ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年10月16日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

PDFはこちらから

冒頭、代表幹事から、先日行われた代表幹事ミッション(米国)について感想を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)消費税引き上げ、(2)新卒一括採用、(3)外国人労働者受け入れ、などについて発言があった。

小林: 先週、サンフランシスコ・ベイエリアを訪問してきた。(代表幹事就任2年目は)イスラエルに始まり、北京、ワシントンD.C.(を訪れた)。(ワシントンD.C.を訪米したのは今から)ちょうど2年前で、当時会ったワシントンの人々からは、クリントン(氏が大統領選で勝利するだろう)という話を聞いて帰ってきたのを覚えている。去年は、パリとロンドン(を訪問し)、ビッグデータやバイオを含むハイテク分野が、世界でどのように進んでいるのか(を確認した)。そして今回は、ビッグデータ、 AI、 ロボティクスの本場(であるサンフランシスコ・ベイエリアを訪問し、これら技術の進展が現在)どのあたりにあるのか(について視察してきた)。
(経済同友会では、)「経済同友会2.0」というコンセプトに基づいて考えている。組織を新たにリフレッシュしたいと考えている。また、我われが設定した時間軸として、戦後100年の2045年に向けて、(2020年)オリンピック・パラリンピックが終わる2021年ぐらいから、どのようなアクションを取ればいいのか(という問題意識で)準備をして考え方を整理し(、「Japan2.0」の総仕上げを行いたい)。要するに、我々経営者も含め、次なる日本の姿について描いていくことを考えている。グローバリズムとデモクラシーが危機に瀕しながらも、グローバル化とIT化、ソーシャル化が進む中で、我々経営者は今後どう自分自身を変革し、どう世界を見つめて手を打っていくべきかを中心にまとめようとしているところである。
(その問題意識に基づき、今回の訪米では、)グーグルを含むプラットフォーマー、ベンチャーキャピタリスト、スタンフォード大学、グラッドストーン研究所、セールスフォースドットコム、あるいはトヨタ・リサーチ・インスティテュートなどを訪問してきた。ビッグデータ、AI、ロボティクスに関連したハードウェアはどうあれ、コンピュテーショナル・デザイン・シンキング(の重要性を認識させられた)。要するに、データをベースにし、なおかつコンピューターを使って、アルファ碁よりもっと先の、人間が演繹的にやってきたものを凌駕する、そういう非常に帰納法的な、格段に領域の広いモノのデザインなり物事の考え方なり手法を、グーグル、アップル、セールスフォースドットコムなどは明らかに取り入れて(いるということだ)。一周遅れの日本をまた新たに認識させられたというか、サイバーセキュリティに至っては、ある人によれば(もはや日本は)三周遅れとのことであった。日本はここへ来て急速に遅れをとってしまっている。戦後70年以上経って、就活(の考え方)含め、あるいは労働の流動性を含め、経済社会システムが全くもって変革しないこの国。これは、政治もさることながら、国民も、あらゆる経営者も含めて、皆が反省しなくてはならない。アナログからデジタルに急激に変換する中で、グローバルにみて比較劣位に陥っているという認識をもっと持つべきとの一言に尽きる。とにかく、新しい21世紀の半ばに向かって、新しい経済社会システムをみんなが作っていく日本にしていくべきと思う。

Q : 昨日安倍首相が臨時閣議で来年10月の消費税引き上げを指示したが、その受け止めについて伺いたい。

小林: (消費税引き上げまで)あと1年に迫っているが、日商の調査によると中小企業の8割程度で準備ができていないようだ。そのような中で政府も、中小(企業)に限らず、マーケットに対して具体的な準備をしようと(促したもの)だと捉えている。消費税8%から10%(への引き上げ)は衆議院選挙でも掲げたもので、整斉と進めてもらえるものと思っている。

Q : あと1年という話だが、政府に対して要望はあるか。また、経済同友会として積極的に進めていけることがあるか。

小林: (2014年に消費税が)5%から8%になるとき、大きな(需要の)反動があった。ヨーロッパなどの消費税が20%(程度の)国では、消費税引き上げの前と後で大きな反動は無かった(と聞いている)。今回は8%から10%への引き上げとなるので、(引き上げ幅は前回の)3%から2%となる。(引き上げによる増収分)5.6兆円程度の内、1.7兆円程度を教育の無償化などに持っていったり(するとのことだ)。また、軽減税率の(導入)に1兆円(程度の財源が必要だと言われている)。(一方、中小小売での)キャッシュレスで(の買い物に対して)2%(のポイントを政府負担により付与し、その分購入の負担を)下げる(施策の検討)、自動車税の低減、住宅に対する施策(など消費の刺激策が予定され、これらを)足していくと、(消費税を)2%上げても(消費に対しては)ネガティブな効果がない、と見えるほどに事前に細かく手を打っていこうとする政府の意向は大いに結構だ。一方で、財政の健全化も並行してみてもらわないと(いけない)。税収増分の約5.6兆円分が(あっても)、(たとえば)景気対策で10兆円ぐらい使われてしまい、むしろマイナスだったとならないように、しっかりと定量的にまとめて行ってもらいたい。2020年にプライマリーバランス黒字化という大きな目標が、2025年に変更されているが、(2020年代前半に経済成長率が)実質2.0%、名目3.0(%以上に達するシナリオ)で計算しても、「出(いずる)を制する」(=歳出削減努力)ができないと、その達成は簡単ではないというのが現実だ。そのような中、今回ひとつのベクトルとして消費税を8%から10%に上げると示したことは、野党がすべて(消費税引き上げに)反対している中で、大きな決断として評価できる。(しかし)平準化のために使うお金は、ある程度限度を決めて、財政(の状況)を睨みながらやってもらいたい。経済同友会として何をやるかというのは、消費税が8%から10%になっても混乱がないように対応していくということ、また財政についてウォッチをし続けることだと思っている。

Q : 昨日、政府の関係省庁連絡会議で、経団連の採用指針廃止を受け、新たな枠組み作りについて議論を行った。2021年入社については現行ルール踏襲となり、新卒一括採用については未来投資会議で議論することとなった。新卒就職時が就職氷河期にあたった場合、フリーターが増え社会問題化するということもある。先日の会見で代表幹事が発言された、新卒採用時期のバッファも含め、新卒一括採用についてどうあるべきか考えを伺いたい。

小林: 新卒一括採用だと、選から漏れた人はチャンスがなくなってしまうが、通年採用だと、チャンスが年に何回かあり、また、他社に(志望を)変更することも含めて、学生にとってオプションが増えることになる。人生100年時代であり、終身雇用が正しいのかも含めて、もっと深く考えるべきである。これほど不確定要素が強く、産業構造が音を立てて崩れていく世界の中で、高校や大学で勉強することだけが勉強ではない。死ぬまでが勉強である。このような時代の中で、大学を出て「就社」(をして終わりではなく)「就職」(を意識して)自分の強いところを伸ばしステップアップしていくようにし、卒業後3~5年のバッファを設けて、(時期は)各企業に任せて入社試験を行えばよいのではないか。米国のグーグルでは、週に一回人事の会議を行い、必要な人を必要な時に採用して、辞めるべき人には辞めていただく流れだ。そのような国がたくさんあり、競争をしなければならないが、今までの一括採用が急になくなるのは、学生にとって負担になるので、議論すれば良いのではないか。いずれにしても雇用の流動性を考える一環として、定期採用から通年採用という考え方をするべきだ。

Q : 外国人労働者受け入れ拡大に向けた在留資格の議論が進んでいるが、対象業種、受け入れ態勢の整備などが今後の論点となる一方、議論の時間が短いのではないかとの指摘もある。代表幹事の所見を伺いたい。

小林: 頭脳労働や資格を持ったプロフェッショナルより、肉体的、或いはルーティンワークをする人たちが不足している。何らかの手を打たなければならない。プロフェッショナル(な外国人労働者)には、5~10年の家族の帯同を認める、あるいは永住権的なものに実態としてなっていくだろう。ルーティンワーク(の外国人労働者)について、5年ぐらいの期間、家族の帯同を認めない形での在留を認めるのはよいとしても、不足しているからと言って、なし崩し的に(増えていくことに)なることはよくないのではないか。今ヨーロッパで、ポピュリズムや右寄りの政治が優勢になっているのは移民問題が根源としてあり、ここ5年ぐらい大きな問題になっていることも、一つの教訓としなければならない。例えば、シンガポールはリーマンショックが起こった時に人手が必要なくなり、インドやマレーシアからの労働者を帰国させたが、そのような強い政治力のある国ならよいが、簡単にはいかないだろう。深く議論していただきたい。

Q : 軽減税率など、ある意味で下げる部分も準備が必要になる。増税まであと1年を切っているが、間に合うと思うか。仮定の話だが、これから対策を練っても間に合わなかった際には、延期の可能性をどう考えるか。

小林: 間に合う部分と、間に合わない部分の可能性を持ったものがある、ということだと思う。例えば自動車、住宅に対する減税はすぐに対応できるだろう。一般的な品目に対する軽減税率も対応できるだろうが、コンビニ店内で立って食べるような飲食料品をどうするかなど(問題はある)。特に、中小(の小売店)でクレジットカードなどを使いキャッシュレスで(支払うと)2%をポイント還元するという案は、相当早めに準備しないと本当にスムーズに立ち上がるかどうか。ただ、スムーズに立ち上がらなくても、そういう部分については10月に限らず、バッファゾーンを設けるという(考えもある)。それをもって消費税率を上げないということはありえない。もしあるとしたら、米中の貿易摩擦や欧州の景気減退、米国の金利上昇によってブラジル、アルゼンチン、トルコなどから資金が引き上げられることで全体がリセッションに入ってしまうことなどだ。一年後にすぐ、そうした状況になるとしたら(延期も)考えられないわけではないが、日本は東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、なんとか2020年頃までは(景気を)引っ張れると期待し、決めたのだから、是非とも3度目の正直として(引き上げを)行ってもらいたい。

Q : 足元の労働力不足を補うために外国人労働者を受け入れるとなると、移民問題を例にとればいろいろな社会的な問題も起こり得るというご認識か。その上で、議論をしてほしいというご発言だったが、どのような問題意識をもっているか改めて教えてほしい。プロフェッショナルな労働と単純労働に近いものをどう整理し、どういった議論をすべきなのか。そこまで検討するとなると骨太な議論が必要となり、来年というのは難しいと思うが、議論の時間軸についても伺いたい。

小林: 我々経済同友会が(戦後100年の節目として)ターゲットとしている2045年に(社会が)どうなっているかを考えなければならない。日本は少子高齢化し、かつてのオートメーションから、(今は)AIやロボディクスを用いて省力化している。一方、ある部分では労働自体が(ロボットに)とって代わられてしまうのではないかという面と、両方(の見方が)あるのではないか。当座はとにかく人手不足だ。特にフィジカルな、ルーティンワーカーをなんとか手配しないと経済成長の負になるとしたら、5年なり10年なりと明確に区切って海外からの労働者を受け入れる(必要はあるのではないか)。一方で、産業競争力をつけるためにはかなり高度なタレントを持った外国人(も必要だ)。とりわけ米国をあそこまでAI、データを中心とした国に変革した移民政策は、インド人、中国人、ユダヤ人などをサンフランシスコ界隈に集め、多様化し、非常に活性化した経済をつくりあげた。知的労働者という意味では、日本はソフトウェアの労働者が非常に少ない。日本人だけでデータサイエンティストを養成してもとても間に合わないという中では、トランプ米大統領が(移民を)規制するという状況は、(ある意味では日本にとって)よい条件にあるともいえる。そういう方にも来てもらい、(日本は米国などに比べ)周回遅れ、三週遅れと言われる部分を早く取り返す。そこは(単純労働とは)区別して考えなければならない。いずれシンギュラリティの時代が来るか来ないかは別として、2030年頃になれば、相当ルーティンワークの部分はロボットに置き換わる。ラスベガスのコーヒーショップでは、ほとんどがロボットを導入している。日本のように少子化・高齢化すると、社会問題的には(解決に向けて)非常によいのではないかということも想像できる。そういう時代になった時にあまり(労働者が)オーバーフローするような政策は取るべきでないと思う。

Q : 冒頭、代表幹事から、日本は遅れており、新しい経済社会システムの構築が必要であるとの発言があった。さまざまな要素があると思うが、最も急ぐものを一つ挙げるとしたら何か。

小林: 世界の中で、日本の比較優位がどこかということを大切にすべきだ。今、日本を取り巻く世界のリスクは3つある。一つは、北朝鮮、イランを中心とした核戦争の危機。もう一つは、地球にとってそろそろCO2の問題(が切迫していることだ)。今回のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)などを見ると、2030年までにCO2排出量を45%減らさなければならないという。産業革命前に比べて(気温上昇を)1.5度に留めるためには、2050年までには排出量を0%にしなければならない。今夏の日本の(異常気象と災害)状況もそうだが、洪水など(が起きる)。CO2など温室効果ガスの問題、あるいは海洋プラスティック問題、牛肉を食べる(人口が増えた)ので(牛の飼育のために)水の使用量が増えていること。そうした地球環境の問題で人類が崩壊してしまうかもしれない。もう一つは、やはりテクノロジー。サンノゼ界隈でデータを握った人たちが世界を支配しているが、必ずしも米国だけではなく、深センを中心とした中国もとてつもない勢いでデータセントリックな社会(を築いている)。それもデータ・ディクテーターシップというか、専制的に、極めて効率よく行ってきている。この3つの(リスクの)中で日本がどうするか。ものづくりが得意だった10年ほど前まで、どちらかというと相対的にコンピューター・アシステッドな部分が弱かった日本。いまだにマイナンバー(カードの普及率が)10%程度しかなく、デジタル・ディバイド(が、まだ大きくない)という、ある意味の優しさを持った日本では、(それ故に)遅れてしまっている。キャッチアップするのは当然だが、モノとコト、モノとコンピューター・デザインを合わせた領域で、とりわけ環境問題的なものに手を打つという設計が面白いのではないかと思っている。一つだけ対応するわけにはいかず、全てやるしかない。外交では北朝鮮問題も残っており、環境問題もある。そしてテクノロジー。これらをなんとか日本らしいかたちで対応していくということではないか。

Q : 消費税率引き上げについて伺いたい。昨日、菅官房長官は、記者から最終判断はいつかと尋ねられ、首相が状況を見て判断すると回答した。先ほど代表幹事は、リセッションの場合は引き上げないことを容認するかのような発言があったが、どのレベルを想定しているか。

小林: 定量的には言い難い。リーマンショック並で、資金が動かなくなり、貸してくれなくなった場合、消費税を上げることはないだろう。それは容認する、しないといったレベルの話ではない。どこに線引きするかというのは、誰にも分からないのではないか。その時の感覚で判断されるのかもしれない。

Q : 基本的には、多少の後退でも上げるべきとの認識か。

小林: それは当然だ。先週、(株価が)乱高下した。それには4つ、5つのファクターがあるかもしれないが、だからと言って「一週間株価が下がったので(消費税率引き上げを)やめる」など、それはないだろう。

Q : 政府は消費税率10%引き上げの際に、中小企業に対してキャッシュレスを普及させるため、レジの設備投資を促進する予算措置を検討している。現在、現金商売をしている店は多く、これを機会に商売をやめようという企業もあるが、その流れは仕方がないことなのか。

小林: まさに光と陰があり、中小と零細企業をどのように分けるか、どこまで国がレジなどの機械をサプライするのか、具体的な部分が明確ではないので何とも言い難い。しかし、日本のキャッシュレス社会に対する抵抗を変革するという意味では、一つのツールと見るべきではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。