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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年3月27日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)佐川前国税庁長官の証人喚問、(2)米国による鉄鋼およびアルミの関税引き上げ措置、(3)日銀の金融緩和、(4)憲法9条、(5)春闘などについて発言があった。

Q : 本日午前中に行われた佐川前国税庁長官の証人喚問において、文書改ざんや森友学園との取引について、安倍首相や昭恵夫人、あるいは官邸や大臣からの指示や圧力はなかったと佐川氏が証言した。また、安倍首相が「自身か夫人が(本問題に)関係していたら首相や国会議員を辞める」と発言したことによる影響もなかったと答弁した。しかしながら、肝心の改ざんの経緯については、佐川氏本人が捜査対象のため、刑事訴追を受ける可能性があるとして答弁を一貫して拒否した。一部が解明され、一部はまだ疑問が残ったような状態で、野党からはこれでは証人喚問の意味がないとの指摘も出ている。これに対する率直なご感想をお聞かせ願いたい。

小林: 率直な感想としては、やはりそうかという感じだ。どちら側(の立場)でみるかによって話は変わってくる。佐川氏にとっては、証人喚問とはいえ刑事訴追を恐れるのは当然なので、巧妙にそういう権利を使うというのは容易に予想できたことではないかと思う。安倍首相、首相夫人あるいは官邸の人々との関係はなかったと明確に言ったことは一つのニュースだ。このあたりは大きな焦点になると思う。やはり国会の(証人喚問)レベルというより、大阪地検あるいは検察(の調査結果が出てくるの)がいつになるか(が重要で)、これを早めて(問題を)クリアにすると同時に、国会でも独立した調査機関を早く立ち上げるべきだ。世の中もこれだけ動いている。金正恩委員長も中国に行っている(との報道もある)ようだし、(北朝鮮と韓国による)南北(首脳会談)もあり、安倍首相も4月に米国に行って(首脳会談を予定している)。(国会でも)働き方改革(関連法案の審議)や、財政再建についてどう整理していくかという(問題もある)。本当に問題が山積みされているので、2トラックというか、やはり(今回の森友問題と)並行して、政策に対してもきちんと実行できる手法を是非考えていただきたい。無駄な時間を過ごしており、あまりにももったいない。この問題を解決することに時間を割くのがもったいないと言っているわけではなく、一方ができなくなってしまうことがもったいない(という意味である)。容易に類推できるようなことを繰り返して、ある意味では政治ショーのようなものを見るよりは、国会には本当の政策の議論を行っていただきたい。

Q : 米国の鉄鋼とアルミの輸入制限について、日本は関税対象になった。今回の通商問題に関しては対中国を想定したものだと思うが、豪州・EU・韓国も関税対象から除外されたのに対し、日本は対象となってしまった。平昌五輪の前にペンス米国副大統領が来日し、麻生副総裁と日米経済対話を行う余地はあったはずだが、開催されなかった。日本の通商外交に対する厳しい評価もあるが、どうご覧になっているか。

小林: ある意味では、うまくいくだろうという楽観が先に出てしまった。元々米国は、 FTA など通商交渉の一つとして(一部の国々に)鉄鋼とアルミの例外措置をとったが、一方、日本は中国と同様に貿易赤字があった。そういう意味では、米国には非常にはっきりした判断基準があったといえる。日本は、なんとか頼めばうまくいくのではないかという考えが一部にあったことは否めない。鉄鋼、アルミ(だけでなく)、中国には知的財産(侵害への制裁など)6兆円もの負荷をかける中で、中国は米国からの半導体輸入を拡大するという情報が入っている。鉄鋼、アルミをトリガーにして、世界がますます保護主義に陥っていく中で、逆に日本はTPP11(CPTPP)を批准する方向に持ってきて、非常にいい形で主導権を握っている。それを全世界的に展開する一方で、4月初めに安倍首相が米国を訪問されるので、その時にひざ詰談判をやっていただくということではないか。

Q : 日本から米国への鉄鋼輸出量は、米国の輸入量全体の数%程度と少ないが、それに関してはどう考えるか。

小林: 特殊鋼、特殊な物性をもった材料であれば、(米国企業も)使わざるを得ないので、(国対国の)実態としてはそう大した影響はないだろう。しかし、一鉄鋼会社としては何百億円もの損害が出る。むしろ、そういう材料(の関税)を10~25%も上げれば、(産業の)すそ野でものすごく負荷がかかってくるということを、米国政府がどう考えるかが問題だろう。

Q : トランプ政権の閣僚が次々に辞任している中で、USTR(米国通商代表部)は日米FTAの交渉に向けた思惑があるからこそ、今回の対応(鉄鋼とアルミの輸入制限措置)に出たという指摘もある。日本としてはTPP11(CPTPP)の枠組みに入りつつ、日米FTA交渉に臨むべきなのか。見解を伺いたい。

小林: (日米)FTA(の交渉開始)を受け容れるのは、TPP11(CPTPP)に対する矛盾である。米国に(TPPに)入ってもらえるよう、(働きかけを)進める以外は、TPP11の加盟国に対する裏切りでもあるのではないか。そういう意味では日本はやはり、甘えを捨てて、きちんと主張すべきことを主張していけばよい。一番の問題は、プーチンロシア大統領、習近平中国国家主席、トランプ米国大統領にしても、21世紀にディクテーター(独裁的なリーダーシップの施政者)が増えてきてしまったことだ。こんな時代は比較的少なかったのに、(人類は)退化しているのではないかという思いが若干ある。(自国第一主義のために世界が)保護主義に向かうのは、なんだかノスタルジックで、第一次世界大戦前のような時代にどんどん戻っていくようだ。日本の力でどう対応していくか。非常に難しい問題になっていると思う。

Q : (米国の)鉄鋼やアルミの輸入制限措置発動問題に関し、代表幹事は「ひざ詰め談判を」とおっしゃったが、2018年4月末までの適用除外のプロセスの中で、日本はどういうことを働きかければ見直しの余地があるか。具体的にはどういった働きかけが望ましいとお考えか。


小林: 素材製品でも、汎用なものと特殊なものがある。日本(の鉄鋼・アルミ製品)の場合は(その多くが)特殊製品で、(供給が)なければ(米国産業にも)支障がでるということをもう少しきちんと整理して説明することだ。また、安全保障上の問題から(議論が)始まったわけだから、トータルな友好関係(が重要だ)。だからこそ(日米)FTAを結べと米国は主張してくるだろうが、TPPに入ってくれと(言い続けることだ)。事実を事実として把握し、(米国の鉄輸入額全体に対して)日本産は5.7%とマイナーであり、その多くは(特殊鋼のため)どのみち例外になるだろうから、妥協せず、きちんと交渉をしてもらえるのではないか。あるいは自動車産業、石油化学産業でも、米国はシェールオイル(が産出されること)や法人税も含め、非常に魅力的な市場だ。現在、米国は(対日)貿易赤字となっているかもしれないが、日本の先鋭的な産業が米国に進出することは、米国にとってもメリットがあるということを再度確認してもらうことが重要だ。

Q : 日銀が異次元の金融緩和に着手してからまもなく丸5年が経つ。さまざまな副作用もあり、国債の発行が増え、利払いは横ばいとなっている。財政規律のゆるみが指摘されているが、これについてどう思うか。また、緩和を今後どうしていくべきとお考えか。

小林: この質問はこれまで何度も受けており、日銀の黒田総裁もだいたい同じトーンで(金融政策を継続)されている。第2次安倍政権5年超の中で、初めの1~2年は非常に元気よく(経済が)立ち上がった。その後、消費増税で若干落ち込みもあったが、一貫して緩和をしてきた。しかし今は、緩和をしても円高になっている。米国の金利は順調に上がり1.75%~2.0%を目指す中で、金利差が出て円は安くなるはずだが、逆に円が強くなっている。そういう意味では、相変わらず危機時の円高という現象があり、単純に金利差だけでは議論できない。一方で、日本がもし引き締め政策をとるとなったら、もっと激しく円高に動く危険性も十分にある。(年間の国債買い入れ額が)80兆円か50兆円かは別として、(発行残高は)800兆円ある。このままずっと緩和を続けると、債務はどうなってしまうのか。いずれ引き締めなり、金利をある程度上げていかないと、持続可能な経済は期待できない。それにはあと1年程待つか、それくらいがぎりぎりのところではないか。当然、金利が低いために財政規律は相変わらずで、債務残高対 GDP 比という判断基準も出てきた。しかし、プライマリーバランス(PB)が黒字化しなければ、積算としての最終的な債務が増えるのは間違いない事実だ。これまでの試算では(PB黒字化の予定は)2025年だったが、(最新の内閣府の試算によれば、)非現実的ともいえる名目 GDP成長率、 実質 GDP 成長率を仮定し、なおかつ2019年10月に消費税を2%上げる場合の試算でさえPB黒字化は2027年、10年先の話だ。そのような悠長なことを言っていてよいのか。ここ1年、大いに議論していただき、早めに正常化してもらいたい。

Q : 先週末からの各社世論調査で自民党支持率が大きく下落しているが、どうみているか。

小林: 原因は明確で、今回の(森友問題)は、国民にとって分かるようで分からない、そういうフラストレーションからきているのではないか。ただ、自民党(支持率)は下がっているが、野党は全く変わらず、皆が無党派にいっている。これをどう見るか。野党がかなり弱体化し、なおかつこうした自民党のトラブルやスキャンダルがあっても、野党(の支持率)が上がらない。そうすると、無党派にいった人はどういうことを考えているのか。やはり自民党的な方がよいが、今の安倍政権はあまり好ましくないという(調査結果だったという)ことではないだろうか。

Q : 今日の国会は、視聴者からするとフラストレーションが溜まる内容だったと思う。しかし、これ以上は政府の関与が認められないという展望からか、株価は一時500円以上、上がった。一般市民の心理と市場の受け止めの乖離をどう思うか。

小林: 本日、株式相場が上がったのは、米国市場で(ダウ平均が)700ドル近く上昇したことの影響を受けたからではないか。

Q : 先日の自民党党大会で、安倍首相が憲法改正に対する意欲を語られた。自民党の中でも、憲法9条をはじめ、どのように憲法を変えていくかという姿がみえてきたが、自民党の改憲案への評価を伺いたい。また、経済同友会でも、憲法問題委員会の大八木成男委員長を中心として議論し発信していくとのことだったが、現状はどのようになっているか。かねてより代表幹事が指摘してきた私学助成や、(かつて経済同友会が提言した)自衛隊の問題については改憲の立場だと思うが、(森友問題により議論に)ブレーキがかかってしまう可能性も含めて、どのようにお考えか。

小林: 経済同友会は2016年に創立70周年を迎え、『Japan 2.0』『経済同友会 2.0』を打ち出した。私が代表幹事を務める残り1年の任期中に、総合的な国家論、あるいは我々経営者としての宣言をまとめる予定だ。そういう中で憲法の勉強をしている。提言という形式になるかはわからないが、我々の考え方やアンケート結果などは最低限まとめたい。現在、どのように発信をするかを検討しているところだ。いずれにしても、戦後73年が経ち、ITやインターネット、あるいは AI といった(技術革新により、)世の中がひっくり返るような時代になって、まだ1946年、1947年頃の感覚を背負っていて本当に良いのだろうか。そういう意味では、基本的には誰が考えても変えるべきなのではないか。自民党党大会を契機にして、安倍政権としてはある程度の形をまとめていかなければ、これまでの状況が続いて何も変わらないだろう。(現在の国会状況を鑑みれば)静かな環境で考えるのは難しいかもしれないが、私が憲法9条について個人的に思うことは、既存の条文に付加するという形(の自民党案は)、英訳したらどういう表現になるのか(つまり、英語にしたときに意味が通るのか)が気になっている。

Q : 佐川前国税庁長官の証人喚問が行われたことで、国民のフラストレーションは緩和されたのか。

小林: 全く変わらないのではないか。なかなかエビデンスが取れないので、予想はできたことだと思う。(証人は)刑事訴追を盾に自分を守ろうとするので、それに対抗できるのは検察しかないのではないか。いつまでも証人喚問を続けて本当に実りがあるのか。本日、上(安倍首相や官邸)との関係はないとはっきり(証言された)。佐川氏でさえ、同じ局の課長が行ったという論法なので、皆が「自分は悪くないが、部下が悪い」という主張になっていて、非常に分かりづらい。法律には違反していないかもしれないが、道義としてどう考えるかということではないか。官・民・政治家の考え方は、状況によってそれぞれ違うだろうが、今後、日本の国のかたちを含めて整理する必要がある。企業や投資家は、コーポレートガバナンスコードやスチュワードシップコードによって、ここ数年の間に、(上場企業で)社外取締役(2人以上を置く企業)も80%ほどに上り、ROEも平均10%まできており、民は動き出しているといえる。今後ひとつのテーマになるだろうが、大学改革が叫ばれ、誰がやるかががポイントになっている。しかし、ステート、あるいは地方、すなわち国家のガバナンスについてはほとんど議論になっていない。今後はアカデミアと、政治・国家のガバナンスを考える時代ではないか。誰が本気で議論に乗ってくるかわからないが、それを進めなければならない。今回のような改ざんという形で、民主主義の(根幹を脅かす)重大な問題が起きたことは、大いに反省をしなければならない。誰が悪いかも重要なポイントのひとつだが、日本そのものが傷んでいるという認識を皆がもつべきだ。今回の問題が我々に訴えていることは、そこではないかと思う。

Q : 安倍首相や昭恵夫人に違法な行為がないのであれば、国会が正常に戻るべきだが、そうならないのはきちんと説明がなされていないことが原因である。この状況をどう考えるか。

小林: まさにその通りだと思う。

Q : 春闘について伺いたい。今までベア相場に影響を与えてきたトヨタ自動車が、今回、ベアの金額を対外的に公表しなかった。労組からすると集計ができなくなるという不安もあるようだが、トヨタ自動車の対応の是非と、春闘への影響について伺いたい。

小林: 何をもって(賃上げ率)3%というかは別として、春闘そのものの結果は、ベースアップと定期昇給で平均2.17%、ボーナスを入れると3%に届く企業がかなりあり、経営側も相当対応したのではないか。集計できないなど、一部の人には困った問題だろうが、個々の企業の問題(ベアの金額を対外的に公表しないこと)は、企業の自由なので何とも言えない。そもそも労使交渉、経営者が労働側に報いるという議論は、個々の企業体の中で行うのが基本ではないか。連合も(推定組織率からすれば)17~18%の労働者しか代表していない。逆に言えば、非正規雇用の人達は意見を集合していないので、誰にも救われていない(面もある)。大企業の安定したサラリーマン、あるいは連合に所属しているような組合では、ベースアップと定昇を上げることが非常に重要で、ボーナスは二の次という面もあるが、非正規雇用の人達にとっては年収ベース(の賃上げが重要)なので、そういった議論をもう少しやっていただきたい。少なくともトヨタ自動車の件は、一つの見識だと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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