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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年6月19日(月) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)タカタの経営悪化、(2)内閣支持率低下と安倍政権への期待、(3)通常国会会期末を迎えての評価、(4)骨太の方針、(5)日印原子力協定、(6)企業のデフレマインド、(7)東芝の半導体事業売却、などについて発言があった。

Q: 欠陥エアバックのリコール問題で経営の悪化していたタカタが、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請する方向で調整に入った。自動車メーカーが立て替えているリコール費用を含めると、負債総額は1兆円を超える規模で、製造業の経営破たんとしては国内で戦後最大となる見通しである。この件について、代表幹事の所見を伺いたい。

小林: (同じ)日本の企業として残念である。製造物責任や保安事故は、必ずしもコンプライアンスだけの問題ではなく、会社存立のリスク(にも関わる)。とりわけ製造業の場合、製造物責任と火災あるいは人身事故を含めた保安事故、それに加えてコンプライアンスやガバナンスの問題、子会社管理など、リスクの管理がいかに経営の中で重要かということを、今回また(思い知らされた)。提供する商品なり部材なり、それらが社会生活にネガティブな影響を与えてしまうことは、経営の存立を揺るがすほどの重要な事態になるということの一つの例だと思う。今後とも、日本企業の経営者は、もう一度ここで、コンプライアンスやガバナンス、保安事故に対する安全対策(を見直す必要がある)。これは基本的には100%安全なことをやる(べきだ)。製造物責任に対しても同じ考えで、そういうことを徹底してやっていくということを再度肝に銘じる機会ではないかと捉えている。

Q: 報道各社の世論調査で、安倍内閣の支持率が急落している。共同通信社の調査では、支持率が44.9%、前回5月から10.5ポイント急落している。一方で、不支持は43.1%で8.8ポイント上昇している。また、加計学園の獣医学部新設計画で、「行政がゆがめられたことはない」とする政府側の説明に対しては、「納得できない」が7割超であった。さらに、テロ等準備罪が新設される改正組織犯罪処罰法について、与党が委員会採決を省略する手続きをとったことに対し、67.7%が「よくなかった」との回答結果が出ている。今回の内閣支持率の急落について、どのように受け止めているか。代表幹事の認識を伺いたい。

小林: まず、興味深いのは新聞社(調査会社)によって絶対値が異なっていることである。しかし、微分形としての低下率ではどれも似たような方向を示しているので、かなり正しいのではないか。一部、インターネット上では、9~10社のデータの平均値をとっているサイトもあり、それを見ると45%が支持で、40%が不支持とのデータもある。いずれにしても、そのあたり(の数値)を事実としてみれば、今回の情報開示のやり方やテロ等(準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法)の参議院での委員会採決省略の問題で、国民がまだ納得できていないことが(支持率低下の)最大の原因だろう。特に、(不正を)隠しているとか、単に(岩盤規制に対して)風穴を開けようという基本的なところで、一部に説明不足があるならば、菅官房長官も述べているように、今後、より国民が納得できる情報開示を続けていくべきではなかろうか。それでもまだ(内閣支持率)45%を維持していることがすごいと思う。

Q: (安倍政権は)戦後有数、小泉政権に並ぶ超安定・長期政権となることから、税制、Society 5.0の実現や外交という面でも、経済界として期待が高かったと思うが、支持率に陰りが出てきたことに対する危機感はあるか。また、経済同友会は、安倍首相の発言に先駆けて、憲法問題に取り組むと表明したが、その面も含め、支持率が落ち続けていくことへの危惧と今後の政権への期待を伺いたい。

小林: 経済同友会はご存じのとおり、(設立)71年目である。設立趣意書にも書いてあるように、どこかの政党を支持するものではないことが伝統だ。そういったDNAを引継ぎつつ、経済人として(政権には)是々非々で臨むという姿勢は今も続いている。

Industrie 4.0、Connected Industries、Society 5.0など様々な言葉があるが、時代はバーチャルエコノミー(に向かっている)。単にリアルな重さを持った経済学から、サービスのもっと先、AIやIoTのようなデータセントリックな社会になる。こうしたバーチャルとリアルをミックスした経済、これに対して一緒に議論し、前に進めようと(している)。成長戦略として結実するとか、(成果を)手の内に収めるというのは10年、20年かかるもので、あまり性急に結果を求めても仕方がない。むしろ、フェーズを合わせて成長戦略として議論できたのは、安倍政権のスピード感と、これらに対する理解(が深かったこと)は極めて評価できる。

戦後70年を経て70年談話を出したが、北朝鮮(の脅威が高まる中)、かつての中東より極東の方が、防衛的・政治的に地政学的リスクが増えた中で、このまま放っておくわけにはいかないと思う。グローバル化とデジタル化、ソーシャル化という大きなうねりの中で、国を守るとはどういうことなのか。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのプラットフォーマーに負け、単なる製造・輸出ベースの経済がものすごい音をたてて変革している中で、経済人としてこうした状況は相当まずいだろうと(いう認識)。この2つについては、経済と政治が一部で近いところである。

一方で、そうは言っても政治は常に選挙で勝つことを考えるため、当然、自身の選挙区、ローカルなことを考える。今が良ければ(良いというスタンスで)、民意が支持してくれることしか選択できない。ところが経済人は、会社のサステナブルな発展や、10~20年先の社会を想定して、今、手を打つ。それもローカルのことよりむしろグローバルな競争社会のなかで勝ち抜くにはどうかと(考える点で、経済と政治は)立ち位置が違う。

こういうスタンスから我々なりの主張をすると見れば、国を守るとか、日本国とは何かということを新たに考える部分と、グローバルにおける経済的な優位性を(考える部分がある)。特に新しいイノベーションやテクノロジーを取り入れて、データセントリックであればあるほど(重要になる)。今後は社会保障、特にデータヘルスなどは、老人のケアも含め、コストが高い高齢化社会の中で、コストを減らすためにデータを使っていくという意味では、政治と経済界が共同歩調でやっていくことに今後期待できるのではないか。グローバルな視点、長期視点、三権分立の進め方等に関しては、我々も納得できないものは納得できないという見方を続けていこうと思っている。

Q: 安倍政権は、長期政権ゆえに経済界や代表幹事が期待されたことを打ち出してきた面もあるが、過去、支持率の低下によって(政策が)近視眼的になってしまうという歴史もある。その危惧、懸念についてはどうお考えか。

小林: 今後、消費税をどう(増税へ)もっていくのか。今回の骨太の方針でもトーンが変わってきたにおいがする。憲法議論や、今後の金融政策、財政政策、あるいは今かなり(政権と経済界が)フェーズを合わせて一緒に取り組んでいる成長戦略(などさまざまな政策がある)。こういうものの今後の動きによって、我々自身もいろいろなアクションをとっていく。こういうフェーズではなかろうか。

Q: 骨太の方針のにおいが変わってきたというのは、具体的に財政目標について1つ指標が増えたことについてか。

小林: どうでもよいと言う人もいるかもしれないが、骨太の方針の文言から消費税という言葉が消え、「プライマリーバランスを2020年までに黒字化し、その後、債務残高対GDP比を発散しないよう下げていく」という文章(だったの)が、「プライマリーバランス黒字化と同時に、債務残高対GDP比を下げていく」と変わった。(これを読み解くのは数値を扱う算数ではなく、)国語の問題である。

瞬時的に年度ごとにチェックするフローの部分と、debt(債務)がGDP比で下がっていくストックの部分をなぜ「同時」にしたか。当然、今、金利が相当低いということと(関係がある)。より財政出動をすれば、建設国債も含め、分母が大きくなる。債務の金利が低いがために、国債に対する利払いが非常に少なくなっているため、一見、下がるように見える。そこに一縷の望みを託して財政出動したいというのはひとつの考え方、見方である。来年あたりにどう備えていくかというあたりをよくウォッチしていくべきだろう。

Q: 通常国会が会期末を迎えて、(本日)夕方、安倍首相が記者会見を行う。先ほど代表幹事がおっしゃったように、(加計学園の問題等は)説明不足な点が目立つが、(安倍内閣の)支持率は45%であり、一強体制に変わりないかと思う。通常国会が閉会すると、7月2日には東京都議会選挙が控えており、加計問題も共謀罪の審議についても忘れられてしまうのではないかという懸念がある。
 特に加計学園の問題については、今治市は国家戦略特区を利用して、商工会議所を中心に、獣医学部の新設をずっと申請していた経緯があると聞いている。首相に近い人が関係したことで、行政がゆがめられたのではないかという指摘もあるが、(通常国会が会期末を迎えたことで)幕引きとなり、これで終わりという感じが否めない。政府として、菅官房長官は説明機会を設けるとおっしゃっているが、国会が閉会してしまえばそういう機会は難しいのではないか。

小林: 文部科学省と内閣府の意見の食い違いもある。このまま(この問題に)蓋をしようとは思わないだろう。東京都議会選挙を前に、国民感情的にも、東京都という地域に対しても、このまま放っておく方が、リスクがあると判断される確率が高いのではないか。いずれにしても(国家戦略)特区制度を設けて、スピード感をもって、従来の岩盤規制を打破していこうという流れは間違いない。その中でいろいろ(やり方を)変えてきたことも事実であり、これは否定するものではない。そうはいっても、やり方をもう少しクリアにしていく方向をとっていくのではなかろうか。このまま放っておくと、国民感情的に納得できないということを(首相は)重く受け止めるのではないか。

Q: 政争の具に使われたという指摘も一部である。民進党と共産党も厳しく追及したものの、時間切れという感じも否めない。

小林: 真実をお互いオープンにするのが筋ではないかと思う。

Q: やり方について、一度は(文書が)無いと言いながら、調べたところ出てきたというのは、リスク管理の面では大変まずいと思うが、いかがか。

小林: まずいものの、(初めは)なんとか進められると思ったのではないか。しかしみなさん(メディア)も強く、だんだんとそういう事実も出てきたのだろう。まさに、国民の声と政治の権力者の、一種の攻防なのではないか。また、(内閣)支持率に関し、50~70代はエスタブリッシュメントというか、政権に対し批判的な人々が半数以上いる。一方で、若い人が政権支持であることをどう考えるかが、ひとつのポイントになると思う。

Q: 本国会で共謀罪に関する法案や天皇退位に関する特例法案が成立する一方、懸案であった労働基準法改正は先送りとなった。国会後半では、加計問題や森友問題等により政策がおざなりになった感がある。昨日閉会になった国会全体に対する評価を伺いたい。

小林: やはり野党の攻め方が弱い。本質的な議論がどうしたらできるか、もっと考えるべきである。経済界から見ると、雇用問題に関しては流動性を付与しないと日本の中で経済が活性化しないのは明らかである。2年前から高度プロフェッショナル制度法案を用意しているのに、いまだに先送りしていることが一番の問題である。本当に成長戦略を議論するなら、雇用の流動性を活性化するところにエネルギーをかけてもらいたい。(また、)受動喫煙対策を強化する法改正くらいは国会で通さないと、世界の常識から遠のいているのではないかと強く思う。

Q: 国会で日印原子力協定の承認案が可決された。米原子力子会社ウエスチングハウスの再建問題で、東芝がこのような状況になってしまい、原発から手を引くが、日本には原発事業会社が他にもある。海外から見たら、日本の福島は大丈夫なのかとまだ信用が回復できていない中、インドという貿易・外交上、極めて特質な国と原子力協定を結んで、原子力の旗を振り続けることは必要か。また、国際的な信用を高めるにはどうしたらよいか。

小林: これは本当に複雑な問題である。来年、日米原子力協定(の更新)が控えており、本日の報道では、韓国の文大統領が、新たな原発開発は白紙で見直すと(発表した)。こうした世界の流れの中で、日本は原子炉の5基目が稼働している(状況である)。40~50年かかる廃炉に長い責務を持っており、また、世界に500炉もあるような廃炉をどのように考えていくかも含めて、原子力の研究そのものなり、若い人たちへの教育をやめるわけにはいかない。新たな原子炉に対しては、一定程度、国内の民意ははっきりしているが、国外では(考え方が)全く違うというわけにはいかない。

米国の原子力政策も、今後トランプ政権でどのようになるかがクリアではない。唯一言えることは、国内の廃炉はきちんとやるべく、東京電力を中心に頑張ってもらいたい(ということである)。そして、電力の自由化から始まって、環境問題も含めたエネルギーミックスをどのような形で見直すかという時期に来ている。総合的に、もう少し国民的議論が必要ではないか。

プルトニウムも溜まり、ウランも日本国土にあり、それでいて地震国である。経済同友会としては、前々から話しているように縮原発(を主張している)。長期的には自然エネルギーに(置き変えていき)、CO2をあまり出さない(方向が望ましいと考えている)。化石燃料ではないもの(で電力を作る手段は)、自然エネルギーと原子力しかないので、原子力を縮小しつつ、自然エネルギーへとどのようなタイムスケジュールで進めていくか、もう少し技術論も含めて、まとめて行こうという段階だ。

Q: 企業のデフレマインドについてお伺いしたい。先週末の日銀総裁会見においても、デフレマインドが強いこともあって、景気の好循環が働きにくいというような指摘があった。国内市場が縮小したり、M&Aによって損失が出たり、いろいろ大変な理由はあるが、日本企業が成長戦略を進める上でも、グローバル化に対応する上でも、付加価値を高める努力が必要なのではないかという指摘もある。所見をお伺いしたい。

小林: 私は(三菱ケミカルホールディングスの)会長(職)なので、直接のオペレーションは行っておらず、当社は委員会等設置会社であるから監督に徹している。自分が社長を務めた8年間は、デフレマインドなどと考えたことがなかった。とにかくアグレッシブにやるだけだ。(競争に)勝つ(ことを考えていた)。デフレだからといって関係ないという思いは、経営者は皆そうだと思う。それは先ほど述べた「グローバル」という言葉が重要なキーワードだ。M&Aには失敗もあるが、国内のM&Aも含め、海外への進出はここ最近非常に増えている。内部留保が数値的に増えているのは、向こう(海外)の有価証券が増えているからという部分ももちろんある。少し言い過ぎかもしれないが、国内は人口が減り、高齢化社会になり、あまり(内需拡大が)期待できないだろう、よくてフラット(横ばい)だろうと思っている経営者は多いと思う。だから、ものすごくアグレッシブに海外に行き、中国やインドで失敗したり、あるいはアメリカでガバナンスがうまくいかず失敗したりもしているが、私は今の経営者はそんなに軟弱ではないと思う。たまたま国内に投資していない(だけである)。特に重化学工業において、化学は(事業を)クローズするばかりである。これはマーケットがないから仕方がないことであり、デフレマインドとは全く関係がない。やはり企業を守るというのは、グローバルに戦って勝ち抜ぬくといった見方であるが、政治は国内しか見ない。いつも述べているように、その食い違いがある。だからと言って、(我々は)日本に住んでいるので、新しいテクノロジーでデータセントリックな社会を実現し、医療費を下げるようなヘルスケアの事業を展開しようと(している)。難しい課題が国内に残っているが、そういった分野で頭を使ってイノベーションを起こそうという経営者も多くいると思う。だからあまりシンプルに、デフレがいけないとか、デフレマインドが払拭できないなどというより、時代状況がそうなっているだけであって、経営者はものすごくアグレッシブだと思う。そういう指摘もまたデフレを喚起しているのではないかと(思う)。

Q: 小林代表幹事は以前の定例会見で、東芝の半導体事業の売却について、「米国の会社と今まで一緒にやってきたから、そのレベルでいかにブロックするか考えていくべきだ」とおっしゃったが、今、足元では日米韓(連合)という枠組みが有力な策として一つ考えられている。この足元の動きについて代表幹事はどのように見ていらっしゃるのか。また以前の考え方について改めて伺いたい。

小林: 経済同友会(の会見)なので、詳細の話は差し控える。基本的には何も変わっていない。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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