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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年5月29日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)国会の審議状況、(2)消費増税と反動減対策、(3)米朝関係、(4)原油高、(5)電気料金の値下げと原発再稼働、(6)経済界と政治のバランス、(7)日本の原発政策、(8)地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律、(9)日大アメフト部問題、(10)安倍首相の国会答弁、などについて発言があった。

Q : 本日、国会では働き方改革法案について与党が採決を見送り、森友学園や加計学園の問題で多くの時間が費やされ、混迷の度合いが深まっている。現在の国会の状況をどのように見ているか。

小林: 自民党や日本維新の会でも一部で主張されているし、我々も以前から主張しているが、(この問題は)検察に委ねることでもないので、同じ国会の中で分離して、第三者委員会や特別委員会を設置するのが良いのではないか。働き方改革法案、IR法案、受動喫煙防止法案、あるいは外交問題など審議すべきことはたくさん残っているので、せいせいとやってもらいたいし、国会を延長してでも、一定程度の結果を出していただきたい。2~3週間の休会もあり、もったいないというのが正直な気持ちである。やはり独立機関や新たな特別委員会などを設置して、そちらはそちらでしっかり検証していくべきではないか。また、そうしないと国民の信頼も得られない。行政が遅滞なく進むためには、国会は議論をする場だということを、国会議員自身に考えてもらいたい。

Q : 来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げについて伺いたい。昨日、安倍首相が、2019年度および2020年度の当初予算に、増税に備えた対策を盛り込むよう指示したとの報道がある。日銀の試算では(一般家計の負担額は)2.2兆円程度に留まるとのことである。また、前回の消費増税時には禁止されていた還元セールを今回は認めるとの話も出ているようだ。消費増税と対策のバランスをどのように考えているか。

小林: 5月15日に、経済同友会は、提言「新たな財政健全化計画に関する提言~2045年度までの長期財政試算を踏まえて~」を発表した。我々の基本的な主張は、同提言に集約されている。昨年の衆議院議員選挙で、自民党は消費税を8%から10%に上げると公約したが、野党はすべからく消費税凍結や原発廃止を主張した。そのような中で、(消費増税による増収の)一部、1.7兆円を教育無償化などに使うことにより、税率引き上げによる増収分5兆円程度(から財政健全化に回せる税収が減ることにより)、2020年プライマリーバランス黒字の旗を降ろすことになった。しかし、減る部分は2兆円程度で、実体は2017年度、2018年度でも、15~16兆円がプライマリーバランスの赤字としてあるので、ある意味ではそれ(2兆円)が大きな理由ではない。内閣府の相当高い成長実現ケースで計算しても(プライマリーバランス黒字化は)2027年になる。社会保障費の歳出を減らさない限りは、そのくらいの計算になってしまう。経済同友会では、そこまで高い想定(である名目成長率)3%、実質成長率2%ではなく、名目成長率2%、実質成長率1%くらい、潜在成長率が1%あるかないか(を想定している)。かつて(経済成長率が)3%や4%あった時代でようやく達成できるという政府のGDP成長率の仮定は少し甘いのではないか。そうは言っても、プライマリーバランスを黒字化するためには、出ずるを制する部分として3兆円や5兆円は必要ではないかという議論も計算上行った。2014年の4月(の増税時には)、2013年の8月から9月にかけてヒアリングを行った(と聞いている)。色々な意見を聞いて、最終的に(消費増税を)やると決めたのだが、骨太の方針には一切記載がなかった。今回の流れからすると、骨太の方針に消費税を10%に上げると書き込むとのことで、(増税の)確率が高まっていることは評価できる。今まで、骨太の方針では宣言していなかったし、衆議院議員選挙前に一部変更するとはいえ、消費税を8%から10%に上げるとベクトルを明確にしたことは評価に値する。今回も骨太の方針に書き込むということが重要なポイントで、これで消費増税を中止する確率はかなり低くなったと思う。5%から8%と、8%から10%では、上げ幅に3%と2%の違いがある。ショック度合が若干少ないとはいえ、(前回増税時は)2014年3月から4月にかけて駆け込み需要があり、その後急に景気が落ち込んだという経験があるので、それと同じことを繰り返してはならない。早めに手を打って、補正予算よりも本予算に入れるという考えも、極めてリーズナブルだと思う。そのような意味では、当然そのショックをアブソーブ(緩和)する政策があってしかるべきだと思う。ただ、3年間で社会保障費自然増の実績が1.5兆円ある中で、定量的な数値(目標)が書き込まれない可能性があることについては、各省庁や政治的な思惑もあるのだろうが、やはり何らかの目安というものは必要ではないか。

Q : 米朝関係についてお伺いしたい。両国牽制し合っているが、片方で手をつなぎながら、もう片方で殴りあっているような状況にみえる。米国が北朝鮮に対し、更なる制裁を準備していたとの報道もあるが、ここまでの米朝のやり取りについて、それぞれのトップの手腕をどう評価するか。

小林: 最終結果を見ないと(なんとも言えない)。ボクシングのように、第3ラウンドは優勢だったが、第5ラウンドで一発かまされることもある。トランプ米大統領はプロレス(のリングでパフォーマンスをやったこともある)というぐらい、駆け引きを行う。少なくとも、オバマ前米大統領に比べればハードボイルドだ。一方、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長もなかなかしたたかな若者だ。かつての政治的駆け引きとは異なり、見やすく、分かりやすい戦いをしているような気がする。シンガポールで予定されている6月12日の米朝会談、最終ラウンドがどういう結果になるかを見てみないと何とも言い難い。ここまで(状況を)動かし、はっきりしたパンチ力で交渉を行っているという点では、今までにない政治力学を強くもち、スピード感のある人たちだと思う。

Q : 3年半ぶりに原油高が続いているが、産業界に影響が出る水準と考えるか。

小林: 10日ほど前までは、この勢いではなかなか厳しいと思っていたが、ここ数日は、(産油)制限が緩和されるだろう(との憶測から再び)安くなりつつある。政治的、地政学的な危機はあるにしても、米国のシェールガス、シェールオイルのコストがおおよそ40~50ドル、高くても60ドルぐらいということが大きなポイントになっている。かつてのような80~100ドルに向かう状況はもうないのではないか。65~70ドルのレベルを行ったり来たり、あるいは75ドルぐらいであれば、大きな影響は出ていないと思う。現に、石油精製には基本的に良い方向であり、石油化学でも、原料高を最終消費財にある程度は転嫁できる状況で、(環境は)急激には変わっていない。世界景気が良い状況なので、現状では強い影響は出ていないと思う。

Q : 電気料金について伺いたい。昨日、関西電力が2度目の本格値下げを発表した。電気料金が下がること自体は嬉しいが、その理由は原発の安定稼働の見通しがついたためである。原発が動かなければ電気料金は下がらないのかという思いもあるが、代表幹事はどうお考えか。

小林: 原発のコストに絡んでくる問題だが、一部(の原発設備)は相当に(原価)償却しているわけで、動かせば10円kw/h以下のコストになる。非常に短期的な見方をすれば、現在まだ7基しか動いてない中で原発を動かすと、やはりコストが下がるので、消費者への還元という意味ではすぐに対応でき、co2の発生も少ない。5~20年のオーダーでは現在ある(原発を再稼働し)、その運転期間を40年とするか60年とするかは別として、安全を十分に担保したかたちで動かすのが(現実的だ)。確率として、やはり原発は地震も含め(事故の起きる可能性が)全くゼロとは言えないが、各産業で日本に立地している(企業)、とりわけ製造業にとってみれば、電気代はものすごく(自社の)国際競争力を左右する。50年先は太陽光、風力、地熱などの自然エネルギー(が主流になるだろうが)、当面はLNG なり石炭からの代替えを目指しつつ、研究開発のコストも含めて(考えれば)、安全(性の確認された)原発を動かして当座(時間を)稼ぎながら、新しい自然エネルギーの研究開発を加速するということも(必要だ)。原発の(事故)リスクの確率は確かに全くゼロとは言えないが、今のレベルではまだ(自然エネルギーの)コストが高く、そこが勝負でもある。一定程度は低コスト(の原発)で発電をしながら、来るべき20年後、30年後に備えるほうが(よいのではないか)。いずれにしろ、プルトニウムもウランも溜まっているので、(原発を)動かさなくても危険であり、どちらをとるかだ。経済(の視点)からすれば、今の段階では明らかにコスト安になる。これは新規の原発(建設)をやる、やらないとは全く別の話だ。今あるものは最低あと5~10年は動かしながら、その(再稼働によって電気料金が下がった分の)資金を、新しい蓄電池の開発や自然エネルギー(の研究)に向けつつ、産業ももう少し競争力を持ちながらいろいろな展開をし、ポートフォリオを変更していくことだと思う。

Q : 経団連は、今月末をもって会長が交代する。先日榊原会長は最後の記者会見で、4年間のひとつの成果として、政治との連携が上手く進んだことを挙げていた。経団連という立場、大きな意味での経済界と政治とのバランスの在り方について、いがみ合っても仕方ないし、同質化するというのとも違うが、この点に関して見解を伺いたい。

小林: 一国にとって(経済界と政界は)重要な関係だ。我々(経営者)は誰に裁かれるかを考えると、企業人は株主に裁かれる。株主は今、30%超が海外の株主だ。一方、政治家や政策当局は誰に裁かれるか(というと)、やはり選挙民であり、日本国民である。基本的に寄って立つ場所が違うことをはっきりと認識しなければいけない。当然、一緒に同じ方向を向いている場合もあるし(そうでない場合もあり)、例えば政治家は残念ながら、百年の計をなかなか見ている余裕はない。(政治家は)やはり今日、明日の選挙に勝つ(ことが大事で)、選挙民の思いそのものを直接映すのが政治であり、行政であると思う。経済人は最低限10年先、20年先を見ながら(企業経営について考えており)、研究開発(で)は今の課題を解決するだけではなく、この会社が10年後も生き延びるためにはどういう手を打っていったら良いのかということ(を考える)。その時間のレンジが違う。ある意味ではショートターミズムで、今儲ければよいと言って株主(の方)を向いている人もいるかもしれないが、本質的にはミッドターム、ロングタームで色々考えて、自分の会社を経営する。持続可能性がものすごく重要であり、日本の企業はそうやって(きたからこそ、)100年企業、200年企業(があり、)続いているということだと思う。だから少なくとも誰に裁かれるのか、誰が選ぶのか、そこは絶対的に違うので、どうみても同じ方向と同じ時間軸(ということ)はありえない。協力するところは協力するし、やはりこれはおかしいのではないかということはおかしいと言えるような自由をお互いに持ち、フレキシブルな関係でいることが重要ではないか。同じ方向へ行くと、大本営じゃないけれど、また戦争に突入するなど(のリスクもあり)、一方向の考え方しかないことは危険だ。

Q : 同じ方向、同じ時間軸ではありえないというのは、例えばどのような課題か。

小林: 個々の経済、日々の為替といった点では、ある意味では共通性がある。例えば原子力について言えば、やはり先ほど述べたことが我々の見方だが、政治の場にいる人がすぐに原発再開(するべきと言ったり)、あるいは新規で原発を立ち上げる(と言った)なら、おそらく選挙民は絶対「ノー」と言うだろう。だから(こういったことを)言えないのも一つの立場である。財政についても、我々としては日本の財政が破綻して、会社どころか国が破綻するという警告を発する立場にいる。もし金利が高騰したら、持っているものが全てゼロに帰すという危機感を、経営者としては持つ。ところが政治家にしてみれば、少しでも消費税を上げて、短期的にモノを買ってもらえなくなってGDPが増えなくなることに、ものすごくセンシティブだ。経営の立場にいる人はもう少し長期的に問題を考えられるから、ものが言える。それぞれのフェーズでかなり(考え方が)違う。法人税を下げることは、世界的に(法人税が)安いところへ皆、進出したがるのだから、主張すればいい話で、(政治と)一緒にやるというのはニュアンスが違う気がする。

Q : 原発に関連し、日立製作所が海外で注目を集めている。英国のメイ首相も巻き込んで、採算性を求める支援について協議しながら、合理的な着地点を求め、(再交渉を)進めていこうとしている。三菱重工もトルコへ進出しているが、海外のインフラに関連する日本の原発政策について、どう思うか。

小林: (原発の海外展開の)最初の走りは東芝だった。東芝は大変粘質的、スティッキーで取りきれないような苦労をしている。原子力(に係る)コストが将来も安定していればよいが、原発に限らずインフラ輸出は、民間企業にしてみれば(投資コストを)回収するのに何十年(もかかり)、非常にロングタームで考えなければならない。ところが国家としては全体政策として、海外へインフラ投資をし、日本の国力を示すという意味合いがあるだろう。企業としても協力したいが、最終的に東芝のようになってしまったらアウトで、誰も面倒見てくれず、いじめられるだけだ。そういう時、きちんと冷静に経営判断をすることが最も重要であって、これは国策だからといって、ただ乗るというのは、経営者としては(適切では)ないと思う。

Q : 国会は森友学園や加計学園の議論に集中しているが、その間、東京23区の大学の定員を10年間増やさないという法律が制定された。東京の一極集中を是正するという目的だが、小池都知事からは「将来に禍根を残す」といった批判も出ている。経済同友会は、教育問題について委員会で議論をしていると思うが、今回の法律の成立についてはどのように受け止めているか。

小林: 難しい問題である。東京だけをいじめるというのもおかしな話だ。地方は地方で頑張ればいいし、東京も東京で頑張らなければ日本全体が良くならない。そう考えると、かなり小手先の技かなという気がする。いい大学だったら増やせばいいだろうし、だめな大学ならやめればいい訳で、もう少し私学振興、あるいは国立大学の在り方など、全体の中で議論するべき話である。大学自体が本当に教育の府なのか、研究大学はどうなのか、それが国の教育、あるいは国の研究開発イノベーションとどう関わるのか、あるいは産官学とどのように(関わるのか)。他の国と比べて(日本には、)大学を中心としたイノベーションが少ない。米国には、民間の研究所が集まるようなエコシステムができている。これは、シンガポールでもイスラエルでもスウェーデンでも、みな同じである。しかし日本の場合、学問の自由とか、学問の自立とか、法人化はしているが、まだまだエコシステムそのもの、あるいは産学官共同のプロジェクトが少ない。そういうところをもっと掘り下げるべきであり、入学定員を増やすとか減らすといったことは抹消なレベルだと思う。

Q : (日大)アメフト部の問題についてはどのように見ているか。

小林: 自分はクラブに入ってスポーツをやった経験がないので、いわゆる体育会系というセンスがよく分からないが、非常に強いヒエラルキー(階級制度)というか、がんじがらめのものがあるのだろう。自由な社会のアンチテーゼのような(環境であり)、またそれを欲する人たちもたくさんいるのだろう。そういう状況だとあのような変わった規律が出てきてしまうのではないか。それにしても初動捜査(のまずさ)から始まって、勝つために手段を選ばないというのは、色々な意味で、今の社会が嘘をついても通ってしまうという(風潮を助長しかねず)怖いと思う。

Q : 安倍首相の答弁をみていると、嘘に嘘を重ねているようにみえる。愛媛県知事の話も県の職員を信頼しているのだろうが、すでに大学は開校しているので、政治的な判断としてはあまり賢くないとも思うが、仕方のないことなのか。

小林: それは分けて議論した方がいい。国会で議論をするから「言った」「言わない」でぐるぐる回っているだけであり、時間がもったいない。

Q : かつてのリクルート事件やロッキード事件のような刑事事件ではないのだが。

小林: 検察とは一部(関連性は)あるだろうが、「良識の府」なのだから、もう少しそういう(中立公正な)議論をするべきだ。本当は国民が判断することであると思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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