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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年7月4日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)日EU EPA、(2)東京都議会選挙の結果と安倍政権・国政への影響、(3)加計学園問題、などについて発言があった。

Q: 日本とEUのEPA交渉が大詰めを迎えている。6日に首脳会合を開き、大枠合意をするとの見通しがEU側から発表されたようだ。自動車やチーズなどの乳製品を巡って交渉が続いていたが、合意が近づいていることについてどう受け止めているか。期待などあれば伺いたい。

小林: 10年来のEUとのEPA(交渉)については、(私が経団連で)ヨーロッパ委員長を7年間務めていたことから(関心が高い。)2013年から本格的な交渉が始まったが、それまでの準備期間を含め6~7年かかっていた。どちらかというと政府調達等の非関税障壁から(交渉に)入り、最終的には(EUが日本に課している)電子機器14%、自動車10%の関税(が争点となっている)。一方、EUとしては、カマンベール等ソフト系チーズの約30%、ワインの約15%程度の関税を撤廃してほしいという点が、大枠合意できるかできないか(にかかっており、交渉は)大詰めである。先週は日本で、今週もブリュッセルで(交渉会合を)行い、6日に大枠合意となれば、韓国のエレクトロニクス業界や自動車業界と比べて、10年来経済的に競争劣位な状況にあり、ハンディキャップを背負ってきた日本の経済界にとっては、大きな前進である。先端技術と農産物は裏腹の関係にあり、交渉に時間がかかるのは常である。TPP協定が現状、TPP11という形で(交渉が進められる見通しであり)、トランプ米国大統領がいつ翻意するのか分からない中、(日EU EPAが)6日に大枠合意し、7日にG20に臨めることはタイミングが非常に良い。EUからそういったレポートが来ているのだから、日本も一定程度の結論に勝算があるのではなかろうか。非常に前向きに評価できる。日本とEUそれぞれの貿易額を合計すると世界の貿易額の約3割を占めている。これをテコにTPP11(を早期発効)に持って行き、米国も何らかのかたちで、「トランプパートナーシップ」(などと名称変更して)でも良いので、(翻意する)方向で進めば良い。(日EU EPAは)非常に長い時間かかって(きたが)、良いところに来ているという印象だ。

Q: 東京都議会選挙の結果、自民党が歴史的な惨敗を期した。安倍首相は「自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」「おごりがなかったのか問いかけてきたが、厳しい審判が下った」という趣旨の発言をされている。都議選の結果について、あらためてどう総括されるか。また、自民党としては、首相や党幹部の責任論には踏み込まず、首相が掲げる改憲案提出等のスケジュールについても当面維持して進むという方向を示している。この点について、どう受け止めているか。

小林: (選挙当日の)日曜日は外出していたが、スマートフォンで情報をチェックしていた。出口調査でも(都民ファーストの会が)どんどん迫ってきた、だいぶ自民党に不利だと見ていたが、最終的に(自民党が)23議席しか取れなかったのは予想以上に悪かったという印象だ。(7月2日に代表幹事として)コメントを発表したが、(自分の考えは)あれ以上でもあれ以下でもない。終わったことは終わったこととして、今後、安倍内閣には変革すべきところは変革してもらいたい。本日午前中に発生した北朝鮮のミサイル発射、日EU EPA、G20など、防衛も外交も非常に重要な局面にきており、これらの問題には上手く対応していただく(必要がある)。(都議選の結果については)これだけ原因が明確なので、原因をしっかりと捉えて、口だけでなく、実際の行動として表していただき、国民の審判を仰ぐということに尽きるのではないか。

Q: 都議選(の結果)のことで、先ほど「安倍内閣には変革すべきところは変革してもらい」とおっしゃったが、どういったことを望むのか。また、今回の都議選での自民党の敗北については様々な原因が指摘されている。暴言、失言、献金問題などあったが、都民がどういった点を最も批判的にみていたと考えているか。

小林: おそらく都民が今回、自民党に投票しなかったのは、一種の風として小池百合子東京都知事のグループが受け皿になったからではないか。民進党は議席数を減らし、共産党は(議席数を)増やしたが、いずれにしても小池都知事を支持するグループという受け皿があったというのが一つである。しかし、基本的には説明責任を果たす意味で、もう少し詳しく説明した方が(よかったのではないか)。(加計学園の問題は)とりわけ大きな問題点がないならば隠す必要もなく、明確に説明すればよかったが、やはり説明が足りないというのが都民の感覚であり、納得ができなかったのが最大の原因ではないかと思う。(岩盤規制を崩すために)行動しようとすると確かに反対者に対して(応じる必要があるが)、あまりそればかりに気を遣っては何もできないので、一定程度ガンガンやっていくことが必要なのかもしれない。ただ、そうは言っても国民には知る権利があるため、そこに対する配慮が若干欠けていたのではないか(と思う)。そこは安倍首相もおっしゃっているとおり反省点であろうから、具体的に変えていくことが次に繋がっていくものと解釈している。

Q: 内閣の支持率も低下しているが、今後、政策面についてはどのような支障が出てくるとお考えか。また、憲法を変えるという議論があり、この日程にも影響が出てくると思うが、その点についてはどうか。経済同友会でも憲法を議論しようとしているが、これに対する影響はあるかもお伺いしたい。

小林: 今はタイムスケジュールを言える段階ではない。今の心としては、日EU EPA(の大枠合意)、安全保障、北朝鮮問題、トランプ大統領(の動向)、G20以降の様々な国際問題(が優先事項である)。経済的には当面、物価や消費がどうあれ、世界経済にとんでもないことが起こらない限り、景況はここ2~3年は順調に推移していくだろう。今述べた外交、安全保障、通商政策に加え、一番大切な事項が財政である。景気の浮揚、あるいは人手不足の解決を政策的に(議論することは)もちろん、規制緩和も含めてまだまだやるべきことは残っている。しかし、やはり今一番ここで議論すべきは消費税を含めた財政である。本気でこの国を考え、国民の納得できるところで、社会保障などの政策を再整理していくかが大きな問題だと思う。憲法問題については、安倍首相はスケジュール通り(進められるの)だと思う。あまりここで(都議選の結果を)大打撃と捉えるよりは、説明責任をしっかりと果たしながら、今までの流れの中でやるべきことをやり、成長戦略を後押しするように規制を撤廃するなど、政策を展開する(べきである)。先ほど述べた通商政策や外交、安全保障は清々とやっていく。憲法についても、経済同友会は8年ぶりに憲法問題委員会を設置した。今回の夏季セミナーでどのような議論をするかはまだ明確には決めていないが、個人の思想や信条によるところがかなりあるため、経済同友会としての考えを今出す状況ではない。会員の皆さんがまずもって勉強し、あるいは十分勉強している人は自分の主張を出してもらって(今後の議論に繋げたい)。加えて、これまで経済同友会が主張してきた部分もきちんと整理して、かつ今、自民党が考えている3つか4つのアイテム、つまり憲法9条、高等教育無償化の問題、緊急事態の問題、参議院選挙制度の合区の問題、このあたりをどう扱うかというフェーズに入っていくと思う。

Q: 今回の都議選で、都民ファーストの会が49議席を獲得し圧勝した要因は何だと考えるか。また、築地市場移転問題について、告示の直前に、小池百合子都知事は豊洲移転・築地再開発の両立案を打ち出した。これが争点として非常に複雑で、分かりにくくなったとの指摘もあるが、経営者の視点から見て、このような方針は現実味があると考えられるか。

小林: 政治的な意味では、結果として(都議選に)成功したので、極めて賢い判断だったのではないかと思う。しかし、(市場の問題を)経営の視点から見ると、どちらか(を選ぶべきところを)2つとも取ると、中途半端(な結果)になる(ことが多い)。東京オリンピック・パラリンピックまでに、築地市場や交通(整備)も含めた具体的な計画で、きれいにオーガナイズした形の東京ができるのか。豊洲への移転費用が3,000億円程度かかると言われている状況で、築地をそのままにして、どのような形のキャッシュフローなり、PL/BSを考えているのか。これが今のフェーズなので、その数値が分からない限り、良いか悪いかの判断は難しい。せっかくの築地ブランドを(活用して)食のテーマパークにするというアイデアそのものは、否定するものではない。豊洲にメインを移転して、何らかの形で5年程度かけて再開発するという全体のコンセプトには、特に抵抗を感じない。ただ、基本的な根拠となるファイナンス、経済状況をどうみるか。前述したようにキャッシュフロー、PL/BSを早く出してもらいたい。

(都議選の)勝因はやはり、東京都議会そのものの、なんとなく納得できない運営の仕方や、舛添要一前東京都知事の問題も含め、多くの都民が、小池氏から変革への意志を感じたのではないか。今回(、小池都知事)は都民ファーストの会を立ち上げ、フレッシュなイメージを打ち出してきた。一方で、(安倍政権発足から)約4年半が経過して、一部で強引な人事やものの進め方が気になりだした都民が、その雰囲気を変えてみたいと思い、突風が吹いた。都民はイデオロギーを持つというよりは無党派層に近く、その時々で何が正しいかを判断する人の割合が多いのではないか。地方では、家で代々支持してきた(地盤)というものが(存在するが、)東京には基本的にない。地方から出てきた人が多く、共産主義などの明確な思想を持つ人も中にはいるが、ほんわかとした保守が多い場合は、風次第でどうなるか分からない。都政で予想外の事態が起こると、国政にもひっくり返しが起こったが、今回もそうなるのか。あるいは、もう一度安倍政権が(態勢を)立て直して、政策的に緊急を要するものがたくさんある中で、一定程度の説明責任を果たしながら、強く進んでいくのか。どちらに進むか、見立てが難しい状況だと思う。

Q: 国政選挙はしばらくないが、財政問題は重要である。2019年には消費増税をする予定だが、人手不足で、特に中小企業は困っている。賃上げをしても人が集まらない中で、どのような政策運営をするかが重要である。また、貧困層の子どもに対して教育無償化をすべきであると安倍首相は言っている。国民の関心がある教育の問題を引き寄せて支持を回復しながら、いかに財政を運営していくかということは難しい問題だと思う。消費増税を視野に入れた場合、どのような経済政策を期待しているか。

小林: 基本原理は、PB(プライマリー・バランス)をゼロにして黒字化することが、長い間の最大の政治的課題だと思う。日々の戦いの中で選挙に勝つためには、国民に負荷をかけるものは遠ざけたくなる。その気持ちもわかるし、それが現実だ。しかし、今はいいが将来を犠牲にしてもよいのかを考えるのが、本当の政治ではないか。成り行きからすれば、憲法問題を早く進め、(都議選に)大負けしたがために消費増税を考えもしないというのは違うのではないか。もっと知恵を出せば、人手不足で給料も上がらない中でも色々な手立てがあると思う。(例えば、)年収ごとに仕掛けなどあるはずだ。

少なくとも今の試算では、8~10兆円の赤字が2020年に溜まる。最終的に累積赤字が1,000兆円になるが、個人がお金を持っているから相殺するので、国家としては問題がないという考えもあるだろう。また、日本銀行が国債を500兆円保有しようが連結会計であれば問題ないという議論もあるかもしれない。しかし、少なくとも、税収が55.5兆円程度しかない中で、社会保障費と医療費で(歳出が)50兆円を超えている現実がある。GDPの10~11%に(相当する額と)なっている。実際持っている収入と支出のアンバランスを、これ以上進めていいのかという問題提起を、我々(経済人)の立場として考えるべきだ。それが次の世代のためになる。

日々、最低限の生活で苦労している人が増えているのも事実なのでそれも加味する。(税金を)取れるところから取るのではなく、みんなが国のために消費税の形で負担することを工夫してやるべきだ。各国が法人税を下げている中、(日本が)法人税を上げるのはグローバルな戦いにおいて現実的ではない。しかし、何らかの収入がない限り国家は成り立たない。これは国民の問題でもある。政治家は票を重視するのでそのような(支持を得るための)判断に傾きやすい。「何を理想論的なことを言っているのか」と政治家に思われようが、我々の立場としては言うべきだ(と思っている)。

Q: 今回の都議選の結果について伺いたい。小林代表幹事は、最近の世界の選挙結果を大衆迎合主義と批判していたが、その観点からすると、今回の都議選は大衆迎合主義と思うか。

小林: ポピュリズム、大衆迎合主義とは違うと思う。安倍内閣に特異的な、物事のイエスとノーをはっきりする(進め方や、政権を担ってからの)4年半で緩んだとは思わないが、一部で強引さが目立つことへの都民や国民の反発ではないか。一部の都民が、それがどんどん突き進んでいくと怖いという思いを持ったのかもしれない。大衆迎合主義と言っても、例えば、小池流大衆迎合主義なのか、それとも安倍流大衆迎合主義なのか。少なくともあまり今回の東京都の場合は(大衆迎合主義では)なかったのではないか。

Q: 国会は閉会中だが、なんらかの形で安倍首相から加計学園の問題について説明することが必要とお考えか。

小林: (説明)したほうがよいのではないか(と思う)。

Q: 加計学園の問題を巡り、与党は国会の閉会中審査に応じる方針のようだが、野党は臨時国会を早めに開くべきという姿勢である。安倍首相も「深く反省する」「信頼回復に全力を尽くす」などと述べているが、具体的に何を反省し、どのように改めるのかはっきりしていない。個人的には、臨時国会を早めに開き、安倍首相自らが批判に答えるべきだと思うが、代表幹事はどのようにお考えか。

小林: 臨時国会の開催はもう少し議論すべきだろうが、とりあえず、最低限2~3日は説明し議論する場を設けることが先だと思う。それでも納得のできない、今まで通りの説明であれば、臨時国会(を開く)という順番ではないかと思う。今すぐに、具体的にどれが最善策かまでは申し上げられないが、そのように思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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