ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年7月25日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

冒頭、夏季セミナーの取材に関し、お礼を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)賃上げとデフレ脱却、(2)加計学園問題、(3)内閣改造への期待、(4)日本橋の再開発、(5)内閣支持率低下と政権との距離、(6)連合・労働組合の役割、(7)働き方改革、(8)上場企業の適時開示制度、(9)憲法議論などについて発言があった。

Q: 最低賃金の動向について、本日午後から厚生労働省中央最低賃金審議委員会(目安に関する小委員会)が開かれ、最低賃金の全国平均目安が決定される見通しである。最低賃金を巡っては、政府は3%程度の賃上げ目標を掲げており、今年度も時給で20円を超える大幅な引き上げになると見込まれる。最低賃金を巡っては、昨年も過去最高の(時給)25円という引き上げがあり、ここ数年高い水準での引き上げが続いている。経済界の中でもデフレ脱却、経済の好循環実現のためにやむを得ないというような声もある一方、中小企業を中心にあまり急激に上げると景気回復の足を引っ張るのではないかという懸念もある。ここ数年の最低賃金の動向に対する評価と、懸念があれば伺いたい。

小林: 韓国は相当ドラスティックに(賃金を)上げようとしているが、日本はOECD諸国に比べれば相対的に(最低賃金が)まだ低いのが事実だ。物価が上がらないとはいえ、経済をけん引する一つの要因になるという意味では、(最低賃金を)上げていくべきだと思う。中小企業に関しても、あまり急激な値上げは経営そのものにダメージがおよぶが、ある意味ではゾンビ企業など、効率の悪いものを転換する意味で必ずしも悪い要因ではない。(最低賃金を)2~3%上げていくことは消費喚起も含めて必要ではないか。

Q: 企業が自主的に賃金を上げるのであれば、企業の判断で上げ幅を決められるが、最低賃金だと強制的に(上げることに)なる。企業として、選択できないまま賃金を上げざるを得ないことについて、どう考えるか。

小林: 基本的な底上げの部分に関しては、やむを得ない(と思う)。

Q: 日銀が消費者物価指数2%の達成目標を先延ばししている中、デフレが長らく続いてきたために、消費者にとっても価格の値上げは辛い状況だ。企業間でもなかなか価格の引き上げは難しい状況が続いている。ヤマト運輸の事例が、やっと値上げを(実現)できた良い例と認識され、他の企業が追随することへの期待もある。ただ、ヤマト運輸の場合は、再配達や残業の未払い問題など、引き上げざるを得ないという認識が一般にも広がったからこそできたという面がある。これに他社が追随するのは難しいと思うが、続くとしたらどういった企業や業種が続くと思われるか。

小林: 難しい質問である。特にサービス関係で、あまりに合理的でない値下げ競争は考え直そうという機運が高まってきたのは、マインドセットを変更するという意味では非常によい方向だ。全体的にはそういう方向で議論が進んでおり、業種によっても様々な状況であるが、ましてやこれだけタイトな雇用情勢においては、賃金も当然上がり、それに対して(経済の)循環が動いてくるだろう。

デフレマインドの払拭というレベルでは、かつては円高で、(企業が)海外に進出し、グローバルな労働コストに影響されて低く安定してきた面がある。多くの製造業まで、(ヤマト運輸の例が)そう簡単に波及させるのはなかなか難しい。サービス業に関しては、ホテル代にしても、(サービスに対する対価が)あまりに他国と比べてトータルに安いことが明らかである。過当競争を生むよりは、お互い、全体を底上げしていこうという雰囲気になりつつある。ただ、日銀が4年かかっても(消費者物価指数が)2%も上がらない、(達成目標が)2019年に先延ばしとなっていることからも、結果として時間がかかってしまうと思うが、そういう方向にいくことは間違いない。特殊な業種については、情報を持ち合わせていない。

Q: 国会の閉会中審査で、加計学園問題について安倍首相が追及を受け、説明責任を求められている。また、内閣支持率が低下している中で、来月上旬に内閣改造と自民党の党役員人事が見込まれているが、所見を伺いたい。

小林: 今一番の関心事だと思うが、北朝鮮がミサイルの発射を匂わせ、EU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)が前向きに動き出し、あるいはTPP11も含め、外との関係で緊急な事態が発生し、トランプ政権やイギリスのBrexitなど、単純な状況にはない。加計学園問題も重要だが、それだけで国会が動いていくというのも情けない。もう少しやるべきことをやり、前向きなことも議論しながら、防衛や通商政策も含め(取り組むべきではないか)。それらを放っておいて、あのような議論に何か月も割くのはもったいないというのが第一印象である。(加計学園問題について)それもこれも、結果としてあまりきれいな説明がされていないところをきちんとしてほしいという思いがある。内閣改造については、フレッシュさ、あるいはかなり変革するという意志を国民が要求していると感じる。いずれにしても、映像(など)を通じた報道を見て、結果として国民がどう判断するかということだと思う。

Q: 加計学園問題が「政争の具」になっているが、元を正せば岩盤規制をドリルで打ち破るということで国家戦略特区を設けた。しかし、ふたを開けてみれば、(首相の)友人の学校をつくるためのもので、文部科学省 前事務次官の前川 喜平氏がおっしゃるように(行政が)ゆがめられたのではないか。規制緩和の中、全く違うレベルの判断で(政治を)動かすということは本末転倒だと思う。経済同友会は規制緩和を掲げているが、これについて、どう考えるか。

小林: 長い間、規制改革(を掲げてきたが)、今でも思ったほどのスピードで進んでいるわけではない。手法として、民間の有識者を入れ、フェアに議論する場をつくったことは大いに結構である。規制改革に限らず、新しい政策を今まで何も決められずに、議論ばかりで堂々巡りしてきた。方法(について)は議論があると思うが、決められるようになりつつあることも事実である。したがって一概に強い手法が間違っている(とは言えず)、その方向についてもう少し議論しさえすれば、また元通りの何も進まない政治よりはましではないか。原則原理を明確にしながら(国会を)オープンな議論の場に戻していく(べきである)。そうすれば、流れの速い世界に対して(相対していけるのではないか)。例えば国内への直接投資が相変わらず日本は少ない。ビジネスのしやすい国に2020年3位になる目標とは裏腹に、毎年どんどん順位が下がり26位にある。それはやはり相当規制が多いからである。マイナンバー制度にしても、何か一つのことを成し遂げようとする時に反対派はいるが、一定程度フェアに議論し原則に則って、スピード感を持って進めることは、ぜひ守るべきだと思う。

Q: 先週、日本橋の再開発について国土交通省が首都高速道路を地下に潜らせる検討案を表明した。これをどのように受け止めているか。問題は費用負担で、現状では首都高を地下に潜らせるには数千億円が必要だと言われており、東京都と首都高速道路会社が負担することになっている。これに民間も絡む可能性があるのか。例えば、PFI(Private Finance Initiative)のような形が望ましいのか伺いたい。

小林: 費用負担としては、PFIやPPP(Public Private Partnership)が普通(の発想)である。ただ、日本橋の景観が悪いから(首都高を)地下に埋めるという発想には、にわかには賛同できない。(首都高の地下化が)結果として、都会地区における地下の利用という意味での新しいイノベーションと捉えれば、それなりに意味がある。都会地区では、地下空間が空の空間と同じく重要な位置付けになると思われる。

Q: 再開発で容積率を広げたうえで高層ビルを建てると再開発業者にとって儲けが大きくなるため、これを一部、地下化に回すとの考えもあるようだが、これにも民間が入るべきとの考えか。

小林: 民間がある程度入るべきである。

Q: 先日の東京都議会議員選挙、仙台市長選挙の結果から、一強と言われていた安倍政権もしくは自民党に疑義が生じていることは、明らかである。北朝鮮の問題やTPPなど経済の問題を考えた際に、安倍政権の姿勢や考え方に対し国民の気持ちが離れているのではないか。経済界としては、安倍政権の目指す経済政策をこれからも堅持してもらいたいという意味で、政権を支持していくのか。

小林: 前から申し上げている通り、是々非々で判断したい。例えば、財政再建では、(2020年度に基礎的財政収支黒字化という)高い目標を掲げる一方で、(試算では、2020年度の)プライマリーバランスは8.2兆円の赤字であり、これに対しては、決して支持していない。ただ、TPPや北朝鮮、中国の動きを見ると、もっと積極的にやってもらいたい。どの政権であろうが、民間の経営者団体としての経済同友会の意見としては、基本的には変わらない。ただし、防衛、通商、貿易では、問題が山積みの中で、今までの4年半(の成果)は十分評価できるのではないか。一方、手法、体質に関しては、今回の都議選、仙台市長選の結果がはっきり示しているように、4年半経ち国民が一種の違和感を覚えている。この点はそれなりに改め、説明責任を果たしながら、少数意見も聞いた政治をやっていかないと民の心は離れていくという認識でやっていただきたい。保守の政治で経済を中心にやっていただきたい。

Q: 内閣支持率が低落傾向にあり、調査会社によっては、30%を切る結果を示したものもある。また、政党支持率について、自民党の支持率も低下しているが、その低下分は野党ではなく、無党派層に流れているとの傾向が示されている。これらには、どのような背景があると考えるか。

小林: 経済同友会の設立趣意書にも書いてある通り、我々は、政治的に無色である。その前提で答えると、エマニュエル・マクロン仏大統領も、もともと政党を持っていたわけではなく、フランス・ファーストを掲げて(勝利した)。既存政党に対して、大変な疑心暗鬼の思い(を持つ人)がフランス国民には多かったということが表現されている。言ってみれば、ドナルド・トランプ米大統領(の当選)も、従来の民主党政権というエスタブリッシュメントに対する一種の反発があった。民衆は時の政権に飽きやすく、新しいものを求める部分がある。(同じ政権が)4年半も続くと、なんとなく、動きを見たいような、人々の心があるのではないか。安倍首相は政治家としてはっきりと明確なメッセージを伝えて、ここまで引っ張ってきた。そのような中で、危機感や行きすぎているのではないかという思いを持った人は別の党に投票したい(と思うだろう)が、民進党は現在のような状況である。都議選の場合には、小池百合子氏がおり、都民ファーストの会がマクロン大統領のように大勝したが、国政には今のところ、そのような政党は見あたらない状況のため、このような世論調査の結果になったのではないかと思う。これから先は本当に難しい。安倍政権が、今後、国民が納得できない部分を払しょくして、8月3日と言われている組閣も含め、どう新しく出直していくか。もう一回、支持率を上げていくのか。あるいはこのままの方向で、アンチ安倍の新しい体制もできないままにずるずるといくのか。あるいはこの一年で彗星のごとく新たな人物が現れるのか。今は何とも申し上げることができる時ではない。

Q: 連合は、高度プロフェッショナル制度を容認した。非正規労働者が増えて、労働組合の組織率も下がり、一人ひとりの暮らしに関する協議が、連合という組織内の事情や理論のために進んでいない。これからますます色々な働き方が広がってくる中で、働く人の声を伝える役割を果たしてきた連合や労働組合の役割はどこにあるのか伺いたい。

小林: 連合は働いている人の16%程度しか組織化されておらず、それが全体を集約しているとはとても思えない。働き方の形もこれだけ変わってきて、パートタイムや短時間労働者もいるなかで、素直に考えれば、働き手の代表としての連合がそういう部分も十分に取り込み、代表として意見を集約していくというのがもっともだと思う。経営者サイドも、必ずしも経営者全体の組織ではなく、経団連も1,400社ぐらいの会社のまとまりであり、経済同友会も経営者個人の団体とはいえ、必ずしも全体をまとめているわけではない。連合は、さまざまな労働組織の集合体として、今後も、働く人の思いを集約していくのがいいのではないかと思う。かつては労使(の枠組み)だったが、いまは政労使となっていて、この辺をどう考えるかはなかなか難しい。最初、労使から政労使になった時は一種の抵抗感もあったが、今のやり方は決して反対するものではないと思う。

Q: 今後、連合は変わっていくと思うか。

小林: 変わっていくと思う。7月27日に予定されている経団連と連合の会談がどのような結論になるか分からないが、より幅広い意見を集約するように、連合が動いていくのではないか。

Q: 働き方改革の関連で、先週、経団連が働き方改革の活動プランを出し、商慣行の是正に向けて、他の経済団体等と連携し、秋に共同宣言をまとめたいと発表した。一企業だけの取り組みでは、相手のある商慣行をなかなか解決できないので連携するとの趣旨だが、所見を伺いたい。

小林: 全国中小企業団体中央会、日商、そして経済同友会にも声を掛けていただき、4団体で宣言を出し、連合も含めてシンポジウム行うと聞いている。経営者も幅広く「連合」を組んで行うことは良いことだと思う。商習慣にはかなりの岩盤があるので、これを崩すためには連携してやっていくのは当然の方向だと思う。

Q: 2017年3月期の有価証券報告書の提出期限延期を申請した会社がある。
日本の株式市場に対する信任に、悪影響が出てくるのではないか。

小林: 金融庁、東京証券取引所の判断に委ねるしかない。私がいろいろ意見を言える立場にはない。いずれにしろ、マーケットに対しては良いとはいえず、また、中途半端な報告をすること自体も良いことではない。日本の監査制度、金融庁を中心とした日本のマーケットそのものに対して、問題提起をしていることは事実だと思う。

Q: 経済同友会も経団連も夏季セミナーで憲法の議論を行ったが、喧々諤々とはならなかった。経済同友会は、安倍首相の憲法改正の報道よりも前に、憲法について議論を行うと発表した。憲法改正についてのスケジュールも決まっていない中で、経済界が具体論を話すのは時期尚早ではないか。または、もう少し時間が経てば、議論が深まるとして、そのスタートだったということなのか。

小林: 経済同友会は2021年からJapan 2.0が始まると提唱しているが、それに向けて、この4~5年の間に、どのような準備と対応をしていけばよいかをベースに考えると、当然、憲法も強い関わりを持ってくる。なぜなら、グローバル化して、デジタルやAIの時代になって、これだけSNSを中心にフェイク・ニュースという言葉が流行るような社会において、(施行から)70年経った日本国憲法が本当にフィージブルなのか。戦争にしても、防衛、先制攻撃、専守防衛や、サイバーセキュリティーなどを含めて、どのようなこと(を考え)どのように対応するのか。かつては陸軍ならば戦車を持って、日の丸の旗を戦地に送るなどしていたが、今はそのような時代ではない。ほとんどが宇宙空間の戦いになるか、ミサイル迎撃をどのようにするかという議論を行わなければならない。そのような思いから、憲法議論を始めようと思った。一つの例として、私学助成の禁止など、ある意味、憲法違反のようなことが現実に行われている中で、法律でできるもの、憲法まで変えなければならないものは相当議論が必要だと思う。まずもって経営者が、グローバルな社会に生きていて、自分の国を護り、経済を繁栄させるために、憲法を学ばなければならないということが最低限ある。そこを整理した段階で、政治に物を申したいという発想を話したのが4月26日だった。その前(の4月1日)に(2017年度の経済同友会の機構として)憲法問題委員会を8年ぶりに設置した。その後の5月3日に安倍首相が憲法改正と言われたが、我々のスタンスとしては変わっていない。自民党が今年中に(改憲案を)まとめるというスケジュールで、来年度にも国会で議論をするとなれば、我々が今まで考えてきた2021年から始まるJapan 2.0の時代に対して、憲法はどうあるべきかという大きな問題がある。一方では、政治が動いていることに対して、憲法9条も含め、あるいは緊急事態、教育問題の話にしても、できれば我々の考えを述べたいと思っている。ただ12月までに間に合わせるかは、今のところ委員会では決めていない。

Q: 今後、委員会では議論を活発に行うのか。

小林: 様々な思想があるので、特定の方だけを招いて講演を聞くというわけにもいかない。そのような意味で、様々な有識者をお呼びして、フェアにオープンに、特にグローバル化、IT化、ソーシャル化された社会で、我々が経営を行うにあたって憲法をどのように考えるか。経済同友会会員は必ずしも政治の専門家ではないので、以上のような視点で見ていこうと思っている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。