ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

PDFはこちら.pdf

冒頭、小林代表幹事による発言の後、記者の質問に答える形で、(1)日産と神戸製鋼の不祥事、(2)景況感、(3)トランプ米大統領の来日、(4)2018年春闘、(5)宅配便の再配達削減、(6)人手不足と生産性向上、(7)衆院選、などについて発言があった。

小林: ここ2~3年、米国での自動車関連企業や東芝等、企業の不祥事が(相次いでいる)。まだ明確な結果や原因がつぶさに出てきているわけではないが、最近では日産自動車や神戸製鋼のように、経済を担っている企業が(不祥事を起こした)。IoT、AI、バイオの時代とはいえ、日本で戦後ここまで発展してきた経済は、やはりものづくり(によって支えられ)、品質、コンプライアンス、安全・安心のクオリティの高さにより世界で非常に評価されてきた。これは明快な事実である。これがここ数年で音を立てて崩れつつある。少なくとも海外のレピュテーションにおいて、日本製品は他のアジアの製品に比べてクオリティが高い。人づてに聞いた話だが、シンガポールの人が「シンガポールで買うよりも、銀座で買うほうが安心できてクオリティも高い」と(述べていたそうだ)。それ一つ取っても、まだまだ日本製品に対する信頼感は(高いことがうかがえる)。少なくとも今に至るまで、多くの企業の努力により日本の製品、特にモノに対する評価は高かったが、ここにきて製造業、素材産業も含めて(不祥事が続いているが、そうした企業の)トップをはじめとする全体のコンプライアンスに対する思いが理解できない。2~3年前からコーポレートガバナンス・コード、あるいはスチュワードシップ・コード(が普及し)、政府と民間との間で、日本のコーポレートガバナンスが欧米を超えるべく(対話をしてきた)。あるいは、それをベースに稼ぐ力をつけていこうという議論が始まっている。その中で、コーポレートガバナンスの基本となるコンプライアンスや安全に対する事象が、若干、劣化している。いわゆる日本の経営の劣化であり、経済人が集まる団体として極めて重く受け止めている。今後、不祥事とは直接関わりがない企業も、クオリティが高い製品を法に則って製造するのは当然だが、(同じ日本企業の)仲間としては、(今回の事象を)他山の石とし、もう一度(コンプライアンスを)見直すことが必要だと思っている。コーポレートガバナンス・コードに則った形、たとえば社外取締役を1名以上(選任する東証一部上場企業の比率)は99%で、この3年間であっという間に増えた。2名以上の社外取締役(を選任している一部上場企業の比率)でさえ8割超である。日本は、一度方向が決まると皆がスピード感をもって変わる良い特性もある。特にそのような基本的なところをもう一度(確認する必要がある)。仏作って魂入れずでは困る。(不祥事は)他山の石とすべきであり、(形を整えた後は)魂を入れるという内部的な運動も必要と考えている。

Q : 昨今、企業の不祥事が相次いでいる中で、とりわけ神戸製鋼の件について伺いたい。検査を軽視する風土が会社全体に広がり、少なくとも10年前から(不正が)行われていたという。なぜこうした事態になったのか、代表幹事の受け止めは。また、(今回の不祥事により、)日本製品の信頼が傷ついたが、信頼回復に向けて何をすればよいか。またそもそも信頼回復ができるのか。お考えを伺いたい。


小林: 後半の質問から回答する。(信頼を)築くには何十年もかかるが、失うのは一瞬である。私は常々、(企業や国家の価値を)3次元で説明しているが、X軸は稼ぐ軸、Y軸は新しいテクノロジーを生み出す軸。そしてZ軸こそがまさに心の問題で、サステナブルであることだ。企業のブランドそのものの構築なり、品質や、サービスをベースにした質の向上によってブランド価値を上げるのは、百年の計である。テクノロジー(の開発にかかるの)は10年単位、その結果として儲かったか儲からなかったか(を測るの)は四半期ベースかマンスリーベースであるが、信頼を回復するのはそう簡単ではない。ただし、ほとんどの日本企業はそうではない(不祥事を起こしていない)ことは事実である。したがって、どれだけ見える形で変革するかを、個別の企業が社会に表明していくこと以外に策はない。最初の質問について、なぜこのようなことが起こるのかについては、(まだ、神戸製鋼の不正の原因は)具体的には把握されていないが、基本的にはガバナンスの問題、トップ以下の企業の緊張感(の問題)である。法令を順守するのだという当然の企業文化のDNAを築いて伝承していく、それ以外の王道はない。(今回の問題は)コンプライアンスとはちょっと違う気がする。安全・安心といって(対策を行って)も、サイバーアタックされるかもしれない。特に製造業の場合、工場での不可抗力的な事故や人的事故(への対応)は会社存続の基本であり、儲けを考える以前の問題として捉えるべき事象であると思う。

Q : 企業の不祥事に関連して、神戸製鋼や日産自動車を見ていると、社長が会見した後に新たな不祥事が出てきている。一連の問題に関し、企業側の説明責任についてどうお考えか。

小林: 当然企業で起きた事象なので、コンフィデンシャリティ(守秘義務)はあるが、少なくとも起こった事象に関して、取締役会にかかっている事項程度のものは、明快に説明責任がある。そういった観点では(今回の対応は)初動が遅く、お粗末だ。

Q : 日産自動車や神戸製鋼の不祥事について、(消費者へ)直接的な被害が出ていなければいいという風土があるのではないか。(日産自動車は)三菱自動車のような問題を起こした企業を傘下に抱えているにもかかわらず、今回の不祥事があったというのは、経営者の自覚が十分でないということもあると思う。目に見えない部分を可視化させて、ユーザーにどのように安全を担保していくかということは非常に大事なことだと思う。ものづくりが揺らいだら日本の未来はない。もう一度見直すべきものがあると思うが、それは個社の問題か、それとも業界全体の問題かを伺いたい。

小林: コーポレートガバナンスとして大きく括れる部分もある。(コーポレートガバナンスは)まず、形から入ってきたが、どう実質化するかというフェーズに入っている。ただ、いたずらに儲けるのではなく、正当な契約に則った、法律違反を犯さない形でどう儲けるか(を考えなければならない)。経済同友会は、今まで社外取締役を2名以上入れるべきと主張してきたが、(経済同友会 企業経営委員会『コーポレートガバナンス・コードに関する意見書』2014年10月20日)これは形にあたる。社外取締役が入った取締役会は、相当オープンで透明性が付与されたはずだ。今回の2社とも社外取締役がいるだろうが、実態としてどう働いているのかという検証を待たなくてはいけない。いずれにしても、嘘をついてはいけない。それは人間として当たり前で、企業(の体質)以前の話ではないか。経済同友会でも、経営改革委員会などさまざまな委員会があるので、これを他山の石とし、自分自身の問題として見直す良い機会にしたい。そうでないと、日本が築き上げたブランド価値は毀損され、甚だしく落ちていくという危惧を持っている。

Q : 先ほど、神戸製鋼の問題を「他山の石」と表現されたが、どのような意図か。

小林: ある人が失敗をした際に、それを見て自分は失敗しないようにと思うことを「他山の石」と表現した。人の姿を見て我が身をチェックしようという意図だ。人の不幸や失敗を自分事として反省し、自分はそうならないようにするということだ。

Q : ガバナンスの話を改めて伺いたい。日本企業の不祥事が相次ぐ中で、日本企業に対する信頼が薄らいでいる。経済同友会として、企業経営者はこうあるべきだという、踏み込んだ提言やアクションを起こす予定はあるか。

小林: 当会は「Japan 2.0 検討PT」や「経済同友会 2.0 を実践推進するPT」というプロジェクトチームを組んで、日本をどのように変革すればよいか(検討し)、経済同友会も過去の延長線ではない、新しい経営者像を描いているところだ。必然的に、企業経営者のあるべき姿の議論は、かなり重要なポイントになると思っている。

Q : 市場の動きについて伺いたい。日経平均株価がこのところ強い動きをしている。その要因としては衆議院選挙や世界情勢などが考えられるが、代表幹事はどのように見ているか。

小林: 中国、ブラジルなどBRICsや米国も含め、必ずしも日本だけではない。(世界)全体が株高になっている。基本的な要因としては、おそらくマクロで捉えると、世界中がカネ余り(の状況になっている)。金融緩和をお互いにして、(経済活動に)フェイバー(支援)を与えようとする政策が、リーマン・ショック以降ずっと続いてきて、カネが余ってしまって行くところが無い。どのような政治体、政治トップ、国家でもだいたい株が上がっており、かなりバブリーな状況になりつつあるのかなという気がする。米国や欧州が(金融緩和の)出口を考え出したのは、帰結する方法(を模索する段階)にきているということだろう。日本も、いつまでも(金融)緩和をしていくことは、どの道ありえない。何らかの形で準備が必要である。株価が高いからといって、単純に喜べる状況ではない。日本の場合は、金融緩和により、為替が円安に大きく振れ、結果として企業業績が良くなって、それに比例した形で株価が上昇したと捉えている。

Q : 先ほど、株式市場がバブルになっているとの発言があったが、現在の株式市場が実態経済を離れて、過度に株式市場に資金が集中し、バブルになっているとの認識か。


小林: 基本的にはカネ余りの状況で、資金の向かう先がどこかという意味で、大きなカネを持ったところが株式市場を動かしている実態は無視できない。国債や金融緩和の出口戦略の問題など、それが持続可能かという意味で、バブリーな可能性があると申し上げた。

Q : いつまでも金融緩和するのかというご発言もあったが、安倍首相は、物価目標の達成時期も先送りを重ねている。そういう中で、金融緩和に時間的なリミットはあるのか。

小林: 米国や欧州の姿を見つつ、金融緩和の出口を見つけていくことになるのではないか。具体的に(いま)金融緩和を解除するのは、時期尚早かもしれない。せっかくここまで(景気が上向いて)来たのに、また、元の木阿弥になることを危惧されているのではないか。ある程度のつっかえ棒は必要だが、いつまでも刺激剤を打っていればよいというわけではない。米国や欧州の流れを見ながら、相対的に日本は少し遅れながら、どのようにやっていくか(考えればよいのではないか)。ようやく物価も上がりつつあり、実質成長率も1.5~2.0%、潜在成長率は1.0%を超えてはいないが、4~5年かけて金融緩和の結果が出つつあるということも事実である。

Q : 来月初めにトランプ米大統領が来日する予定である。米新政権は、TPP、パリ協定の問題など、日本がこれまで当然のように目指してきた方向性とどうもかみ合わず、先日の日米経済対話でも、方向性の共有は難しかったようだ。他方、安全保障の問題ではどうしても米国と協力せざるを得ない関係にある。来日の際、トップ会談があるのだとすると、どのような連帯、方向性のまとまりを目指してほしいと思うか。代表幹事の考えを伺いたい。

小林: まずは、やはり北朝鮮問題に対して、必ずしも米国だけでなく、欧州、中国、ロシアも含めて共闘していく。これは当然やっていくべきことだと思うが、だからといって、経済も何もかもべたべたで(付き合って)いけばいいという関係ではないだろう。その点は安倍首相も十分認識されていると思う。TPP11にも共闘は必要であり、FTAをすぐ結ぶことにはいろいろと問題もあるだろうから、従来通りの戦術、戦略で進めてもらえればいい。COP21で合意したCO2の削減については、3.11(東日本大震災)以降、原子力発電所が4基しか稼働していない(状況では目標の達成は難しい)。(2015年7月に策定された)エネルギーミックスではじめて、COP21(での合意)が守れるかどうかだ。原発の再稼働の問題と、もう一方では再生可能エネルギーの開発をもっと加速していく。このバランスも含めて、明確な方向性を出すべきではなかろうか。今回の衆議院選挙でも、財政再建、原発も含めたエネルギー問題について(争点になっているが)、消費増税凍結や2030年までに原発ゼロなど、あまりにも「こうあればいい」という話が多く、具体的なアクションプラン(が無い)。いつまでに、何を、誰がやるかという3つについては、ほとんど語られない。企業も劣化しているが、日本の政治も劣化しているのではないか。

Q : 2018年の春闘について伺いたい。明日19日、連合が春闘の基本構想を発表する予定であり、報道によると前年並みの2%を軸にベアを要求する方針とのことだ。2%という数字についてどう評価するか。また、ここ4年程度、企業側からすれば高水準の賃上げが続いているが、賃上げの余地について、どの程度あるのか見解を伺いたい。

小林: (今回の衆院選で)企業の内部留保がだいぶ話題になり、かなり議論されてきた。現(預)金(含む内部留保は)、大企業、中堅・中小企業を平均すればおおよそ1.7ヵ月分、大企業では1.3ヵ月分ほどしかない。運転資金的にもそこまで過剰に現(預)金を貯めているわけではなく、M&Aなど海外への投資、有価証券、国内外問わない設備投資など、バランスシート上の資産の部が増えれば、負債の部も増え、内部留保も増えていく。そこにカネがたまっているわけではなく、その点を誤解されているのではないか。そうは言っても、過去最高の経常利益を記録する企業が増えてきている(のも確かである)。アベノミクス(が始まって)1~2年の頃は、今後どうなるか分からないという動きがあったが、この4~5年、収益的にはかなり良い方向にきている。今後、金融問題など、いつまでも出口がなくてよいのか(という議論もあり)、常に(金融緩和という)刺激剤を打っているような状況だ。サステナブルであるかという問題はあるにせよ、現時点では賃金を上げないと(いけないのではないか)。社会保障費(の増大や)、2019年には消費税増税の有無(の問題もあり)、2018年度は(年収ベースで)最低限2%は賃金を上げるべき状況にあるのではなかろうか。消費を活性化し、物価も良い方向に動かすという、(経済の)好循環の時期に来ている。

Q : 物流の問題について伺いたい。(宅配業者などからの配送)荷物を職場で受け取ることを認めてもよいのではないかという考え方が出始めているが、代表幹事の考えを伺いたい。

小林: 荷物の再配達が膨大な量で、コストがかかっているということなので、何らかの手を打つ方法の一つとして(あるだろう)。企業では、個人情報に関する問題もあるだろうし、大きなビルに入っている企業などでは、個人にどのように届けるかなど個別の問題はある。当座はできるところから、個別の企業として導入することは大いに結構である。本当は、近くのコンビニエンスストアなどに配達してもらって、そこへ取りに行くなど(もいいだろう)。色々な考え方があると思うが、再配達などあまりにもサービス過剰な日本の中で、新しいアイディアを具体的にアクションしていくのは大いに結構である。

Q : 生産性向上と人手不足の問題について伺いたい。人手不足だから、生産性を上げるためにシステムを入れたり機械を入れるという話があるが、もともとは、量の生産性ではなく、質的な生産性の向上が重要という話もあったはずだ。しかし、人手不足と相まって、この二つが混乱して語られているように思うが、どのようにお考えか。

小林: 量の生産性については、ロボットや、センサー、システムの導入などでかなり出来あがっているはずだ。製造業の一部が意外と生産性が高いのは、そういう面があるからだろう。質的な生産性とは、サービスや新しいものをクリエイトする分野だが、(こちらは)まだ相対的に日本は遅れている。まだまだAIですぐに代替できるものではなく、働き方も含めて、いかに効率よくクリエイティブな状況をつくれるかといった本質的な議論が必要ではないか。

Q : どういった形で議論をしていけば進むのか。

小林: どうすれば人間はクリエイティブな存在になり得るのか、それは教育も含めた問題だ。大企業は細かいこところまで手を出せない(面もあり)、またクリエイティビティが下がってきてルーティン的なことをやる、あるいはただ(規模が)大きいことをやる。しかし、ベンチャーは頭脳をベースにした(製品やサービスを生み出している)。とりわけ、バーチャルエコノミー、シェアリングエクノミー、サーキュラーエコノミーといった新しい分野は、(企業規模の)大小に関係なく、クリエイティビティを発揮できるところである。いままでの仕掛けを壊して、個々の人間がどうアクティブになるかといった議論にならざるをえない。それは教育も含めて(言えることだ)。日本は今までの延長線上でずっと来てしまっている。マス・プロダクションであり、サービスは「おもてなし」をしていればそれでよいと思っていた。そういったところをもう一度見直すべきではないか。

Q : 衆議院選挙について、いまの状況をどうみているか。


小林: 結果を見ないと分らないが、(新党)ブームはかなり沈静化したと思う。(希望の党の公約である)2030年までに原発ゼロを目指すことや、みんなが景気の回復を実感できるまで消費税を凍結するのならば、どこで歳出を削減し歳入を得るのか、具体的な提案をしてほしい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。