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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年11月14日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)トランプ米国大統領のアジア歴訪、(2)、TPP11(CPTPP)、(3)安倍首相の求める3%賃上げと消費税、(4)株価上昇傾向と実体経済、(5)金融引き締めの是非、(6)政府との距離感、(7)メガバンクの人員削減、(8)パラダイス文書問題、などについて発言があった。

Q : 一連の外交日程がほぼ終わったが、とりわけ米中首脳会談について、どう見るか。


小林: 北朝鮮(問題)もさることながら、やはりトランプ氏持ち前の「ディール」で米中企業間における貿易・投資28兆円の新しい契約など、米国民に対するお土産を持って帰ろうと(した点が印象に残った)。中国も習近平氏の権力の足場がだいぶ固まって、(任期)5年と言わず10年を目指す中で、GDP6%台後半の国内の経済成長をどう持続させるかが大きな課題かもしれないが、やはり今や外交がかなり重要なポイントになるのではないか。日中(関係)に関しても、安倍首相は日中の思惑も(考慮し)、習近平氏と李克強氏の双方にお会いして、新たに訪中をスケジュールに入れていこうと(提案した)。皆当然、自国ファーストだが、米中(関係)という意味では、予想以上に良い会話ができているのではないか。東アジアの今後(については、)一部ポイントになるところ(に)はあまり深入りせず、防衛より北朝鮮と貿易というテーマで、上手く会話を交わしたと思う。(米中首脳会談については、)非常にポジティブに評価する。

Q :「28兆円」について触れられたが、トランプ氏はその後、対北朝鮮に関し、(自身の)ツイッターで「対話をした方が良い」と(態度が)少し軟化しているようで、習近平氏の基盤が固まった以上に、(この問題に関する)したたかな中国の戦略があると思う。AIIB(アジアインフラ投資銀行)に米国が関心を示しているのではないかという見方もある。もしそうである場合、(日本が)米国の中国外交に引っ張られていくことは、仕方のないことか。

小林: AIIBに関しては、日米は(AIIBには参加せず)ADB(アジア開発銀行)を中心に(開発途上国に対する融資と技術援助を)行うとしている。ただ一帯一路に関しては、太平洋・インドという貿易圏のこともあるが、上手くなじませてこの領域全体の貿易や安全保障も含めやっていく方向は、今までより相当、融和してきているという捉え方をすれば良いのではないか。
(トランプ氏は)ツイッターで(金正恩氏が)「オールド」(という発言をしたこと)には怒り狂ったが、(金氏に対し、自身は)「ショート」や「ファット」だとは言わないとつぶやいた。そういう点は比較的余裕を持ったジョークだと思うし、最後にあった「できれば仲良くしたい」というのは、米中首脳会談が終わったからああいった心持ちになった(のではなく)、ダイレクトに関連しているとは思えない。

Q : TPP11(CPTPP:包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定)は閣僚会合では(大筋)合意できたが、その後首脳会議は開かれなかった。(原因は)カナダが特に知的財産、文化などに関する4項目に合意できなかったからと聞く。(TPP11の)首脳会合が開かれ、(協定が)発効できるかどうかは各国の事情があり、TPP10になってしまうのではないかという見方もある。経済三団体でTPP11については「合意形成し、米国の回帰を」と官邸に要請されていることから、今回の決着についてどう見ているか。

小林: 結局、カナダのトルドー首相は国内事情とNAFTAの関係で、最終的に自分が直接は関与しないが、閣僚に了承させるという技を使ったと思う。6ヵ国が署名すれば基本的には批准され、一応ワークするということになっているとすれば、なんとか今年中にある程度(懸案)4項目を整理して、TPP11か10かは別として、各国が国会で承認を受け、署名・発効という第一歩を踏み出したことは大いに評価して良い(と思う)。これが一つの突破口になって、(日本と)EUとのEPA(が進めばよい)。残念ながらISDSなどの除外項目はあるとしても、妥協点があったというのは、TPP11が日EU・EPA(の今後の調整)を促進させる。TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(の交渉))は難しいのかもしれないが、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)も含め、アジア方面のもう少し広い形での(経済連携)協定に持って行くことを考えれば、(今回の大筋合意は)非常に大きな成果ではなかったかと思う。

Q : 安倍首相が経済界に対して3%の賃上げを要請している。それと同時に賃上げした企業に対して、税優遇の制度も議論に入ったところである。賃上げと税ということで見ると、どのように評価するかお聞きしたい。

小林: 3%というのはおそらく希望という形で発言されたと思う。原理原則に戻らなければいけないのは、労使、各個別の企業で最終的には決めることである。3%は一つの目安というが、現状では2%もしくはそれに欠ける程度で、ベースアップというより(年収ベールの)給料アップになるだろう。そういう意味で、1%が各企業にとってどれだけの意味合いがあるか。好調な業種、企業もあれば赤字で苦しんでいる企業もある。一律に3%というのは、数字としては唐突だと思う。ただ、もちろん(企業業績は)好調で円安に助けられた部分はあり、この5年間の金融緩和を含めた形で円安を演出し、結果として私企業が収益を上げているのは事実である。特に2018年3月期は前年比23~25%経常利益のアップという中で、基本的には社会に還元するという形で、全体のステークホルダーに(還元すべきである)。企業はシェアホルダーのためだけのものではない。従業員、社会、株主のためであることから、配当もさることながら、賃上げをしていく方向というのは当然のことだと思う。それと絡めていえば、(今回の人づくり革命に関する2兆円政策パッケージについて)安倍首相から企業に対して3,000億円程度の拠出要請があった。消費税を上げるということには大賛成である。(今回の政策パッケージの財源については)こども保険や教育国債など様々な議論がなされてきたが、(消費税率2%引上げに伴う増収分の使途変更により)1兆7,000億円を充当し、3,000億円は民間が負担するというのは基本的には理解しうる。企業が儲かった分、給料を払うのと同時に、社会に対して次世代を担う子供たちの育成・教育に貢献することには社会的な正当性を感じている。自民党の中でも議論できていないと耳にした。数値、領域含め、本会の受益と負担のあり方委員会や正副代表幹事会で精緻に議論し、自民党の案が固まりつつあるところで意見を開陳したい。

Q : 株価は非常に好調で上昇傾向であるが、これが経済の実態を反映しているのか、ご意見を伺いたい。

小林: 実態として、リーマンショック以降、金融緩和をして、金が余剰し行き先がなくなった中で、相当、株式市場に(投資された)。特に米国の上がり方(非常に速く)、政治と係わりなく上昇している気もする。日本も今までPBRが1倍以下の企業が多くあったのが、補正されてきている部分もあるが、上がるスピードが速い。ジョークだが、弾けないバブルはあるのか(と思うほどである)。この調子でいけば、堅調に進むという観測をしている人が多いのではないか。感覚としては、非常に速いスピードで上昇しており、バブリーだと思うが、できれば弾けないバブルであってほしい。

Q : TPP11について伺いたい。先日、大筋合意が決定した際の代表幹事のコメントの中に、「将来的な米国の復帰も視野に、自由貿易や経済連携の価値を訴えることで新たな参加国・地域の加入を促し、TPP経済圏の拡大を推進していただきたい。」という文言があったが、トランプ政権があのような判断をしている中で、今我々が考えていかなければならない将来的な米国の再合流は(1期目の任期終了の)3年後か(2期目の任期終了の)7年後かは別として、ポスト・トランプ時代のことを見据えて考えていかなければならないということか。どのような方向性のことを示しているか。

小林: 願わくば、トランプ大統領の時代に(米国の復帰を期待したい)。ロス米国商務長官も(二国間)FTA(が必要)だと盛んに述べており、これはネゴシエーションそのものだと思う。今の(トランプ)政権に対しても言い続けることと、TPP12の時に決めた条件をしっかり確保し、よしんば二国間(協定)であっても、そのような数値以下の妥協はしないことが必要である。可能であれば、やはり(米国を含む)12(ヵ国)、あるいはインドや英国も入る可能性もあってよいのではないか。

Q : NAFTAの会合が月末にある。現地で雇用やビジネス、サプライチェーンを持った企業にとっては重要な話だと思うが、日本の経済界としてどうあるべきかご意見を伺いたい。

小林: 経済界としては特にこれに関与できるわけでもないので、よくウォッチしていく。その上で(申し上げると)、米国への投資は、経済界として(既に)かなり前向きにやっていることである。国内への投資も含め、内部留保や現預金が多いのではないか(ということ)、どうして(経済が)活性化しないのかという(批判がある)ことも含め、個々の企業の経営者それぞれが考えることだと思う。

Q: 先ほどバブルというご発言があったが、そうだとすると金融を引き締めた方がよいということか。

小林: 米国とEUはその(引き締めの)方向に慎重に行こうとしている。日本銀行の黒田東彦総裁は会見で、日本も10年くらいして今までの債務を減らしていかなければならないと述べていた。したがって、一国だけ(が緩和)というわけにはいかない。逆に言えば、米国とヨーロッパが明らかに引き締めの機を見ている中で、日本もそれに対して心の準備がいると思われる。しかし、タイムスパンとして、そんなにも極端なことをやると経済はシュリンクするため、5~10年のオーダーで考えていかなければならない。今、これだけの剰余金がある実体経済、GDPなどと比べても、リーマンショック後に中央銀行がかなり紙幣を刷っているのは間違いない。それが株高を引き起こし、一見ハッピーだが、本当にサステナブルなのか。やはり持続可能性を考えると、財政も含め(考えなければならない)。企業に剰余金が発生し、資金は活性化するが、実体のGDPは増えない。それはいわゆるモノの経済学、あるいはモノづくりをベースにした一部の従前のサービス業以外の、ITを中心としたネット経済、重さのない経済、あるいはシェアリングエコノミーやサーキュラーエコノミーという中で、単純にGDPは増えない。一方で、マネーだけが膨張する新しい21世紀の経済圏とはそもそも何なのか、この議論も経済学者がやれるのかやれないのかは別として、いつまでも本当に続くのかどうか、未体験ゾーンに人類が入っているのは事実だと思う。一方で金利はほとんど上がらず、(むしろ)マイナスになっている。(経済)成長を刺激しても、なかなか物価は上がらず消費も喚起できない。つまり、今までの単にモノをベースにした経済は完全に破綻をきたし、サービスや将来への夢などのようなビジネスモデルがお金を吸収するように、実体(経済)そのものに虚数の部分が入ってきている。このような経済学をどう記述するのかということではないかと思う。最後のキーワードは、やはり持続可能性である。インターネットやAI、シェアリングエコノミー、サーキュラーエコノミーの中で、どう全体を統合した議論ができるのかということだと、素人の感覚としては思う。だから、少なくとも日本だけがいつまでも(金融)緩和というのはありえない。相対的には米国とヨーロッパに合わせながら、されど少し遅れて(引き締め)というのが一番よいのではないかと思う。

Q : 昨今の政治と経済界の関係について伺いたい。3%の賃上げにせよ、3,000億円の待機児童対策にせよ、距離感が近く、うまく連携が取れていると見るのか、近すぎて問題があると見るのか、その中間なのか。どのように見ているのか伺いたい。

小林: 3%(の賃上げ)はそうしてくれと言われているわけではない。一定程度、去年より(2017年度は)経常利益が23%~25%上がる中で、株主もさることながら、従業員にも社員にも、お客様にも(利益を)還元していかねばならない。その一環として(賃上げ率は)3%がよいとは決して思わないが、今まで2%程度を維持してきた中で、各企業で儲かったところはそれなりに還元すると言っているだけであり、別に政治と連動してやっているわけではない。3,000億円については、筋としては、教育国債や子ども保険、今回の企業拠出金などいろいろあるが、少なくとも経済同友会としては、この間(消費税8%から10%への引き上げを)2回も遅らせ、他の野党は全くもって消費税凍結(と主張している状況)のような中で、本当にこれが将来10年、20年のオーダーで社会の持続性につながるのか。あっという間に、2025年には団塊の世代が75歳になり、もっと医療費が嵩むのがわかっていながら消費税すら上げられない。あるいはグローバルスタンダードからすれば(消費税率)20%くらいが常識の世の中で、日本だけがなぜこんなに(消費税増税が)遅いのかと主張してきた。最低限プライマリー・バランス(PB)をゼロにするためには、(消費税率)17%くらいは必要である。その論理からすれば、8%から10%上げるのは当然やってほしい。その中で今までの社会保障の(自然増を)年間5,000億円(に抑制すること)はもちろん加味し、当然(消費増税分の使途変更による)1兆7,000億円は国庫にある程度戻す。少なくとも税と社会保障の一体改革の中で、上げた分を全部戻すのではなく、少し社会に還元するという手法を取って和らげていくことも仕方がない。先ほど言ったように、ROEも含め、企業、特に大企業の輸出系の企業が好調な中で、一部(社会に)還元する方法として前向きに見てみようというレベルであって、本当に3,000億円でよいのか、拠出金が企業関連のものだけではなく、どの辺りが歯止めになるのかも含めて議論している段階である。そのため、政府が言ったことにすぐにYES、NOというレベルではない。決して良い関係でも悪い関係でもなく、極めて独立した、それぞれの利害が違うところでしっかりと対話をしていけばよい。少なくとも政府は国内のことしか考えず、国内の賃金を上げ、国内に投資してほしいと言う。しかし、企業体(の多く)は(株主の)半分が海外であり、我々はステークホルダーのうち株主をメインに見る。それがグローバル経済であり、連結決算であり、海外に投資して儲けることと日本に投資して儲けることは全くイコールである。この(立ち位置の)違いは明らかである。

Q : 金融、特にメガバンクが非常に大きな人員削減を打ち出している。地銀との関係もあるだろうが、マイナス金利が続く中で、特にメガバンクは海外で稼ぐ量が高い中、国内の、特に地方(店舗を)は閉じていくだろうと予測できる。この状況を代表幹事はどう見ているか、横尾副代表幹事・専務理事もメガバンクの出身なので(ご意見を伺いたい)。

小林: やはりテクノロジー(が鍵)だと思う。明らかに異業種というか、全くもってベンチャーでいくらでもできるようになってきた。今までのように大きい本店を構えて女性が座る窓口があって、という時代は、あきらかに誰が考えても(続かないだろう)。ブロックチェーン、フィンテックなど、テクノロジーであっという間にやれてしまう。単に取引の便宜を図るというより、お金の運用なり、遺産の管理なりという、どちらかというと信託的なものも含め、バリューをどこで作るかという意味で、なだれを打って変わっていくという危機感を、金融系の人は持っている。5年の間にはこの程度減らさなければ合わない(という判断であり)、それでグローバルに展開するということだと思う。
例えば、今回(株価が)好調なのは、どちらかといえば、円安もあって、外需系(企業である)。どちらかというと内需系の会社はそれほどパフォーマンスがよくないというのも、銀行が人員を削減する一つの(要因ではないか)。当然、人口が減り、経済の伸びそのものを考えると、グローバルに展開していくしかない。その一環として、非常に時間軸の長いところでそういう(人員削減の)戦略を表明されているのではないかと思う。
横尾: マイナス金利の導入が一番大きな背景、きっかけにはなっているだろうと思う。特にメガバンクの場合は、昨日の(みずほFGの)記者会見を見ていても、引き当ての戻りがあっても利益としては前年比で減っているという状況ではある。引き当ての戻りを差し引くと、マイナスにはなっていないが相当厳しい。やはりメガバンクの場合、特に海外業務に、グローバル化にシフトしていかざるをえない。さらに、イノベーションにより国内の店舗を減らしていく(必要がある)。人口減少なども含めて、国内需要が減る中で、どうしていくか。相続などの対応が(かつては)地方にある程度あった。(しかし)親の代にはあったものが (いまや)東京集中あるいは首都圏集中となっている。人口的にも、資金の動きが、相当、首都圏にシフトしている。(そうした中で、)どうしても国内の構造は変えていかないといけない、そういう危機感の表れだと思う。メガバンクの場合、もともと、3行とも合併を繰り返し、欧米の金融機関に比べると若干コストも高い。そういった構造を、小林代表幹事が述べたようなイノベーションや、海外展開、今後の国内需要の問題などから、構造変換を起こしていかないといけない、という危機感の表れだと思う。

Q : パナマ文書に続いてパラダイス文書が出た。企業のコンプライアンスの部分も含めて、所見を伺いたい。

小林: 英国のエリザベス女王も(名前が挙がっているが)、イギリスはもともとコロニー(植民地)の伝統を持っており、その延長だと思う。(リストには)日本企業も1,100くらい出ているが、企業のコメントを見る限りは、法令を順守していると(思う)。少なくとも税金逃れでやっている訳ではなく、特に海運や商社系は当然、向こう(租税回避地)にそういった口座を持つ(ことが)商取引上も重要なことがあるだろう。少なくとも、リストを見る限りは、まだもう少し調べなければわからないこともあるだろうが、故意に税金隠しをやっているとは理解していない。

以上
(文責: 経済同友会 事務局)


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