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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年7月3日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)第5次エネルギー基本計画、(2)景況感悪化、(3)トランプ米大統領の自動車関税、(4)イラン産原油の輸入禁止、(5)サッカーワールドカップ、(6)働き方改革関連法成立、(7)米中関係、などについて発言があった。

Q : 今日、政府が第5次エネルギー基本計画を閣議決定した。再生エネルギーの主力電源化、原発、そして石炭火力をどうしてくのかについて、お考えを聞きたい。


小林: 経済同友会ではこれまでも提言し、今回の第5次エネルギー基本計画の見直しに関するパブリックコメントも提出した。石油・石炭などの枯渇資源ではない、自然エネルギーを主力電源として22~24%にするところが今回の変更点だが、第4次計画から大きな変更はなかったと認識している。原子力エネルギー比率は20~22%。現在、(原発が)8基しか動いておらず、4~5%である。20%以上となると、全体としては35基必要になる。原子力をバックアップ電源とすることは国民的な納得感(の醸成)にかなり時間がかかる中で、今回(目標値を)変えなかったのは、やはりCO2の問題(がある)。原子力がストップして十数基しか動かないとなると、天然ガスにかなり(の部分)切り換えていかなければならない。そうはいっても、自然エネルギーの場合は、冬に雪が降れば風車のブレードが重くなり動かなくなったり、太陽光パネルに光が当たらなくなったり(などの課題があるため)、原発が動いていない今、バックアップとして石炭(火力発電)を動かさざるをえない。(CO2削減という)国際世論は極めてよく分かるが、日本は今の状況だと、石炭火力発電が無くなれば電気が来なくなるという状況で、一時的とはいえ、仕方のない部分もある。ただ、自然エネルギーの(発電)コストも相当下がってきている。原子力については廃炉にまだ40~50年かかる。原子力技術者の問題もあり、こういった人材がいないと日本では廃炉もできなくなってしまう。モジュールタイプや高圧ガス炉、高温ガス炉、トリウムを用いた原子炉など、新しい原子力発電のテクノロジーは日々動いている。今までの安全性レベルよりもはるかに(核)拡散しないものもできている。原子力のサイエンス、基礎的な技術は一度失うと二度と戻ってこない。20~22%に持っていくには、今後のCO2(削減)と廃炉などの状況から、妥当なところではないか。石炭は、出来る限り天然ガスに代替していくことだ。天然ガスも当然、CO2を排出するが、どれほどよい技術であっても石炭から排出されるCO2が最も多い。自然エネルギーを有効に使うためには、リチウムイオンバッテリーやNAS電池などを含め、当座はそうした蓄電池の大型化と安定化、新しい電解液開発(が必要だ)。ストレージとしては、水をくみ上げてそのポテンシャルエネルギーで蓄電するのもひとつ。もう一つ日本に独特なのは、オーストラリアなどで褐炭を液化、ガス化して、最終的には水素にして運んでくる(技術だ)。海を越えて電気を運ぶのはコストもかかり技術的にも難しく、モノとして運ぶとなると水素しかない。あるいはローカルな自然エネルギーを水素にして溜めておき、後で燃やす手もある。これはクリーンエネルギーだ。こういった日本らしいところに全体のシステムを変えていく前提で、当座は(石炭火力も)仕方ないと思う。元々、石炭もコストは高い。普段(炉を)動かさず、冬場や夏場に急に電気が足りなくなった時に石炭を燃やしている。バックアップとしては早く水素や蓄電池を開発することだ。ESG投資、環境問題もあり、ヨーロッパ諸国では石炭火力を止める流れがある。ただ、ドイツは原子力発電を止めたことで、意外といまだに石炭に依存する状況になってしまっている。エネルギー(問題)は、そう単純にこれを止めればいいと言うことはできないが、時間軸をしっかり見ながら石炭から脱却していく。2030年度に(CO2を2013年度比マイナス)26%、2050年に80%減らすには、石炭火力などほとんど使わないだろう。考えてみれば、地球上に眠るカーボン源として一番多いのは石炭だ。天然ガス、石炭、ウランなど人類(に残されている)、神のつくったカーボン源はあと150年ほどしかない。そうすると、原子力を使うか、自然エネルギーを使うしかない。時間軸をきちんと(考え)ながら、研究開発が行えるだけの電力会社の力をキープしていくのが現実的ではないか。

Q : 昨日、日銀短観が出た。大企業製造業中心に景況感悪化が見られたが、これは景気の踊り場なのか、数値のブレに近いものなのか。


小林: (日銀短観)はメキシコ大統領選の(当選)結果が出る前ではあったが、トランプ米大統領による保護主義の動きなど、感覚的な部分もあるのではないか。あるいはG7において先進国がなかなか纏まらないことや、鮮明になってきた中国と米国の貿易戦争、日本にとっては特殊鋼が一定程度適用除外されるなど良い方向にあるとはいえ米国の鉄鋼・アルミニウム(の輸入制限)、20%の追加自動車関税など先が見えない。もし自動車に(追加)関税がかかるとなれば、米国の消費者にとっても5兆円程度のマイナスになるし、日本の輸出分についても1兆円程度のダメージで、経済への非常に強い影響がある。そういうメンタルな、まだ具体化してない将来に対する不安が影響の一つだろう。設備投資(計画)も13%程度増えている。若干踊り場感はあるが、これをもって下降線を辿っていくという状況ではないと思う。

Q : トランプ政権が自動車関税について3~4週間程度で結論を出すと言っている。これまでブラフと思われてきたことも実行してきた。鉄鋼・アルミ以上にインパクトが大きいと思われる、日本への影響について。


小林: 鉄鋼・アルミニウム(の輸入制限の影響)は数千億円のレベルだろうが、日本から輸出する分で(自動車)関税が20%になれば、(追加額は)1兆円規模だ。周辺産業まで考えれば、それほど甘いものではないだろう。トランプ米大統領から見れば、貿易不均衡で(対日赤字が)7~8兆円にもなっていることがポイントである。この数字は少々の品目や農業で(は解消されず)、最もオーダー・オブ・マグニチュードが大きい自動車に課税するということだろう。このインパクトは非常に大きい。日本国内だけではなく、米国の消費者にとってもそれだけの関税がかかった商品を買うことになるわけで、(消費者負担増が)5兆円程度といわれている。国際貿易というか、今までのWTOベースのグローバルなモノの動きがだいぶ弱まってしまう。これはゆゆしき問題だ。日本はどういうかたちでその辺りに(対応するか)。日本はこれまでTPP11やRCEP、日EU のEPAなど、多国間(貿易)交渉でリーダーシップをとり、グローバルな貿易、グローバルな経済に最も良いことだと示して具体的なアクションを取ってきた。それをもって対応していくことだ。加えて、FFR(自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議)が茂木経済財政担当大臣と米ライトハイザー通商代表との間で行われる。そこにおいても、(二国間)FTAよりもTPP11をベースに農業問題などを交渉してもらうしかない。あとはトランプ米大統領次第としか言いようがない。大変なインパクトがあることなので、正直に言えば弱ったものだとも思う。

Q : トランプ大統領は輸入制限だけでなく、イラン産原油の輸入を禁止するよう各国へ求めている。日本としてどのような対応を取るべきか伺いたい。


小林: すでに1バレル73~74ドルにもなっている。今まで各民間(企業)で作業をしている世界で、直接、イラン産原油を買っている部分は非常に少なく、大きく価格が上がることはないと思う。むしろ、天然ガスベースのシェールオイルが米国にあり、出来る限りそちらに展開しているので、ますますその比率を増やすトリガーにすればいい程度ではないか。また、ここにきて、トランプ大統領はサウジアラビアに、原油出荷を絞るのを辞めてほしいと言っているようなので、サウジアラビアが原油を増産して、シェールオイルも少し増産すれば、油の値段はイランの原油を使わなくても、何とか納まることに期待するしかないなと思う。

Q : サッカーワールドカップについて、賛否両論あった決勝トーナメント進出、また昨日の日本対ベルギー戦は世界中で素晴らしい試合だったと評価されたが、華々しく散ってしまった。期待もあり残念な試合だったと思うが、感想を伺いたい。

小林: いい悪いは別として、時代は変わってきたのだと思う。西野監督は、まさにデータベースで議論し、確率論で勝負している人だというのが第一の感想だ。全ての勝負は確率論だし、特にマネジメントとはそうあるべきだと思う。コロンビアの試合を見ながら、時々刻々のデータをきちんと、コロンビアが勝つ確率まで考えながら、終了10分位前にサボタージュした。かつての日本人の綺麗に散ろうとか、ガッツで行くという時代は、それが哀愁、是とされたが、国民の期待を一身に背負いながら、やはり勝つことが必須ならば、あのような方向は逆に勇気があるディシジョンではなかろうか。データベースの時代になって、西野監督は、データイズムと言うか、データが全ての時代の落とし子みたいな人だと言うのが一つの感想である。(とはいえ)2対0だったのに何で負けてしまったのかと言うのが正直な感想で、昨日こそ、もう少しデータベースで考えた方が良かったのではないか。

Q : 働き方改革関連について、先日の代表幹事コメントには、法案で削除された裁量労働制の拡大について触れられていなかったが、どのようにお考えか。


小林: 直接は触れていなかったが、文章の中で匂わせている。全体的に時間と空間は縮まっているので、そのような意味で効率の良い(働き方の)方向というは、これで終わりではないと思う。高度プロフェッショナル制度は、かなり特殊な(働き方が求められる)人たちに対して手を打たないと、国際競争的に厳しいのではないか(という趣旨の制度だ)。例えば、ベンチャー企業や証券業界など日々(海外と)12時間の時差で戦っているようなところ、また、一ヶ月で仕事を仕上げないといけない(という成果を求められる)ところ、尚且つ、給与の高い人である。一方で正規と非正規で同一労働・同一賃金と言っておきながら、本質的に(考えると)係長や課長以上など、管理職になったら(時間管理の対象外で)良くて、何で1千何百万という収入がありながら(管理職ではない)労働者という名のもとに対象となる人がいるのか。その辺りも含めて、抜本的に議論する部分は残っているのではないか。公務員も然りで、公務員は管理職と同じく、労働者という形の定義ではないとか、そのような部分も含めて、全体としての働き方を考えることが重要ではないか。裁量労働制の歴史は長く、当社でも研究所や営業・企画の一部の人達は、裁量労働制を取っている。(財務省の示した)データが古くサンプリングが極めて少ないという問題があったことは残念だが、管理職と組合員の違い、あるいは公務員といった人たち、逆に漁業・農業は自由業なので良いのか?と、そういう話だと思う。組合員ベースなど、そういうところだけの議論は限られた部分なので、日本全体の生産性アップと言う意味では、もっと幅広く考えないといけないのではないか。その中に明確に裁量労働制という位置付けも入ってくるだろう。これはまだスタートポイント、一里塚であって、今後も働き方はどうあるべきか、特にグローバルな視点で、どのようなジャンルの人がどのような働き方をするのが良いのかを再定義して、議論を深めていただきたい。今回(国会で)は、スキャンダラスな話ばかりで、議論そのものが行われてない。一方で、高度プロフェッショナル制度については、ヒステリックに「NO」と反応する。あまり議論をされていないことが残念だ。そこはまた、しっかりと議論をされる機会が来ることを望んでいる。もっとデータを揃えて、きちっとやってもらいたい。全体的に、たとえば本当に組合員だけの話でよいの、管理職になったら(関係ないのか)、勿論、労災認定をどうするのかという点も含めて、働き方(の議論)は、これで終わりではない。高度プロフェッショナル制度はじめ、グローバルに見て日本の生産性をよりアップして競争力をつけて行く、同一労働同一賃金、労働時間の上限、社員の健康に対する(制度的な)縛り、これは第一歩として大いに評価すべきだが、これで終わりではないと思っている。

Q : 通商問題について、7月6日に米中間の追加関税措置が発動される予定である。現段階で日本のマーケットも株価が下がっているなど、米中間の話であるがじわじわと影響が出てきているように感じる。これからの日本経済に具体的にどのような影響が出てくるとお考えか。


小林: この問題も先ほどのトレードディフィシッド(貿易赤字)でというか、日本の比ではないわけで、トランプ大統領の発想というのは、やっぱりそういう貿易不均衡を是正し、選挙民に対して中間選挙に向かってアピールするということだと思う。それからのスタートだとしても、とりわけ半導体の問題や、最終的にはデータポリシーの問題などが考えられる。トランプ大統領自身は Facebook 等はアメリカでは上院で色々ヒアリングをやったりしているが、基本的にはそういう情報やデータは自由を旨としてGAFA、Google とかAmazonとかFacebookとかApple、ああいう人たちを自由に商売させてグローバルにやるというのが基本的なスタンスである。一方では EU が5月にGDPRを出し、プライベートな部分の情報をブロックし、(法律を破った者は)大変なペナルティを課すという形で、少しそういうものを牽制しようとしている。今後はネットのような、履歴関係(データ)をビジネスに使っているところをブロックするための法律、特に通信に対してそういう法律を出す(予定だ)。一方中国は完全に自国の情報は全部ブロックしておき、国の中に守っておきながら、国民の情報も全てセンサーに入っているものは国家がコントロールし、特に犯罪者もコントロールができる。データに対する各国の対応がこんなに違う。今後世界を支配するのはデータだろうという人もいるくらいで、現実に昨日のサッカーの試合ではないけれど、データという事実をベースにしてやっていくという時代が来るだろう。AIやロボティクス、機械学習がまさにそうなっていく。そういうかなり根源的・最終的な産業競争力というのをアメリカは見ていて、中国をどうブロックするのか、それが半導体と自動車だけじゃなくて、そういったもの(データ)を取り込んでいこうという大きな流れの一つだとみている。日本への影響というのは、一部の半導体には影響があったわけだし、日本が情報に対してブロックされていったら、中国で事業を展開しづらくなる部分も全くないわけではない。かつてコモディティが(海外に)全部取られてしまい、いわゆる単純な生産という意味では日本は太刀打ちできないから、より付加価値の高い商品に転換していった。そういう一般的なプロダクションというものは、もう(ビジネスに)できない。逆に言えば電気自動車なんていうのは、今や電池も含め中国の生産量が一番多くなる時代が来た。一方半導体も10兆円ぐらいの設備投資をして、フラッシュメモリーでさえサムスンや東芝にいずれ追い付く日が5年や10年先に来るだろう。そういう最終的なデータをどうするかということと、現状、半導体なり、EV 自動車の電池もパナソニックでさえ中国の電池会社に生産量はもう、あっという間に追い抜かれるというなかで、通商政策プラスそもそも産業政策として非常に重要なコンペティターと位置づけ、日本はそれに対応していかなければならない時代が来ている。中国も環境問題とかそういうのは非常に意識して、CO2の問題を含めて単純に鉄とか石油化学とか、やたらと生産量を増やして作るのは今抑えているので、そういう意味では日本の経済にとっては良い方向には来ているという部分もある。

以 上


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