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経済3団体長 新年合同記者会見 経済同友会 小林喜光代表幹事 発言要旨(未定稿)

日時 2017年1月5日(木)15:15~16:15
出席者 三村 明夫 日本・東京商工会議所 会頭(幹事)
榊原 定征 日本経済団体連合会 会長
小林 喜光 経済同友会 代表幹事

記者の質問に答える形で、(1)2017年の経済見通し、(2)株価・為替・経済成長率の予測、(3)賃上げ、(4)電通の過労自殺と長時間労働、(5)日本経済の成長に向けた要件、などについて発言があった。

Q: 去年は新興国経済の低迷や先進国での保護主義の台頭など、激動の年であった。今年もトランプ政権の誕生などイベントが目白押しだが、今年の日本経済、世界経済、景気の見通しを伺いたい。

小林: 去る11月に、私は二重の誤りをした。トランプ氏が(米国大統領選に)勝つのは1~2割の確率だと思っていたし、万一勝ったら、円は強くなり株価は下がるだろう(と予想していた)。(大統領選当日の)1日だけ(株価が)下がったが、あっという間にこんなに株が上がり、(対ドル)117円になってしまった。うれしいことではあるが、予想外の事象であることは間違いない。そのような(予想を間違えた)私が景気を議論することを許していただけるとしたら、トランプ氏は、「チェンジ」ではなく「リターン」だ(と思う)。アンチ・グローバリズムであり、自国だけが良ければいい、アメリカ・ファーストという中で、(これまでの道のりを)戻ってしまう(方向であると感じる)。人類は、自由で、資本主義を成熟させながら平和(を築き)、グローバルな商取引によって良い方向にいくだろう(と進んできた)。加えて新しいテクノロジー、特にAIやデータ解析など、人間にとって非常に良い方向だと思っていたものが、ちょっと戻りかけている。そこに懸念はあるが、今のマーケットを見る限り、簡単に円が強くなる、株が下がるという状況にはない。リーマン・ショックであれだけ大きなダメージを食らったが、常に今が良くありたい人間の性によって、ますます煽られている。1月20日の就任式や、(就任から)100日が経っても、経済の状況がそう悪くなるとは思わない。8月、もしくは秋や暮れくらいまで、このままいくという気がしている。大きな懸念は、イタリアではレンツィ前・首相が(国民投票に)負けてしまったし、次にオランダ、フランス、ドイツ(と選挙が控えている)。むしろヨーロッパの方がきな臭くなってきている。トランプ氏のリスク、不確実性というのは中国との関係性(であろう)。怖いことが起こらなければよいが、すぐ火が噴くようなことはない。こうした世界情勢の中で、日本だけが政治も安定しており、一番エンジョイできる(状況にある)。ここで浮つくのではなく、(これまで)4年間仕掛けて努力してきた本当にやるべき成長戦略について、(実行するための)時間が稼げた。特に我々民間は、本当の意味でのイノベーション(に取り組むべきだ)。時間がかかるとはいえ、安倍首相が政権を取ってから4年以上経った中で、そろそろ民間の責務だと思う。もっと新しい、エレガントなビジネスモデルをつくっていく。こういう時間的余裕を与えてくれたという見方をした方がよいのではないかと思っている。

Q: 今年の日本の株価の最安値と最高値、円ドル(為替)、経済成長率について、どのように推移すると思われるか、具体的な数字でお答えいただきたい。

小林: 株価について、期待先行で半年は過ぎるだろう。1月20日の(トランプ氏の米国大統領)就任演説で、びっくりするようなことは恐らくないままに推移するとすれば、(株価は)夏に向けて21,000円くらいでいくのではないか。ただ、具体策によるエビデンスが出てくるのは時間がかかる。物事がすべてうまくいくのは確率としては低いので、暮れにかけて1~2つのミステイクがあるとすれば、最終的には19,000円くらいではないかと、2016年末に(予測を)出した。(年が明けた今、)よくよく考えてみると、2015年の日本の株価は最高値20,950円、最安値が16,500円台であり、為替も(対ドル)115円から125円程で推移していた。ちょうど油価が大きく下がった(年だ)。今回は、油価が52~53ドルから60ドルくらいまでゆっくり上がっていく。OPECの蛇口が絞られていく一方で、シェールオイルがコストの上限を下げているので、大きなフラクチュエーション(変動)がなくなるという気がする。油価が60ドルくらいに向かって推移するとすれば、コアCPIは、現状で0.0近傍からマイナスであるが、0.5~1.0くらいまで上がってくるのではないか。GDP(経済成長率は)については、政府と日銀と民間で(予測値が)乖離している中で、これまでは比較的民間が当たっており、実質で1.0~1.1くらいではないか。名目は、GDPデフレーターも併せて0.1ほどプラスになり、1.1~1.2辺りではないか。

Q: さきほどの首相挨拶にもあったが、働き方改革や賃上げへの期待がかつてないほど高まっている。改めて、雇用のあり方や賃上げについての見解を伺いたい。

小林: 賃上げについて、今年度は、2016年4月から夏にかけて円高に振れ、(1ドル)100円を切るかというところまでいき、輸出に限らず換算益を含め、経常利益、営業利益が相当下がった中で議論をしてきた。(しかし、トランプ氏が次期米国大統領に決まった)11月8日以降、急激に株価が上がり円安傾向になった。年度で見れば、11月から3月までの(年間の)三分の一はかなり(業績が)回復し、利益的にはよい方向にきているのではないか。業種にもよるが、収益が過去最高に近い部分も見えてきた中で、この3年間より下がる方向にはいかないだろう。やはり元気よく、少なくともアメリカがとんでもない状況にならない限りは、賃上げ(の傾向)はこのまま続いていくだろうし、続けるべきだと思っている。よく言われるように、労働分配率が確かに下がってきている。労働分配率が下がるのは、グローバル化することによって、特にルーティンワークの場合は、アジアの人件費と(国内の人件費が)相対的に比較されてしまうというのが一つ(の要因として)あるだろう。もともと日本は稼ぐ力がそれほどない。ROE、ROSが低い中で、株主を見る経営としては、ROEを上げようとすれば人件費に対してはある程度の壁ができてしまう。また、失業率は低いが、正規雇用者より非正規雇用者が増えたために、全体として(賃金が)下がってしまい、労働分配率が下がる。あるいはデジタル化することで、ルーティンワークに対する価値が下がっている。これらをどう考えるかという課題もあるだろう。この辺りも含め、経営者のメンタリティ(が重要だ)。これまで、給料を上げても皆がなかなかお金を使わず貯金してしまう。(それは)社会保障や将来(への)不安があるからと同時に、経営者そのものも、内部留保はどうあれ、ある程度は(運転資金に)余裕を持っておこうという部分もある中で、国全体のメンタリティをもっと給料を上げる方向に導くかがポイントだろう。
働き方について、近い将来、自動運転が現実になる、あるいは、プロセス系も含め、工場ではIoTやロボティクス、AIが、予想以上にスピード感を持って大きな変革をしていくだろう。この10年先、20年先を見越して、どう労働を合わせていくか。一番重要なのは雇用の流動化で、アウトプットをどれだけ効率よく出すかという議論も相当必要だ。長時間(労働の是正)というのは、例外なく、経営者がガイドラインに沿ってやることが基本だと思う。そうはいっても、10年先、20年先の日本の姿を描きながら、雇用とはどうあるべきかを経営、政治も早めに手を打つ。AI、ロボット、IoT、データ・セントリックな社会になった中で、ルーティンワークと、創造的な、時間に束縛されない労働をしないと、日本はイノベーションで世界に冠たる状況をつくれないというのは(目に)見えている。そういう場合は、自由度(が高く)、裁量的な(労働)部分をどうもっていくか。雇用そのものを(流動化させ)、どこで会社を辞めてもらうのか、辞めたら国としてどう再教育をするか。基本のポイントは、10年後、20年後の産業はどうあるべきか、それに対してルーティン的なもの(労働者)を救済しながら、より創造的な社会を創出するための雇用の流動性(を高めるか)という見方を、ぜひしてほしい。
もうひとつ、なんでもGDPベースでものを見るのは本当に正しいのか。いつも述べているが、かつて何億円、何百万円もしたコンピューターが、いまや我々のポケットの中に(スマートフォンとして入っており)6~8万円で買える。テレビも簡単に観られる。付加価値と人々が享受している効用が全く乖離している時代に、単純なモノとしてのGDPに依存することは、誤解を招く政策になってしまうということに留意して、21世紀(の経済)を見ていくべきだ。

Q: 昨年暮れ、新入社員が過労自殺したことで電通が書類送検されたが、受け止めを伺いたい。また、長時間労働の是正にどう取り組むべきか。

小林: 電通が書類送検された(事件は)、非常に不幸なことだ。メーカーの経営者としての(私自身の)経験からすると、儲かっていないときは残業を制限して細かくチェックし、コストを減らそうとする。一方、好調になってくると、時間を足せばそれだけ儲けが出るということで、ついついそういうチェックが甘くなってしまう。これは、センスを要求される業種であろうが、ヘルメットをかぶる業種であろうが、役員を含めたトップの意識が、そこ(労働環境)にシビアに向かっていかないとなかなか改善できない。製造業であれば保安安全、事故を起こさないこと、コンプライアンス問題を起こさないこととかなり近い。トップが意識して常にチェックし、発信しないと絶対に変わらない。こういう事件をトリガーにして、経営者はしっかりと、常にメッセージ(を発し)、データを把握していくことが必要だと思う。ただし、(業務に対して)やらされ感を持つと追い込まれた感じになるが、ホワイトカラー・エグゼンプションというか、研究所など極めてクリエイティブなことをやるのは、土日であろうが好きにやっている。それは残業なのか、裁量労働的な部分なのか。形だけで時間を制限することは、グローバルな戦いの中で勝ち抜くという使命を持つセクションには合わない。官庁や地方自治体の人々も、相当激しく働いている。特に、国会(答弁)の準備資料を作るのにとんでもない時間を使っている。労働者としてみなされる民もだが、そろそろ官をどうしていくかを見直す時期に来ているという気がする。

Q: 今日のパーティーに出席していた経営トップにインタビューしたところ、トランプ相場は今年いっぱいも続かないだろうという見方が多かった。円安で日本経済は良い影響を受けているが、アメリカの好景気頼みではなく、それが終わった時にも日本経済が上向き続けるために必要なことは何か。

小林: 去年の2月半ばに日銀がマイナス金利政策に踏み切った。いろいろな努力をしたわけだが、結果として為替は微動だにしなかった。ところが11月8日にトランプ大統領候補が(次期大統領に)選ばれたら、あっという間にこれだけ(株価・為替が)動いたというのは、何を意味するか。結果として、アメリカという一番の超大国、ヘゲモニーを握っている国の大統領候補への期待に、あれだけ為替相場は動いてしまう。逆に、(それが)どれだけもつかと言われても、トランプ政権の政策が、1月20日(の就任式)、あるいは(就任から)100日後がどうなるかを予想するのはほとんど不確実であり、(見通しを)述べるのはかなりきつい。最低限、夏ぐらい(まで)はもつだろう。(先述の通り、)今の勢いでいけば(株価は)21,000円くらいはいくだろう。個人的には、暮れ頃になれば怪しげなことが起こって19,000円くらいに下がるのではないか。ところが、為替は、アメリカ経済は現実として好調に推移するだろうし、3回実施するかは別にして、金利も上げていく中で、円安は続くのではないか。逆にトランプ氏は、アメリカの景気が悪くなれば当然、金利を下げるなどいろいろしてドル安に誘導するだろうが、景気が良い中でドル安に誘導するのは相当難しく、ツールがあるのかと(思う)。そう考えれば、円安で推移するとなると、日本の比較的大きな企業は(1ドル)120円くらい(まで)はエンジョイできる。それが1~2年続くと考えれば、何をやるのか。(それは、)もうイノベーションだ。これも成功への王道があるわけではないので、コツコツとしっかりしたイノベーション。リアルエコノミー、サービス、イマジナリー、ネットのエコノミーをどう結合していくか。それが第四次産業革命的なのか、IoTかAIか。専門とするIT産業以外のサービス業でも製造業でも、それをどう導入していくかを正々とやっていく。構造改革(が必要であり)、民間がもっとアクティブに、M&Aを繰り返し、捨てるところを捨て、いいところを結合していくというアクティビティを(進める)。時間を与えられたとして、もっとアクティブにやらなければいけない。もう一つは、シェアリングエコノミーを含め、政治がそれをもっとやりやすくする規制緩和も、まだまだ道半ばだ。今まで考えていたことを、現実的に、実際に行動する時期だと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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