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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年4月10日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)加計学園、(2)トランプ政権と日米首脳会談、(3)コーポレートガバナンス・コード、(4)行政の第三者機関、(5)黒田東彦日銀総裁二期目、などについて発言があった。

Q : 本日の一部報道によれば、加計学園の問題について、当時の首相秘書官が「首相案件」と述べていたと記された愛媛県の資料の存在が明らかになったとのことである。この問題に関しては、安倍首相は一貫して関与を否定してきたが、そういったことを根本から覆す可能性が出てきた。この問題についての所見を伺いたい。

小林: なぜ今頃出てきているのかというのが正直な感想だ。今の段階ではそれ以上コメントするほどのエビデンスも入っていない。もう(この問題が浮上してから)1年近くも経つのに、なぜ今頃この問題が再び出てくるのか(という思いだ)。必ずしもこの件に限らず、防衛省の(日報)問題(にしても同じだが)、ガバナンスは本当にしっかり機能しているのかという国民の疑念がなかなか晴れないという感じがしている。

Q : 官僚だけの問題なのか、それともやはり違うのか。今の段階で断定的には言えないと思うが、これについてはどうみているか。

小林: トータルなガバナンス(の問題)ということだと思う。企業にはコーポレートガバナンスがあり、大学についてもガバナンス改革と叫ばれているように、国家なり、司法・立法・行政三権のそれぞれのガバナンスは、もう一度見直されてしかるべきだと思う。

Q : 外交問題についてお伺いしたい。今の米国トランプ政権では、中国との貿易問題で報復関税のやり合いや、シリア情勢に対し、48時間以内にアサド政権への攻撃を含む重大な決断をするという事態が起こっているが、トランプ政権の危うさをどう感じているか。

小林:去年の4月にもダマスカスの近くの空軍基地を巡航ミサイルで攻撃している。24時間から48時間以内に非常に重要な決断をするということに関しては、シリアがもしまた子ども達に対してあれだけの化学兵器を使っているとしたらそれは許し難い暴挙であり、前回のような形でのポイントアタックは十分あり得るであろう。イスラエル空軍がカウンター(攻撃)を行ったようだが、米国の「目には目を、歯には歯を」という考え方も残念である。イラン、シリアとの関係性も含め、非常に国際秩序を乱す行為だと思う。中国との貿易問題は小競り合いなのか、(貿易)戦争となってしまうのか、経済に携わっている人間としては極めて重要な関心を持っている。日本に対する鉄鋼とアルミ(の輸入制限)に関しても、安倍首相が4月17日から20日にかけて訪米した際に必ず議論になるとは思うが、保護主義に対する負の効果をしっかりと議論してもらいたいと思う。

Q : ここ一週間ほど、米国の株式市場が500ドル~700ドル動いても、日本市場は揺さぶられていない。これは日本の株式市場が耐性を身につけたからなのか、それとも違う見方があるか、所感を伺いたい。

小林: 新年早々(日経平均株価が)24,000円ぐらいまで上がったが、現在は21,700円程度まで下がっている。今後、急激には上がらないだろうが、そろそろ上昇局面にある(のではないか)。よほどグローバルな問題が起こらなければ、経済そのものを見る限りは、(株価は)徐々に上がっていくという観測でよいのではないか。地政学的問題については、今のシリア問題は非常に残念な状況であるが、(北朝鮮と韓国による)南北首脳会談が予定されており、5月から6月にかけて米朝首脳会談も予定されている。当然、日本もなんらかの関与をしていく中で、ここまで相当(株式市場が)調整されてきたので、それほど大きく負の方向に行く可能性は少ないのではないか。(対ドルで)円も106~107円と、一定程度は安定しているのではないかと思う。

Q : 防衛庁の問題も財務省の問題も、政治家の関与は無く、官僚が配慮してやったという説明になっている。本日の一部報道については、先ほど代表幹事の話のとおり、文書管理のあり方そのものよりも、政治家に対する官僚の配慮・忖度の構造が問題と思われる。これが国民に映ると、「官僚は何のために、どこを向いて仕事しているのか」という点がクローズアップされてくる。いくつかの新聞社説でも書かれているが、官と政のあり方についても、以前は国民のための政策論議の中で配慮されていたと思うが、(今は)あまりにも官邸に配慮しているようにみえる。官と政のあり方をどうみているか。

小林: 会社でも、人情として上司に対してそれなりの思いを抱くというか、忖度するというのは日本の文化だと思う。企業は、収益なり社会に対する貢献など目的が非常にシンプルである。最も効率性を重んじる形で、責任がどこにあるのかはある意味で明快だ。組織は頭から腐ると言われてはいるものの、やはり全体を浄化するにはトップから(行動するもので)、下の(起こした)事象に関してはトップが責任を取るというのが当然の流れだ。欧米流が全て正しいとは言わないまでも、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードのような、はっきりしたクライテリア(基準)や行動体系が、定性的にも定量的にもある程度明確になってきた。上場企業では社外取締役2名以上(の企業)が76%、1名でも(いる企業は)96%以上になってきた。3、4年前では考えられない(レベルだ)。かつてROEは4~5%だったが、今や大企業では平均値で10%を超える。そのこと自体、日本流を失った、あるいはROEを高くしようとするためのコスト削減、給料を下げるファクターにもなっているとも言えるが、やはりしっかりしたコード(指針)もいると思う。AI、データセントリックな社会になり、プラットフォーマーを中心にグローバルなデータベースの時代に移行し、日本がかなり取り残されている中で、大学(など)の知識産業も含めて見直そうという流れにあり、一定程度のコード(指針)は必要だと思う。

 財政再建についても、米国やヨーロッパを見ると、第三者機関が明確に財政の状況をチェックし、国家が財政破綻しないよう注文をつけることもある。日本の場合、今回の事件にしても、結局国会の証人喚問では埒が明かない。第三者機関を設定して、ガバナンスをしっかりチェックする機能を付与する制度設計がかなり遅れている。それが大前提にある。小選挙区制で、風が吹くと一方の党(に偏り)、今で言えば自民党しか政権担当能力がない(という見方さえある)。民主党政権の時期を反省し、国民はどちらというとそちら(自民党)を評価している。今回の(ような)スキャンダラスな事件で自民党の支持率は確かに減っているものの、立憲民主党を含め、トータルでは野党(の支持率)が全然上がらない。ノン・ポリティカルというか、無党派層が増えてしまうのは、国民が相当フラストレーションを感じている状況になっている(からではないか)。これはまさに国会での答弁を見るように、イエスかノーをきちんと判断する判事(的な機能)がいない(からだ)。最後は検察が頼りになるのかもしれないが、やはり立法なら立法、行政なら行政でしっかりとした自己決定ができないなら、第三者に委ねる機能を付与しなければならない。非常に大きな意味で言うと、選挙制度を一部変えたとしても、ここ何十年もガバナンスに関して(議論が少なかった)。自分の職業として永くそこに生きていく官僚と、ある意味では移ろう部分を持った政治家がおり、最終的には同じターゲットではないにしても、官の方は自分の職を賭して、政治家に対して一定程度の方向性を共有しなければいけない。(安倍)一強という形になり、かつてより忖度が増えてきている流れも明らかだ。やはり(官邸主導で)人事を握られていることで、官僚がセンシティブになっていることも事実だろう。構造改革には時間はかかるだろうが、逆にそれを今やって、逃げ口上にされたら困るという人もいるかもしれない。基本的な流れとしては、財政再建も含めて、欧米の第三者機関をしっかりと参考にして、新たな議論を始めるべき時ではないか。コーポレートガバナンス、アカデミアのガバナンス、そしてガバメント・ガバナンスあるいはステートガバナンス。この3つは今の日本がしっかりとやっていかなければならないテーマである。

Q : 「人生100年時代」となり、長生きで健康な企業経営者が増える一方、若返りを求める声もある。コーポレートガバナンス・コードの視点から、顧問・相談役制度の見直しもあり、財界活動を行う人材が枯渇してくる可能性がある。経済同友会では、代表幹事・副代表幹事の就任年齢の規定を変え、幅を広げる方向はあるのか。 (あるいは、経営能力が)優れていれば就任時に顧問・相談役でもよいという考えもあると思うが、いかがか。

小林: 年齢、性別で差別することは、多様性(の観点から)、基本的によいことではない。例えば経済同友会の代表幹事職は、選任・再任時に71歳以上の方は資格がないという規定がある。若い方は就けないという規定はないが、一定程度の実績と経験を考えると、気がつけばみな50~60歳代を越えているということはある。(経済同友会は)会員の幅を広げるという意味で、新しい仕掛けをつくった(経済同友会2.0を実践推進するPT 秋池玲子委員長『「経済同友会2.0」実現への組織運営改革』2017年1月31日)。経営者だけで議論をするのではなく、若い人やアカデミア、地方の経済同友会メンバーを含め、そういう場(議論・対話・連携する「テラス」)を多くつくっていこうという(考えである)。Japan 2.0と符合して、経済同友会2.0(経済同友会の将来ビジョンを考えるPT:金丸恭文委員長『経済同友会 2.0 自ら考え、自分の言葉で発信できる「異彩」集団』2016年11月21日)を発表し、色々な仕掛けで方向性や流れをつくりつつある。年長者は確かに実績があり、それなりのバランス感覚や情報を持っているが、世界が人工知能、IoTなどデータセントリックな社会に音を立てて向かいつつある中、時代の息吹を感じてそこに突進するエネルギーが本当にあるのかといわれると、相対的には若い人の方があるだろう。そういう人材を見つけ、育てていく時期に入っているのではないかと捉えている。メディアによると、経済人もだいぶおとなしくなり、昔のように政治にあまり物申さなくなったといわれる。皆がそれぞれに忖度してしまっている社会は暗い。もっとおおらかな、真実を語る社会に(向けて)、経済同友会がトリガーになりたいと思っている。

Q : 先ほど、森友学園・加計学園の問題に対して「ガバメント・ガバナンス」というご発言があった。コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードによって情報開示が大きく進んだが、それ以外に内部統制、コンプライアンス遵守などもある。ガバメント・ガバナンスに最も重要なのはどれか。

小林: やはり公開性、いかに情報をオープンにするかという点ではないか。それとフェアネス(公平性)だろう。

Q : 今回の加計学園問題ではまだ中途半端な状態であるが、森友学園については財務省が口裏合わせを認めた。これについてはどう思うか。

小林: 口裏合わせがあったということなのではないか。そうであれば、もう少し早めに分かった事柄なのかもしれない。そういう意味では、フェアネス以前にオープンネス(開示性)(が重要だ)。事実を包み隠さず語り合うような仕掛けとは何なのか。せっかく国会があるのだから、もう少し議論する場が欲しい。野党もただひたすら批判している時間があるのなら、検察とは別に第三者委員会などを設置して(いくべきだ)。その一方で、働き方改革などは長い間議論しているので、今やるべきテーマをつつがなく進められるような仕掛けにしておかないと、この国は有事の際にどうするのかと思う。(むしろ、)今が有事なのかもしれないが、そこが心配である。そういったこともトータルに(検討し)、憲法(改正の議論)をどう位置付けるかという問題もあるだろう。(さらに)それを進める主権者教育、国民のレベル(についても考えるべきだ)。国民が今の世界情勢、日本の財政や経済をしっかりと勉強し、主権者としての責任を果たすことも並行して行わないと、(国民に)選ばれた国会議員も含めて、機能しなくなるのではないかと思う。

Q : この一年間、この問題がだいぶ議論されてきたが、TPPや財政規律など、本来議論すべきことに影響していると思うか。

小林: 基本的にはかなり(影響していると思う)。TPPは外(国)との交渉だが、内部的には、働き方の問題などが明らかに停滞しているのではないか。本来、財政問題はより真剣に議論すべきだが、野党もそれほど迫力がなく、消費税に対しても真っ当な議論ができていないと言わざるを得ない。

Q : 先ほどご発言された「第三者委員会」とは、国会と行政の双方に必要ということか。行政には会計検査院があるが、それが機能していないということか。また、構造改革といった時に、省庁再編は必要か。あるいは、そのような考え方ではなく、もっと非連続的なものを考えたほうがよいのか、アイデアがあったら伺いたい。

小林: 選挙制度が変わり、(安倍政権)一強となり、ある部分では色々なデータが出づらくなった、あるいは忖度と言われる中で、どのような構造にすればよいかと考えれば、当然、省庁の再編も(検討すべきだ)。インターネット(が普及し)、データセントリックな社会になった時代に、例えば、インターネットを誰がコントロールするのか。ビジネス的にみると経済産業省かもしれないが、郵政や通信関係となると総務省になるだろう。あるいは放送法などの議論も出てきたが、それらを含め、官邸で横串を刺すようにはなっているが、まだまだタテ社会なので、これを見直していくことは必然である。ある意味、立法府が一部でないがしろにされているので、これに対しては、立法府が第三者委員会を積極的に進めるなど(のアイデア)はあるのではないか。ただ、ないがしろにされたというか、証人喚問があのような形になるとしたら、当然フェアに調べるのが検察だけでよいのか(という課題)が、自ずと出てくる。官は官で、事実を調査することは必要ではないか。第三者という点では、官同士(の調査のみ)では難しい面があるのかもしれない。

Q : 代表幹事の問題意識としては、まずは国会の場でしっかり調査できる機能が必要かということか。

小林: 機能と言うか機関をつくるべきだ。経済に携わる人間からすると、日本の財政に対して、これだけ借金が増えているのに、野党も含め、未だに消費税の議論もできないのはあり得ないことだ。海外では財政健全化に対する第三者機関があり、そこで冷静な判断を定量的、数値的に行っている。これは算数であり、政治ではない。算数を政治的に操作しないように、外にある(第三者による)機関が必要である。

Q : 日米首脳会談では貿易の保護主義の負の面を議論してほしいと述べられていたが、具体的に、日本からはどのようなアピールや保護主義に対して意見を出すべきか。また、米国は中間選挙を控え、トランプ政権の姿勢がそう簡単に変わるとも考えづらいが、今後の見通しを伺いたい。

小林: (日米首脳会談での議論は)そう甘くはないと思っておくべきだろう。11月の中間選挙を控えているので、トランプ政権は支持者により良いメッセージを発信したいはずだ。保護主義をベースにして中国と火花を散らしていると、自国の農業が多大なダメージを受けることはわかっている。その議論と同時に、鉄鋼とアルミの輸入制限で日本に与えるダメージと、中国の知的財産(権の侵害に対する制裁措置)で米国が被るダメージを定量的に説明する必要がある。EUも巻き込まれると、(例えば)世界のGDPが数十兆円下がるなど、定量的なデータを持って行って議論すべきではないか。定性的、感覚的に言っても、何の力にもなり得ないと思う。基本的には(関税の保護主義は、)貿易で食べてきた日本としては、非常にダメージが大きい。だからこそ株価も下がった。そういう意味では、 経済的なダメージが非常に大きいことは、算数で分ることだ。数値で議論していただきたい。

Q : 黒田東彦日銀総裁が二期目を迎えた。デフレ脱却が最重要課題だが、金融緩和の出口戦略は、本当にまだ考える時期ではないのか。経済界としては、頭の片隅に置いておくべき話なのか、一気にやるべきか、あるいはゆっくりやるべきかも含めて所見を伺いたい。

小林: 何かを始める時には、止めることも考えるのが人間の行為だと思う。やりっぱなしというわけにはいかないので、必ず出口はなければならないが、今がその時なのか(どうかを判断すること)は非常に(難しい)。少しでもそういった匂い(出口戦略の憶測)を出すだけで急激に円高になる危険性もある。ステルステーパリングをして、少しずつ国債の買い入れを減らすなどの操作はあるかもしれない。(日本銀行は、政策的に)難しいことをいろいろと考えられてきたが、このままずっとマイナス金利(を継続する)ということはないだろう。米国や欧州の金利上昇に見合うほど早く進めることはないだろうが、一定程度追随しながら、ゆっくりと後をついていくのが、(ありうべき)日本銀行のやり方だと思う。ここまで緩和してしまったので、焦って急激に(引き締めを)するのも賢いことではない。しっかりとシミュレーションをしていただきたい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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