に対して5千円(のプレミアム)を上乗せする案もあるようだし、そもそもどの水準までの所得層に発行されるべきかということについても、(所得自体が)完全に捕捉されていない。捕捉するためにはマイナンバーも含めて相当デジタル化するなどの仕掛けが必要だが、すべてが煩雑になるのではないかと危惧している。

Q : 国会で議論されている外国人労働者の受け入れについて、外国人労働者が増えると日本人の給与が下がる可能性、あるいは社会保障制度の議論の必要性など、課題がみえてきている。国会での議論や業界団体へのヒアリングの報道などから、この制度を導入するためにはどのような論点を整理し、解決していく必要があるのか、経済界の立場から意見を伺いたい。

小林: 現状は、多くの業種で人手不足になっているので、何らかの形で外国人労働者の助けを借りることは賛成だ。ただ、欧州などでは移民政策を始めて10~20年経つと、国民の不満が出てきているということを、よく考えなければならない。今後、ITやAI技術、ロボティックスが相当進歩した10~20年先になると、逆に日本のように労働人口が少なくなっていく方が、社会的にこの大きな問題が解消されることも想定できる。そのようなことも考えながら、どのような能力を持った人をどのような形で受け入れるか、どのように日本に滞在をしてもらうかなど、時間軸も含めて正確に定義した上で進め、後々禍根を残さないようにするべきではないか。

Q : 政府が議論している「特定技能2号」は、移民に当たると思うか。


小林: 基本的には違うと思うが、移民の定義がよくわからないので何とも言い難い。

Q : データ資本主義について伺いたい。公正取引委員会はGAFAの実態調査をすると発言し、総務省も、プラットフォーマーが集めている個人情報について関心を強めている。EUのGDPRのように、日本でも巨大プラットフォーマーに対する規制強化は必要だと思うか。


小林: 当然、必要だと思う。サイバーセキュリティ、巨大プラットフォーマーによるデータの蓄積を含め、最終的には国家の安全保障そのものに関わってくると思う。なんでも野放図にOKというわけには、絶対いかない。国家の安全保障は、航空母艦や軍艦を何隻持つかといったハードウェアの時代は完全に終わっているのではないかというのが私の所見だ。サイバーセキュリティや、宇宙などの分野(で自国)を守っていかないと、ある国の属国になってしまうというのは明らかだ。データも然り、サイバー空間(含め)全ての出来事に関して、国家としてのルールを明確に持ちつつ、外との交渉に臨む。その端緒が今回のプライバシーの問題や、あるいは独禁法の問題なのだろう。今までのような、モノや知的財産というジャンルに当てはまらない要素がたくさん出てきている。ホワイトハッカーではないが、そもそもそうしたテクノロジーを理解できる人材がほとんどいない。民間にもそれほどいないが、官にもほとんどいない。政治家がその交渉をできるのだろうかといった問題も生じてくる。バーチャル空間でどれだけ国家を考え、ブロックしながら、安全保障を考えるかという時代が来ているのではないだろうか。

Q : 就活ルールについて伺いたい。経団連会長の発言から2か月余りで、ようやく政府主導でルール作りをしていく形になった。官製春闘ならぬ官製就活ではないかと思われるが、いずれにしろ、政府主導の枠組みに移行しても、強制力・拘束力がない中では、経団連がルール作りの土俵から降りただけに留まっていると言える。大企業本位の見直しという批判も出かねないが、経済同友会が主張しているような新卒一括採用の見直しに議論をつなげていくには、何が必要か。

小林: 必ずしも就活だけではないが、社会経済システムがグローバルになっている中で、データセントリックな社会になり、政府もデジタル・トランスフォーメーションしなければならない。民もそうだが、かつてのようにデジタル・ディバイドの名のもとに高齢者など(ITに)弱い者を助けるだけでは、国家そのものが相対的に弱体化してしまう。ものすごく変革している中で、働き方や、企業による(雇用する)人々への評価はどうしたらいいのか。グローバルに見ると年功序列や定年制が相当崩壊し、(日本企業はそうした海外企業と)戦っている。それが変革のトリガーになっていく時代が来ているにも関わらず、相変わらず学生の従来の不安を解消(することに終始している)。(年次といった)かつての労働の一つの塊、(学年といった)教育の塊なりを、相変わらず同じように続けていいのかという問題提起だと私は考えている。明らかにドラスティックに世の中が変わる中で、中国共産党はあのような(独自の)形で(国家を)変えていくだろうし、米国、欧州もそれぞれ苦悩しながら考えている。日本ももっと積極的に変革していかなければならないのではないか。個別論はどうあれ、それが最大のポイントになる。長期雇用を保証して連続的にベース(基本給)が上がり、ボーナスは別という給与体系の中で、(これまでは)ベースアップを重んじてきたが、今や連合でさえ、年間の給与(総額)を重点に考え始めている。それほどまでに、外からの影響を受ける中で日本も変わらざるを得ない(状況になってきている)という認識だ。労働の流動性含め、ルーティンワークでアナログの時代(は終わりつつある)。逆に、肉体労働は立派なロボットが出てくるまでは必要とされるが、中途のインテリジェンスを要求されるような仕事は、比較的要らなくなり、銀行の窓口業務などではリストラが進んでいく。いかに(採用の)自由度を付与するかということが重要な時代に来ているのに、何の規制もなくただ(新卒ルールのみを)取り決めるということで、本当に今後機能するだろうかとは思っている。

Q : 携帯電話料金について伺いたい。8月に菅官房長官が、携帯電話料金を4割程度引き下げられるのではないかという発言をし、昨日NTTドコモが、来年の4月~6月期に料金を2割~4割程度引き下げ、利用者へ年間4,000億円還元する方針を発表した。ソフトバンク、auの各社も引き下げの方向だ。民間の競争に政治が介入することと、キャリア3社が市場の9割を占めていることを踏まえ、この流れをどう考えるか。

小林: 2つのポイントがあると思う。民間の自由競争に対して、政府の摂動が正しいかどうかということ(が1つ)。2つ目として、今の若い人達の可処分所得から、携帯電話やネット関係にかなりの部分を取られてしまうこと(がある)。彼らは自動車(の購入)などにあまり興味がないため、多くのお金が携帯電話やネットに流れてしまう。これをどうするかということだ。後者の問題は、やはり少し(料金が)高すぎるという面もあり、インフラのハードウェア(の価格)が下がるのは大いに結構なことだと思う。(通信料が、)3、4社の寡占の中でリジットな価格体系になっていることは(一部で指摘もあるが)、世界と相対的に比較すると、それほど高いわけではない。これも官製と言われる要因の一つかと思うが、民間としてはそういう(国からの)意見もあると思いつつ、下げるのではないだろうか。そう思うしかない。基本的には自由だと思う。

Q : サウジアラビアの一連の事件について伺いたい。カショギ氏が武器商人であることは知られているが、殺害されたというのは非常にアナクロなやり方だと思われる。サウジアラビアに進出したアラビア石油には既に(利権協定は)ないが、(日本とは)深い関係のある国だ。今、同国がカントリーリスクになっている中で、どうみているか。

小林: 原油があるということで、もともと米国とも関係が(あった)。近年は(米国で)シェールオイルが安く精製できるようになったので、サウジアラビアと米国の関係はかつてほど(良好)ではないのかもしれないが、やはりトランプ米大統領にとって同国は、兵器を購入してくれる国として強い関係がある。あるいは、孫正義氏は10兆円規模のファンドを(サウジアラビア政府と共同で)進めている。当社(三菱ケミカルホールディングスグループ)も、新しいプラントを(本格稼働し)始めたばかりだ。日本との経済関係は石油から始まったが、(いまや)切っても切れない関係になっている。皇太子の個性で、あのような(統治の)形になっているが、このままのパターンで同国が(続いて)いくとは思えない。これがアラブ諸国全体のメンタリティとは思わないが、真相を究明しつつ、冷静に判断していくしかないと思う。中東は均衡が重要である。イラン、ロシア、シリア、イスラエル、サウジアラビア、中国、米国、日本(など含め、世界を俯瞰して)見ると、あまりヒステリックな対応はやめておいた方がよいと思う。

Q : (日韓請求権協定が結ばれたのが)1965年なので、韓国の問題はかれこれ53年前のことだ。当時もかなり侃々諤々あり、結局、米国が仲介してなんとかまとめたという経緯がある。今回のサウジアラビアの件も、二国間関係というよりは同国対多国間問題だ。日韓の件も、日韓プラス第三国を入れた形で進めるということが、民間経済としての構えという認識か。

小林: そうだ。少なくともここまで(経済的に)コミットした韓国、サウジアラビアと、いきなり経済的な絆を切るわけにはいかない。

Q : 元韓国徴用工問題について伺いたい。これまで、個人請求権については消滅していないと外務省で答弁されてきたことについて、どう思うか。

小林: 1965年の日韓請求権協定が、個人請求権についてどう(規定されていた)かという確認もすべきだと思うが、入っていたのではないかと私自身は思う。

Q : (個人請求権は)日本の最高裁判決では認められていない。しかし1991年に、外務省条約局長が、個人請求権は消滅していないとの答弁をしている。

小林: 単純に、常識的にいえば、解決されたことだと思う。(韓国の)政権が変わるとこのようなことが起こる。前々政権でも、竹島問題が急に浮上した。そういう意味では、韓国には理解しがたい面がある。

Q : 韓国はオリンピックを2回も開催している国だが、どうしたらよいのか。

小林: 国際司法裁判所で、フェアに判じてもらえればよいが、(それには)韓国側が(裁判をすることに)同意しなければならない。まずは、第三者を入れ、法律面を含めて(外交当局者間で)議論するということではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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