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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年3月14日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事

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記者の質問に答える形で、(1)サウジアラビアとの経済協力、(2)残業時間の上限規制に関する首相要請による合意、(3)東芝の決算発表延期、(4)グローバル経営とコーポレート・ガバナンス、(5)受動喫煙対策、などについて発言があった。

Q: サウジアラビアのサルマン国王が来日し、エネルギー以外の分野でも日本との経済協力を進めることで合意した。サウジアラビアとの経済協力は、日本にとってどのような潜在性があるのか。また、来年にもサウジアラムコの上場が見込まれ、時価総額が日本円で200兆円と史上最大規模と予想され、東京市場への誘致に向けて証券取引所などが活動を始めている。これにより、日本の取引市場にどのような可能性があるのか、所感を伺いたい。

小林: サウジアラビアと日本は、最初は(日本が)原油を求めたところからずっと関係が続いてきた。私も石油化学を事業の一部とする企業にいるので、アラブの石油を中心にいろいろな関係(がある)。今まで(サウジアラビアから)原油を買う一方で、サウジアラビアに石油精製や石油化学などの関連事業を立ち上げるという形で、財閥系を中心に1950~1960年代から関係を築いてきた。もともと(日本とサウジアラビアは)良い関係だが、特にアラブ諸国とイスラエルにおける一種の戦いの中で、(日本は)イスラエルとの関係を犠牲にしてまで(アラブ諸国と)原油を中心にやってきた。今、イランを介してサウジアラビアとイスラエルの関係はとてもよくなっている。(従来との)大きな違いは、原油そのものがいずれは枯渇することである。埋蔵年数を見積もることはなかなか難しいが、サウジアラビアの国王以下、大きな問題意識は、米国にシェールオイル、シェールガスが見つかった中で、価格を押さえつけるファクターが出てきたことである。(1バレル=)60ドル程度になると、シェールで十分コスト・フィージブルな状態になることが見込まれる。それを含め、石油輸出国機構(OPEC)では、(石油の)減産に同意するという状況にある。いずれにしても、サウジアラビアの問題意識は、若い人たちが原油の収入で生きていくというよりも、新しい産業や教育をしっかりし、次の国づくりを計画することである。まさに今回、2030年を目指した新しい計画を、日本や他のアジア諸国からの技術援助を前に打ち出してきた。その中でも、日本は(サウジアラビアと)長い付き合いがある。自然エネルギーの太陽光(発電という面においては)、(サウジアラビアは)最も燦々と照る太陽を持っている。石油による収入がなくなる段階を想定し、いろいろなテクノロジー、あるいは新しい教育を準備しようということで、日本にとっても単に自然エネルギーや資源の関係ではなく、いろいろな技術を共同で開発するという関係において、大きな意味がある。まして、東京証券取引所に上場してくれることになれば、東京の新しい刺激になるため大歓迎である。

Q: 働き方改革について、昨日、罰則付きの時間外労働時間の上限規制で労使が合意し、労働基準法70年の歴史において大きな改革となった。ただ、労使で協議すべきところに、政府が「繁忙期の上限を100時間未満してほしい」といった要請をするなど、介入の度合いが強まった印象がある。この辺りの関係をどのように見ているか。

小林: (景気の)好循環の中で、設備投資を促す、あるいは持続的な賃上げやベースアップ、労働時間の上限の問題など、これまでやってきたかどうかは別として、基本的には(労使の)当事者でしっかりやるべき事象である。(時間外労働時間の上限規制の問題については、)政府が入ることによって、ある意味ではドラマタイズされた。安倍政権はドラマをつくるのがうまいと思う。ただ、経営者として反省すべきは、こうした当事者がやるべきは当事者でやるのが筋であり、ここは忘れてはいけないと思う。

Q: 残業時間の上限規制について、経団連は100時間「以内」と要望していたが、連合の主張する100時間「未満」になった。これについて、経済同友会はどのように見ているか。

小林: 経済同友会として(の見解)は、先日発表した「『働き方改革』に関する主要論点に係る意見」に集約されている。「未満」か「以下」かは、「99.9時間」なのか「100時間」なのか、というレベル(の話)だ。過労死の基準が100時間ならば、「未満」で合意したことは、論理的には素直な落としどころだったのではないか。ただ、ポイントはそこではない。基本は45時間(以内)で効率よく働く前提で、やむを得ない場合には、1か月だけ100時間未満まで可能とし、それを超えたら罰則をつけるという問題だ。2~6か月(の平均)を80時間に(抑える)といったことも、すべて特殊な要因や状況、業種下での話である。建設業や流通業などについては、東京オリンピック・パラリンピックなどの(繁忙期がある等)事情の変化もあるので、どのような時間軸で(基準まで)落としていくのかは慎重に考えるべきだが、基本骨格は45時間であり、経営者の側こそ、それをベースに考えるべきだと思う。

Q: 経営者として、自由な経営を束縛されるという懸念はないか。

小林: 報道機関の皆さんに(考えを)伺いたい。土日や深夜・早朝関係なく取材に来られるが、いつまでも適用除外というわけにはいかないだろう。あくまで一例だが、競争社会の中で、少しでも早く情報を取りたいがために、(一定の)ルールがないから、抜け駆けをするか「努力」をしてしまっている。好きでやっていると言われればそれまでだが、無理強いは健康によくない。(一定のルールを)決めれば、皆さんの人生も明るくなるだろう。(このように、)個別の業種や状況によってもかなり違うので、(一律の上限規制は)なかなか簡単にはいかないと思う。だからこそ、今回一つの目安がつけられたのはいいことではないか。

Q: (政治の介入について、)30年以上前、経済界のトップが「財界総理」と呼ばれた時代と比べると、今は政界と財界との力関係に隔世の感があるのではないか。認識を伺いたい。

小林: ご指摘の通り、事実、そういう姿を呈しているといえば、そうかもしれない。政治と経済との関係は、かつての(日本経済団体連合会第4代会長を務めた)土光敏夫氏の時代とは状況が相当変わってきている。経済そのものが非常にゆっくりと成長してきた時代と、目まぐるしくグローバル化し、それぞれの(企業の)社長や経済界のトップとはいえ、あるファンクションの一部を占め、超スピードで動く時代は、自ずとマネジメントのトップに要求される資質も違ってくる。

政治の世界には、今回のトランプ米大統領の誕生や、安倍首相の一強体制、あるいはプーチン 露大統領、エルドアン トルコ大統領、ネタニヤフ イスラエル首相、習近平 中国国家主席など、比較的強いリーダーがいる。一方、経済界では、グローバルに見てもパッと浮かぶだろうか。そういう意味では、時代の状況によってトップ・マネジメントに要求される資質が違っているとみるしかない。

Q: 東芝について、決算発表ができないという異常な状況が続いているが、所感を伺いたい。

小林: 東芝については、本日社長の記者会見が予定されているので、そちらで聞いてほしい。
一般論として、企業が世界で勝ち抜くためには、今後ますますグループ会社へのガバナンス、国内の子会社だけでなく、特にグローバル(なガバナンスが重要になる)。トランプ米大統領は極めて国内第一主義、欧州もそうした部分があるかもしれないが、企業は完全にグローバル化の方向で取り組んでいる。

海外の子会社のガバナンスは長い間の課題であり、もう一度、どの企業も見直すべきである。私が(三菱化学の)子会社の社長を経験した時も、欧州あるいは南米など、さまざまなところで訴訟や事件が起きた。今後の日本企業にとっては重要なポイントである。

次なる企業経営(の課題)は、グローバルな関連会社のガバナンスと労働の流動性への対応である。この二つが、今後の勝負にとって重要な時期にきている。

Q: 社外取締役の責任については、どのように捉えているか。

小林: 政府の構造改革徹底推進会合や内閣府でも議論しており、経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会でもレポートが発表されたばかりである。3年ほど前までは、社外取締役を1人入れるのに大騒ぎ、2人以上となると絶対に反対されていた。長い間、経済同友会では、2人以上の(独立)社外取締役を設置すべきと提言してきた。

ここにきて、(東証上場会社における独立)社外取締役が1人の企業は95%以上、2人以上でも75%を超えるくらい、日本企業でも急激に社外取締役に対するアレルギーが薄れ、むしろ積極的に社外取締役を入れることで、極めてフェアでオープンでコンプライアントな取締役会にしようという機運が高まっている。

(外からの)違った目で見る、それもアカデミアや弁護士、会計士ではなく、非常に苦労をした経験のある経営者を社外取締役として迎えることが極めて重要である。相談役や顧問として残られて非常によい助言をする人もいるだろうが、人によっては権力を手放さないということもあるため、この点については説明責任がある。

企業のガバナンス改革というのは、コーポレート・ガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードができ、この3~4年で驚くほど変化している。経営者も主体的にコミットして議論してきたが、どちらかというと政・官、官邸主導でつくられた部分があり、なぜこんなにも時間がかかってしまったのかという批判はある。

株式会社の三つの類型、監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社のうち、一番オープンで社外取締役を半数以上という方向に進みつつあるのは、指名委員会等設置会社である。これであれば、欧米に近いオープンな形になっていると思うので、徐々にそちらの方向に変革していくことが、日本の資本主義の中の企業という位置づけになっていくのではないか。

Q: 東芝に関しては社外取締役が機能していなかったように見えるが、どこに難しさがあるか。

小林: 一般論でしか答えられず、(東芝で)機能しているかどうかは何とも言い難い。

Q: 海外子会社の買収は、どのようなリスクを抱えているかが分りづらく、ここ数年でも減損を計上せざるを得なくなった事例がいくつかある。日本の経営者に、海外企業との合併の良し悪しを見極める能力はあるか。

小林: 能力より、システムや仕掛けづくりの問題である。グローバルな法務担当者や弁護士、会計士などはいるが、会計事務所によって見解が違い、どのように判断するかは、かなりプロフェッショナルな世界である。その判断は、経営者、あるいは取締役会で行うとともに、専門の会計事務所、あるいは監査人の見解、むしろ監査委員会で行うべきことになっている。そのようなコーポレート・ガバナンスのシステムを、国内だけでなくグローバルな経営の仕掛けとして、各企業が自分のものとして使いきれるようになるには、まだ時間がかかっているのが一つである。その点は非常に大きなポイントだ。

特に、積極的に海外企業との合併を進める場合は、グローバルな会計監査人がいるわけで、世界有数の四大監査法人に頼むことが多い。それぞれ見解が違うこともあり、極めて明確に定量的にできていない部分があるが、コンプライアンスとは違い、数値的な部分で解決できると思う。経営の複雑化に伴って、リスクそのものにもっとも注意すべきで、経営者は思いを致すべきである。

Q: 海外子会社のガバナンスを強化するには、どのような見直しが必要か。

小林: 確率論になるが、日本でも同じで、孫会社くらいに不祥事が比較的多い。海外でも、それほど規模が大きくないところ、ガバナンスにコストをあまり掛けられない企業で、不祥事が多いのではないか。アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどのエリアごとに、横串でコーポレート・ファンクションを強める、それに加え、監査役あるいは監査委員会の仕掛けを、網の目で抜けがないようにすることが重要である。

東京のオフィスにいて、従業員が何十万人もいて、売り上げが何兆円という規模の会社の社長が、全部一人でできるとは思わない。仕掛けづくりをしっかりやらないといけない。そもそも、取締役会では、会計士のチェックを受けた情報をもとに、次の戦略を決めている。上げるべき情報の仕掛けづくりがいい加減であれば、抜けが出てしまうという点について、日本の経営者は思いを致すべきである。

Q: 受動喫煙対策について伺いたい。厚生労働省は、(日本の受動喫煙対策は)世界でも最低レベルだとし、東京オリンピック・パラリンピックに向けて厳しい規制を進めていく方向だ。それに対し、自民党のたばこ議員連盟は受動喫煙の規制強化はまかりならないとしているが、見解を伺いたい。

小林: 私自身は38、39歳まではヘビースモーカーだったが、(たばこを)止めてから30年以上経った。世界の情勢、常識からして、人前で吸うのは良くない。ましてや道端に捨てるなどあってはならない。20年ほど前に、アメリカ(のカリフォルニア州で)はビル(の入口)から20フィート離れないと吸ってはいけないと(規制した)。飛行機も、禁煙対応が一番遅かったのはエール・フランスだったと思うが、それも10数年前ではないか。受動喫煙は、吸わない人への健康配慮という意味で考えると、オリンピック・パラリンピックのようなイベントがある時には、早く法律で縛る、よりリジッド(厳格)な規制をすべきだと思う。人間の身体に入るものには、固体、液体、気体がある。食は固体と液体、薬も固体(と液体)。煙は(気体で)薬か毒かは分からないが、自分がよくても、煙を他人に強いることへの罪悪感をしっかり持つべきだ。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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