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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年3月28日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)東京電力の新経営体制、(2)原子力事業の民間運営、(3)トランプ米大統領の政権運営と日本経済・企業への影響、(4)働き方改革、(5)半導体事業の海外流出、などについて発言があった。

Q: 本日、東京電力改革・1F問題委員会が開催予定だが、東京電力ホールディングスの役員人事は、川村隆 日立製作所名誉会長が次期会長に就き、社外取締役には経済同友会から冨山和彦 副代表幹事(経営共創基盤 代表取締役CEO)と、経団連で副会長も務めた槍田松瑩 三井物産顧問が就任するという、かなり重厚な布陣となりそうだ。一方、社長は小早川智明氏(53)と若返る方向のようだ。まだ最終決定ではないが、この陣容についてどう見ているか。

小林: 委員会では、新々総特(「新々総合特別事業計画」)の策定に向け、昨年10月頃から集中的に議論をしてきた。(福島第一原子力発電所事故に関連して確保すべき資金の総額として、)もともと11~12兆円といっていたものが22兆円と見込まれ、(賠償・廃炉費用のために)年間5千億円程度を稼がなければならず、なまやさしいターゲットではない。(廃炉期間も20~)30年と、かなりの時間が見込まれる。委員会では、社長は若手でなければやり切れないだろうと(議論しており、)そうした意見が具体化されたと思う。会長以下、重厚な布陣であり、心新たに取り組んでもらえることが期待できるのではないか。

ただ、一部報道では、「経済同友会系」「経団連系」(の人事)といった見方がされているが、歪曲したものの見方は止めていただきたい。日本のエネルギー政策(に関わる事案)で、全員が力を合わせていくべきことだと理解している。

Q:東芝の米原発子会社ウェスチングハウスが、チャプター11(米連邦破産法第11条)を申請すると言われている。東京電力もそうだが、原子力事業を民間企業が行うことの難しさが露呈しているのではないか。所感を伺いたい。

小林: 鳩山由紀夫内閣の頃、原子力ルネサンスの下、(2020年の)電源構成の50%を原子力にし、CO2の排出問題も解決するといった、資源の乏しい日本にとって、期待感をもって(計画が打ち出されていた)。6年前に福島第一原子力発電所事故が起こるまで、日本人の感覚は原子力に対してそれほどネガティブではなかった。不幸にして大変な事故を起こしてしまったため、ドイツは政策的に方向を変え、台湾も原発をゼロにしようと動いている。結果として、(米国の)スリーマイル島にしても、ロシア(ソビエト連邦のチェルノブイリ)にしても(事故が起こってしまったように)、神なのか悪魔なのか、人間では制御することが難しい原子力のテクノロジーを、30~50年のスパンで自然エネルギーや、大きなハザードをもたらさないエネルギー源に切り替えていく方向だと思う。国家として大きな投資をして、今後も廃炉に取り組まなければならないが、廃炉テクノロジーとは原子核物理学やエンジニアリングであり、急峻に原子核エネルギーをやめて人類としてやっていけるだろうか。経済的に見て、とりわけ日本では不可能に近いのではないか。一定程度の安全性と事故対策、それに対するソフトウェアを備え、健康管理も含めた対策を練りつつ、あと20~30年、ほぼ(発電施設を)償却するレベルまで安い電力として使っても、最後の廃炉のコストは変わらない。安全なもの(原子力発電所)は使いながら、日本をより経済的に成長させつつ、そこで得た収益を自然エネルギー(の拡大・普及)に転換することで、早く原子力から卒業する、あるいは、(安全な)新しい原子炉の設計を考える。日本にはプルトニウムが相当蓄積しており、禁断の実を食べてしまった人類として、やはり逃げるわけにはいかない。(今ある技術を)冷静に使いながら、そこで得たコストを、次の新しく安い技術にどうトランスファーしていくかを考えるべきだと思う。2~3年前から経済産業省が出しているエネルギー政策では、エネルギーミックスとして原子力を20~22%以上とし、かつ自然エネルギーについても記述しているので、正々とそれに向かって(進めていく)。原子力発電所周辺の地域も含めてあきらめずに(対話)し続けるべきだと思う。

日本には原子力事業を行っている企業が3社あり、海外とのコラボレーションも行っているが、これが本当に必要なのか。世界で500以上にのぼる(原子力発電所の)廃炉ビジネスは必要だと思うが、収益を上げる事業としては、今のままで良いとは誰も思わないだろう。電力会社が新しい協同作業や共同体形成をするのと同様に、原子力事業者もそうした動きをすべきだ。海外(事業)については、インフラ輸出という形で、鉄道も含め、原子炉を海外に(輸出しようと)考えている。(しかし、)プラント輸出、インフラ輸出は、資金の回収を考えてもそう簡単に(いかない)。昔のイラン・ジャパン石油化学だけでなく、さらにさかのぼった1950年代にはエンジニアリング会社が非常に苦労してきた。国家間のいろいろな交渉の中で出てくるものとはいえ、インフラ輸出はそれほどバラ色のビジネス環境ではない。それをしっかりと把握し、リスクを考えながら進出しなければ、なかなか良い結果は生まない。

Q: 国内の重電メーカーも再編が必要とお考えか。

小林: 自由主義社会であるため、収益が上がらなければそういう(再編という)方向に進むだろう。そうはいっても、民間にだけ任せていたら経済合理性だけで動くため、国家の関与はますます重要になってくる。

Q: 福島第一原子力発電所事故の後に、事故の責任を誰が負うべきかについて、原子力損害の賠償に関する法律の解釈がいろいろと言われたが、結局、民間会社が責任を負うという方向で未だ変わっておらず、この部分の議論はあまりされてこなかった。今後の見直しも含めて、事故が起こった場合、国はどこまで事故の責任を請け負っていくべきか、考えを伺いたい。

小林: 非常に難しい問題である。どこで仕切るかという大きな問題があるが、今までの法律、議論からすれば、直接の事業者、今回の事故であれば東京電力が責任を負って16兆円を負担する、というのが無理のないところだと思う。今後については、廃炉事業、(核燃料の)リサイクルも含めて、議論すべきことは残っていると思う。(今回、)東京電力が責任を負うことは致し方ない。

Q: 今後についても事業者が責任を負うということか。

小林: それについては(事故前とは)状況が大きく異っているため、議論すべきポイントだと思う。

Q: 米国のトランプ政権について、政策が思うように実行できない状況が続いている。為替も円高・ドル安傾向にあり、期末を控えて日本企業への影響もあるかと思うが、先行きも含めて所感を伺いたい。

小林: (ダウ平均)株価は、8日連続で下がっているが、これまで上がっていた理由もあまりはっきりせず、一種のトランプ・フィーバーが落ち着いてきた(ということではないか)。閣僚(人事)は決まりつつあるが、3千人を超える実質のワーキングレベル(での政治任用)が決まっていない。日本と米国の通商を含めた経済対話も、どの辺りまで深めることができるのか。思ったより時間がかかっているという印象だ。移民への対応やオバマケアの見直しも、議会との折衝はそう簡単ではないことを、事実として認識せざるを得ない。マーケットも慎重になっているのではないか。いずれにせよ、(政権運営は)まだ始まったばかりで、コメントするほどの事象ではないと考えている。

Q: 今夕、政府は、働き方改革実現会議を開催して、実行計画を策定する。実行計画では、長時間労働に対する罰則付きの上限規制や非正規労働者の待遇改善が大きな柱となっており、労働法制にとっては大きな変革となる。あらためて評価を伺いたい。

小林: 今の段階で明確な評価はなかなかしづらい。労働基準法の議論についても、国会をきちんと通すべきアイテムがまだ残っている。取りあえず、(労働時間の)上限をある程度明確にし、これを契機に、各社が単に賃金だけでなくQuality of Workに目を向け、働き手にとっても、会社にとっても、効率の良い方法を考え始めた。これには健康経営も含まれ、労使ともに(働き方の改善に)フォーカスし始めるトリガーとなった点を評価したい。

残されているのは、長い間言われている生産性の向上である。これは、個々の働き手や企業だけの問題でなく、規制を和らげ、生産性を上げるフェーズに入ってきている。地方ごとに行政手続きが異なる、ほとんどデジタル化されていない、手書きや判子の文化など、今後、労働生産性に非常に効いてくるところを打破していく。そのスタートの時だと思う。

Q: 働き方改革について、70年ぶりの大改革と言われるほど、春闘でも先取りした動きをする企業が相次いでいる。政府の旗振りや人手不足などの理由はあるが、電通で違法残業問題から最終的に社長が辞任し、経営責任に発展したことは、どの程度、企業経営者の姿勢やマインドに影響したか。

小林: 業種によって状況が異なる。電通のようなサービスや情報を扱う産業は、報道機関とも似ているところがあると思う。私が携わっている製造業のように、工場で交代勤務を行う(業種)というのは、非常にリジットに時間(管理)がある。製品量が足りないから数時間残業をするというような分野では、かなりコントロールが効く。労働時間が長い月があれば、その翌月は減らす。あるいは、定期修理のときは一時的に労働時間を増やすが、その後数か月は減らす、インターバルを設けるなど、経営そのものがマネジメントしやすい業種である。

報道のようなソフト、サービスを商品にしている業種では、経営がリジットにコントロールしづらかっただろう。今回、そういうところにメスが入ったという意味で、今後、経営の姿勢としてそういう分野も管理していこうという文化に変わってきたことは事実である。

加えて、Quality of Workをどのように考えるか。この点は、具体的に動き出して議論をしないと、こうあるべきというのは言えない。強いられて取り組むもの(仕事)と、好きで取り組むものは大きく違う。また、自由にやれるものと、やらされ感があるものでは大いに違う。枠(労働時間の上限規制)は必要だが、今後はもっと内容の議論をする必要がある。結果として、健康にネガティブな方向に向かってしまうものは、どのようなファクターが多いのかという部分も議論しないと(ならない)。ルーティンワークをしている人と、クリエイティブな仕事をしている人でも違うだろう。きめ細かな議論に、マネジメントも入っていくという段階だと思う。

Q: 今回の電通問題では、厚生労働省が立ち入り検査をするなど、一罰百戒のようなやり方をしたと言われており、また世論もわいたと思う。そうしたものが経営者の姿勢に与えた影響はどうか。

小林: 経営者が責任をとった事象としても、インパクトは大きい。それをどう吸収するかというのは、単純に時間の上限規制はもちろん、(規制を順守しなかった場合は)処罰をすると同時に、その先を行って、経営陣が本気で労働の質をどう上げるべきかという議論も喚起したと思う。

Q: 政府の働き方改革実現会議に関して伺いたい。今の日本の労働状況からすれば(時間外労働が)月100時間を超えてしまう業種が多く、現状をよく見た上で対応してほしいという意図があった。しかし、政府としては、現在は残業時間規制の適用対象外となっている建設・運輸・医療分野も規制の対象とする方向で検討が進んでおり、中小企業への配慮などを見ても、産業界の要求についてはゼロ回答であったと言えるのではないか。これについての評価を伺いたい。

小林: 人手が足りないことで残業が月100時間を超えてしまうのであれば、コストは高いけれども人手を増やして、100時間を超えないようにするという対応もある。欧米に比べて、(日本は)一人あたりの生産性が低い、相対的に長時間労働が多いという中で、抽象的なことから処罰も含めて具体的な方向へ進めたということは、日本の労使関係も変わってきたのではないか。労働そのものの考え方が入ってきたのではないか。

一方、国際競争力を高めなければならない中で、当然、生産性を高めると同時に、クリエイティブなビジネスや、1千万円以上の収入がある人たちを、よりフレキシブルな働き方にもっていくなどを併せて考えていかなければならない。単に形だけ、枠を決めただけで、ほんのとっかかりだと思っている。

Q: 日本の半導体事業が海外へ出てしまうことに対して、阻止した方が良いという一方で、資本主義で自由競争社会だという考え方もある。このあたりのバランスをどのようにお考えか。

小林: 難しい議論だと思う。今、中国では、10兆円近くのお金を使って3次元NAND型フラッシュメモリに力を入れている。それはサイバーセキュリティ、IoT、AIなどのハードウェアとしてはコアのテクノロジーである。韓国も、サムスンを中心として、中国に工場を作ってコスト競争力を付け、世界にダントツの状況をつくろうとしている。一方で日本は、DRAMなどの半導体で敗北を喫したが、東芝の3次元NAND型フラッシュメモリは、今や技術でサムスン以上のところにきている。

AI、IoT、データヘルス、スポーツの事業化、農業のIT化など、さまざまな成長戦略があり、未来投資の議論をしている中で、Order of Magnitudeが違うほど重要なテクノロジーを本当に手放してよいのかと言えば、ノーである。

全くお金の違いが(提示金額の差が)歴然としていれば別だが、日本人として生まれ、日本を守るという思いがあれば、どこの会社も100%経済合理性で動くわけではない。(ただ、)日本だけで囲い込むのはテクノロジー的に難しく、いずれは(国)外へ行ってしまうとはいえ、知恵を出し合い、今までも米国の会社と半導体の研究はやってきたので、そのレベルでいかに外へ出ていくのをブロックしていくかが重要である。第4次産業革命にとって重要なパーツなので、当然考えるべきである。そうは言っても、いつまでも3次元NAND型フラッシュメモリだけのテクノロジーで世界が進むわけではないので、5~10年先は量子コンピューティングなどもっと新しい(技術が生まれ)、情報を蓄積する部分がシステムが変わっていくので、これは非常に複雑な判断が必要になると思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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