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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)北朝鮮のミサイル発射、(2)エネルギー基本計画の見直し、(3)トランプ政権、(4)顧問・相談役制度と財界活動、(5)子ども保険、(6)韓国・文大統領の強制徴用賠償発言、(7)東芝の半導体メモリ事業売却、などについて発言があった。

Q : 北朝鮮情勢について伺いたい。今朝、弾道ミサイルが発射され、日本の上空を通過し、緊迫感が高まっている。今の北朝鮮情勢と経済の影響についてどのように見ているか、また、政府の対応として期待することについて伺いたい。

小林: 北朝鮮情勢の影響か、日経平均は(前日比)111円ほど下がっているが何とも言えない。やや円高にはなっている。想像を絶する北朝鮮の暴挙が続く中で、マーケットは比較的冷静に受け止めていると見るべきである。これだけ長い間、北朝鮮は火遊びを続けているが、今のところ米国、日本、韓国は、国連を中心に対話路線を進めている。韓国の報道からは、相当強化したが開始されたと伝わってきている。官邸も対話のみならず、ある程度具体的なアクションも必要だろうという見解を述べている。こうした問題を国民に知らしめる方法として、Jアラート(全国瞬時警報システム)、Em-Net(緊急情報ネットワークシステム)などもあるが、どういう時期にどのように連絡するのか。今回Jアラートは(ミサイルが発射されてから)発信に4分かかったようだ。(今回のような事態に対しては)機密事項があり非常に複雑な情報管理が必要である一方、国民の安全のために早めに知らせていただきたい。実際問題として、ミサイル発射の検知可否に関わらず、一般的なマニュアルを国民に(事前に)知らせておく方が、安心感がある。どこに逃げてよいかわからないという問題が複数出ているようだが、シェルターがないのであれば、大きな建物(等)の下に潜ることになると思われる。これまで平和を享受できていた日本国民が、ヒステリックな方向に行くのは怖いことである。ただし、冷静に打つべき対応として、日本としては国連を中心に対話路線を堅持していくのが筋であると思われる。こうした情報対応、マニュアル化について、より踏み込んだアクションを取っていただきたい。

Q : 北朝鮮(のミサイル発射)に関連して伺いたい。(日本の)国防に係わる方は、絶対に戦争をしてはいけないという意識が強い一方で、現政権には、米国の傘下にあるから大丈夫ではないかという意識があるように見える。独自の外交を展開をしなければ、日本は甘く見られてしまう。中国は共産党党大会を控えて平静を保ちたいように見える。先ほどの質問で代表幹事は「火遊び」とおっしゃったが、明確な平和のメッセージを打ち出していかないと、実際に迎撃ミサイルを撃つ局面になった場合、どうなるか分からない。河野太郎 外務大臣・小野寺五典 防衛大臣の体制となり、日本としての独自外交を展開すべきではないか。

小林: (北朝鮮のミサイルが)グアムに向けられていた中で、あれだけトランプ米国大統領が明確な対応をして、北朝鮮としては米国方面に(ミサイルを)撃ち込むことが戦略的に今の段階では得策でない(と考えたのだろう)。(一方で)米韓(合同軍事)訓練に関し、自国民に向けて何らかの形で総括しないとまずいと思ったのか、グアムから方向を切り替えて、何もしないであろう日本、(かつ、高度が)高いところに撃ち込めば迎撃されることもなかろうと(いう)、彼らなりの解を行動に移したのではないかと個人的には見ている。北朝鮮は、対米国、対日本、対韓国、それぞれに全く違う思いを持っている。今回(のミサイル発射は)、いみじくもその反応のひとつと捉えるべきだ。日本は核の傘なり、米国という大きな傘の中にいるのも事実である。トランプ米国大統領は、安倍首相の個人的な関係もあり、日本を守ろうという意思があるのは間違いないが、そうは言っても国家間の問題である。グアムから北海道に方向が変わったのを見るにつけ、安倍首相が培ってきたロシア、中国、あるいは韓国、インドなどと、日本独自の外交(を展開すること)の必要性がますます高まったのではないか。防衛については、米韓とともにいかに守る方法を考えるかだ。この2本立てで考えるべき問題ではないか。対ロシアや対中国(との関係は)非常にクリティカルな状況になっている。

Q : 北朝鮮が弾道ミサイルを発射したが、マーケットは比較的冷静に動いている。しかし、来月の9月9日は北朝鮮の建国記念日、9月11日はアメリカ同時多発テロ事件が起こった日であり、節目となる日が続く。本日のミサイル発射の前には、核実験の懸念もあった。そういった戦争リスクがある中で、今後のマーケットの動きをどのように考えるか。

小林: こういう事態に乗じて(マネーゲームをし、相場を)下げたり上げたりする人もいるが、これだけ金余りで投資先がないので、それほど大幅なシュリンクはないのではないか。万が一、そのようなリスクが生じた場合も、マーケットは世界の正義を信じて動くと思うので、このような出来事で大幅に下がるというよりも、楽観的に見ているであろうことを信じるしかない。経済全体は間違いなく良い方向であり、中国も含めて、米国、イギリスを除く欧州は伸びている。それをベースに、日本もこれだけ資金を投入し、金利を下げて下支えしているので、ここで急激に経済的にダウンすることはないと思うが、円が強くなるという危惧はある。

Q : 政府では、エネルギー基本計画の改定に向けた議論が始まりつつある。経済界の一部で強く求められている原子力発電所の増設について、世耕弘成 経済産業大臣からは盛り込まない趣旨の発言があった。経済同友会では、原発は社会から受容される存在であり、長期的には代替のエネルギーを技術開発しながら(原発を)減らしていくとする「縮・原発」を掲げているが、現段階で、政府が増設について踏み込まないことの是非をどのようにお考えか。

小林: 2年ほど前に発表した提言『わが国における原発のあり方―豊かな国民生活を支えるベースロード電源として社会に受容されるために―』(2015年3月24日発表)では、2030年時点での原発依存度は20%程度を下限とすることが現実的であるとの意見を示した。30~50年先には、できれば原発(依存)から卒業して、一部では化石燃料も利用しながら、徐々に再生可能エネルギーへの代替を推進していく「縮・原発」の考え方で一貫している。新たな原子炉に関して、まだ再稼働すべき原発が20基以上ある中で、今のテクノロジーベースでの新設は基本的に難しいのではないか。まずやることは、現在、停止している原発の安全性を確認して再稼働していくことと、(運転期間の制限である)40年を60年にもっていく議論が先である。その後、新しい技術で、より(放射性物質が)拡散しないようなシステムやプロセスを改良した暁には、新規(建設)の話も必要になるだろう。廃炉(を行っていく)だけでは、原子力の技術者がいなくなり、廃炉さえもできなくなる。(原子力エネルギーは)一度食べてしまった禁断の果実であるから、30~50年のオーダーで廃炉について考え、新設についても考えていく。今は、安全を担保した原子炉をいかに多く稼働していくか。エネルギーコストが韓国の3倍、米国の2倍という状況では、エネルギー多消費型産業は日本ではあり得ない。この状況を少しでも緩和していくことを考えるべきだと思う。

Q : 経済同友会が掲げる「社会から受容される存在としての原発」という意味では、この状況をどう考えるか。

小林: テクノロジーにおいても、より拡散しないようにした、社会から受容されるような技術(が必要である)。これがなければ、原子炉の新設はなかなか(社会に)受け入れられないのではないか。既存のもので、地震、津波対策等が完璧と思われるレベルと判断された原発は再稼働をする。個人的には、新設(の議論)は時期尚早だと思う。

Q : 広報担当の交代など、米国トランプ政権の現状についてどう見ているか。

小林: (トランプ米国大統領は)民主主義で選ばれた大統領である。独裁色の強いロシア、中国、北朝鮮など(を鑑みるに)、かつて学校教育で受けた民主主義・自由平等・博愛の理念を持っていない人たちに世界が牛耳られている(ように思う)。一方で、民主主義の名の下にポピュリズム化し、必ずしもトランプ米国大統領だけではないが、相当に独裁色が強そうな(リーダーによって、)国際社会そのものがグローバリゼーションとデモクラシーという、真っ当であったはずの理念から外れてきている。むしろ21世紀になり、ITやAIが進み、資本主義によって一握りの人がイチ・ゼロの競争で徹底的に勝つことで格差が生じ、民主主義そのものが歪んできている。そのように捉えた中で、たまたま出てきたのがトランプ大統領やフィリピン(のドゥテルテ大統領)、あるいはトルコ(のエルドアン大統領)である。かなり独裁色の強い方々が(国を)牛耳っており、効率はいいかもしれないが、どこへ進むか分からない。トランプ氏が大統領に選ばれた時に、私がまず述べたのは「リターン」だ。ギリシャ時代のアリストテレスやプラトンが提唱した原始的な民主主義から(始まり)、それは正であると思っていたが、資本主義という名の下にマーケットが全てを牛耳ることになり、カネが全てのベースとなり、生活そのものに格差ができた。それによって不満が蓄積し、文明国が病んできている。そうした中で、日本は首相が1年ごとに代わるようなデモクラシーをやってきたが、ここへきて安倍首相が一強(体制)でここまで来られている。何が正しいのか、最後は国民一人ひとりのレベルで、思想性や深い思いを持って、(世の中を)見直さなければいけないし、メディアも冷静に歴史観と世界観を明確にしながら伝え、議論をしていくことが国の力になるのではないか。とんでもなく恐ろしく複雑な時代が訪れたという気がしている。トランプ大統領がどうなるかは何とも答えがない。(世界)全体がぐちゃぐちゃになりつつあることをもっと認識すべきだ。

Q : 相談役や顧問に対する株主や社会の目が厳しくなり、一部でそのような役職を廃止する企業も出てきている。こうした動きが進んだ場合、財界活動にどのような影響が出るか。具体的には、相談役、顧問を廃止すると、企業から財界活動への人的、金銭的支援が難しくなる懸念がある。一方で、社長、会長が中心となった場合、果たして財界活動は可能なのか。またその場合、財界人の若返りに繋がるなどの影響も考えられる。これらについて見解を伺いたい。

小林: 未来投資会議の「企業関連制度改革・産業構造改革―長期投資と大胆な再編の促進」会合でも議論されており、また経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会から3月にレポートが公表されているが、質問をいただいたような議論が多く出ている。感覚的に言えば、ある企業の相談役が長期にわたって人事に関与し、会社の方向性を歪めてしまったというのが(この議論の)最初のトリガーになっている。端緒は、エビデンスベースで相談役は悪ではないかと問題提起がなされたこと、もう一つは海外では相談役という役職がないことである。相談役というのは後払い給料のようなものともいえる。海外企業では社長、会長を務めている間に多くの給料を受け取るため、退任後は完全にリタイアし、会社はまったく面倒を見ない。しかし、日本企業は社長、会長の給料が(海外に比べ)低く、されど早く退任させるために、相談役にして給料を支払い、秘書を付けるなど、そもそもの仕掛けが違う。有名な大企業の中には名誉会長などが複数いて経済界の様々なところで活動し、資金も企業が面倒をみているところもある。社会性豊かな活動をすることの何が悪いのかといった、いろいろな議論がある。CGS研究会の報告書では、相談役、顧問が悪いわけではないが、説明責任だけは果たしてほしいとまとめている。企業において、相談役が社外取締役や政府会合、経済団体などでどのような仕事をしているか、給料や社用車、秘書の有無など、処遇を説明するべきである。必ずしも相談役、顧問が悪であり、廃止すべきとは主張していない。コーポレート・ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードのいずれにおいても、(廃止が)強制されているものではないことは明確にしておきたい。

Q : 仮に相談役、顧問が廃止、縮小されていった場合、社長、会長が財界活動の中心になるのか。特に社長は経営を中心に見なければならず、企業側からすれば、財界活動をする必要がないという方針になる可能性がある。これについてどのようにお考えか。

小林: 社長はオペレーションを行っているので、財界活動は勉強程度には付き合えても、自分の時間を割いたり、エネルギーを使ったりすることは難しいだろう。株式会社の三つの類型でいえば、会長職にもいろいろあるかもしれないが、基本的には社長が執行し、会長が監督する。特に指名委員会等設置会社では、会長は社外取締役と同じようにほとんどオペレーションをしないことになっているため、CEO(を同時に務める)ということはありえない。むしろ取締役会議長として、会社のコンプライアンスや将来の設計、戦略に対して、しっかり監督していくというファンクションであるので、会長職であれば、外部の仕事をしようと思えば可能だと思う。ましてや相談役になった場合、せっかくの人物であれば、社内にしがみついて相談役、顧問でいるのではなく、今までの知見を異なる業種での社外取締役や業界活動などに活かしてもらうべきである。ただ欧米の真似をすればいいというものではないので、最終結論としては、相談役、顧問を否定はしない。ただ、海外の投資家から見ると、アドバイザーというのは理解を得にくいので、直接経営に関与していないという点については説明責任を果たすべきであると認識している。

Q : 朝日新聞(8月25日付)のインタビューで、小泉進次郎 自民党筆頭副幹事長が、子ども保険の財源をどうするかという議論の中で、給料をたくさんもらってきた経営者の年金を返上していただき、それを財源に充てようという主張をし、既に経団連と経済同友会の方には伝えてあるとの報道があった。小泉氏から小林代表幹事、あるいは横尾副代表幹事・専務理事、また経済同友会に対して提言があったのか。

小林: 個人的にはまったく聞いていない。どこかの委員会で小泉氏が講演したのかもしれないが、具体的なことは一切聞いていない。

横尾: 私も聞いていない。

小林: そもそも子ども保険は、経済同友会でもたくさん議論があった。保険というコンセプトは一体何なのか。経済同友会で常に主張しているのは、消費税率を17%までもってこなければとても財政健全化できない、それは算数として明らか(だということだ)。(そうした議論に)真っ当に戦う、それこそが政治であって、中途半端な政治のまやかしをやってもしょうがない。経営者が年金を返上するというのは個別(個人)の話であって、政治の中の政策論とは別である。そういう中途半端なごまかし(を止めるべきだ)。今も他は(社会)保険料を含め上がっているのに(納税者は)気づかない。そこはフェアに、しっかりと事実をベースに国民と対話をするべき事ではなかろうか。

Q : 韓国では、大統領が代わる度に強制徴用問題(が取りざたされる)。(文在寅大統領が)国家間では解決しているが、個人の賠償についてはまだ権利があると発言し、日本政府はこれを一蹴しているが、日本企業にとって、韓国トップの言及が数年おきに繰り返される現状を、どのようにお考えか。

小林: 慰安婦問題も含めて、国家間でしっかり決めたにもかかわらず、時の政権が代わるたびに(繰り返される)というのは、それに与することは危険である。決めたことは民間を含め進めていかないと、国家間の交渉そのものが成り立たない。論外ではないかと思う。民間企業が、もう一度、賠償を考えるということはやめた方がよい。

Q : 東芝の半導体メモリー事業売却について、現在、交渉は最終局面と言われている。東芝は、半導体メモリー子会社・東芝メモリを米ウエスタン・デジタル(WD)を含む陣営に売却する方向で最終調整に入ったとの報道もある。このことについて、代表幹事の所見を伺いたい。

小林: (私自身が東芝の)社外取締役であり、情報に関して極めてセンシティブな立場にあることから、細かいアクションについてのコメントは差し控える。大きな流れとして(捉えているの)は、これまで日本で培われ、将来を見越したテクノロジーを、(今後)日本の中でどのように守っていくのかということと、会社にはいろいろなステークホルダーが存在しており、従業員、株主、投資家、銀行等も含め、それぞれに思いも考え方も違う(ことだ)。(関係者が)そのあたり(の調整)を努力されているので、何とかよい結果になってくれればと念じている。

以 上

(文責: 経済同友会 事務局)


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