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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)北朝鮮への制裁決議、(2)こども保険、(3)消費税率の引き上げ、(4)米国中西部とのコラボレーション、(5)柏崎刈羽原子力発電所、(6)世界的なガソリン車禁止の動向、(7)東芝のメモリ事業売却、などについて発言があった。

Q : 今朝、国連安全保障理事会が、北朝鮮に対して新たな制裁決議を採択した。これに対する受け止めと、この決議には実効性があるのかどうか、北朝鮮の行動は今後変わるのか、そして今後の動きをどうみるか。代表幹事の所見を伺いたい。

小林: いろいろ議論して時間をかけるよりは、どこかで妥協して早めに対応するのが一つの方向だったと思う。最初、米国は原油の輸出を全面禁止とする案をまとめていたが、譲歩するなど一部妥協したところもあるが、全会一致で可決したことに意味があると思う。問題は、それによって北朝鮮が本当に(核兵器やミサイルの開発を止めるのかどうかだ)。今までの歴史を見る限り、どのような制裁決議をしても、それを逆手に次から次へ新しいアクションをとってきた。今回も、新たにミサイルをどこへ向けて発射するかわからないが、決して制裁決議が採択されたから安心(できる)というわけにはいかない。ロシア・中国も当然、平和的解決を望み、プレッシャーをかけてほしくないと考えているだろう。先週、日中国交正常化45周年記念の関係で北京を訪問した折に、何名かの中国の要人から話を聞いた。極端なことを言えば、日本には南シナ海の話は関係ないだろうとか、米国と相当べったりしているといった一種のわだかまりを安倍政権に対して未だに持っているように感じた。そのような状況で、ロシア・中国が一定程度妥協できるところで米国が決議を導いたことは大いに評価できる。ただ、だからといって、楽観的に見るのは非常に危険ではないかと思っている。

Q : 北朝鮮問題の緊張感の高まりにも関わらず、マーケットは比較的冷静に対応している印象がある。本日の日経平均株価は200円以上の上昇、為替は対ドル109円台で推移している。この動きに対して代表幹事の所見を伺いたい。

小林: お金が余っている状況のなかで、相場を動かすことによって儲ける人たちの行動は自ずと想像できる。基調としては、国連の決議も含めて全体がまとまりつつある中での安堵感から、やや円が安くなり、株価も上昇しているというレベルである。国連の制裁決議採択を受けて北朝鮮から発信されている言葉を考えると、(朝鮮労働党創建記念日の)10月10日に向けて、(北朝鮮が何らかの動きをする)危険は十分にある。もし、ミサイルがグアム島やハワイの方向に発射されることがあれば、米国の選ぶべきオプションがどんどん狭まってくる。そういう事態にならないとは言えないので、マーケット・為替の動きについては、10月10日が過ぎるまで予断を許さないと見るべきである。

Q : ミサイルが発射されたとすれば、株価の下落や為替の大きな変動は避けられないか。

小林: 避けられないだろう。

Q : 先ほど、安倍首相の対外政策について「米国べったり(と中国のある要人が述べていた)」という発言があったが、それは確かにそうだと思う。北朝鮮に限って言えば、小泉純一郎元首相が訪朝し、日朝平壌宣言が調印され拉致被害者が帰国してから十数年経つ。ミサイルを撃ち込まれる状況になってしまうと、対話路線が全て否定され、最悪の結果になり、経済も何もあったものではないと思う。ロシアのウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領が安倍首相に対して、制裁を強めるのではなく多元的な外交手段しかないと会見で述べていた。河野太郎氏が外務大臣に就き多少期待したが、むしろ安倍首相と同じようなスタンスだと思う。9月下旬から臨時国会が開かれるにあたって、国会議員の資質の問題はさておき、どのような対外政策をとるべきか、(代表幹事が)中国を訪問されたことを踏まえて伺いたい。東アジアの平和的解決には米国べったりではだめだと思うが、そこを解決する道はないか。

小林: 安倍首相はマルチに外交されていると思う。プーチン大統領ともよく会談されている。唯一、中国の習近平国家主席とは、海外の会議では会われているが、(首脳として)お互いの国を訪問したことは一度もない(状態である)。(中国とは)そのような関係とはいえ、(安倍首相は)明日からインドを訪問し、中東(訪問)も含め英国(首相との会談)など、マルチ外交については歴代の首相と比べると非常にアクティブであると思う。しかし、北朝鮮は相手が悪すぎる。対話や国連の制裁を何回やったことか。(そうした手段が)全く効かない中で、放っておいたらこの10年間で、ついに核弾頭を搭載したミサイルを(開発し)、下手をすれば米国本土にまで届く。日本に至っては、いつ攻撃されるかわからない。対応がどうしても直線的に(ならざるをえず)、ある程度圧力をかけなければならない。オバマ前米国大統領のような忍耐だけでは、北朝鮮がどんどん攻撃力を強めてしまうという危険を放っておくわけにはいかない。そうするとやはり、日米安全保障条約という長い間培ってきた日米韓を含めた(対応が必要である)。一方で対話路線を取りながら、一方では一定程度の武力的圧力が必要なのではないか。少なくとも相手が悪すぎる。

Q : 今回(の国連制裁決議は)、全面禁輸ではなく、ある程度の上限を設けた禁輸だったため、まだ制裁の余地を残しているのかもしれないが、スイスでは(東アジアの安全保障について話し合われる官民共催の国際会議が開かれ、そこで)北朝鮮と米国、もしかしたら日本も入り、6か国の安全保障が動くかもしれない。10月10日の(朝鮮労働党創建)記念日に向かって警戒しなくてはならないということか。

小林: こちらから圧力をかけるという意向に対応したのが今回の国連決議であり、一定程度ロシア、中国の意向を汲んで全会一致となった。したがって、日米韓から何かをしかけるにしても、力(武力)ではそのような圧力はないだろうが、何かあったら次の選択肢はますます狭まるということに極めてリスクがあると思う。

Q : 前回の定例記者会見で、こども保険について伺った。こども保険制度の財源として年金返上の話があり、「中途半端なごまかし(をやめるべき)だ」という回答だったが、提唱した小泉進次郎 自民党筆頭副幹事長の(こども保険に対する)趣旨は、「社会全体で子どものことを考え、財源をなんとか作り出していく機運にしたい」ということだそうだが、どう考えるか。

小林: 子どもの教育や防衛も含め、(国は)財源をあまり気にしないで国債を発行してきた。そうではなく、財源をベースに新しい施策を打つという機運にはなっているだろう。こども保険も一つの提案として、議論のトリガーになるという意味では全く問題ないと思う。昨日偶然、小泉進次郎氏と会い、頑張るよう声をかけた。(こども保険は)一つの考えであるが、(税金を)取るべきところからしっかりと取る方向で進めつつ、財源不足についての議論のとっかかりになったことは意味があると思う。

Q : 小泉氏から改めて(こども保険に関する話題を)持ちかけられたか。

小林: 世間話だった。財源を真面目にお考えになっていることは確認した。

Q : 消費税について伺いたい。(代表幹事は、)こども保険の問題でも真正面から議論しなければならないとの考えだと思うが、岸田文雄 自民党政調会長が、消費税は確実に引き上げていくと言いながらも、国民の誰もがそれを信用していないのではないか。経済界から見れば、消費税率引き上げをきちんと実施してほしいと何度も言っているにもかかわらず、過去に2度延期されている。インボイス導入の議論に関しても、あまり消費税の動きが始まったと感じられない。これについてどのように見ているか。また、経済界として、かつて首相に申し入れをしたことがあったと思うが、どう考えているか。

小林: インボイスを含めて、(導入するには)中小企業がファシリティを用意しなければならないという話が2~3年前にあった。日本行政のIT化の進み方(を見ると)、マイナンバーカードも8~9%しか普及していない。インボイスに関しても、2020年以降は全部整理して消費税(の引き上げ)に備えようという議論も、いつしか立ち消えになっている状況で、非常に残念だ。欧米では、消費税が20%近くになってもそれほど国民に抵抗感がない。日本人は、日々の買い物で少し消費税が上がると痛税感がある。だが、社会保険や他の税金では、(税率が上がっても)消費税に比べてピンと来ていない。いつの間にか保険料が上がっても、あまり把握していない。そういった意味で、もう少し政府広報やメディアも含めて、日本の財政がどれだけ危機にあり、それを補完するためには消費税を15~20%に上げていかねばならない(といったことを伝えるべきだ)。世界では法人税を下げる方向であり、米国が15~20%に下げると日本が(先進国の中で)一番高くなるなど、そういったことは散々(メディアでも)書かれているが、国民にはいまだに納得感がない。政府やメディア、我々も含めて、どのように広報活動をしていくかが、次の世代に対して当然の義務だと思う。今が良ければ取り敢えずいいだろうと、ずるずると来ているのが一番危険ではないか。これこそ正に、今、心地よいがいずれ(致命的な状況に至る)といった「ゆでガエル現象」を呈している日本の政治状況ではないか。それをつくっているのは日本国民であるという認識が比較的少ない。それが問題だと思う。

Q : 経済同友会の夏季セミナー開催中に、新しく着任された(駐日)米国大使(のハガティ氏)から電話があったとお話しされていたが、その後お会いになったか。

小林: (ハガティ大使とは)近いうちにお会いする(予定だ)。昨日から、日本・米国中西部会の会合が開かれ、(米国)中西部の各知事と日本の首長や経済人が集り、(私自身は)パネルディスカッションに参加した。最初にハガティ大使が挨拶をされたが、彼はテネシー(出身)である。本日も中西部の知事とお会いする機会があるが、(経済同友会では中西部の州政府と日本との)経済プロモーションを今後(進めるべく検討している)。(昨日の)パネルディスカッションのタイトルにもあるように、「成功へのコラボレーション」という議論をしている。日本(企業)はインディアナ州だけで約300社進出しているし、全米での(三菱ケミカルホールディングスグループの売上高のうち、中西部で)20%レベルの売上高がある。(インディアナ州は)とりわけ自動車関係や自動車部品(産業が強く)、そういう場所である。特に経済人としては今後ますます強い絆で(結ばれ)、例えばTPP11をコアにして、米国にもう一度TPP(協定への参加)を考え直してほしい、NAFTAについても前向きな結論を出してほしいという話はしている。

Q : 東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が、明日の原子力規制委員会で事実上の安全審査合格となる予定である。地元の同意等の見通しは立っていないが、東日本の原発が再稼働に向けて動き始めることについて所見を伺いたい。

小林: 沸騰水型(の原子炉の安全審査合格)は初めてなので、報道によると、もう一段上の安全対策が必要との話もある。新潟県知事が福島第一原子力発電所を視察されたが、コメントを聞く限りは、原子力規制委員会が安全審査に合格を出しても、県の最終判断として(原子力発電所を)すぐに再開となるには、もう一段階の努力がいるだろう。

Q : 英仏でガソリン車を禁止する動きがあり、中国もこれに追随している。日本でもこうした規制が必要か、また日本のメーカーがこれに対して今後どのように対応できるのか伺いたい。

小林: これは当然の流れを加速したものだと思う。日本のメーカーも10年近く前からEV車を販売している。ハイブリット系や水素を使った燃料電池など多様な動力源を提示しつつ、他国が真似しづらい内燃機関による駆動力(の技術を使用すること)で、収益や日本の強さをエンジョイしようという戦略も一部あったように思う。どの技術でもそうだが、古い技術を持っているところでは(新しい技術が浸透しない)。固定電話があると携帯電話、スマートフォンは流行らない。フロッピーディスクやテープが根付くと、なかなか光ディスクが出てこない。しかし、(旧来技術をもたない)後進のところでは、(かえって新しい技術が)浸透しやすい。それと同じように、内燃機関としてエンジン系(の技術)を持っていない、HEV(ハイブリッド電気自動車)も難しくて生産できない、トヨタ自動車が燃料電池車の特許をオープンにして普及させようとしたがなかなか付いていけない(国・地域がある)。そうすると、シンプルなリチウムイオンバッテリーや、次のバッテリー技術をベースにしたモーターは、自動車技術が後進の企業にとっては最高の戦略である。また、北京などのPM 2.5の状況を見ると、CO2削減というのは最大のポイントとなる。これを合わせると、英仏が最初に取り組んだとはいえ、中国もものすごい勢いでEV車にシフトしている。日本のメーカーも、マーケット規模が10倍以上あるような中国や欧州を考慮すると、やはりEVに相当なエネルギーをシフトせざるを得ない状況にある。ただ、一番危惧されるのは、コンシューマーエレクトロニクスなどのモジュール型、組み立て型産業の技術はすぐに真似される(ことだ)。太陽電池や半導体、ストレージメディア、液晶、リチウムイオンバッテリーなどのエレクトロニクスは、あっという間に真似されてしまっている。これに加え、自動運転車、特にITテクノロジー、人工知能が入ってくる中で、この4~5年で熾烈な国際競争が明確になってくるのではないか。一つのチャンスではあるが、非常に激戦になるだろう。パッケージした自動車産業だけでなく、これに素材や電池を提供する企業も、必然的に世界戦略を考えなければならない時代にきている。テクノロジーの方向性としては、インドや中国の都市化が進んで大気汚染が進んでいるなかで、電気自動車の方向に進むだろう。

Q : 日本も同様にガソリン車規制を取り入れるか。

小林: 歴史的にみると、技術は規制を強めると進んでいく。日本の場合は、CO2削減に対して高い目標を掲げており、原子力発電所が停止している中では、一見厳しいかもしれないが、規制をかけることでより早く技術が展開するトリガーにもなると思う。

Q : 東芝のメモリ事業売却について、13日には売却先が決定するかどうかという大詰めの局面を迎えている。代表幹事は(社外取締役として)東芝の経営に関与する立場でもあるが、現状の動きや望ましい決着の仕方などについて、所見を伺いたい。

小林: 事実として、日刊工業新聞の報道は(東芝が)公表したものではない。一般論で、ネゴシエーションには相当な戦術が必要になる。10~15年先になってから禍根を残さない(ことが重要である)。日本の場合、落とし所でお互い妥協して、後にとんでもないことになるということが多々あった。きちんとした契約(を結び)、将来、安定して事業ができるところに持っていく(必要がある)。タイムリミットはあるが、最後の最後まで良い方向に持っていくべく交渉するのは当然だと思う。相手があることなので、(単に)決められないのではない。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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