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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年5月15日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)中東情勢、(2)加計学園をめぐる安倍首相の国会答弁、(3)北朝鮮問題、(4)会社法見直し、(5)相談役・顧問制度、(6)米国中間選挙、(7)採用活動、(8)消費増税時の反動減対策、などについて発言があった。

Q : 米トランプ政権によるイラン核合意離脱やエルサレムへの大使館移転の影響で、中東情勢が非常に渾沌としている。原油価格も1バレル70ドルを超える状況であるが、どのようにみているかお伺いしたい。

小林: 中東地域では、1973年の第四次ヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)以来、大きな戦争は起こってはいないが、イスラエルが建国されてから70年のうちに4回も戦争が起こっている。イギリスがイスラエル(ユダヤ人)とアラブ(人)双方にカナンの地に国を建てることを約束してしまい、(問題は)そこに端を発している。もっと根源的に言えば、2000年来、ダビデ王・ソロモン王の時代から(始まり)、その後ローマ軍が征服し、最後はオスマントルコやアラブが戦前までは支配していた。全く同じ場所にキリスト教、イスラム教、ユダヤ教(の聖地)があり、その違いはまさに時間軸であった。「自分の父や先祖はここから発生している」という、根源的に日本人では考えられない状況の中で、国というものをどう考えるか。70年前の5月14日にイスラエルが建国され、それまで住んでいたパレスチナの五百数十万人が、国、自分自身の場所、生活の場を追われ、四度も戦争を繰り返した。オスロ合意は、クリントン米大統領が仲介して(締結され)、イスラエルのラビン首相、ペレス外相とパレスチナのアラファト議長がノーベル平和賞を受賞した。その辺りでだいぶ良い方向に向かおうとしたが、結果として強権的(な形になってしまった)。イスラエルは(以前、アラブ諸国と)おそらく100倍以上の人口の差があったのに、兵器、テクノロジー、サイバーセキュリティなど(については)、圧倒的な技術力、戦略的な強さで、ある意味では強引に国家を守ってきたといえる。(イスラエルもパレスチナも)どちらが悪いということはなく、どちらも歴史の被害者である。そういう中で、今回トランプ米大統領が中間選挙(対策)のために、米国にいるキリスト教の(一派である)バプテストや、米国政治に影響力を持つユダヤ系米国人の票、サポートが欲しいというのが最大の狙いではないか。そうした中、(米国が)一方的に決めて、昨日、エルサレムに大使館を移転してしまった。ある意味で、イスラエル、米国の戦略であり、既成事実をより既成化していこうということだろう。一方でパレスチナ、とりわけガザに集まっている人々の怒りはもう完全に飽和し、60人近くの人が亡くなって、国境を越えてイスラエル軍に銃撃されているという不幸な段階で、今後どうなるか(を予想すること)は大変難しい。連休中、安倍首相が(中東を訪問し)、最初アブダビに入り、石油等を含めた権益に(ついて)経済的なミッション(があった)。安倍首相がヨルダンを経由し、最後に訪問したのがエルサレムと、死海近くにあり世界最古の都市といわれるジェリコという都市である。ジェリコ農産加工団地(JAIP)は、パレスチナ人がオリーブなどの農産物で生計を立てている場所である。日本は(パレスチナに対し、)十数億円の追加支援を行うことを表明した。米国が一方的にイスラエルのみを応援している中で、日本政府はパレスチナに対して資金援助を約束し、かつ(日本)大使館はテルアビブのまま置いておく(こととなった)。米国外交に追随せず、あの場所にパレスチナ人とユダヤ人の二つの国を作るという基本的な主張は変えず、この点に関しては、日本は独自外交を行ったという気がする。むしろ問題は、(安倍首相の中東訪問と)ちょうど同じ5月1日、イスラエルのネタニヤフ首相が「イランが核合意を全く守っておらず、原子力兵器を含め開発を継続している」といった諜報活動情報から、彼らによればエビデンスベースで訴えたことである。トランプ米大統領は、その情報を正とし、オバマ前米大統領が合意した内容は全く抜け道だらけであり、イランとの核合意を破棄し、新たに見直す(ことを発表した)。このままでは中東で核の争奪戦に発展してしまうのではないかとの危惧のもとにこうした行動をとり、結果として原油価格が上昇した。これが事実だと思うのだが、この先(どうなるか)は全くわからない。ただ、米国はシェールガスやシェールオイルを50~60ドルのコストで作れるので、(原油価格が)70ドルを上回り、80ドルや90ドル、あるいは以前のように100ドルまで上昇することはおよそ考えられない。他のアラブ(諸国)でも、イラン、シリア、イラクといった国々と(異なり)、サウジアラビア(など)はイスラエルとだいぶ仲良くなっているので、ユダヤ対アラブといった単純な構図でもない。彼らが互いの闘争の中でどうなっていくのか、今は何とも言い難い状況ではないか。一時期は極東が非常に危なくなったが、再び中東(の情勢)が極東以上に複雑怪奇になる中で、今後の経済的な影響が読めないということが、われわれとして一番困る部分ではないかと思う。

Q : 安倍首相が国会で「忖度がなかったと言い切ることはできない」という発言をされたが、加計問題をめぐるこの発言をどのようにお感じになったか率直なご意見をお伺いしたい。また、その一方で、日本には「察する」という文化があると思うが、「忖度」と「察する」の違いをどのようにお考えか。

小林: 官僚組織において、忖度して色々なアクションを取って早く結論を出すことは、組織の仕掛け、属性としてもともと備わっているものではないかと思う。安倍首相が「それは忖度かもしれない」と言ったのがまさに正しく、当然、忖度があって然るべきであるし、官僚というのはやはりその忖度をどれだけできて、どれだけ早くアクションを取って効率よくやるかというのが一つの評価のポイントでもある。そういう組織だからこそ、トップ、マネジメント、そして政治は色々と考えるべきともいえる。「察する」は、もう少し広い意味を持ち、ある事象に対して推測することである。一方、「忖度」は、方向が一緒で、(それが)両者ともに良い、メリットがあると思ってやることをいう。「察する」というのは単なる推測であり、意思が入らないのではないか。(「察する」は)客観的に見ること、(「忖度」は)主観的にこうしたいという(思いが入ること)、その違いではないか。

Q : 極東情勢について伺いたい。6月12日にシンガポールにて、米朝首脳会談が行われる予定だ。どうなるか分からないが、かなりスピード感のある動きだと思う。日本もただ見ているだけではいけないと思うが、トランプ米大統領は(朝鮮半島の)非核化が明確になれば経済援助を、という趣旨の発言をしている。所感を伺いたい。

小林: そもそも、金正恩朝鮮労働党委員長は、(自身の)兄を排除し、(核弾道)ミサイルを日本の上空に飛ばすなど、とんでもない、普通の人間では考えられない人物かと思っていた。その数ヶ月後に、こういった形で(事態が)大きく展開してきたのは、おそらく二つの要素(があると考える)。(その要素とは、)彼にとって大きな恐怖を及ぼす二人(の存在であり、)トランプ米大統領と習近平中国国家主席だと思う。習近平国家主席は(憲法の改正により)ほとんど終身で(中国で)パワーを握った。習国家主席はかつて、(金正恩委員長の)兄や他の(北朝鮮の)トップを担ごうと(いう考え)もあったと聞く。(金委員長には)習国家主席自身も怖い存在だろうし、トランプ大統領のかなり強権的なイスラエル(における米国大使館)の移転どころの話ではないような、大きく強いプレッシャーをポンペイオ国務長官やCIAからかけられたことで、このままでは殺されてしまうのではないかという恐怖を感じて、文韓国大統領がああいう形で手を差し伸べた(との見方もある)。(平昌)冬季オリンピックでは妹(の金与正氏)の力もあるのかもしれないが、融和戦略に出てきた。やはり基本は恐怖で、米国なり中国との相談の中で、結果として自分のレジームが崩壊することも恐怖であり、自分自身の権力が守られるのであれば、非核(化)はそれほど大きな問題ではないという点から始まったのでは、という気がする。(当初は)中途半端な非核化にしようと思っていたのに、いつのまにか「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(を求められ、)IAEAのチェックもというところまで今、交渉が進んでいるのであろう。ただ、それをやるなら自分を守ってくれるよう、ポンペイオ国務長官と交渉しているように見える。(一方、)日本とはなかなか複雑な関係ではないか。日本は今から何らかの形で直接的な交渉を始め、経済的に何とかいい方向に持っていくという最終形以外はあまり考えられない。政治的、防衛的には力があるはずはないからだ。経済と、拉致問題の対応を間違いなくやっていくことだと思う。ただ、中東のような泥沼にはなってほしくないし、ある意味で、今の段階では前向きな期待もできるのではないか。

Q : 日本は最後まで静観しながら動いた方がいいということか。

小林: そもそも(日本が)イニシアティブを取れる状況ではないと思うし、無理してやるより、どちらかというと状況を見ながら出過ぎずについて行く方が政治的には正しいのではなかろうか。

Q : 会社法制の見直しについて、4月に経済同友会はパブリック・コメントを出している。株主提案を制限する動きがあり、経済同友会は法制審中間試案で示された「5つ」という案に賛成の立場だが、代表幹事のお考えを伺いたい。

小林: 経済同友会の中で色々と議論をした結果、5つになった。株主提案権も一定程度保障しなければならないし、会社側としては似たような質問をたくさん受けており、類型化できるので、質問を整理して株主総会で対応するなど、知恵を出せばよいのではないか。会社側としては、提案が少ないに越したことはない(のかもしれない)が、今のマーケット全体をみると、もう少し議論した方が良いのではないかという気がしている。

Q : 会社の登記簿に記載されている代表者の住所の閲覧を制限することについて、どのようにお考えか。

小林: 基本的には、一定程度はプライバシーを考えるべきではないか。

Q : 相談役や顧問制度についてのお考えを伺いたい。

小林: これは複雑な問題である。例えば名誉会長などが、世の中のために活動されて、会社もそのような行動の面倒を見ている(場合もある)。会長を退任したら、相談役や顧問にならずに会社から去るべきとは(一概には言えない)。このような時代なので、老人が跋扈することは問題だが、過去の実績があり能力のある人は、(年金などで)国がすぐに面倒をみるよりも(活躍していただいた方が良いのではないか)。今まで会社で貢献した人に対して、高齢なので車を必要とするなどの一定程度の便宜は、人事や経営戦略など社業に対して口を出さない限り、むしろ社会のために貢献するサポートを個々の企業が行うという意味で、ポジティブに捉えるべきだと思う。

Q : 先程、米国のトランプ大統領の中間選挙対策に言及されたが、中間選挙のために、国際社会に大きな影響をあたえる手法について、所見を伺いたい。

小林: どこの国でも政治は、トランプ大統領に限らず、自分が勝たないと政権が続かないので、結局、民におもねるというか、選挙民が自分をよしとしてくれる政策を取らざるを得ない。勝つためには、安倍首相も同じだと思うが、支持率アップが重要なので、そのような意味で(自身の評価の)株を上げる政策を取り、あるいは信頼されるような外交を行うだろう。それを見ているのは海外の人ではなく国民なので、そこが経営者とは違う。経営者は、マーケットで株主がどれだけサポートしてくれるかで時価総額が決まるので、株主を見ている。日本の会社の場合、海外投資家が半分以上だが、株主が賛同してくれる手を打つ。ポートフォリオやマネジメント、企業戦略にしても株主を見ている。政治家は選挙民を見ている。これは事実であり必然的なことである。そうは言っても、同じ(米国の)国民でも、それぞれの施政者によって倫理観や哲学があるので、何とも言えないところもある。しかし本質的には国民の選択眼と言うか、国家や哲学、民度から決まってくるのではないか。

Q : 就職活動について伺いたい。来月6月1日に面接が解禁されるが、抜け駆けして選考を進めている企業も多く、すでに4割が内定しているとも言われる。採用指針が形骸化し、早期化しているが、経済同友会としてはどのようなあり方が望ましいと思うか。

小林: 最終的には通年採用とすべきだ。なおかつ、新卒だけではなく、(入社した企業に合わなければ)また入り直せるくらいの(学卒後)3~5年のバッファゾーンをつくる。今はまさに移行期間である。グローバルにみれば、日本ほどリジッドな定期採用を行っているところはない。AIやロボットに代表される第四次産業革命の時代に入ってきている中で、相当フレキシブルな採用をしていかないと国際競争に勝てない。この事実をみるに、抜け駆け(をどうするか)以前に、5~10年のオーダーで、最終的にどのように通年採用に移行していくかという議論が必要ではないか。最終形を想像して、早く進めていかなければならない。通年採用の話だけに留まらず、いかにフレキシブルな労働環境をつくっていくか(という問題)の一環だと思う。

Q : 大学は、通年採用にすると学生の勉強時間が取れなくなると主張しているが、その点への配慮はどう考えるか。

小林: 世界ではみなやっていることだ。通年採用とは、大学はしっかり出て、(就職するのは)1年ぐらい遅れてもよいくらいを考えるべきで、きちんと学業に励み、(その後)3年程度のバッファゾーンで考える。そうすれば海外留学してしまうと(採用時期を逃し)よい会社に入れないなどの焦りがなくなる。人生100年の中で考えれば、22歳か25歳かなどはマイナーな話で、きちんと大学を卒業し、それから就職を考えること(が重要だ)。何年次卒など、会社側もそういうところはかなりフレキシブルに(すべきだ)。中途採用した人の初任給はスペシャリティーによって2~3倍も違うという時代に生きている。例えば官庁、大企業ではまだ「平成30年卒」(という年次の看板を)30年先まで背負うようなことをやっているが、そうではなく、企業はその人の才能やポテンシャル、スペシャリティーを勘案して(処遇を)決めていかなければうまくいかない。

Q : 一部報道によれば、来年10月の消費増税に向け、内閣官房主導で反動減対策が考えられているとのことである。住宅ローン減税拡充、自動車減税、消費税還元セールなどが検討されているが、財政再建を考えれば何にでもお金を投入するわけにはいかない。反動減のあるべき姿について伺いたい。

小林: 住宅、自動車は一つのポイントになるだろう。軽減税率も議論されているが、なにがなんでも消費税を上げて、あとは一律に(適用すればいい)ということでもないだろう。景気の腰折れなく、いかになだらかにもっていくかは非常に重要なことで、所得による差や、日常よく使うものとの区別など、色々なやり方があるだろう。毎年1%ずつ(消費税率を上げていくことで)、常に上がるものだと思ってもらうなど、いろいろな手があるのではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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