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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2017年1月13日(金) 14:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

冒頭、横尾副代表幹事・専務理事より「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」熊本支援について説明があり、小林代表幹事より新年の挨拶があった。

その後、記者の質問に答える形で、(1)ドナルド・トランプ次期米大統領と経済情勢、(2)日韓関係、(3)日EU・EPA、(4)東芝・米子会社による買収減損、などについて発言があった。

「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」熊本支援について

横尾: 震災復興支援事業「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」は、東日本大震災からの復興を目的に、全国44の経済同友会が設立した被災地支援のプラットフォームである。2011年10月~2016年9月末の5年間にわたる息の長い支援に取り組み、総額21.8億円の支援を岩手、宮城、福島の3県に届けてきた。被災地の将来を担う若者、地場産業を支える人材を多数輩出する専門高校に重点を置き、被災した専門高校が必要としている実習機材を届けるなど、目に見える支援を展開した。東北への支援は終了したが、昨年4月14日・16日に熊本県を襲った最大震度7の直下型の強い地震により、熊本県内では、多くの専門高校で実習機材に被害が生じ、授業に支障をきたしている。その状況は、東日本大震災の被災地と全く同じであることから、昨年9月に熊本支援活動を開始した。昨年9月~11月末に実施した第1期活動では、全国167の企業・法人、20名の個人の協力の下、総額4,600万円余の寄附を頂戴し、熊本工業高校への蛍光X線分析装置など、実習機材を送った。1月より第2期活動を開始し、1月11日~7月10日の半年間で、小川工業高校へのマシニングセンターの寄附に取り組む予定である。熊本地震に関する報道は減少し、風化が懸念される状況になっているが、被災地では依然として厳しい状況が続いており、皆様のご理解・ご協力をお願いしたい。

冒頭発言

小林: 今年は大変な年になるだろうとの不安と期待が入り混じった年明けとなった。このような時代こそ、どのようなことが起ころうとも的確に素早く反応し、その動きを楽しむくらいの余裕をもって対応していくことが、むしろ良い結果に結び付くのではないかという思いで、一年を過ごしていきたいと思っている。

質疑応答

Q: 大変な年で、不安と期待が入り混じったと述べられたが、その一つが、ドナルド・トランプ氏の米大統領就任だと思う。就任まで一週間に迫った中で、昨日、久し振りに会見が開かれ、その中で日本も名指しされている。トランプ氏の会見の感想と、期待や不安を伺いたい。

小林: 私は、ジョン・F・ケネディ元米大統領が大好きだった。高校2年生だった1963年11月23日(日本時間)は、ケネディ大統領(当時)暗殺の様子が衛星放送で送られてきた不幸な日である。1961年1月20日 の大統領就任演説は、非常に格調が高く、今でも週末、時間がある時は、クラシック音楽を聴くように演説を聴いている。その中に"Ask not what your country can do for you-- ask what you can do for your country."という言葉がある。非常に高等で大きな理念と、世界をリードしていくという強い責任を感じ、米国はそういう国でもあった。不幸にして(起きてしまった)キューバ危機に関するケネディ氏のスピーチでも、やはり非常に強い信念と、ニキータ・フルシチョフ ソ連首相(当時)に対峙する自分自身を明確にし、最後はキューバ危機を救った。(米国の)歴史は浅いとはいえ、栄光の国で、あのような人(トランプ氏)を選んでしまう状況にあるということが驚きである。理念についても、誰が考えても演説中の発言には理念はなく、ネゴシエーションでもない。21世紀はすごい時代に入ったという印象で、それが病なのか健康過ぎるのかは分からないが、トランプ氏個人よりも、トランプ氏を選ばざるを得なかった米国それ自体に驚愕している。

Q: 年初から方々でトランプ次期米大統領の動向についての報道がある。昨日の会見では、まだ政策に関する詳細な発言があったわけではないが、今後、貿易不均衡の問題はクローズアップされてくると思われ、かつての日米貿易摩擦のような様相を呈してくるのではないか。80年代後半から始まった日米構造協議では、(日本側の)特許審査期間の緩和や100兆円規模の公共投資拡大、大店立地法の規制緩和などが取り上げられた。当時、貿易不均衡を是正するために、日本の自動車系の企業は、米国に生産拠点をつくることにしたが、先日、トヨタ自動車が発表した5年間で1兆円以上の投資計画は、それをバージョンアップしたものと感じた。日本と米国は切っても切れない関係のため、そうならざるを得ない側面もあるが、こういった保護主義的な動きがもう一度台頭する中で、日本企業はどのように対応したら良いか。例えば、別の団体のトップは、副大統領候補のマイク・ペンス氏(インディアナ州知事)を後押しすれば、新政権に(日本の)民間企業の意向を伝えられるのではないかと考えている。日本企業がどのように対応していくべきか、所感を伺いたい。

小林: 閣僚(候補者)の公聴会を聴いていると、安全保障や経済政策に関して、トランプ次期大統領の選挙中、あるいは昨日の会見と整合性が取れないことを言っている。(各閣僚が)トランプ次期大統領(の意向)を忖度するのではなく、自身の考えを明確に述べているところを見ると、やはり1月20日(の就任式)、あるいは(就任後)100日計画(の経過)を見ないと何とも言えない。日産自動車のカルロス・ゴーン社長も、状況を見ながら対応すると言っているが、焦るあまり思い込みで対応するより、日本の場合はタイムラグを置いて進めるべきである。

最低限やるべきことは、麻生太郎副総理の発言にもあるように、データ(に基づいた説明だろう)。おそらく先般、安倍晋三首相が訪米した際にも、日本から米国への投資は英国を抜く勢いで第2位になってきている、といったような説明をしていると思うが、そういう動きはあるものの、なかなかトランプ氏に理解してもらえていないのではないか。貿易不均衡についても、中国、ドイツの次が日本なのに、日本とメキシコばかりが言及されるところを見ると、誤解があると思うので、正確なデータを刷り込む時間が必要だと思う。
むしろ、この間の流れを見ていて非常に危惧しているのは、フォードやクライスラー、アマゾンなどが、政権に簡単に迎合してしまっている(ことである)。もう少し強いはずだったあのような会社の経営者たちが軟弱ではないかという気もする。少なくとも我々はアメリカ人ではないので、そこまで慌てて反応する必要はなく、もう少し状況を確認すると同時に、特に政府を中心として、正確なデータを(トランプ氏に)刷り込むという流れに期待すべきである。

Q: トランプ氏の大統領就任後、民間企業への介入が強まる可能性があり、日本政府や企業は何かしらの対応が必要ではないか。また、法人減税などにより、強い米国経済が実現されるかもしれない一方で、ドル高が進み、輸出産業である製造業の足を引っ張る可能性もある。持続可能性という点で、どのようにお考えか。

小林: 1月5日に開催した経済3団体長の新年合同記者会見でも、トランプ景気が続くのは半年なのか2年なのかという議論があった。短期的には恐らく活性化するが、持続可能性という意味では、石炭産業の復活やパリ協定からの脱退など、不安しか与えない政策だと思う。人類あるいは地球全体で認識を明確にして、196カ国・地域が一緒にやっていこうとCOP21が決議され、全体として豊かさと平和を志向していこうという基本的な理念から逸脱している。米国さえ良ければ、今さえ良ければという思想である。(そのような中でも、)法人税率が15~20%になるかは別として、日本企業が今まで以上に米国への投資を強めていくのは、当然の流れになるだろう。

また、米国の財政は、大きな問題になる可能性がある。公共投資をどんどん増やすなど、まだ余裕があるのでできるかもしれないが、持続可能性という観点から見ると、流れは逆ではないか。
日銀も漁夫の利を得ているような、物価も上がり、円安にもなり、良い状況になっている。ここ半年から一年は、昨日の(トランプ氏の)会見後に株価が下がったり円が強くなったりするように、非常にフラクチュエイト(変動)する経済も含めて、決して良い方向ではない。波乗り的な経営をしないと、なかなか難しいのではないか。それはみな感じていると思う。
単純に言えば、トランプ氏本人は大統領を8年続けると考えているようだが、まずは中間選挙を乗り越えた4年で考えれば、方向としては米国への投資は増えていくだろう。エネルギー問題ひとつを取っても、石炭、シェールオイル、シェールガス(もある。)かつて日本は、アラブ(諸国に頼ること)一辺倒で、サウジアラビアを中心に、特に石油化学(産業)は、ほとんどの投資なりプラントを持って行った。しかし、今はアメリカ大陸で、十分ペイするような方向になってきている。私が所属している企業(三菱ケミカルホールディングス)も含め、米国への投資はますますやりやすくなっていくだろう。
とはいえ、今さえ良ければ、自分さえ良ければ、という考えはいかがなものか。世界のリーダーがここまで(のレベル)になってしまったかという思いがある。事実は事実なので、経済としてはそれに乗りつつも、(トランプ氏が)どのような思いかは分らないが1つの中国を壊そうとしたり、周りの閣僚がそのような言動をどのように抑えるかも含めて、毎日何が起こるか分からないという心境である。

Q: アメリカ経済が強くなれば、FRBも利上げを行うか。

小林: ドル高が進んでどこかにハンディキャップが生まれて、ドル安に誘導するのではないか。その誘導手段に思いを巡らせているが、なかなか難しいと思う。口先介入は大いにあるだろうし、それで株や為替はどんどん動くので、良い状況ではない。

Q: マーケットの動きについて、昨日はトランプ氏の会見を受けて失望売りにつながり、その前はtwitterでのトヨタ自動車批判で自動車関連株が大きく下がった。トランプ氏の一挙手一投足でマーケットが振り回されている印象があるが、どのように見ているか。

小林: 黒田東彦 日銀総裁があれだけがんばって、昨年2月16日からマイナス金利を導入してもなかなか為替は動かなかったのに、トランプ氏がちょっと発言しただけで(為替・株価が)動くということに、「それがマーケットなのだな」という心境しかない。マーケットというのはそういうもので、理屈はない。金が余っていて、(為替・株価が)動けば、そこでゲームをやっている人は儲かる。とにかく変動することが彼らのポイントで、何かがあれば売りに転じ、あるいは買いに転じて儲けようとする人が多い。実際の事業をやっている人にとってはいい迷惑だと感じる。

Q: 慌てる必要はないとうことか。

小林: 当面様子を見るしかない。上がったり下がったりするだろう。

Q: 慰安婦問題に関する日韓合意について、韓国次期大統領の有力候補といわれている潘基文 前・国連事務総長は、韓国メディアに対し、「慰安婦像の撤去が条件ならば、日本政府から受け取る10億円を返すべき」と発言した。これに対する受け止めと、慰安婦問題に関する一連の日本の対応について、所感を伺いたい。

小林: 慰安婦問題に関しては色々な考え方があるかと思うが、10億円のうちの6億円は払ってしまっている。細かいことを言えば、実質被害を受けた人以外にも(給付の)幅が広がっているとの情報もある。日本としては、10億円支払う約束をして、当然、関連して慰安婦像は撤去されるというつもりで(日韓合意をした)。外交交渉において、"irreversible"、「不可逆的な」などという言葉は、普通は使わない。一度決めたことが不可逆的になるのは当たり前のことであり、わざわざこのフレーズを入れていること自体が(普通ではない)。それなりに不信感を持ってこの言葉を入れたのだろうと思うが、案の定、不可逆的ではない状況になっている。返す、返さない以前に、そもそも日本政府の対応は順当、当たり前だと思っている。返したければ返せばいいのかもしれないが、それでは喧嘩を売ることになる。韓国国内でよく議論してほしい。

Q: 日韓関係について、大統領の支持率が安定していると日本との関係が比較的安定し、政治が不安定になると関係が悪化するということを歴代繰り返しており、堂々巡りという印象を受ける。安全保障や経済において、隣国ということもあり、結び付きも必要な中で、なかなか解は出ず、今回の大使の一時帰国に対しても賛否両論ある。日本が一歩下がって見守るべきなのか、外交的に筋を通すべきなのか、どの方向が望ましいと考えるか。

小林: (先述の通り、)「不可逆的な」という言葉をわざわざ入れなければならないほど、韓国という国は、(政権)体制が強い時期は(日本に対して)非常に友好的で、弱くなると国民の支持を得るために外をうまく使う。ビジネスの上では、韓国のビジネス・パートナーは素晴らしい人ばかりである。韓国ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長も含め、個人や会社としての付き合いでは裏切らず、長い付き合いをしてきている人が多いのに、国民運動になると極めて反日で、その辺りはよく分からない。(外交上の)筋を通すべきところは通して、正当的にやっていく以外にない。歴代の大統領が退任後に不幸になっているというのは、我々から見ると変な国だと思う。

(日本と韓国は、)こんなに近くにいて、経済的にも文化的にも長い歴史がある。女性の活躍という面では、韓国と日本が遅れているかもしれないが、儒教の精神も共有できており、切っても切れない関係である。対北朝鮮、対中国という面も含めて、より重要なパートナーという認識を持ちながら、特に慰安婦問題には筋を通さなければ、いつまで経っても同じことの繰り返しである。一昨年12月(の日韓合意)に「不可逆的な」という言葉を使ったとき、なぜこんなところにこの言葉を入れるのか(疑問に)思ったが、思った通り(そのまま)信用してはならないということだろう。今の状況では正当的にやっていくしかない。
心配なのは、次期大統領候補者のほとんどがアンチ日本を主張していることで、潘基文氏だけが一定程度の理解を示しているという状況は残念である。

Q: 大使の一時帰国については、評価できるということか。

小林: そう思う。

Q: 日EU(欧州連合)・EPA(経済連携協定)交渉について、首席交渉官による会合が17日から再開される予定である。交渉への期待や、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉に及ぼす影響、自由貿易を進める政府の方針について、考えを伺いたい。

小林: EUとのEPA交渉は5~6年越し(の案件)である。昨年、合意に達しそうな観測があったが、バターや農産物が最終的なネックとなって合意には至らず、非常に残念に思う。自動車には10%、電子機器には14%程度の関税がかかっている。(EUのみならず、)米国も韓国と2国間のFTA(自由貿易協定)を結んでいるなど、日本の自動車業界やコンシューマー・エレクトロニクス(家電製品)は、ハンディキャップを持って戦ってきた。政府は3月までにはどうにかするのではとの観測が流れている。ぜひ、農業問題等を解決して、合意に至らせてほしい。

TPP協定の批准が難しい状況の中、EUとのEPA締結を梃子に、トランプ政権に刺激を与える(ことも考えられる)。米国とEUと(の通商交渉:TTIP)もそれほどもうまくいっていないようなので、日EU・EPAが実現すれば刺激にもなる。二重の意味で、3月に向けて交渉を進め、成功裏に進めてほしい。経済界としては、長年の希望である。

Q: 昨年末の東芝の問題(米子会社の買収案件での減損)について、米国の子会社ということで問題を見抜けなかった部分もあると思うが、経営者としてどう見ているか。

小林: 一般論で言えば、すべての経営にかかわる者として、グローバル経営において、どのように海外のマネジメントをコントロールするかというのが、未だに大きなテーマである。事業部サイドで見るのか、コーポレート的な横串を通すファンクション(で見るのか。)各エリアにそれぞれの組織を置いているが、事業部から直接見る部分と、各支店で法律やコンプライアンスなど横串でチェックするものがあるが、全体をどう捉えて、財務的にもチェックするか。各社、相当苦労している。東芝が結果としてどうなっているかは、明確な数値が出ていないので何とも言えない。

例えば、福島(原子力発電所の事故の損害賠償などの費用)が(精査の結果、)11兆円から21兆円になった。原子力産業は、米国でも今後、石炭産業を復活させるだろうが、トランプ氏が原子力産業をどう捉えていくのかも相当クリティカルな問題になる。原子力産業にはリスクが付き物であることは間違いない。中国やロシア、韓国などで、原子力ビジネスが成り立たない、民間企業だけではできないようなものであるならば、本当に国家がやるか、国家の安全保障を考えないで原子力を全て止めてしまうかの選択の問題である。これは極めて政治(的な問題)であり、国家の問題である。廃炉も含め、民間企業だけに任せておける産業ではなくなってきており、もう少し大きな目で見るべきである。

以上
(文責:経済同友会 事務局)


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