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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年4月11日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)地政学リスクの高まり、(2)日米経済対話、(3)東芝の半導体事業売却・決算発表、(4)大阪万博、(5)浅田真央選手の引退、などについて発言があった。

Q: 地政学リスクの高まりについてお伺いしたい。米軍のシリア攻撃を受けて、米ロの対立が目立ってきた。加えて、朝鮮半島も緊張感が高まっている。世界経済に与える影響について伺いたい。

小林: 今まさにいろいろなアクションの真っただ中であるので、なかなかこうなるだろうと(予測しても)、そうはならないという前提で(申し上げる)。私自身の感覚として、大きな地政学リスクというのは、今後は中東と極東の2つが同時並行で進んでいくのではないか。もともと中東は、アラブ(諸国)とイスラエル(の対立)から始まって(いるが)、いつの間にかイスラエルとサウジアラビアの関係が良くなった。むしろアラブの春を通じて、SNS等の新しいインターネット技術を介して皆が情報交換をして(いる)。今までの(リビアの)カダフィ時代、(シリアの)ハーフィズ・アル=アサド時代、(イラクの)フセイン時代(をみても)、40~50年という非常に長い間、独裁者が抑えて安定してきたものが、アラブの春によって自由になり、結果としてISを生んでしまった。それがヨーロッパにかなり波及し、移民という問題を喚起した。

この一つの流れによりアサド政府軍、反政府軍、ISという三つ巴の戦いの中で、ロシアはどちらかというとアサド氏を支持し、オバマ前米大統領は反政府軍をメインに支持してきた。ここに来て、トランプ米大統領がどちらかといえばロシアとの関係改善を模索する方向に来つつあった中で、家族思いで子ども好きなトランプ大統領が、(アサド氏が)自国民に向かって化学兵器を使うという極めて非人道的な映像に、おそらく勘というか(思いを致したのではないか)。内政はオバマケア代替案も含めてなかなか議会対策が上手くいかない中で、そういう内因があったのかどうかは別として、非人道的なものは叩かないと(と思われたのだろう)。必ずしも中東だけでなく、化学兵器や原子爆弾が世界に広がるという危惧(があり)、早めに叩いた。米国政府の安全保障も含めて、オバマ大統領時代と違ってクリアな形で初期対応をしたこと自体については、私自身は非常に勇気ある行動であったと思う。放っておくと、(兵器が)もっと拡散してしまう。まさに極東、北朝鮮がそうである。基本的な政治姿勢が比較的似た権力者をこのまま放っておくと、北朝鮮がますます原子爆弾というか、そういう(核武装の)方向に行ってしまう。ミサイルも高性能になっている中で、ここでしっかりと鉄槌を下さないと、今後ますます増長するだろうというバランスの中で、オーストラリアに向かっていた艦隊を(北上させ)朝鮮半島に向けたという状況を見ると、今のところ、相当局地戦的なところがあり、原油価格も53ドルと少し上がり、円もやや強くなりつつある。なんとなく気にかかるが、大幅かつ急激に強い円高になるとか、原油価格がすぐに60ドルになるということは(ないだろう)。シェールガス、シェールオイル(の価格)が上限になるので、それほど極端に燃料(価格)が上がるとも思えない。目には目を(というが)、国家間の安全保障というのは、パワーバランスが非常に重要だと思うので、日本の安全のためにも、米国と安全保障条約ベースで進んでいく以外の道はない(と思う)。すでに地政学的リスクという状況ではなく、かなりの危機だという認識をもって、経済人も政治情勢を見ていくべき時期に来ている。

Q: 日米関係について伺いたい。今月18日から19日にかけて米国のペンス副大統領が来日するが、それに合わせて経済界としてどのようなことを期待しているか。

小林: 日米の経済団体の間でその点は整理されていると聞いている。昨日、経済同友会は、かつてペンス副大統領が(インディアナ州知事時代に)同僚であったインディアナ州の商務長官とお会いした。日本からインディアナ州に260社以上が進出しており、商社に限らず、三菱ケミカルホールディングスグループも自動車部品関連のプラスチックや人工関節など(の事業を行っており)、素材系企業もかなり進出している。ワシントンの政治と同時に、州単位での経済人交流を今後推し進めていこうと、具体的なアクションをとっている。今回の(日米経済対話では)、具体的な日米経済の方向性の議論は、まだ(米国政府の)スタッフも完全に揃っていない状況のため、おそらく通商や貿易、あるいはインフラの整備、エネルギー、特にシェールガスの輸入等を含めて、個別詳細というよりは大枠を作っていく方向だと思われる。結果を見ないと、我々として意見を述べる段階ではない。12カ国でTPPを批准する直前まで来たが、米国が二国間での交渉(を志向し)、中国とも100日間(の計画)でやろうという方向である。パラレルで進めていくので、従前のTPP的な多国間の協定を意識しながらよりよく議論してもらうことと、アメリカ・ファーストに対して、(自由)貿易によって米国もよい方向にいくのだといったことも含めて議論していただくことになるのではないか。あとはエネルギー(問題)。シェールガス、シェールオイルが安価に生産できるようになった米国とのエネルギー問題は、日本にとっても重要であり、原子力等を含めてしっかりと議論していただきたい。当然、自動車産業やボーダー(国境)での課税を含めて、従来からの明確なデータをベースに議論していただければ、日本に不利な方向に(議論が)行くとは思えない。

Q: 東芝の半導体(事業の売却)について、日本連合として複数の日本企業が出資し、海外への技術流出を防ぐために動くという案がある。経済界としてどのように考えているのか、あらためて伺いたい。また、経済同友会として何らかの動きがあるか、もしくは三菱ケミカルホールディングスの会長としてどうお考えか。

小林: (私は)東芝の社外取締役であり、三菱ケミカルホールディングスの会長であり、経済同友会の(代表幹事であるが)、それぞれの立場によって全く違うので何とも言い難い。経済同友会として、極めて一般論で言えば、日本の技術は(国内に)留めておきたい。経済同友会の代表幹事として思うに、おそらく東芝は高額で(半導体事業を)売却しなければ経営は難しいだろうから、そう単純な解はないというのが一般論だ。それ以上の回答は控えさせていただく。

Q: 一社当たり100億円規模で(資金を)出し、数十社で一定の額を作るという動きもあるが、こういった手法についてどう考えるか。

小林: 昔はそれなりにあっただろうが、今はリターンがなかったら、どのみちできない。100億円単位でリターンがあるというストーリーをどう作るかだ。非常に難しいと思う。

Q: ストーリーは描けないということか。

小林: それはわからない。

Q: (東芝の半導体新会社の入札に)100億円ずつというスキーム案が出ているが、もし適切な解を出せるのであれば、一社で買収しても理想的な形のはずである。しかし、日本の経済界からは名乗り出る企業がない。東芝は日本のために必要だと言いながら、助ける企業が出てこない現状について、どのようにお考えか。

小林: 本日の朝日新聞朝刊に(半導体事業の買収に関する)記事が出ているが、そのような感情を持つ人もいるだろう。だが、それが本当に正しいのかどうか。NAND型フラッシュメモリのようなハードウェア(事業)が壊滅的な打撃を受け、日本はいろいろな連合を作ったが、それでも倒産の危機に瀕し、最後は米国企業に買われてしまった。では、3次元NAND型フラッシュメモリのような事業をどうみるか。新しいテクノロジーの基盤的なもので必要(な事業)だが本当に儲かるのだろうか。プライベートカンパニーとしては、当然、儲かることをやるのが経営であるから、いくら社会的に(必要でも)儲からなければ(手を出せず)、おそらく、儲けを出しやすい中国や韓国がやってくる。そこは国際分業で任せ、日本はもっと高度な、それらの技術を使った新しいビジネスモデルに向かう方が、より賢いかもしれない。今の時点で、日本にとって重要と思われても、10年先、本当にそれでいいのか。もっと新しいテクノロジー、量子メモリのような全く違うメカニズムのメモリも現れるので、そういう研究開発に主力を投入したほうが賢いかもしれない。CO2の削減も同様である。今、一番(発電コストが)安いのは石炭火力かもしれないが、結局、巨額のお金を投資して、いまだほとんど動いていない原子炉を今後20~30年は動かしながら電力を安く供給する、そういう状況で、自然エネルギーに新しい資金を投入するのが正しいだろう。(原子力の)サドンデスで(発電コストの)高い電気を使って、自然エネルギーへの研究開発投資もままならないより、そちらの方がよいかもしれない。一つの素材、部品、システムが金科玉条となって10年、20年続くと思うほうが、経営としては危険だ。そう考えると、例えば、NAND型フラッシュメモリ(事業の買収)で2兆円を払い、さらに毎年3,000億円も投資しなければならないとなると、とんでもない金食い虫である。一度研究開発を止めたら、すぐに中国、韓国に負けてしまう。そういう危険を冒すのが賢いのか、エネルギーが枯渇したから経営マインドが無くなり、ガッツが無くなったのか。そこも単純ではない。もっと難しく、誰も気づいておらず、それほど設備投資が必要ない、(それでいて)大きなリターンがあるものも無いわけではないだろう。いろいろな組み合わせから出てくる富の創出、価値の創出を考えるのも一つである。一か八かというのは、日本人の感覚からしても(合わない)。鴻海精密工業の郭台銘会長ならどかんとやるのだろうが、そのような人が誰もいなくなったからといって嘆くことなのだろうかとの意見もあり、非常に難しい。各々の人生観である。

Q: 鴻海精密工業は東芝の半導体メモリ事業の買収に3兆円という巨額の提示をしたとの報道もある。シャープが鴻海の傘下に入り、東芝も鴻海などの海外企業の下に入る可能性もある中で、こういった状況をどのように見ているか。日本企業の競争力が低下したことの表れと見るか。

小林: 3兆円という額は(直接は)聞いたことがないのでなんとも言えない。日本における成長戦略は、政府中心に(進め)、安倍政権になってから産業競争力会議、未来投資会議も含めて(議論してきた)。金融・財政(政策)だけでは時間稼ぎの一時的な効果しかなく、本当の意味での成長戦略をここ4~5年議論してきた。しかし、本当に成長しているのか。特にテクノロジーベースで成長させなければならず、先日、安倍首相もドイツのハノーバー(で開かれたCeBIT(国際情報通信技術見本市))に行かれたが、IoTやAI、ロボティクスなどのデジタル革命、第四次産業革命がかなり本命になるだろう。それに加えて、高齢社会の日本ではメディカル・アプリケーション、環境問題という合わせて3つのテクノロジーが(重要になる)。コモディティ化したアジア経済の中で日本がどこで稼ぐかというと、知識集約型産業の領域で稼ぐ以外にない。ソフトバンクの孫正義社長のように3.3兆円で(半導体設計のアーム社を買収し)アーキテクチャーの方向にいく場合等、日本の場合はネット、サイバー空間とリアルをどうハイブリッド化するかに新しいイノベーションを見出そうと考える人が多い。そういう意味では、米国との交渉で(日本は)新幹線や原子炉などのインフラ輸出も強いが、半導体も極めて重要なポイントになる。半導体のハードウェアをどう考えるか、2年毎に業績が上下するような極めて変動しやすいビジネスを経営者としてどう見るかが一つ(のポイントである)。国家としてテクノロジーがソフトウェアだけでよいのか、ハードウェアもいるのかの見極めも要る。株式会社は株主で成り立っているので、株主の納得性(を得て)、会社を存続させるにはROE経営が根源的に重要だとすれば儲けなければならず、本当に儲かるのかという視点も重要だ。プライベートカンパニーと国家の戦略は100%一致する訳ではないので、賢く適切な回答を作っていくことだと思う。

Q: 東芝の3次元NAND型フラッシュメモリについて、前回の定例会見で、米国のレベルで(海外への流出を)止めておいた方がいいという趣旨の発言をされていた。東芝の3次元NAND型フラッシュメモリは国内で守るというよりは、米国までの範囲であれば大丈夫ということか。

小林: 米ウエスタン・デジタル社とはこれまでも(東芝は)知的財産を共有してきている。生産したものを一緒に引き取って、営業は別にしているという仕掛けがあるからそう発言した。韓国、中国、台湾(の企業に売却した場合)だと、おかしな方に(技術が)流れていく可能性があるが、米国であればそれをブロックできるだろうというのが当然の考えである。

Q: 東芝の決算発表は三度目のタイミングとなるが、どのように市場の理解、あるいは消費者の理解を得ていけばよいか。

小林: 本日、(東芝の)記者会見があると思うので、正確なことは社長からお聞きいただきたい。

Q: 本日、2025年の国際博覧会(万博)の大阪誘致を政府が閣議了解した。本格的に大阪への万博誘致に向けて動き出すが、これに対する期待、見方を伺いたい。

小林: 現段階でどのくらい経済的にメリットがあるのかなどの試算を見ていないため、何とも言えない。基本的に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで今の流れで行けば、地政学的リスク(が急激に拡大したり)やトランプ米大統領がおかしなことをしない限りは、日本経済はそう下落もしないだろう。GDP年率1~2%程度で徐々に上がるだろうというのは容易に(考えられる)。GDP600兆円を達成できるかは別として、上がっていくことは間違いないと思うので、そこ(2020年までについて)は心配していない。

しかし、その先、2025年、2030年に向かってより高齢化が進み、65歳以上が30%超、2053年には人口が1億人に満たなくなるというなかで、次から次へとお祭りを考えないと経済は活性化しない。そういう流れの延長線上で、2025年に(大きなイベント)を一つ打っておくというのは非常に重要である。

堺屋太一氏(の言)ではないが、社会には祭りが必要である。経済的には「政(まつりごと)」と同時に「祭り」が重要であると思うので、2020年にオリンピック・パラリンピックを東京で開催できるというのは、建設業に関わらず、すべての産業が活性化するので、次から次へそういうものを考えるべきである。

Q: 万博の件についてもう一点(伺いたい)。オリンピックの施設・会場の話もそうだが、豊洲(市場)の移転のようなところでもごたごたしている。大きいイベントを見ると、ブラジルなどで施設建設が間に合わない事例は過去にあったが、当初、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった時には、日本人ならできるという自負があったと思う。しかし、実際ふたを開けるとなかなか難しい問題も生じてきている。もし万博が開催されるとなった場合、プロジェクトをうまく運ぶためには、何か気を付けなければならない点はあるか。

小林: 今回の(卸売)市場の選択にしても、政治的な意味で登場人物が変わったということが、大きな原因かもしれない。やはり、サイエンスあるいは事実と政治的配慮(の調整はあるだろうが)、やはり事実を常に前にし、やるべきことをやりながら(進める必要がある)。たとえば、豊洲(市場)の問題にしても、豊洲の議論ばかりしているが、こちらサイド(築地市場)の危険度やリスクが(今は)あまり議論されていない(ようにみえる)。それで後手(に回り)分析手法によって全く解釈が違う。最初の計画をよりオープンにし、そもそものスキームが納得性のあるものから進んでいくというのが基本中の基本である。要するに、ガバナンスというか企業経営と全く同じで、透明性をもって皆が納得したところで最初のシナリオを描き進んでいくことが必要である。昔のように、エイヤで(進められるわけではない)。日本人が強かったのはあまり多くを考えず、行けといったときに思い切って行けた面もあり、一見早く(決断)できた。しかし、日本人はより賢くなっており、いろいろな意見を集約することにものすごく時間がかかっている。(古代)アテネがそうだったように、概ね、文明が進めば進むほど(意見の集約に時間を要する)。ブラジルの人たちもそうかもしれない。今、その意味で効率が良いのはおそらく韓国や中国(ではないか)。まだ始まった国は効率が良いが、それをだんだん繰り返すといろいろな考えの人が増える。やはり最初のスキームで、それをいかに透明化してから始めるかが重要である。

Q: フィギュアスケートの浅田真央選手が引退表明をされた。引き際という面でいろいろと考えさせられたが、所感を伺いたい。

小林: 体操全日本選手権を10連覇した内村航平選手が試合後に「(期待に応え続けないといけないと思うと)地獄だった」と言っていた。おそらく浅田選手にしても、ほとんど地獄だったのではないか。トップを守り抜いて、常に研鑽することがどれほど辛いかを、もっとも分っている二人ではないかという気がする。勝つということがどんなに辛いかということを感じる。どのような人もそうだと思うが、努力してトップにいる人がいかに辛いか。批判ばかり受け、ちょっと負けるとすぐ怒られる。その辛さをみんなもっとわかったほうがよい。彼女の人生にとって良い決断だったのではないか。勉強にしても、トップを走るというのはなかなか大変なことだ。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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