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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年12月12日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)2017年の振り返り、(2)トランプ大統領によるエルサレムの首都認定、(3)政策パッケージ、(4)企業不祥事、(5)今年の漢字、などについて発言があった。

Q : 今回が年内最後の定例記者会見となる。今年1年、東芝の問題や、年後半は企業不祥事が相次いだが、経済界を振り返ってどのような年だったか伺いたい。

小林: いろいろあったというのが実感である。トランプ氏が米国大統領に就任して経済的にも相当不確実(性が増し)、ブレグジット(交渉)があった中で、今年は国際経済が極めて順調に推移した。米国の株価は予想以上に活況を呈して、それに符合するように日経平均株価も思った以上に、2万3,000円近くまで上昇した。中国のGDP成長率も6.9%(前後で推移)と、比較的高い数値をキープできたという意味では、年初に予想したよりは相当(良かったのではないか)。政治と経済の乖離なのか、政治と経済が符号して良くなったのか、(その判断は)なかなか難しいと思うが、予想以上に経済は活性化された。GDPという尺度の下では、思ったより非常に伸びた。日本でもGDP成長率の7~9月期の2次速報値で、年率換算で実質2.5%、名目3.2%となった。名目3.2%という数値は、4~5年前に内閣府が想定した最も経済が活性化する(という前提での)数値(経済再生ケース)であり、少なくとも第3四半期は(それを)達成したというのは良かった。あいかわらず消費と物価はまだ低迷している。アベノミクスも5年経ち、金融緩和を通じてGDPベースでは上がってきた。石油価格も高くなってきており、物価も来年に向かって上昇していく可能性も否定しない。予想以上というのが感想である。(2017年の)大きなトピックスという意味では、製造業を中心にして不祥事、コンプライアンス(の問題が挙げられる)。日本人特有の倫理観をベースにしたマネジメントにほころびが出てきた。これは総見直しを必要としている。今後、ますますグローバルな戦いの中で勝ち抜いていくためには、これをひとつの契機として、コーポレートガバナンス含めた全体を見直すよい機会ではなかったか。政治的には北米自由貿易協定(NAFTA)、メキシコの壁、北朝鮮、ブレグジット、米国のエルサレム首都認定と(さまざまなトピックがあった)。(エルサレムの首都認定は、トランプ大統領の)選挙公約だったとはいえ、唐突感が否めない。世界16億以上のイスラム教徒の人々、アラブ諸国、石油の供給など、経済的にも非常に重要な地域であり、一方的な判断をするというのははっきり言って理解に苦しむ。イスラエルのネタニヤフ首相がマクロン仏大統領とあのような会話(中東の和平交渉)をしているところみると、最初は(イスラエルにとって)ありがた迷惑なのではないかと思っていたが、(実際は)そうでもなく、トランプ大統領のエルサレム首都認定によってむしろ勢いづいて、他のヨーロッパ諸国にもエルサレムを首都認定するよう求めている。本当にそれで世界全体が納得するのか(疑問である)。それ以上に、またテロ(の可能性)や、アラブ・イスラエル闘争があり、パレスチナ人が容認しないのは判っているなかで、力にものを言わせて外交をやっていくのはいかがなものか。来年一番心配なのは、北朝鮮(含む)極東とアラブ・イスラエルの中東であり、(このまま)今年を終えるのは少し不安である。

Q : トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と容認したことについて、欧州諸国は否定的な見解を示したが、日本政府は黙している。これについてはどうご覧になっているか。

小林: 北朝鮮(問題)あるいは(日本の)安全保障とは(異なり)、基本的には(日本とは)直接の関わりがないことであるが、いずれかの時期に明確な見解が出ることを期待したい。一方で極端に言えば、何千年もの歴史の中で戦っても妥協できなかったのがパレスチナ問題である。とりわけ、バルフォア宣言に端を発し、イギリスが(アラブ人とユダヤ人の)両方がエルサレムに首都を持つ国をつくれると約束したことが(問題の)根幹になっており、簡単に一方(を選ぶ)というのはおよそ不可能に近い。たとえば、東エルサレムの旧市街については国際管理にしなければならない。歴史が重層しており、皆が(エルサレムに)宗教(の起源があり)、(自分の)父が生まれ育った(地)と言い続けても解はない。西エルサレムがイスラエルで、東エルサレムがパレスチナなど(一定の配慮が必要である)。今日、ロシアのプーチン大統領がイスラエルとパレスチナ間の会話、あるいは議論から解を見出すべきと(いう考えを)示したのは案外正しい。それがこのところは全然(議論が)できず、ある時期に妥協して今の姿になったわけである。オバマ米国前大統領はノーベル平和賞をもらったが、それから一向に解決に向かわず、それが(ここにきて)一方的な宣言をすることで、国際的な紛争が変な方向に向かっている。その意味では、何が正しいのかは明確である。日本政府はこの辺りも考慮しつつ、安全保障等を含めて、いずれ明確な方向を出さざるを得なくなるのではないか。

Q : 12月8日に閣議決定された政策パッケージについて伺いたい。今回、安倍首相から賃上げについては3%、設備投資、生産性についても2020年度までの数値目標が掲げられた。目標を掲げるのはよいが、政府が民間経済に指示をするのは資本主義、市場経済の中で違和感がある。この点についてはいかがお考えか。

小林: この前(2017年11月14日会見)も3%は唐突ということは述べた。自由主義社会で資本主義を標榜している国として、受けるサイド(企業)はそれはそれとして受けるが、(選択の)自由はもっている。強制ではないので、赤字で非常に悩んでいる企業は、トップマネジメントが(賃金を)3%上げなければよい。一方で、十分に利益が出た企業は3%と言わず、もっと上げてもよい。一つの目安を提示されたという受け方をすればよいのではないか。(民間の)ポケット(資金)に手を突っ込む性向のある政治については、前々から(述べてきたが)、これはこれとして、受ける側(企業)は自分の経営(状態)を見ながら対応するのは当然のことで、インセンティブ(税制優遇など)をもらいたければ(賃金を)上げれば良く、一つの目安を提示されたということだと思う。「革命」(の名)に値するかどうかは別として、今後を背負っていく人材をどれだけ経済的にも育成していくのか、少子化にどう対応していくのか、これは緊急の課題なので議論していくことは大いに必要である。今までの保守では考えられなかったような、かつての野党が主張してきたことを(与党が)先取りしているといえる。生産性革命の主役は民間であり、真にイノベーティブな事業を構築することは、民間の最大の課題である。政府に言われなくても、毎日考えていることだ。そうは言っても、このところ、日本に米国や中国と比べて新しいテクノロジーやビジネスモデルが出てこないのは、もっと違うところに(原因が)あるのではないか。(政策)パッケージは目安としてあるにしても、そのようなレベル(の問題)ではないような気がする。もっと基本理念(に係ることではないか)。来年の6月に、骨太の方針や再興戦略という形で、より幅広い理念も含めたものが出てくることを期待したい。世界に事業として打って出て、勝っていくとはどういうことなのかという視点が必要である。言葉を羅列しているが、本当の意味でのベンチャーや仕掛けは、単純に規制改革すれば新しいものが出るわけでもない。エコシステムの中で(分野を)集中化し、日本の場合は、健康や環境にまつわる産業、ネットやバーチャルエコノミー、あるいは先鋭的な半導体などの事業で勝たなければ、世界に勝てるはずがない。単純にベンチャーが興らないというよりも、大企業の活性化を含め、企業体そのものの問題である。同時に、小さい企業がたくさんある中で、本当に世界で戦えるのか。各産業分野でそのような問題があるので、その辺りももう少し突っ込んでいかなければ、グローバル競争の時代で、皆が自国至上主義的な国になっている中では勝てない。勝って収入を得て初めて分配できるため、その辺りを来年の6月に向かって(議論していただきたい)。とりわけ大学教育がそうだ。大学や高等学校を無償化したところで、腑抜けた若い人を育てても何の意味もない。お金の問題ではなく、教育の本質的な部分、大学の編成も含め、本当の意味での教育とは何なのかをもっと議論してもらわなければならない。いつも思うのだが、今まで記述やディベート的な入学試験が少ない。選択式の(問題)や歴史の年代だけ覚える(こと)、数学の微積分の難しいことばかりやっているが、国家はどのように成り立っているのか、日本の借金はどういうものなのか、そのような基本的な社会性を問う設問をどんどん増やすなど。あるいは、もっとプラクティカルに使える(知識を問う)。今で言えば語学力やコンピューター、ビッグデータに関わる数理統計、プログラミングを含めて改革していかなければ(ならない)。もちろん、お金(予算)がついてこなければ話にならないとは言え、今回(の政策パッケージ)は一面をやったにすぎず、これで完了というわけにはいかない。世界で勝っていくという視点が(政策に)なければ、どうにも納得できない。

 この一年間で興味深いと思ったのは、メディアは溺れる者に石をぶつけるのは好きだが、うまくいっている者についてはほとんど関心を持たない。問題を起こしても、強そうな者に対しては文句を言わないということだ。(東芝が行った第三者割当増資で、主幹事を務めた)ゴールドマン・サックスは3週間で1兆円を集めた。多すぎるので6,000億円としたが、ケイマン諸島(の投資ファンド)を中心にして、ユダヤ人のシンジケートや世界は、あっという間にリスクマネーを東芝に入れた。日本の企業はほとんどそういうことをできなかった。(これで)なんとか日本に半導体のテクノロジーは残せるだろう。今は緩和政策により資金が余っているので、直接金融とリスクマネーが(潤沢だ)。世界にはそのような人達がいっぱいいる。アクティビストを怖がっていても仕方がなく、日本はアクティビストとしっかり議論できるような経営をしていかないと、世界で勝てるとは思えない。(タックスヘイブンである)ケイマン諸島に多額のお金を貯め込んで(税金を)たくさん払わない人達だけがエンジョイしているような世界で、彼らがまた更に勝ち抜いていくという格差社会ができている。国内の個々の格差を是正するのももちろん重要だが、国家としての差が完全につきつつある。ベンチャーにしても、フランスやイギリスでは国を挙げて、集中して育成に力を入れている。ただ国を批判するだけではなく、日本をどうすべきか、お互いに考えるべき時期である。そのような印象を持った1年だった。東芝への出資比率が3番目に多かったのは、ハーバード大学のファンドである。あのような私立大学は自分で資金を集めて、徹底してイノベーティブな研究をさせている。(日本とは)全く仕掛けが違うところと戦っていかなければならないとの認識を、我々は持っているのだろうか。反省する必要がある。

Q : 製造業のデータ改ざんなど、不正行為について伺いたい。背景には、完成品メーカーや部品メーカーから、サプライヤーに対してコストや納期の無理な要求があり、それを受けざるを得ない状況があるのではないか。素材メーカーの経営者として、そのような無理な要求があった場合、どのように対応すればよいとお考えか。

小林: 非常に難しい問題だ。例えば、お客様から仕事をもらう場合、今までの日本の商習慣からすると、コスト割れでもいいので安くして、まずは仕事を取る。最近では、ようやく運輸系で価格を上げて生産性を高めようという動きが出てきているが、いまだに、製造業だけとは思わないが、仕事を取り、売り上げを上げるために無理をしている。どうしても現場は、少しでも自分たちの利益を上げつつ生き延びるために、倫理なり(をもって)お客様と正当な議論をする前に、奴隷構造を自分自身で受け入れてしまっている。いわゆる(産業構造の)ヒエラルキーの中で、特に素材というのは、もっとも下層に位置する。スペックを逸脱したものを出荷するというのは別の話であるが、一番重要なのはコンプライアンスの問題であり、法律違反(について)ではなく倫理上の問題である。スペックを決めて契約をしたもの、あるいは、契約がなくてもそれ(基準)を外れたものを出すというのは、お互い(会社間)の話し合いの中でやるべきではないか。(出荷後は)向こう(お客様)は受け入れ検査をするので、最終製品がまっとうであることは確認するが、おそらくそこに甘えがあり、特別採用いわゆる「トクサイ」という仕掛けを長い間踏襲してきた。先輩たちがやってきたのでいいだろう、安全上やクオリティには問題ないのだという甘えは、かなりあったのではないか。境界線は非常に難しいが、現場はどうしても自分が生き延びるために、一定程度無理をしたり、コンプライアンス上の問題があっても隠そうとする。悪いことというのは、本当に下から上に(報告が)上がってこない。「(競合に)勝った」「賞をもらった」など良いことはすぐに上がってくるが、それよりも、悪いことをどれだけ早く上げるかという作業を、トップマネジメントは常にやっていかなければならない。例えば、どんな会議であろうと最後の締めくくりは、コンプライアンスと安全・安心を逸脱した行為をすると会社がつぶれるという(話をして)、危機感を常に醸成する。当たり前のことだが、常に言い続けることだ。このような問題が起こった際の一つのアイデアとして「今回はお咎めなしにするので、悪いと思っていることをすべて上げるように」(と社内に通達する)掃除を常にやりながら、会社をきれいにしていく。倫理的な意味でも、トップによる教育が必要とされる時代が来ている。もう一つはデジタル化ではないか。コンピューターから出てきたデータを改ざんできないようにすると、どうにも(不正は)できない。「鉛筆を舐める」という言葉があるが、それがいけない。人間の基本的なところに関わるが、デジタル化と倫理性をどうするか、すべてはトップの責任と思ってやるべきだ。トップの責任の取り方はそれぞれの状況で複雑だと思うが、常に覚悟を決めて経営をしていくべきだと思う。そうでないと日本社会は変わらない。

Q : 日産自動車の場合等、コスト削減の要求を満たせず、無資格検査が常態化していたと報告書に記載されている。国内のものづくりは他国との価格競争があり、維持・発展していくのが難しい。短期的な利益を求めるあまりに、一部の経営者は人や設備に対する適切な投資をおろそかにしていることも背景にあるのではないか。経営者の短期的な利益を追求する姿勢について伺いたい。

小林: 例外的にあるかもしれないが、日本の経営者の倫理観は、本質的にはグローバルにみても最も高いと思っている。非常に(高い)倫理観はあるが、お上というか、いろいろな官庁との接触において、(経営者は)国が決めた規制、仕様にほとんど意味がないと思っても、文句を言える機会がなかなか無い。意味が無いと思いつつ、「しょうがない」「法律で決められているから守っている」など、極めてもったいないことをやっている部分があるのではないか。儲かりさえすればよい(と倫理観を持たずにいる)のであれば、もっと儲けているはず。(日本企業は)全然儲かっていないし、ROEは米国が20%近く、ヨーロッパが10数%(と高い水準を示す中)で、日本はようやく8~10%を目指している(状態で)、日本は比較劣位である。私はいつも「三次元経営」と言っているが、(その軸は)儲けの軸(X軸)と、新しいテクノロジーなりフロンティアを開発する軸(Y軸)と、CSRやCO2削減、地球環境などをきちんとみていく、あるいはコンプライアンスと安全をみるのがZ軸である。そういう(三次元で)表現をするかしないかは別として、経営者が儲ける(という軸)だけで会社を運営しているとはとても思えない。日本の独特の「三方よし」というか、(企業が)儲けて、みなさん(顧客)にも良くて、社会にも良いという基本哲学を日本の経営者は持っていると思う。儲けさえすればいいというのは、ほんの限られた人達だけだ。

Q : 加工・組立(メーカー)は、なかなか付加価値を生み出しづらくなっているのではないか。日産自動車の場合、そういう背景があったのではないかと思うが、どうお考えか。

小林: 先日タイを訪れた際、「グローバルな競争の中で中国があまりにも攻めてくるので、どうしてもクオリティをちょっと抜きにしてやってしまう」と発言されたトップマネジメントがいた。ただ、(そういった企業でも)基本的な枠は外れないでやっているはずである。コストダウンはもちろんだが、基本的なコンプライアンスを外れるようなことをやっているとは思えない。競合としての東南アジア、中国が、かなり意外なもの(製品・サービス)を出してきたので、日本は戦うために、徹底して付加価値の高い方向に(シフトして)いかなければならない。環境、健康、ネットや重さのないサービス業であり、こういう領域で戦わざるを得ない。コモディティなり、単純な加工産業からはやはり逃げていく。そういう新陳代謝を加速するためにどうするかが、(先日発表された)政策パッケージにはあまり反映されていない。日本が勝つためにどうするかを考えなければ勝てない。それが無く、現存の、今この状態の産業をどうするかという目しかないので、将来は大丈夫かなと思わされてしまう。

Q : 会社の中では悪いことこそ(報告をして)ほしいという話と、マスコミは弱い立場をすぐ叩くという話があった。これに関して、企業はヒヤリ・ハット事象までなんでも知らせるということではないと思うが、公表の基準や線引きの難しさについて、代表幹事はどのように感じているか。

小林: (上場企業に義務付けられている)適時開示ではないが、何かあったらマーケットにも知らせると同時に、社会に公表するのが鉄則である。今回(不祥事を起こした)さまざまな会社を見ていて(思うが)、A社とB社間の取引関係の中で、(スペックとして取り決めた)数値を外れていても、結果として外に出した場合に問題ないということまで、いちいち報告する必要はない。そこの線引きは個別の会社に依存していると思う。マーケットに適時開示という言葉があり、情報を株主に対して伝えなければならないというルールがある中で、明確に社会性を失った状況は(公表すべきだ)。シェアホルダー、株主だけで会社が存在するわけではないので、ステークホルダー全体、(つまり)顧客、社会、取引会社に同じように適時開示しなければならない。そういう精神で経営していかないと、いずれそこに澱みが生じて、長い間で熟成し、悪臭を放つような会社になってしまう。

Q : 代表幹事にとっての「今年の漢字」を伺いたい。

小林: 皮肉って「革命」と「乱」(を挙げる)。日本ではなく、今の世界は乱れている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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