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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年10月3日(水) 15:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)内閣改造、(2)日米首脳会談、(3)就活、(4)高齢者雇用、(5)ノーベル賞、(6)裁量労働制、(7)日中首脳会談などについて発言があった。

Q : 昨日、内閣改造が行われた。日本経済を取り巻く環境は国内外とも厳しくなっているが、組閣に対する所見と新内閣に望むことをお聞きしたい。

小林: 第二次安倍内閣の骨格の一部がキープされたのは、財政金融政策、通商政策、経済再生政策をしっかりと継続していこうという意志の表れかと思う。菅官房長官の留任は、これまでの実績(への信頼)と、今後への期待の表れだと思う。他の閣僚については、いろいろなバランスや政治的配慮もあるのだろうが、非常にクリアなのは経済政策については大きな変更がない(ということ)、通商や外交などが非常に難しく、ますます複雑系に入っていく中で、従来の方向で進んで行こうという表現と受け止めている。

Q : 内閣改造において、財務省で文書改ざんがあったにもかかわらず麻生大臣が留任し、党役員では、金銭授受問題で大臣を辞任した甘利氏が選挙対策委員長に就いた。野党からも反発が出ているが、見解をお聞きしたい。

小林: 問題の(起きた)節々で、自分なりの感じ方や意見は明確に述べているつもりだ。今回の組閣というのは別次元で考えられてのことだと思うので、今更また蒸し返しても仕方ないというのが、正直な感想だ。

Q : 組閣について伺いたい。安倍首相は「全員野球内閣」とおっしゃったが、新閣僚12名の中で注目の方はいらっしゃるか。

小林: 柴山文部科学大臣は比較的若く、活躍していただきたい。全員野球をどのように解釈するかは難しいが、任期の3年間、大いに頑張っていただきたい。

Q : 今回の内閣では女性閣僚が一人となった。安倍首相は片山大臣には期待3人分とおっしゃっていたが、女性活躍が叫ばれている中、どう思われるか。

小林: 人のことを申し上げる前に、経済同友会でも女性の副代表幹事は2名だ。(所属企業の)三菱ケミカルホールディングスでは、社外取締役に1人女性がいるだけで、まだ内部から育ってないというのが現状である。無理矢理に女性を登用しても、本人も(周囲も)含め苦労することもあるだろう。スウェーデンのように(女性の役員比率の目途を設けて)人数を決める方法もあるだろうが、日本の文化はドラスティックに変わるわけではなく、徐々に女性に活躍してもらうという思いでやらないと、かえって様々なフリクションが出てくるのではないか。それが組閣にも反映されていると思う。所属企業や本会でも非常に深く(女性の活用を)考えているが、なかなか簡単にはいかないというのが事実である。(今回、女性閣僚が一人だったことは)妥当かどうかは判らないが、該当者がいなかったのではないか。あるいは、長い間バッターボックス(に立つつもり)でウォーミングアップをして待っていた方が沢山いらっしゃったということもあったのではないか。

Q : 先日、日米首脳会談が開かれた。新しい通商交渉の枠組みで議論されているうちは自動車の関税を上げないことになり、当面はかわした印象だ。来週からの代表幹事米国ミッションを前に、現在の日米通商交渉をどう見ているか。

小林: 米国訪問は、2年前の9月にワシントンD.C.を訪問して以来となる。前回のミッションは米国大統領選挙(の直前)で、恐らくヒラリー・クリントン氏が選ばれ、トランプ氏はやはり難しいのではないかという話をワシントンの消息筋や議員など色々な方から聞いたが、結果として番狂わせが起こった。少なくともあの段階では、7~8割はクリントン氏が勝つと言われていた。そのような中でトランプ氏が勝ち、この2年、トランプ大統領の独特の手法で米国もだいぶ変わってきている。今回のNAFTAや欧州との自動車関税、日本との関係は、やはり対中国(政策)だけを前に出すわけにもいかず、ある程度均衡的な意味合いから三者の話として(出てきているのではないか。)ナバロ米国家通商会議委員長にしても、ライトハイザー米通商代表にしても、ホワイトハウスの一部強固な人達の意見に流れ(ているようだ。)中国は一国専制主義というか、習近平国家主席以下がスピード感を持って物事を決定できる政治体制(といえる)。私が27年前に子会社の社長を担当していた頃、深圳や北京などでは光ディスクなどのフェイク品が作られ(ていた)。リーマンショック後には、コモディティ(汎用品)に非常にお金を出し、米国や欧州、日本の技術をうまく取り入れて、あっという間にGDPも(日本を)追い抜いた。知的財産、国家による企業の優遇税制や補助金など(によって)、日本の経済界は真っ当に戦える状況ではなかった。ここ10~20年、液晶・太陽電池・光ディスク、半導体でさえ、日本の産業界はハンディキャップレースを強いられてきた。為替のハンディキャップもあり、設備投資に対して償却を極めて長くして、変動費メリットで勝っていける税制もあった。ものすごいハンディキャップレースの中で台湾、韓国、中国が台頭してきた。ここにきて為替も戻り6重苦もだいぶ解消したが、気が付いてみればコモディティだけではなく、半導体にも10兆円ぐらい投資をし、IT の先を行っている AI 、あるいはアリババやテンセントなど、シェアリングエコノミーやキャッシュレス(の世界)では日本を完璧に凌駕している。サイバーセキュリティや宇宙など、防衛に関連したところでさえ、凄いスピードで追い上げてきている。ワシントンに限らず、米国の共和党も民主党も、中国に対する相当な認識の変化が根底にあるような気がする。そのような中でNAFTA交渉や欧州や日本との自動車問題は、(対中国の問題と比べれば)おそらくそこまで大きな戦略的問題ではないのだろう。安倍首相とトランプ大統領のフレンドシップということで、FTAなのかTAGなのか、法律論的にはFTAだという人もいるだろうが、いずれにせよ今回はある程度の 合意 に達するまでは(自動車の関税は)上げてこないということは、時間稼ぎに留まらず、非常に評価すべきことだ。今後、TAGという形で交渉がなされるが、来年はG20も開催されるので、欧州・日本・米国で、WTOの変革 について欧州、米国、日本三者の閣僚で、(あるいは)周辺から持ち上げていくこともありえるだろう。日本の場合は TPP、日EU・EPA 、RCEPが非常にうまく進んでおり、通商的にはなかなか良い方向に向かっているのではないか。来年の4月には代表幹事の任期が終わるので、サンノゼや深圳などをこの目で見たいと思っていた。今回は第一弾として(シリコンバレーを訪問し)、バイオサイエンス、IT のテクノロジーとAI、Google も含めて、そういった会社の今の状況、あるいはスタンフォード大学や研究所がどのようにエコシステムを作り、産官学でベンチャーなどと新しい産業をどう起こしていくのかをこの目で見て、それを日本流にアレンジするにはどうしたらいいのかということを考えたいと思っている。

Q : 貿易協議によって時間を稼いだ部分があるので、日本企業が米国への設備投資や雇用を増やす機会にできると思われるが。

小林: 自動車を米国本土で作っていることによって、どれだけ雇用を喚起しているか、或いは輸出にどれだけ寄与をしているかということについては、数値で見ても日本から輸出する分より明らかにもオーバーしている(ことからわかる)。イランの問題で原油価格も1バレルあたり80ドルに達する勢いで上がってきた中で、シェールオイルという形で素材産業からみても、アメリカは中東に匹敵するほど、或いは天然ガスも含めれば、コスト的に魅力のある場所になってきている。2020年、2025年に向けて、米国に投資する企業は増えるはずだ。(通商政策で)時間稼いでもらえれば、直近で大きな問題を起こさず、徐々にバランスをとっていけるのではないか。そういう意味でも今回、時間を稼ぐ意味は大きいと思う。またWTOについて欧州はもちろん、米国のライトハイザー米通商代表でさえ変革を(すべき)と言っているだから、これを繋ぎながらG20で議論をするということは非常に良い流れだと思っている。

Q : 就職活動の指針について伺いたい。予定では来週、経団連が今後の採用指針を設けないという議論をし、2021年春入社については現行ルールを守るよう政府が音頭をとることになりそうだ。まず、政府が音頭をとることの是非を伺いたい。また、そもそも(ルールが)守られていないという問題があるが、政府が声掛けすればルールが機能するようになるのか。中長期的にはどういう議論を政府、経済界、大学で行っていくべきか。

小林: この問題については、中西経団連会長が一石を投じたことが契機になった。いま大企業では売上の半分以上が海外で、企業によっては従業員の7~8割が外国人だ。そういう中で、給料が(グローバルな)マーケットプライスにはなってきているとはいえ、同じ会社の中で採用方式が海外と国内では大いに異なるというのは、人事政策としては二重構造になっている。なんとかそれを平準化していきたいという流れは以前からあった。なおかつ、株主の3~5割が外国人だが、経営者は株主を見て経営をするものだ。いずれかの機会にというよりも、もはや可及的速やかに、明治以来、戦後も続いてきた日本流のかたち(を変えてくべきだ)。労働法制については、前国会で一部変革されたが、新入社員採用だけではなく、雇用の流動性も含めて全体系を変えるという意味では、経団連など大企業の一部だけで進めるというよりも、その仕掛け自体も成り立たない(ようになってきたことに目を向けるべきだ)。大企業の中でさえ抜け駆けがあるのであれば、審判役に政府(を据える)というのは普通の流れではなかろうか。(官製春闘で)給与を決めるなどは(企業の)ポケットに手を突っ込んでいるという雰囲気はあったが、定期採用か通年採用かというのは社会システム全体の問題だ。これについては(政府が関わることで)正常な方向に行くのではないか。罰則付きの規制なのか、ガイドラインなのかは別として、例えば5年前から(政府が主導してきた)コーポレートガバナンスコードと、スチュワードシップコードも含めて規約化し、トップマネジメントの信任を総会で諮るかたちにしたところ、社外取締役を2人以上置く企業数があっという間に8割ほどになった。そういう意味では、民間と対話をしながら、政府である程度の規制をかけていくということは自然の流れかと思う。

Q : 規制をかければ、守られるのか。

小林: 守らない企業は多いかもしれない。コンプライアンス上、言い方はいろいろあるだろう。例えば、政府が(採用活動のルールを)決めたのに、ある企業は大学2年生、3年生のうちから採ってしまう(ということも)あるかもしれない。社会通念として何が正しいか、ESG投資的なところをどう見ていくかは、これからの議論となるのではないか。ベンチャーも含め、(現在は)明らかにそういうことを全く無視しているところが相対的に多い。このまま放っておくというのも、社会的にはおかしな話だ。

Q : 高齢者の雇用について伺いたい。安倍首相は65歳以上という言い方をされているが、70歳を見据えて高齢者の労働市場参加を検討しているようだ。労使の話し合いなどかなり難しい面があるはずだが、年金問題から入って(高齢者)雇用の話になっている流れだ。65歳以上の人が労働市場に入ることに対して考えを伺いたい。

小林: 人生100年というか、(ノーベル医学・生理学賞受賞が決まった)本庶佑名誉教授の(研究を基に作られた)オプジーボではないが、どんどん長生きになり健康寿命が延びているなかで、人口は減ってきている。女性の労働参加率はM字カーブがかなり修正されて変化している中で、やはり残っているのは定年制(の問題)だ。30年ほど前までは55歳が定年だった。それがあっという間に60歳、65歳になっている。私も今年の11月で72歳になるが、70歳代というのはまだまだ元気一杯で、リタイアしたいと言いつつも、健康面では働けない理由はない。確かにフィジカルな肉体という意味では衰えるが、年を重ねると頭はますます冴え、知識欲が増え、勉強したくなる。従来の概念で考えない方がよいだろう。AI、ロボティクス、ビッグデータの時代が一体どうなっていくのかを見ていくと、かえってフィジカルなものが不足し、弁護士や医者をロボットが代替していくようになる。高齢者になっても頭脳を活かせる職があるかどうかはそう単純(な問題)ではないと思うが、70歳まで働くという前提の議論は、私は決して変だとは思わない。だからこそ、(企業が、大学)3年生や4年生で唾をつけて、卒業したら新入社員としてすぐに就職、70歳まで(同じ企業で)働き続けるなど、普通は(もはや考えられ)ないことだろう。(高齢者雇用という)一つの問題だけでなく、そうしたことも全て変革しなければだめだと思う。

Q : ノーベル賞ウィークに入り、日本人の受賞者が決定したがこれをどう受け止めているか。今回の受賞者も東大ではない大学から出ているが、これについてどう思うか。

小林: 2014年に赤崎勇 名城大学教授、天野浩 名古屋大学教授、中村修二 米カリフォルニア大学教授がノーベル物理学賞を受賞された際、中村教授にご招待いただいてスウェーデンで行われた授賞式に出席した。(その時)ホテルにいたのは日本のメディアだけだった。米国人も受賞していたが、外国メディアはほとんどいなかった。(昨日の)物理学賞を(日本人が)取らないと、ほとんどの新聞が書いていない。(書くのは)日本人(の受賞)だけだ。これがドメスティック(だと感じる)。サイエンスというのは極めてグローバルで、早く「受賞者の一人が日本人だ」というくらいの感覚にならないと(いけない)。これは日本の特殊現象だと思う。もう一つは、受賞した研究はみな20世紀の遺産というか、1980年頃(の成果)であって、今現在日本のサイエンスが強いと思うのは間違いだ。東京大学という点では、2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章 東京大学宇宙線研究所長も、埼玉大学を卒業されている。中村教授も徳島大学卒業だ。京都大学など、関西系(の大学)では昔から産業と一緒にやっていく文化がある。東北大学もそうかもしれない。東京大学では、私が学んでいた時代には、「産学連携などとんでもない」「産業界というのは悪である」と(いった風潮があった)。学問の自由(を掲げ)、キャンパスに警察が入るなんて許さないという時代だった。今、東京大学では毎年百数社ものベンチャーが新しく生まれ、ここ数年で産学協同(プロジェクト)が立ち上がってきており、これからが楽しみだ。東京大学(出身者)もノーベル文学賞を含めそれなりに受賞しているので、確率的にはそのようなものなのではないか。いずれにしろ、日本人が受賞することに対する日本人(の騒ぎ)は異常だと思う。

Q : 三菱電機で過労死や労災が相次ぎ、裁量労働制を取りやめたとのことである。三菱電機は経団連で副会長を出している会社である。また、裁量労働制に関しては、経済同友会も前代表幹事の時代から推してきたが、今回の件をどのように受け止めているか。

小林: 事実関係について、三菱電機が主張している内容と一般的に言われている内容が一部食い違っているようだ。(したがって、)それに対してコメントできる情報を、今は持っていない。しかし、一般論から申し上げると、裁量労働制だから自殺者が増えるというのは、それはなかなか考えづらいような気もする。もちろん過重労働ということもあるのだろうが、メンタル(の問題)で悩んでいる人は、三菱電機に限らない。自分が社長をしている時も、研究所、本社も含め、メンタル(の問題)が非常に増えていた。マネジメントはその辺りをしっかりフォローしていく必要があることは間違いない。(しかし、)それが制度から来ているのか(どうかはわからない)。人間が徐々に弱くなっているというか、ソフトに優しく育てる時代になっている。「心頭滅却すれば火もまた涼し」という時代ではないので、その(旧来の考え方と現実との)ギャップがあるのではないか。経営トップは、心・技・体というと「心の問題だ」と(言ってきたが)、それをひっくり返さなければいけない時代が来た。体・技・心の時代に来ている。まず体をしっかり見て(いくべきである)。スポーツの世界でもいろいろと問題が起こっているが、まだ日本には精神論が意外に残っている。実績がある人が偉くて、組織に対してプレッシャーをかけているという面もあるので、これも明治時代以来の病弊として見直すべきもののひとつだと思う。

Q : 10月下旬に、日中首脳会談が北京で予定されている。中国の一帯一路や日中の第三国協力に対し、米国から警戒論も出ているが、日本はどう対応していくべきと考えているか。

小林: 米中(貿易摩擦)の問題は、かなり長く続くだろうという意識で見ている。これは単純に経済だけの問題だけではない。(中国が)世界でヘゲモニーを握ろうとする中で、宇宙、IT、AI、ビックデータについても、安全保障を含めたところで(考えていかなければいけない)。米中関係が悪くなると、(中国側が)日本に秋波を送り、仲良くやろうとすることがないわけではない。但し、日本企業としてみると、コモディティは完全に(中国に)敗れた。化学産業では、自社でも1,000億円を(中国に)投資したが、どれだけ痛い目にあったか肌で感じている。(日中は)そういう仲だから、戦い方はいろいろあると思っている。テクノロジーがそう簡単に(流出して)いかないようなもの、インフラの一部(のみに限定するなど)、業種を選別して(現地で)長期的に勝ち抜ける、役に立つものなどが進出をしていけばよいと思う。カーボンファイバーなど(高付加価値品については)、太陽電池、フラットパネルディスプレイ、あるいは半導体とか、そういうもの(の主導権が)がすべて(中国に)取られていったことを考えると、そこはやはり慎重に、仲良くやったほうがいいと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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