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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年11月29日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)朴槿恵韓国大統領の国民談話発表、(2)2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技会場見直し、(3)エコカー減税、(4)マーケット見通し、(5)賃上げ、(6)仏大統領選、(7)電源構成と原発再稼働、などについて発言があった。

Q: 日本時間の14:30に、韓国の朴槿恵大統領が国民談話を発表する予定である。内容は判明していないが、受け止めと日本経済に与える影響について懸念する点があれば伺いたい。

小林: ハンナラ党内からもきつい反応が出ている。支持率も5%、4%と下がっており、大変な苦境にあることは間違いない。どのような結果になるか、固唾を飲んで見守っていく以外にない。日本経済への影響として、大手企業も巻き込まれている部分もあるが、実体として、よほどの相対的なウォン安など為替が変わらない限りは、今までの韓国の大企業と(日本と)の関係はそう簡単に切っても切れない仲なので、朴大統領がお辞めになるか続けられるかは別として、衝撃的なことが起こることはあまり考えなくてよいのではないか。静観すべきではないかと思っている。

Q: 2020年東京オリンピック・パラリンピックのバレーボール、ボート・カヌーの競技会場見直しについて、本日行われる4者協議(東京都、政府、組織委員会、IOC)でようやく結論が出る見通しである。結果が出る前ではあるが、受け止めを伺いたい。

小林: 一度抜本的に見直すことは、スケジュールが守られる限りは、コストも再度見直すということであり、結果としては良かったのではないか。コストも重要だが、加えて、それなりのものを残し、レガシーを2020年以降もどう使えるかという辺りを議論されているのだろう。これで決まったら一致団結して一つの目的に向かって走っていただきたい。

Q: 税制改正の論議が本格化しているが、エコカー減税について伺いたい。税収増による財政健全化や燃費の良い車の普及という観点から、財務省と総務省は対象車種を絞り込もうとしている。自動車業界、ひいては国内経済への影響を懸念する経済産業省との間で綱引きがされている。この現状をどう見ているか。

小林: 環境問題(の視点で考えれば)、COP22にドナルド・トランプ次期米大統領がどう反応するかは別として、世界の潮流は本気でCO2の削減(に取り組む方向だ)。これこそ、グローバリズムが足踏みをしている中で、世界が統合して一つの目的に向かって走っていこうという象徴的な出来事だと思う。CO2問題というのは、地球や人類にとって、2050年辺りに向けて、島嶼国以外にも相当な影響があることは見えている。米国の一部の州では、EV(電気自動車)でないとクリアできないほどの厳しい規制もできており、基本的には(排出削減は)世界の潮流だと思う。減税をしなくてもエコカーが普及するのが理想的だが、インセンティブとして、一定程度はエコカー減税を残すのがCO2(削減)の観点(からは妥当だろう)。

今日の報道によると、環境省はカーボン・プライシング、カーボン・トレーディングを俎上に載せて議論をするという。全ての整合性をどうとっていくかが問題だ。カーボン・プライシングといっても、生産者、製造者だけに負荷をかけるというより(別の視点も持つべきだ)。CO2をたくさん排出してある製品をつくった(としても)、その製品(が環境に配慮していれば、それ)を使った人のエネルギー消費量は大幅に減少する。例えば、軽い部材で自動車をつくれば(乗った時の)エネルギー消費量は減るが、そこ(自動車メーカーや利用者)には(環境負荷低減コストが)かからないで、つくった側(部材メーカー)にだけかかるというのは(整合性がとれない)。カーボン・プライシングを議論する意味でも、ライフサイクル・アナリシスというか、あるものを加工してつくった商品全体のライフサイクルで、どれだけCO2を増やし、一方でそれを使うことで(どれだけCO2が)削減されるかを考慮しないと、単純につくる時だけのカーボン・プライシングでは納得性、フェアネスが担保できないのではないか。当然、カーボン・プライシングが行われてCO2が減れば、コストが下がる。それに対してどれだけインセンティブを与えるか、すべてが関係してくる。一方では、財政再建、社会保障など出ずるを制するところと相矛盾するファクターを持っているが、(最適化を図るには)グローバルな視点と明確な(根拠がほしい)。減税しつつ、バランスよく出ずるを制することを、全体系を考えながら政策を議論してもらいたい。具体的な議論はまだ始まったばかりなので何とも言えないが、考え方としては、税(収)が増えればいいのが当たり前であり、財政をより健全な方向に持っていくには、(歳出削減の対象としては)社会保障以外にも色々あるだろう。出ずるを制することと、CO2削減の双方に思いを致さなければいけない。相矛盾することをどこで最適化するか。これも一つの最適化プロセスだ。

Q: マーケットについて、(米大統領選時に)懸念されたような円高には進まず、円安・株高で推移しているが、トランプ次期大統領のことを考えると、いつか局面が変わる懸念もある。今後の見通しについて伺いたい。

小林: 私も含めエコノミスト、アナリストなど多くの人が、まず、トランプ氏が大統領になる確率をかなり低く見ており、隠れトランプがこれほど多かったことも予想していなかった。また、トランプ氏が大統領になる前提では、リスクオフ(回避)で、株式投資などからは引いて、円高になり、株価が下がると予想していた。確かに一日だけ株価が急落し、為替も1ドル=100円、ぎりぎり90円台になるかならないかの勢いだった。あっという間に逆転したのは色々な思惑もあったのだろうが、米国はリニアにずっと上がってきている。選挙中の公約をそのまま受け取ると、法人税率15%や、インフラ投資、具体的には老朽化したレジリエンスのための橋梁、道路含め古くなったものの新設(をするという。)あるいはエネルギー、とりわけシェールオイル、シェールガス、石炭関係のエネルギーの規制緩和、金融関係の緩和などを考えると、ここ半年から一年は、トランプ旋風としてはどちらかというと株高で、なおかつ12月半ばの米国のテーパリング、FOMCの金利引き上げ予測の確率が90%以上である。そのような中で、今日辺りから円も落ち着き、株も調整局面に入っているとはいえ、112円くらいがまた100円に戻るなどということよりも、110円近傍、株価も18,000円前後で行ったり来たりの高値安定になる確率が高いのではないか。

トランプ氏は来年1月20日の就任式でTPPを批准しないと宣言するようだが、(TPPを批准)したところでその効果は2~3年先であり、それによって(すぐに)ネガティブということにはならないから、株高・ドル高になっているのではないか。この辺りで安定してくれるといいと思う。特に日本企業にとっては110円近傍というのは決して悪い為替(水準)ではないと思う。後半、(トランプ氏が政策を)見直せばまた良い方向の結果になってくるのではないか。

Q: 11月16日の働き方改革実現会議で、安倍晋三首相が企業への賃上げ、特にベアにこだわって言及した。官製春闘と言われながらも、ベアについて首相が言及して強く要求することは初めてだと思う。ベアについて政権がここまで言ってきている理由をどう考えるか、企業側はどのように対応しようと考えているか。

小林: 何度か同様の質問を受け、色々な団体が色々な見解を述べているが、2013年から2016年を見ると、ベースアップ(ベア)、定期昇給(定昇)、一時金のトータルで2%ちょっと(の上昇)である。要求はもっと高く2%台にまとまっている。今回、連合は、ベア2%に定昇なり一時金を加えて4%近くの要求を出している。どの辺りに落ち着くかは、各企業によって(異なり)、極めて好調な企業、業種もあれば、相当な特別損失を出してかなり苦しんでいる企業もある。平均するとどうなるかは、集計してみないと現段階では分からない。

為替も1ドル=110円前後にきて、若干明るい内容になってきている。来春の交渉を待たずして、現段階では何とも予測は難しいが、企業サイドから見れば、将来の固定費、人件費を約束するというベアは、これだけ不確定性が高い時代においては勇気が要る。ただ、一時金なら今儲かっているから今出すとか、定昇はルール化されているから年齢が上がっていけば当然増えていくというものである。(これらよりも)ベアに対して比較的慎重になるのも当然かと思う。

一方、もらうサイドからすると、ベアで将来が一定程度保障されるというのは、社会保障で将来不安を減らすことと似たようなファクターがある。せめぎ合いで決着するのではないか。

Q: 安倍首相は、期待物価上昇率、来春にガソリン価格の上昇があり、物価が上昇することを前提に賃上げを考えてほしいと言っているが、これについてはどのようにお考えか。

小林: 石油は今47ドル程度で、OPECの最終判断がどうなるか、またトランプ氏がシェールオイル、シェールガスの規制を緩和して開発がまた進むとなると、サプライとしては相当潤沢になり、石油価格が急激に60~70ドルに上がる確率は低いのではないか。40~50ドル、50~55ドルくらいの範囲では動くかもしれないが、日本銀行が物価(上昇率)2%を2018年までずらしたということは、2017年は少なくとも2%いかないということであるので、それを理由に賃上げをするというほど確度の高いものではない。

Q: 仏の大統領選の予備選が始まった。Brexit、トランプ氏の勝利に続き、この選挙が世界的な保護主義の流れを決定的にするのか、歯止めをかけるかに注目が集まっている。現段階ではどのように見ているか。

小林: (仏の)前に、伊のレンツィ首相(の進退がかかる国民投票)が今年ある。これが仏の選挙にも影響を与えるだろう。伊も「五つ星運動」がどうなるのか見えない。昨日の報道では、(仏大統領選は)右翼のジャン=マリー・ル・ペン(国民戦線)党首が勝つという状況ではないと思う。ぎりぎりのところではないか。独もメルケル首相が立候補を表明しており、希望的観測として、伊も仏も独も、蘭はどうかわからないが、EUを中心に踏みとどまってほしいとしか今は言えない。やはり、伊のレンツィ首相の今回の国民投票に注目すべきではないか。それが雪崩をうって、仏、独に(波及する方が)怖いような気がする。昨日の結果を見る限り、仏はそれほどナショナリスティックにはならない雰囲気だと思う。

Q: 先日、関東地方で雪が降り、その日の電気使用量が急激に上昇したが、今の電力事情について改めて伺いたい。原油価格が多少安いからもっているが、経済同友会は「縮・原発」という立場で、再稼働を20%程度にしたい(と認識している)。その中で、電力会社は莫大な設備投資をし、特に系統系については資産を使いながら、経営をうまくやり需給を持たせようという中で、改めて原発の再稼働について所見を伺いたい。

小林: 「縮・原発」は、経済同友会が3.11東日本大震災後に議論をして、この状況ではやはり脱・原発まではいかなくとも縮・原発(が必要という結論に至った)。(電力会社は原発に)大変な設備投資をしており、サドンデスでは国富が消えてしまう。また、半減期が何万年というようなウランもプルトニウムも日本にあり、たとえ原子炉が動いていなくても、大きな災害があれば危険度はゼロではない。

(再稼働に関する)二つの大きな理由(の内の一つ目)は、韓国と比べて日本の電気代は2~2.5倍、米国と比べても2倍程度(であることが挙げられる)。製造業のみならずサービス業でも、ユーティリティ・コストが外国と比べて2倍も異なる中で、成長戦略の一端を担うべき産業として日本に投資する企業は本当にあるのだろうか。ユーティリティ・コストは変動費の中で大きな比重を占めるため、普通の企業であれば日本に工場は建てない。円が(外貨に比べて)高いという理由で海外に行くことも含め、海外で得た利益を配当金や知的財産として(日本に)戻すという手はあるが、結果として日本そのものの国家の成長には寄与できなくなってしまう。

二つ目は、太陽光や風力は、テクノロジーとしては相当確立されつつある。原子力発電のコストは11円/kWh、事故を勘案してもせいぜい0.4円増で12円/kWhまでいかないというベースで、計算によっては多少動くかもしれないが、太陽光発電のコストは20円/kWh以上である。こんなにも差がある中で、やはりCO2排出量の削減や地球温暖化(対策)という視点から見ると、コストに加えて地球温暖化、それもCOP21で約束をして、COP22を経て、次のCOP23辺りで相当具体的な話を持っていかなければならない中で、原子力発電の比率を20~22%にするためには(数基の運転期間延長と稼働率80%を前提としても)30基ほどは動かさなければ、どう見ても計算が合わない。安全が担保された原子炉については、ソフトウェアも避難訓練も含めて、可及的速やかに立ち上げていかなければ、とても2030年までに2013年比で(CO2排出量)26%削減というのは、かなりの省エネをしたところでなかなか(達成が難しい)。個別には一部バイオマス発電などがあるが、まだローカルな話で、全体として見れば(比率は上がらない)。なおかつ自然エネルギーもコストが高いとはいえ20%を目指さなければならない。その状況で、まだ火力発電も使わなければならないという挟み撃ちを考えると、地震の多い日本にとって極めてつらいことではあるが、縮・原発で30~40年は常に安全を考えながら原子炉を運転していく必要がある。それで繋いで、できれば30年後には殆ど原子力が不要になるほど自然エネルギーの研究開発が進み、その頃にはAIも進んでくるためコストダウンも相当できるのではないか。つらいとはいえ、今は縮・原発ということで、安全に動かせるものは動かしていくことが、これもやはり最適化プロセスである。

Q: 現実問題、いろいろな電力を組み合わせてやっていくしかないが、2030年時点の日本の望ましい電源構成が、原子力発電で20%~22%とするのは、あまりにも少ないのではないか。

小林: 実際問題として、かなり厳しい数字だと思う。CO2排出量削減においても、家庭を含めてもっと省エネを進め、自動車もEV(電気自動車)で殆どガソリンを使わないなど、先程のエコカー減税の促進などの必要性がある。

家庭用電力については、冬になると(電力使用率が)ギリギリの95%になることを見れば、我々の日々の生活も、もう一度3.11後の混乱の夏を思い出し、省エネを日本の文化としていかなければならない。そうすれば、1兆kWh(の年間発電量)が8千億kWhを切ると、以前、民主党政権が試算していた。日本は省エネと自然エネルギーの推進を強力に推し進めるとともに、今動かせる原発は速やかに動かし、繋いでいかなければならない。そうしなければ、電力コストや供給が不安定となり、日本の産業は相当追い込まれるだろう。正解はないが、再生可能エネルギーと原発などをどのように組み合わせ最適化するか、という思いでやっていくのが賢い選択だと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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