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経済3団体長 新年合同記者会見 経済同友会 小林喜光代表幹事 発言要旨

日時 2018年1月5日(木) 15:15~16:15
出席者 榊原 定征 日本経済団体連合会 会長(幹事)
三村 明夫 日本・東京商工会議所 会頭
小林 喜光 経済同友会 代表幹事

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記者の質問に答える形で、(1)2018年の経済見通し、(2)地方経済の回復、(3)賃上げ、(4)憲法改正、などについて発言があった。

Q: 今年の景気、経済の見通しについて伺いたい。足元の景気をみると、企業収益は好調さを維持し、日経平均株価は2万3,000円を超えるなど、回復基調が続いている。ただ、日本経済は依然としてデフレから完全に脱却したとは言えない。経済の好循環をいかに回すかが課題である。世界に目を向けると、北朝鮮や中東情勢などは不安定なままで、経済の波乱要因につながるリスクは昨年以上に高まる可能性もある。今年の日本経済、さらに世界経済はどのように推移するとお考えか。今年1年を占うキーワードを漢字でお示しいただき、見解を伺いたい。

小林: まず、キーワードから申しあげる。年頭所感で(示した)「克」(克己、克服)を今年の言葉として頑張りたいと思う。当初、victoryの「勝」と経済同友会の幹事会で述べたところ、「勝つ人がいると(その一方には)負ける人がおり、よくない言葉だ」という意見が出て、小学校(の運動会の徒競走など)で一緒に(ゴール)テープを切る(というような教育をしている)状況をふっと思い浮べてしまった。今の日本は、どう見ても茹でガエル現象(を呈している)。戦うとか克ち抜くとか、己に克つということを忘れてしまったのかなと(感じる)。まさに、小学校で一緒にテープを切る感じだ。言い過ぎかもしれないが、世界はオオカミばかりなんだと(認識しなければならない)。その中で日本として克ち抜く(という姿勢)なり、競争優位を持っていないと、お金は天から降ってくるわけではないので(他国に劣後してしまう)。経済人はそういう意思、己に克ちながら、困難を克服しつつ、本当に世界で克ち抜いていくという精神構造、ガッツ(が必要だ)。世界が国家資本主義に限らず、「自国ファースト」という人々に囲まれている中で、やはり本気で克ち抜くにはどうしたらいいのだろうと(考え抜く)ことが重要なことだと思っている。
デフレの定義というか、デフレ脱却とは一体何をもって言うのかは難しいと思うが、GDPデフレーターもプラスになって久しい。数値的には明らかにデフレは脱却しているが、また元に戻ってしまう(恐れがある)。20年前、インフレからデフレになっていったカーブを逆に考えると、(現在)ここまで来ているなら上に行くか、下に行くかというところでまだ呻吟しているから、(デフレ脱却とは)宣言できない。私としては「デフレは脱却した」と思って頑張れば、本当の意味で上昇志向になっていくのではないかという思いがある。実質成長率、潜在成長率を2倍、3倍にするのはかなり難しいとすれば、(実質成長率)1.5%あたり、名目成長率2.0%くらいではないか。もともと600兆円というのは(2020年までを達成目標としていたが)、今(日本の名目GDPが)546兆円なので、(毎年の経済成長率が)3%とすると、600兆円にちょっと足りないくらいだ。(しかし600兆円を)達成したところで、(基準改定により)研究開発費と防衛費などが(追加分として)含まれ、30兆円程度の下駄を履いている。その解釈はどうあれ、大きな目標に向かってかなり近づいてはいるが、そう簡単な作業ではなかろうかとも思っている。それと昨日(1月4日)、今日と株価がガンガン上がって、(株式相場の格言では)戌年は確率的には非常にいい年で、今日、みなさんを見ていても明るい(表情にみえる)。だが、こういう時は思わぬ災害や、北朝鮮、エルサレムの問題等々地政学的な(リスクもあって、原油価格は現在)1バレル62ドルまで来ているが、大きな戦争やテロのリスクが顕在化すれば70ドルまで簡単にいってしまう(のではないか)。確率は低いとは言え、そういう危険性も考えながら、経営とは最悪を想定してその準備をしつつ、元気よくお金を使うという年かなと(思う)。そういう意味で、己に克ちつつ、困難を克服して、世界で克ち抜くということなのかなと思う。

Q: これまでの話を伺うと、景気は上向いているようであるが、地方の企業や自治体から話を聞くと、景気回復が実感できていないように見受けられる。今年、地方や中小企業まで景気回復を行き渡らせるために必要なことは、どのようなことか。地方や中小企業がやるべきこと、または、政府に具体的に行ってほしい政策、経済団体として出来ることなど、お考えを伺いたい。

小林: お二人のお話で尽きていると思うが、2、3年前までトリクルダウンと言う言葉が流行った。大企業が潤えば、中小企業や地方もいずれは潤うだろうと言うことだが、それに対してどのように見るかということだと思う。三村会頭のお話を伺い、徐々にではあるが、一定程度のトリクルダウンが作動しているのではないかと感じた。ただ、数値的に相当な違いがあるのは、ROS(売上高利益率)は明らかに大企業の方が多い。そして、GDPと言うよりGNIが海外での儲けの換算益となり、円安による換算益や配当などを大企業のほうが手に入れ易い。グローバルに展開していると、アジアの給料体系に引っ張られてしまうので、このような部分も無視できないのではないか。労働分配率一つをとっても、グローバルで、かなり減ってきてしまっている。これは自動化やIoTやAIの影響なのか。将来の問題でもあるが、人間がやらなくても済むものは、機械やAIに任せていくトレンドの中では、(給料は)下がらざるを得ない部分もあるのではないか。
生産性の問題については、サービス業の生産性が特に低いのは、過剰サービスが一つの理由ではないか。ホテルを見ても、海外では自分でやらなければいけないことがたくさんあるが、日本の大きなホテルは人(=従業員)がたくさんいて、我々客としては極めて快適だが、そのような文化について考えていかなければならないのではないか。単純に生産性だけでは議論ができない、文化に根差した部分を切り崩して、尚且つ生産性アップに繋げていくか。それを直ぐに、補助金でコンピューターを導入してAIを使うというのは、甘えの構造を助長する部分でもあるので、そう単純ではない。
経済同友会もそのような視点で、地方のブロックごとで情報交換を行っている。また、4つの地方関連の委員会では、地方と情報交換や議論、人的交流を行い、あるいは事業そのものに関わるなどしており、県との交流の例では、土佐とは林業に関わる事業を一緒に進めている。私も代表幹事になり3年が経つが、40数回ほど地方へ出向いて様々な議論を行った。代表幹事就任当初は、東北での震災復興支援「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト」に、かなりのエネルギーを注いだが、最近では、色々なブロックや県単位で、我々のできるところを一緒に行っている。あるいは各地方大学を中心にした、若いベンチャーをどのように支援できるかを進めていて、具体的な結果はまだ出ていないが、そのようなトライをやっている。あるいはドイツの状況を勉強するなどもしている。経済同友会のメンバーの意識としては、地方とどのようにコラボレーションしていくか、あるいは、新しい若い人を中心としたベンチャーとどのような形で、中央政府と一緒に新しいものを共同で作り上げていくかといったマインドの醸成はされてきている。トリクルダウンを期待しつつ大企業も頑張るが、その気になって頑張っている地方と共に、本気でやっている人とは一緒にやる。こういった形ではないかと思う。

Q: 本日も安倍首相から直接、経済界に対して3%の賃上げ要請があった。消費拡大による経済の好循環を回すには、賃上げが極めて重要な要素になるが、このような政府、首相からの要請・期待に対して、経済界としてどのように応えていくのか。

小林: 大企業をベースにみれば、2017年度は各社が相当、創業以来の好業績という状況の中、(個々の企業で)ばらつきあるにせよ、ここ数年はベースアップが0.5%程度で、定期昇給とボーナスで1.5%増、トータルで2%程度を上げてきた。2017年度の業績をみると、それより平均値として一段高い(レベルでの交渉となるのではないか)。結果として2.5%か3%になるかは統計の問題だが、経営者は皆、今回はそれなりに給料を上げたい、上げるべきだと思っているはずだ。問題はそれがベースアップなのか、(あるいは)ベースアップは0.5%にしてボーナス(を上げるか)。一般的には、これだけ儲けたら何か月といった、(ボーナス支給の)方程式がある。ボーナスを増やしてトータルで3~4%(の賃上げ)という会社は結構でてくるのではないかと思う。本質的に定昇には大きな幅はないので、ベースアップまで踏み込む勇気がどこまであるかという段階ではないか。

Q: 憲法9条について伺いたい。昨日、安倍首相は年頭所感で、憲法改正について強い意欲を示されていた。いままで日本にとって、憲法9条は経済の繁栄に非常に重要なものだったと思う。憲法9条が経済に果たしてきた意味や意義についての考え、また改正についての考えを伺いたい。

小林: いろいろな新聞社やメディアが集めた国民の見解(世論調査)を見ると、結構、国民自体も40数%は、憲法そのものを改正することに前向きな考えがあるようだ。ただ、9条(の改正)になるとその割合が減っており、国民の50%(の賛成)をとれる状況になるには、まだまだ議論がいるのかなという気がする。自分自身の思いを述べると、もう戦後70年以上経って、2045年にはシンギュラリティーの時代が来るというのに、(例えば)私学助成はしてはいけないなど、明らかに(現状の社会と)矛盾する部分が多々ある。50回も100回も憲法改正を行っている国が多数ある中で、よいか悪いかは別として、この間、日本は(憲法制定後、一度も改正しないという)非常に特異な時間を過ごしてきた。そういう意味で、アメリカの傘の下で経済に集中できたという言い方もできる。最初に述べたとおり、世界はオオカミばかりだとは言わないが、日本人だけが羊でいるわけにはいかない。まず、そういう状況をしっかり認識しなければいけない。しかし、国民が嫌だということはできない。そこは議論をして納得する以外にはないのかなと(思う)。(それには)メディアの位置は非常に重要だ。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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